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金融(銀行・保険・証券), 景気回復 (銀行公的資金注入)

2013年05月24日 第183回 通常国会 財務金融委員会 【738】 - 質問

アベノミクスの危険性露呈 証券取引等監視委員会人員拡充を

 2013年5月24日、財務金融委員会は、22日に引き続いて金融消費取引法等改定案について審議を行い、佐々木憲昭議員が質問に立ちました。
 佐々木議員は、株価の乱高下と長期金利急騰について、無制限の金融緩和で投機をあおってきたアベノミクスの危険が露呈したものだと追求しました。
 さらに、佐々木議員はAIJ投資顧問による約2000億円もの企業年金消失事件などのへの対応として、証券取引等監視委員会の検査・監督体制の強化にむけて人員拡充が不可欠だと求めました。

 佐々木議員は、東証株価の前日比1143円下落(23日)は13年ぶり史上11番目の下げ幅であり、長期国債の金利も23日に一時1%に上昇したことに言及。「アベノミクスの基盤は大変もろい」と指摘しました。
 麻生太郎財務大臣は「株は上がったり下がったりするのが当然だ。気分がのらなきゃ景気はよくならない」と問題視しない姿勢を示しました。
 佐々木議員は、この間の株価上昇の原因について「昨年秋から日本株の買い越しが一番多いのは海外投資家ではないか」と追及。
 麻生大臣は「短期では圧倒的に外国人が多かった」と認めました。
 佐々木議員は「全体でみても外国人投資家が最多だ」と指摘。ヘッジファンドなどの投機マネーが株価を急騰させ、それを受けて金融機関・機関投資家などによる国債から株式への乗り換えがおこり、国債価格下落と長期金利上昇を招いていると述べました。
 佐々木議員は「金融緩和先行は制御不能に陥る危険がある」と警告し、実体経済の改善には内需の拡大が課題だと強調しました。

 次に、佐々木議員は、AIJ事件(2012年2月発覚)など投資家に多額の損失を負わせる詐欺事件が毎年発生しており、「最も信頼が失墜したのは『市場の番人』たる証券取引等監視委員会や金融庁だ」と指摘。証券取引等監視委員会が自ら「使命」とする「公正性確保」「投資者保護」が守れなかった責任は重大だと追及しました。
 麻生大臣は「証券会社側の倫理観の欠落がなせるわざだ」とまるで人ごとのような答弁をしました。
 佐々木議員は、証券取引等監視委員会が昨年まとめた対応策によって資産運用業者への検査がどのくらい増えたのかと質問しましたが、証券取引等監視委員会の岳野万里夫事務局長は明言を避けました。
 佐々木議員は、証券取引等監視委員会の定員392人に対し、情報提供件数は6362件(2012年度)であり「検査量に対し、体制が脆弱だ」と強調しました。

 この日の財務金融委員会では、これらの事件への対応策を盛り込んだ金融商品取引法等の改定案が、日本共産党以外の賛成多数で可決しました。
 採決に先立ち、佐々木議員は反対討論を行いました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 昨日は、長期金利が急騰し、株価が下落をした。これは大変大きなニュースになったわけです。東証株価が1143円の下落というのは、この幅は13年ぶりで、史上11番目の大きさだということです。また、新発10年物の長期国債の金利が、昨日は一時、1%に上昇する。きょうになって少し戻りましたけれども。
 アベノミクスの基盤というのは大変もろいのではないかと思います。きょうの朝日新聞はこういうことを書いておりまして、「「アベノミクス」の本質は、人々をその気にさせようという「心理学」だ。金融と財政を通じて思い切りお金をばらまく。その勢いで多くの人が「景気はよくなる」「物価が上がるから早めに買おう」と信じこむ。そうなれば本当に景気は良くなる――。そんなシナリオを描いている。 だから崩れるときはもろい。」と。「問題は、市場にお金を永久に投じ続け、株価を上げ続けることはできないことだ。」こう書いてありまして、なかなか的確な、わかりやすい論評だと私は思うんです。
 麻生大臣、この事態をどのように受けとめていますか。
○麻生財務・金融担当大臣 けさ、東証があけた途端に500円上がりましたので、書いた人は、しまったなと思ったと思いますけれども。
 株というのはそういうものだと思っています。上がったり下がったりするのが当たり前だと思っていますので、基本的には。また、その後、午後下がって、今また1万4200円まで戻ってきている。きょう午前中でばんと上がって下がって、また上がったりしていますので、そういうものだというようなことを理解した上でなさらぬといかぬところなんだと思います。
 少なくとも、今の話で、気分をさせておると。先生、気分がならなきゃ景気はよくなることはありませんから。やはり、気分をその気にさせるというのはすごく大事なことです。
○佐々木(憲)委員 今の時点で、株価がまた下がり始めているようでございます。
 気分だけで問題が解決するかというと、そうではなくて、やはり実体経済がどうなるか、これが大事だと思うんですね。この乱高下のもとで、億単位でぼろもうけをしている投資家もいれば、他方で、日々の生活に苦しんでいる国民がおります。ツイッターでもこんな話が出ておりまして、余り景気がいいと言うからついつい買い物をし過ぎた、けれども、給料がふえていないから来月はその分緊縮だ。これが実際の庶民の実感、生活実態でございます。
 そこで、今の経済動向を判断する前提として、日銀に数字だけを確認しておきたいんですが、現時点で、国債を保有しているのは誰なのかという点です。国債の主な保有主体とその保有残高、構成を示していただきたいと思います。
○山岡参考人(日本銀行金融市場局長) お答え申し上げます。
 2012年12月末時点での長期国債の残高は785兆円でございます。その中で、保有主体別に残高及び構成比を見ますと、主なところでは、一番多いのが銀行などでございまして、こちらの保有残高が300・2兆円、構成比でいきますと38・2%でございます。また次に保険、こちらの保有残高は181・2兆円で、構成比は23・1%。その次に多いのが日本銀行でございまして、日本銀行の保有残高が、12年末時点ですと90・9兆円で、構成比は11・6%でございます。
○佐々木(憲)委員 銀行が圧倒的に多くて、これはもう4割近いわけであります。保険と合わせますと、国債全体の約6割、61・3%を占めております。家計はわずか3%だと思うんですね。
 では、そのうち、国債を大量に売っているのはどこか、売り越しの多い業態を明らかにしていただきたいと思います。
○山岡参考人 お答え申し上げます。
 日本証券業協会というところから公表されております国債投資家別売買高で見ますと、直近の4月では、主体別に見て、長期国債の売り越し額が最も大きいのは都市銀行となっておりまして、その売り越し額は2・7兆円でございます。
○佐々木(憲)委員 一番大量に国債を保有している銀行が一番売り越しが多い。これが今の実態なわけでございます。
 先日、参考人質疑を行いましたが、全銀協の会長はこのことには触れなかったんです。私は聞いたんですけれども。何を言ったかというと、国債は年金基金が売っているんだ、こういうふうにお答えになったんですが、これは実態とも違いますし、責任逃れではないかなと私は思うわけであります。
 では、次に、この間、株価を押し上げてきた主体は一体何だったのか。
 昨年の秋ごろから外国人投資家による日本株の投機的な買いが急増したわけですが、取引主体別に見て、買い越しが一番多かったのは海外投資家ではないかと思いますが、大臣、どのように見ていますか。
○麻生財務・金融担当大臣 詳しい端数をお聞きになりたければ役人に聞いていただいた方がいいと思いますが、基本的には、短期で回している分に関しましては圧倒的に外国人が多かった、私の感触でもそうなります。
○佐々木(憲)委員 これは、短期だけじゃなくて、全体を含めて外国人投資家が一番多いんです。この間、ヘッジファンドなどの投機的な活動がかなり活発になりまして、株高だけが先行したわけです。
 今回も、下落の引き金を引いた主体、売り浴びせを行った主体は海外投資家が一番多いということでありまして、先ほど、13時45分現在で、468円のマイナスで、1万4015円ということなんです。非常に投機的な状況が株の乱高下をもたらしておりまして、ヘッジファンドなどが非常に大きな影響を与えていると言わざるを得ません。
 逆に、国内の金融機関あるいは生損保、個人、これを見ますと、売り越しなんですよ。買っているんじゃないんです、売っているんですね。外国人の投機活動で株が急騰して、それを見て、今度は金融機関などが国債を売って株にシフトしていく。それが国債価格の下落や長期金利の上昇につながっている。これが4月末から昨日ぐらいまでの動きであります。
 その上で、日銀ルールを見直して、停止して、国債の大量買い取りを行うというようなことになりますと、これは国債に対する信用を弱める要因にもなる。やはり、実体経済の改善がないままに金融緩和が先行するというのは、これは非常に危険な状況を生み出すと私は思うわけです。制御不能に陥る危険性もある。
 大事なことは、やはり実体経済をどうするかということでありまして、最終需要をふやす、とりわけ家計消費、可処分所得、これを拡大するというのが内需拡大の中心課題であるというふうに思いますが、大臣はいかがでしょうか。
○麻生財務・金融担当大臣 これはもう前々から申し上げているとおりであって、第一、第二の矢に続いて第三の矢、そこがいわゆる可処分所得がふえることによってふえてくる個人消費の部分であってみたり、給与が上がることによってふえてくる消費増であったりということになります。
 そういったものに行くためには、実物経済、実体経済が成長しない限りは、そういったところに金が回っていかないということになろうと存じますので、基本的には、給料が上がっていく前の段階として、今、円安になったりしたことなどが、いわゆる予定外な話であったとは思いますけれども、かなり企業の収益にいい方向を与え、それがことしのボーナスに、トヨタでいけば五カ月プラスの30万か50万か、お隣の方に聞かれたらいいと思いますけれども、そういうのが出ていますから、我々の給料とは比較にならぬぐらい出ているなと思いましたよ。
 そういったことに出てきていることは確かだと思いますけれども、まだまだそれはボーナスの部分であって、ベア、いわゆるベースアップのところとは違いますので、まだまだ、実感として給与が上がってきたというところまではなかなか言っておられぬというのが地方における実態だ、私はそう思います。
○佐々木(憲)委員 ベースアップ全体としてはマイナス傾向でありまして、これは全体の消費を冷やす方向に動いておりますので、正確に見る必要があると思います。
 第三の矢で個人消費がふえるかどうか、これは非常に私は疑問に思っていまして、例えば雇用に対する規制、労働法制の規制緩和というような問題もありますので、毒を含んでいるのかいないのか、これをよく見きわめなければならないというふうに思います。
 さて、次に、法案に関連してですけれども、AIJの事案を踏まえまして、資産運用規制の見直しについてお聞きをしたいと思うんです。
 2011年の1月18日に、証券取引等監視委員会が、「公正な市場の確立に向けて 「市場の番人」としての今後の取組み」という文書を発表しております。ここには、証券監視委員会の使命として、「市場の公正性・透明性の確保」、「投資者の保護」、こういうものが書き込まれております。
 しかし、その実態はどうかといいますと、翌年に、リーディングカンパニーであります野村証券が絡む公募増資関係のインサイダー取引事件などが多発したわけであります。さらに、その野村証券のOBでもある浅川氏が経営するAIJ投資顧問による事件が摘発される。約2千億円もの厚生年金基金の委託資産が消失するという、大変重大な事態が起こったわけであります。
 証券監視委員会あるいは金融庁は、この野村証券の会社内で長期間常態化していたインサイダー取引を見つけることができなかった。1千億円以上もの損失を投資家に負わせる詐欺事件も、毎年のように発覚しているわけです。結果として、市場の公正性も投資家の保護も守れなかった。この事態について、麻生大臣はどう受けとめておられますか。
○麻生財務・金融担当大臣 これは、今、野村だけ名前を挙げられましたけれども、こういうような話は、これは間違いなく、証券会社側の倫理観、いわゆる経営者としてのモラルハザード、いろいろな表現があろうかと思いますけれども、そういったものの著しい欠落といったものがなせるわざなんであって、基本的に、いや、これはみんなやっていますといったって、みんなやっている違反なんで、それは交通違反と同じじゃないか、あいつがやって、何であっちが捕まらないで俺が捕まるんだと言っているのと似たような話ですから、それは、違反は違反で、違反として、きちっとその状況状況で対応をしていかなければいかぬところだと、私どもとしては、そういうことをしないと、まともにやっている人たちの納税意識が著しく損なわれるということになろうかと思います。
○佐々木(憲)委員 問題は、例えばAIJ問題を見ましても、虚偽の基準価格、運用利回りを報告して、いかにも順調であるかのような、そういう情報を顧客であります厚生年金基金に伝える、こういうやり方をして被害を拡大したわけです。4月に行政処分が行われたMRI事件では、顧客に対して、虚偽による勧誘、虚偽の事業報告書、こういうもので1300億円超の資金が集められて、ほとんどが行方不明になると。大変な規模であります。
 なぜそういうことが可能になったのか。なぜ見つけられなかったのか。
 先日、当委員会で島尻政務官は、限られた人的資源を的確かつ有効に活用しながら、情報収集能力、分析能力、リスク感度をより一層高め、再発防止を徹底してまいりたい、こういうふうな答弁をされました。
 情報収集の能力を高めたり分析能力を高めるというだけで解決するような問題なのか。
 例えばMRIのような業者は、第二種金融商品取引業者と言われていて、全国で1279社もあるわけですね。AIJのような投資顧問業者も、協会会員でも789社あります。これをどのように検査し、どのように的確な情報を把握するか、これは非常に大事なことでありますが、なかなかこれは対応できていないわけであります。
 昨年9月に、このAIJ事件を契機に見直し案がまとめられまして、昨年12月にガイドラインが改定されました。その措置によって検査監督の強化のための体制整備ということが行われたようですけれども、検査の頻度というのはどのぐらいふえたんでしょうか。
○岳野政府参考人(金融庁証券取引等監視委員会事務局長) 委員から今御質問のございました検査の頻度ということでございますが、AIJの事案を受けまして、厳しい財政事情の中ではございますけれども、私ども証券取引等監視委員会及び地方財務局の監視官部門の検査官の増員を25年度予算でお認めいただいております。こういった増員を糧といたしまして、私どもとしては、検査の頻度の向上に全力を挙げていきたいと思っている次第でございます。
○佐々木(憲)委員 大臣、定員が392人なんですね。情報件数は6362件寄せられているわけです。人員が足りないということが、どうしても、これだけ情報が多いと、優先度が出てきて、優先度の高いところから順番に手をつけていくということになっていって、なかなか全体が回らない。言うまでもなく、アメリカですとかイギリスの場合は、格段にこの検査の職員数は多いわけです。
 そういう点を考えますと、これは、能力を高めるとかそういう面も確かに必要です、必要ですけれども、やはり体制そのものが脆弱である、これを何とかしなきゃならぬ。これはやはり、大臣もこの前御答弁ありましたが、肝心の人間の絶対量が不足しているんだ、私らはそう思っております、こう言うんですけれども。ですから、この人員をふやす、これは内閣としてきちっと取り組むという姿勢が大事だと思いますが、いかがでしょうか。
○麻生財務・金融担当大臣 まず、先ほどの頻度の話でいくと、検査対象の業者数は、確かに、おっしゃるように第二種金融商品取引業者で1279。それが、この前まで六件とか14件とかいうのが24年度は20件になっていますので、その程度はふえたということでしょうけれども、言われてふえたので、これぐらいが精いっぱいだろうと思いますので、あとはまともに運用されていればそれで、この人数だと思うんですが。
 いずれにしても、人数の話に関しましては、アメリカではSECとかいろいろありますけれども、そういったようなものに比べましても、これは監督する立場の方としては、非常に高度な技術になってきてみたり海外取引になってみたりして、見えないところで、ファイバーだ、ネットだ何だでつながってくるところに監視をして入るだけの人数、技術、そういったようなものは残念ながらおくれているということは認めた上で対応しなきゃいかぬところだ、私どもはそう思っております。
○佐々木(憲)委員 確かに、今言われたように、技術も高度化して、しかもなかなか巧妙になり、海外の手段も使って虚偽報告をやる、こういう事例がふえているわけですから、やはり質の向上と同時に人員の確保、拡大、これはどうしても必要だということを最後に申し上げまして、終わりたいと思います。

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