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税制(庶民増税・徴税) (強権的徴税, 児童扶養手当・子ども手当)

2013年04月15日 第183回 通常国会 予算委員会第2分科会 【726】 - 質問

児童手当などの差し押さえ禁止徹底を

 2013年4月15日、佐々木憲昭議員は、予算委員会第2分科会で、地方税の滞納を理由にした児童手当差し押さえを取り消すとの判決を受けて、差し押さえ債権の処分禁止を地方自治体へ徹底するよう求めました。

 鳥取地裁は、3月29日、児童手当13万円が入金された直後に、個人事業税の滞納処分として鳥取県が銀行口座を差し押さえた事件(2008年)に対して、差し押さえ処分取り消しの判決を出しました。
 佐々木議員は、2009年にこの事件について質問をした際、与謝野馨財務大臣(当時)が、「児童手当は子どもの養育に使うという目的に達せられるべきだ」とのべ、児童手当を使えなくすることは禁止されると明言したことにふれ、「入金を狙い撃ちする差し押さえはするべきではない」と求めました。
 国税庁の岡南啓司徴収部長は「児童手当の振り込みを狙い撃ちに差し押さえて、使用できなくなる状況にすることは差し控えるべきであると考えている」と答弁。
 新藤義孝総務大臣は「与謝野大臣と同じような考え」と答えました。
 佐々木議員は、千葉県長生村では老齢年金が差し押さえられた滞納者が餓死し、大阪市では特別児童扶養手当まで差し押さえできると一括納付を求めていると指摘しました。
 そのうえで、差し押さえ禁止債権を狙い撃ちする滞納処分が各地で行われており、「法令上の規定が無効化してしまう。自治体の徴収部門に徹底すべきだ」と求めました。
 新藤大臣は「問題意識を共有している。全国の税務担当課長会議などで、滞納者の生活を窮迫させるときは執行を停止できると発言している」と答えました。

議事録

○佐々木(憲)分科員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 きょうは税の徴収方法についてお聞きをしたいと思います。
 国民健康保険料、税の収納率が年々悪化しておりまして、あるいは個人住民税の滞納残高も増加をしている、国民年金保険料の納付率の低下も起こっている、こういう状況であります。
 国民健康保険についていいますと、過去15年で、保険料の徴収率は、93%だったのが89%、それから国民年金保険料の納付率は、96年度に82・9%、これが2013年度には58・6%に低下しております。
 主な要因として、税や保険料の支払い額が大きくなった、それから景気の悪化による収入の減少、企業のリストラによる失業の増加、こういうことが納税、納付を困難にさせていると考えられます。つまり、払えなくなった方々がふえているのではないか。これが滞納問題の背後にあると思うんですが、総務大臣の認識をまずお伺いしたいと思います。
○新藤総務大臣 さまざまな要因があると思いますが、大きな要素として、今委員が取り上げられたこと、それも要素の中にあるのではないか、このように思います。
○佐々木(憲)分科員 経済的な事情で滞納が増加した背景を考えますと、徴収する場合、やはり親切な態度で相談に応ずるということ、それから納税者の個別具体的な実情を把握して、納税者の生活の維持または事業の継続に与える影響、こういうものを勘案して行わなければならないと思いますけれども、総務大臣、どのようにお考えでしょうか。
○新藤総務大臣 それはまさに行政として、また窓口である公務員が心がけなければいけないことだ、このように思います。
○佐々木(憲)分科員 ところが、実際には、被保険者、納税者の生活実態を考慮しない機械的な取り立てがあちこちで起こっているんです。
 例えば、三重県伊賀市で、子供の高校入学時に出る学資保険のお祝い金30万円が国民健康保険料を滞納したということで差し押さえられている、こういう事案が起こっております。
 母親である、仮にA子さんとしますと、そのA子さんは、10年ほど前に離婚したシングルマザーで、二人の子供を育てております。長男がことし4月から高校進学となり、制服など入学準備として学資保険を利用しようということで手続に行きましたら、離婚した前の夫の国民健康保険料が滞納していたということで差し押さえられていたということなんですね。
 びっくりして、この方は市役所に連絡をして、なぜ離婚した前の夫が滞納したという理由で自分が支払ってきた学資保険が差し押さえられなければならないのかというふうに聞いたそうです。しかし、まともに相手にしてもらえなかったというんですね。
 この人は、子供が生まれたときに将来のことを思って学資保険に入り、離婚してからも、ずっと生活費を切り詰めて、少ない収入から毎月1万円学資保険料を支払ってきたそうです。
 問題なのは、市役所が学資保険の原資が前の夫のものでないということを把握していたにもかかわらず、この学資保険の保険料がA子さんの銀行口座にあると知って引き落としているわけですね。重大なのは、保険契約者の名義が前の夫であるため、市役所は、滞納の事実や差し押さえの事実をA子さんに知らせていなかったということなんです。つまり、A子さんは、市役所が学資保険を差し押さえていたことすら知らずに保険料を支払い続けていたという可能性があります。
 このケースで一番大事な問題は、学資保険の帰属認定なんですね。学資保険の保険料がA子さんの収入から支払われていたということが明確であれば、学資保険のお祝い金は実質的にA子さんに帰属するわけです。学資保険がA子さんに帰属するものであるならば、市役所は差し押さえができないはずなんですね。
 そこで、国税庁にあらかじめ確認をしておきたいと思います。
 税の徴収判断についてですが、名義がどうあろうが、実際に支払っている者にその財産が帰属するというのは当然のことではないかと思うんです。徴収に当たって、それを、あらかじめそのことを調査するのは原則だと思いますが、いかがでしょうか。
○岡南政府参考人(国税庁徴収部長) 国税庁でございます。お答えいたします。
 国税徴収法では、督促状を発した日から10日間を経過しても督促した国税が完納されない場合などにおいて、徴収職員は、滞納者の国税につきその財産を差し押さえなければならないとされており、御指摘のとおり、対象者に帰属する財産が差し押さえの対象となります。
 そこで、国税当局でございますけれども、財産の差し押さえに当たっては、滞納者に帰属するものであることを調査、確認した上で、適切に対応することとしております。
○佐々木(憲)分科員 今お聞きのように、これが徴収の場合の大原則でありまして、国税も地方税も同じです。
 差し押さえのための財産調査において、あらかじめ差し押さえ対象債権の帰属認定を行う、これは当然なんです。仮に差し押さえ後に、滞納者、すなわちこの場合は離婚した前の夫に帰属しない財産であるということが判明すれば、これは差し押さえが解除されるということになると思います。これは原理的にそういうことになりますね。
○岡南政府参考人 国税の場合で申し上げますと、基本的に、個別のケースにつきまして、また、地方税の事案につきまして、私どもは答える立場にはないと思いますけれども、ただ、具体的な実務につきましては、先ほど申し上げましたとおりに、財産の差し押さえに当たっては、滞納者に帰属するものであることを調査、確認した上で対応することとしております。
○佐々木(憲)分科員 そもそも、滞納処分として差し押さえを行うときには、銀行などの預貯金を差し押さえるときに残高があれば何でも全て差し押さえていいというものではないんです。個別的、具体的な実情を踏まえて、その預金債権の差し押さえが適切かどうか、この判断が求められるわけであります。
 生活の困窮が認められ、学資保険のお祝い金差し押さえで高校進学の準備ができないという事態になると判断されれば、そもそも差し押さえ処分はしてはならないわけであります。
 A子さんは市役所にこう言ったそうなんです。子供が高校に行けないということになる、滞納者の子供は普通の生活すらできないということなのかと訴えたら、職員は、それは仕方がないですね、こう言われたというんですね。本当にこれは血も涙もない対応だと思うんですよ。総務大臣、この対応は適切だと思いますか。
○株丹政府参考人(総務省自治税務局長) 地方税につきましては、国税の滞納処分とひとしくといいましょうか、基本的に法律でそのように適切に対処されるものと考えてございますが、今、委員が御指摘されましたのは、国民保険料ということでございましょうか。国民保険料という御指摘であったようにお聞き取りをしたのでございますが、税でございましょうか、地方税ということでございましょうか。(佐々木(憲)分科員「地方税。この場合は、国民健康保険税」と呼ぶ)税でございますか。
 いずれにいたしましても、それぞれの地方団体で適切に法にのっとって処理されるべきものというふうに考えてございます。
○佐々木(憲)分科員 要するに、差し押さえ財産を確認して、本人のものであるということを確認しない限りは差し押さえてはならない、これは当たり前ですよ、誰が考えたって。
 これはやはりそういう原則でやらなきゃならぬと思いますけれども、総務大臣、どうですか。
○新藤総務大臣 まさに個別具体のケースなので、今お示しされた範囲でお答えするのはなかなか難しいというふうに思いますね。
 法の趣旨にのっとって、これは適切に執行されるべき事業でありますし、ましてや、今、お子さんのことや御家庭のことがかかっておりますから、重大なことだと思います。
 しかし、それは個別のケースとしてどのように取り扱うべきかは、これはまず自治体においてしっかりと取り組んでもらいたい、このように思いますし、現時点で我々がコメントをするほどのものは、まだ私が材料を持ち合わせておりませんので、感想としてそのように申し上げたいと思います。
○佐々木(憲)分科員 個別事案について判断を聞いているわけではなくて、考え方の原則を聞いているわけです。
 つまり、財産を差し押さえるという場合は、その財産が本人に帰属するかどうか、これを確認して差し押さえるのが当たり前で、国税当局もそういうふうにやっている、この原則は地方税の場合も同じです、こういうわけですから、そういうことでよろしいんですねという確認です。
○新藤総務大臣 それは法の精神はそのとおりでありますし、そのようにしっかりと運用してもらいたい、このように思います。
○佐々木(憲)分科員 地方自治体による滞納処分が余りにも乱暴だということで、私は今までも国会で取り上げてきたことが幾つかあります。
 例えば、その一つが、個人事業税等の滞納処分として、これは鳥取県の例ですけれども、児童手当13万円が入金された直後に銀行口座をばっと県当局が差し押さえたという事件なんですが、この事件では、納税者の方が鳥取県を訴えて、3月29日に鳥取地裁で判決がありました。その判決の内容を簡潔に説明していただけますか。
○株丹政府参考人 3月29日に、今委員御指摘がございました、鳥取地方裁判所で判決がございました。
 鳥取県から聞き取り等をいたしましたところでございますけれども、鳥取市に在住をいたします男性が、鳥取県、具体的には東部総合事務所長の名前でございますけれども、鳥取県が県税の滞納処分として執行いたしました預金債権の差し押さえ、それから取り立て処分、滞納県税への充当処分の無効確認または取り消しを求めた事案でございます。
 3月29日に鳥取地方裁判所が出しました内容でございますけれども、被告である鳥取県が原告の滞納に対して行いました13万73円の配当処分を取り消し、被告である鳥取県は原告である男性に対しまして同額を返還するよう命じたものというふうに承知をしてございます。
 なお、鳥取県は4月の12日に控訴をされたものと承知してございます。
○佐々木(憲)分科員 この問題は、私、2009年に財務金融委員会で質問をいたしました。当時、与謝野馨財務大臣は、児童手当は、子供の養育に使うという目的に達せられるべきものだということで、禁止されている権利の差し押さえは、受給者が差し押さえによって実際に児童手当を使用できなくするということも禁止するように解釈するのが正しい、こういうふうに明言をしているわけです。国税当局は血も涙もあるので、誤解してほしくない、こういうことまで言われたわけですね。
 現在の国税当局も同じ立場かどうか、確認しておきたいと思います。
○岡南政府参考人 お答えいたします。
 児童手当につきましては、法律上、その受給権は差し押さえが禁止されておりますけれども、児童手当が振り込まれた預金につきましては、差し押さえは禁止されておりません。
 もっとも、国税の滞納整理に当たりましては、滞納者個々の実情に即しまして、法令の規定に基づき適切に対応をしておりまして、財産の差し押さえに当たりましても、滞納処分に関する法令を一律、形式的に適用するのではなく、適切に判断することとしております。
 したがいまして、御指摘の件につきまして、国税当局としましては、例えば、残高のない預金口座への児童手当の振り込みを待って、これを狙い撃ち的に差し押さえて、具体的に支給されたものが実際に使用できなくなるような状況にすることは差し控えるべきであると考えておりまして、この考え方に変わりはございません。
○佐々木(憲)分科員 この点は大事なことなんです。
 今回の判決も同じ立場で出されていると私は思いますが、法律で差し押さえが禁止されている児童手当が預金口座に入金されると預金債権に転化するというふうに判断されますが、その銀行口座が児童手当の入金以外に長期間利用されていないこと、鳥取県税職員がその日に児童手当が振り込まれる可能性が高いことを認識していた、そういうことから、実質的に児童手当を差し押さえるということをやってはならないという判断を裁判所は下したわけです。
 判決文にはこう書かれておりまして、差し押さえ対象財産を選択するに当たって、実質的には、本件預金口座に振り込まれる本件児童手当を原資として租税の徴収をすることを意図し、その意図を実現したものと評価せざるを得ない。実質的には、差し押さえ禁止債権である児童手当受給権の差し押さえがあったのと同様の効果が生ずるものと評価するのが相当であると。
 児童手当が入金される日に、手当相当額しか残金のない銀行口座を差し押さえる、つまり、差し押さえ禁止債権の入金を狙い撃ちするような差し押さえ処分はすべきではないというのが財務大臣の見解でもあり、これは総務大臣の見解と同じだと思いますが、総務大臣に確認をしておきたいと思います。
○新藤総務大臣 まず、鳥取の事案については係争中であります。したがって、我々総務省は係争当事者ではありませんし、具体のコメントは差し控えたい、このように思うんです。
 そして、その上で、委員がかつて御質問された、また、与謝野金融大臣が当時、2009年に財金委員会で御答弁されたこと、それは、今、国税の方からありましたように、差し押さえ禁止債権としての属性の問題、それについて、法律上は差し押さえが禁じられていない、こういう法律の解釈がございます。これは私は同じ考えであります。
 また、一方で、滞納者の個別具体的な実情を踏まえ、滞納者の生活を著しく窮迫させるおそれがあるときなどは執行を判断しなくてはならない。地方公共団体が適切に行う必要がある、このようにおっしゃった与謝野大臣の考えについては、私も同じように考えております。
○佐々木(憲)分科員 簡単に言いますと、預金口座に十円ぐらいしかお金がないときに児童手当がぼんと入った、それを滞納処分だと言ってごっそり差し押さえてしまうのはやってはなりませんよというのが、総務大臣のお答えであり、また財務大臣のお答えでもあったということであります。
 つまり、今回の判決もそういう点では大変重要でございまして、本件差し押さえ処分を取り消さなければ、児童を養育する家庭の生活の安定、児童の健全育成及び資質の向上に資することを目的とする児童手当の趣旨に反する事態を解消できず、正義に反するものと言わざるを得ない、こういうふうに判決では言及しております。
 そういう点で、今回のこのやり方というのは大変乱暴でございまして、鳥取県の例ですけれども、この方は五人の子供を養育しているわけですね。そして、財産調査からは、収入が少なく、それ以外に適切な差し押さえ財産がないということを知っていた。児童手当を事実上狙い撃ちするようなこういう差し押さえは、受給権の差し押さえになる、こういうことはやってはならないということでございます。
 その差し押さえは違法ということで鳥取地裁では判断をされました。精神的苦痛をこうむったと慰謝料等も認めております。それは、差し押さえられた原告が五人の子供を持ち生活に困窮していた、それから、給食費や学費など子供の教育費に充てる予定であったにもかかわらず、児童手当が差し押さえられたためにできなかった、そのことが子供の生活の安定や育成に大きな影響を与えたからであります。
 差し押さえの結果、子供が栄養がとれなくなったり、修学旅行にも行けなくなったりということ、こういうことは決してやってはならないと私は思います。総務大臣、どういう感想をお持ちでしょうか。
○新藤国務大臣 まず、これは整理しなきゃいけないと思うんです。
 まず第一に、鳥取の事案については、今委員のお話を聞く中のことにつきましては同情すべき点がある、このように思います。しかし、私は、個別また詳細のことを全て承知しているわけではありません。そして何よりも、総務省は訴訟の当事者ではありませんから、その個別のケースについてのコメントというのは、これは私は言うべきではないし、できないということであります。
 一方で、与謝野大臣の発言は、国税を所管し、かつ課税徴収を執行する、そういう機関として、これは国務大臣、財務大臣の御発言であるというふうに理解しています。
 しかし一方で、地方税においては、これは課税徴収に当たる当局というのは地方公共団体になります。ですから、私どもとすれば、地方税法に基づいて適切な対応がされることを期待しておりますし、そういったことを見ているということであります。
 その上で、さらに、委員がおっしゃったようなことで確認をしなきゃならないんですけれども、差し押さえ禁止財産である児童手当が銀行口座に振り込まれた後においては、その性格は預金に転化するものであるので、法律上、差し押さえは禁じられていないものと解される、これは平成10年2月の最高裁の判例であります。一方で、地方税法は、先ほども申しましたが、滞納者の生活を著しく窮迫させるおそれがある場合は、滞納処分の執行を停止できることもあります。
 ですから、そういったもの、中には、生活困窮している者がいる一方で、これもケースでありますが、日々の生活資金が不足はしているものの、土地や自動車などの売却可能な資産を有しているような方もいらっしゃるというような例も聞いております。
 ですから、個々の滞納者の実態を踏まえて、まず地方公共団体、徴収団体、当事者として適切な措置をとられるように私としては期待をしたい、このように考えるわけであります。
○佐々木(憲)分科員 国税法も地方税法も、徴収の原理は同じでございます。徴収の主体が自治体なのか、それとも国であるか、こういう違いがあるだけなんですね。
 したがって、原理原則は同じなのでありまして、預金口座の中に、例えば100万円ある、そこに30万円振り込まれる、全体として130万円になった、そこを押さえるということについては、今回の判決でもそれは否定していないんです。問題は、今回の事案というのは、ほとんどお金がないところに30万円入った、その30万円を狙い撃ちして、全部差し押さえて、預金の残高をゼロにしてしまう、これはだめですよと。これは与謝野大臣もそういう発言をされて、そして、これは徴税の基本原則であるというふうに言っているわけです。
 ですから、今、総務大臣がおっしゃったのは、具体例については、それは判断しなきゃなりません。しかし、この基本原則というものは国も地方も同じなんです。この点は確認しておきたいと思うんです。
○新藤総務大臣 まさにそこからのことになりますと、今、地裁での判決が出た、それで高裁に控訴されたわけでありますね。ですから、そういった司法の場での今争いがあって、それはそれで、主張をされていらっしゃる方はきちんとした自分の思いを訴えていただけばいいと思いますし、これは司法の場で判断をされるものだ、このように思います。
○佐々木(憲)分科員 これは、総務大臣としては、自治体の側の肩を持ったと言うとちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、国の大臣として、与謝野大臣とまた違う見解をお持ちなんでしょうか。原理原則を私は確認したんですけれども、そこは違う、そういうことなんでしょうか。
○新藤総務大臣 先ほども申し上げましたが、与謝野大臣は、国税の担当をされている方としてのコメントであります。私たちは、この課税は地方公共団体に権限があるということでありまして、その差があるということを申し上げているのであります。ただ、精神として、適切な運用をなされること、これは大いに期待をしているところでございます。
○佐々木(憲)分科員 これは、あちこちの県税当局、地方税の当局のやり方は、地域によってまた随分違うんですね。
 私、びっくりしましたのは、千葉県の長生村というところがあります、ここでは、老齢年金の入金直後に差し押さえを二回実施されて滞納者が餓死したという事件があります。それから、大分県宇佐市では、子ども手当の入金日に一斉に差し押さえを実施しているわけですよ、どんと。大阪市では、国民健康保険の滞納相談に行ったら、特別児童扶養手当でも入金されれば差し押さえができるんだと、滞納額の半額を一括して納付するように迫られた、こういう訴えもあります。
 特別児童扶養手当というのは、精神または身体に障害を有する児童について手当を支給することにより、これらの児童の福祉の増進を図ることを目的にして、障害を有する児童の家庭に支給するものであります。当然、これは法律で差し押さえが禁止されている差し押さえ禁止財産ですね。差し押さえ禁止財産でも預金口座に振り込まれれば差し押さえができる、こういうことが現場に浸透しているということになると、これはちょっと問題が生じてくるわけであります。
 児童手当などの差し押さえ禁止の法令上の規定が実質的に無効になってしまうということになりますから、原理原則はこういうことなんですよという、そこをやはり総務省あるいは総務大臣としても地方自治体の当局に徹底することが非常に大事ではないかというふうに思いますので、大臣の見解をお伺いしておきたいと思います。
○新藤総務大臣 その点は、私は委員と問題意識を共有したいと思います。
 そして、我々も、そういったことで、全国の税務担当の課長会議ですとか、いろいろなレベルで幾つかの会議があります、その中で、きちんとそのことは発言を明確にしております。
 滞納者に対する厳正な対処をすべきであることと、あわせて、滞納処分をすることによって生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき、それはその執行を停止することができることとされており、各団体においてはその趣旨を踏まえて対応する必要がある。個別具体的な実情を十分に把握した上で、そうした点を踏まえ、税務当局において適切に判断していただきたい。これはきちんとした形でお伝えもしておりますし、我々の法律における立場と現場の実態とが合うように、これは徹底するように働きかけて、また心がけていきたい、このように思います。
○佐々木(憲)分科員 最後にそういうふうに決意をお聞かせいただきました。
 やはり、差し押さえによって相手が餓死するというような、そんなことはこの日本であってはならない。私は、本当にその事案を聞いてびっくりしました。年金しか生活の糧のないお年寄りに、それを差し押さえて、食べることもできず、電気も切られ、そんな状況に追い込んでいくようなやり方は絶対に許してはならないというふうに思うわけです。そういう意味で、きょうは基本原理をお聞きさせていただきました。
 どうもありがとうございました。

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