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税制(庶民増税・徴税) (強権的徴税, 児童扶養手当・子ども手当)

2009年04月17日 第171回 通常国会 財務金融委員会 【511】 - 質問

税滞納を理由に児童手当まで 横暴な差押えやめよ

 2009年4月17日、佐々木憲昭議員は、財務金融委員会で、地方税の滞納を理由に税務当局によって児童手当が差し押さえられた事例を取り上げ、「違法な差し押さえだ。ただちに調査し是正せよ」と求めました。与謝野馨財務大臣は、児童手当の差し押さえが違法との認識を示しました。

 佐々木議員が取り上げたのは、鳥取県で不動産業を営むAさん(病弱な妻と認知症の父親、子ども5人の8人家族)の事例。営業難になったAさんは、夜間警備員の収入月15万円で暮らしのすべてをまかなっています。
 08年6月、Aさんの銀行口座に振り込まれた児童手当(13万円)が、県税の滞納を理由に県税事務所によって差し押さえられ、入金後9分以内に預金残高73円を含む合計13万73円が引き出されました。

 佐々木議員は、児童手当法が「児童手当の支給を受ける権利は、差し押さえることができない」と定めていることを指摘。「差し押さえ禁止財産を法に反していきなり差し押さえるという重大な問題だ」と迫りました。
 佐々木議員はAさんが児童手当を給食費や教材費に充てようとしていたことを紹介。児童手当の差し押さえは、「児童の健全育成などに資する」とした児童手当法の趣旨にも反すると強調しました。

 与謝野大臣は「児童手当は、子どもの養育に使うという目的に達せられるべきものだ」と答弁。禁止されている「権利の差し押さえ」は、受給者が「(差し押さえによって)実際に児童手当を使用できなくすることも禁止するように解釈するのが正しい」と明言しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 委員長、これは定足数に達していないんじゃないですか。大幅に割り込んでいると思いますけれども。これではちょっと質問できないので、確認してください。
○田中委員長 速記をとめてください。
〔速記中止〕
○田中委員長 速記を起こしてください。
 佐々木憲昭君。
○佐々木(憲)委員 定額給付金に関連して質問したいと思います。
 この評価については我々は別な立場をとっておりますが、政府は、その目的として生活支援と景気対策と二つ挙げておられると思います。与謝野大臣は、当初から生活支援という面を強調されていたと思いますけれども、これは間違いありませんか。
○与謝野財務・金融担当大臣 当初は、福田内閣のもとで景気対策がつくられたときは、ガソリン高とか輸入穀物高とかという生活者対策という側面が非常に強かった。その中で定額減税という形で議論をされました。結論は出ませんでしたけれども、そのときは社会政策的な意味の方がむしろ強かった段階でございます。
○佐々木(憲)委員 給付の仕方は、一人一人を対象に計算をして、その家庭に給付する、こういうふうになっているようでありますが、便宜的に世帯主の預金口座に払い込む、こういうふうになっていると思います。
 そこで、ニッキンという専門紙が4月10日付で、皆さんにお配りしてありますが、「定額給付金が返済資金に」という見出しになっておりまして、こういうふうに報道しております。
 「金融機関で、定額給付金を巡って新たな懸念が広がっている。ローンの返済用口座が給付金の振込口座に指定された場合、延滞があると返済資金として自動引き落とし処理されるためだ。」「地方銀行のなかには「店頭対応Q&Aの策定を検討」や一部の信用金庫では「ホームページか店頭ポスターで顧客に注意喚起を検討」するなど、事前事後の説明態勢を整備する動きもある。」この記事の最後のところで、「「顧客が騒ぐような事態になればイメージダウン」は避けられないだけに、説明態勢を整備する必要がありそうだ。」こういうふうに報道しております。
 こういう事態は、大臣自身想定されておられましたでしょうか。
○与謝野財務・金融担当大臣 銀行に振り込むということまでは知っておりましたけれども、そういう細かいことが起きるということは想定しておりませんでした。
○佐々木(憲)委員 混乱というかトラブルの発生に対して、何らかの対応というのが必要だろうと私は思っております。
 資料の2ページを見ていただきたいんですが、これは総務省の定額給付金室が1月27日につくった「定額給付金給付事業Q&A(その2)」に書かれているものであります。ここに書かれているのは、「問26 市町村民税を滞納している者について、その者に対して給付される定額給付金を市町村が差し押さえることは可能か。」つまり、税金を滞納している家庭に、世帯主に対して定額給付金が入った、その定額給付金を差し押さえる、これが可能かどうかというQアンドAです。
 答えとして、「定額給付金は、景気後退下での生活者の不安にきめ細かく対処するため、家計への緊急支援を行うことをその第一の趣旨として実施するものであり、給付主体である市町村が当該給付金そのものを差し押さえることは、その趣旨には合致しないものと考えている。」このように書かれております。
 総務省に確認したいんですが、これはこのとおりでよろしいですか。
○佐藤政府参考人(総務省大臣官房審議官) 今御紹介のありましたことに関しましては、私どもの担当部局から1月27日付で地方団体に発出しましたQアンドAにお示ししているものでございまして、そのとおりでございます。
○佐々木(憲)委員 この考え方、精神は、国税の場合も同じだと思いますけれども、与謝野大臣、これは当然、国税もこういう考え方で対応するということでよろしいですね。
○与謝野財務・金融担当大臣 まず、やかましい法律論の方から申し上げますと、定額給付金は法律上、差し押さえ禁止財産とはされていない。したがいまして、法律論としては、受給者が国税を滞納している場合には、国税滞納処分による差し押さえの対象となり得る。
 その上で、実際に差し押さえるかどうかについて一般論としてお答えすれば、仮に定額給付金の受給者が国税を滞納している場合であっても、直ちに差し押さえをするわけではなく、滞納者個々の実情に即しつつ、法令等に基づき適切に対応していくことになると承知をしております。
○佐々木(憲)委員 つまり、定額給付金は差し押さえ禁止財産として法律では規定されておらない、しかし、この総務省の指示のように、この目的はそれぞれの家計支援であるから、それを、入ったからといってぼっと、滞納しているから税金でもらいます、そういうことを原則的にやってはならない、そういう考え方でありまして、今大臣がおっしゃったのはそういう趣旨だろうというふうに思います。
 そこで、国税に確認しますけれども、出先、現場ですね、税務署に対してどのような指示、どういう徹底をされているのか、お聞かせいただきたい。
○伊藤政府参考人(国税庁徴収部長) 国税庁では従来から、滞納整理に当たっては、滞納者の個々の実情を十分把握した上で、その実情に即しつつ、法令等の規定に基づき適切に対応すること、また、滞納者の生活の維持または事業の継続に与える影響の少ない財産であることなどを勘案して差し押さえ財産を選択することにつきまして、あらゆる機会を通じて周知徹底を図っており、定額給付金につきましても同様に対応しているところでございます。
○佐々木(憲)委員 今回のこの給付金の差し押さえ問題については、具体的な指示は行っているんでしょうか、いないんでしょうか。私が聞いているところでは、原則、定額給付金の差し押さえは行わない方向で対応願いますという指示をされているんじゃないんですか。
○伊藤政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますが、定額給付金の差し押さえを含めまして、国税庁としては、滞納整理に当たって、滞納者の個々の実情に即しつつ、法令等の規定に基づき適切に対応することにつきまして周知徹底を図っておるところでございます。
○佐々木(憲)委員 具体的な対応について、総務省は先ほどのQアンドAで、これは基本的にはやってはいけませんよ、法律的には可能であるが、しかしこの趣旨からいって差し押さえの対象にしてはならない、こういう指示なんですね。国税庁の場合も基本的には、方向としてはそのとおりだということだと思います。
 ところが、実際に、定額給付金が銀行口座に振り込まれた途端に差し押さえに遭って、それが引き落とされてしまったという事例があるわけです。これは地方税です。
 例えば長崎県対馬市の場合、報道によりますと、対馬市は口座振り込みによる支給初日、これは3月30日だったんですが、30日だけで50人以上の滞納者の預金を差し押さえた。ばっといきなり差し押さえた。市税務課は、3月から5月というのは徴収強化月間で、支給開始日は預金残高がふえる日だ、通常業務の一環として行った、こう説明したというんですね。
 総務省は、QアンドAでああいうふうに書いていながら、50人以上の滞納者をいきなり口座に入った途端に差し押さえる、こういうことを推奨しているんですか。
○佐藤政府参考人 定額給付金の趣旨が、景気後退のもとでの生活者の不安にきめ細かく対処するために家計への支援を行うということがありましたものですから、法的には差し押さえが禁止されているわけではありませんが、市町村が給付金を差し押さえるということは、その趣旨から見て合致しないものというふうに我々は考えたわけでございます。そのことは、先ほど申しましたような形で市町村にお伝えし、理解を求め、お願いしてきたということだろうと思います。
 ただし、現に市町村が税務行政上必要な処分を行うということに関して、我々とすれば、それは望ましくない、定額給付金に関しては差し押さえというのは望ましくないということは申し上げておりますけれども、それ以上にそれをとめるというような手があるわけではないということでございます。
○佐々木(憲)委員 一般的には言っても、実際にそれぞれのところでやっているのは抑えられない。それは極めて無責任ですね。
 国税では定額給付金を差し押さえた例はありますか。
○伊藤政府参考人 国税庁といたしましては、国税局や税務署が実施する個々の滞納整理の内容につきましてはすべて把握しているわけではございませんが、現時点では定額給付金を差し押さえたとの事例があるとは聞いておりません。
○佐々木(憲)委員 鳩山総務大臣はこのことについて、4月1日に聞かれてこう言っているんです。定額給付金は生活支援と景気刺激が趣旨なので、差し押さえをやってほしくなかった、残念だ、こういうふうに述べているんです。与謝野大臣、どう思いますか。
○与謝野財務・金融担当大臣 税務行政は、税金を滞納している人に収入があった場合は、それを差し押さえるということをまず考えるのはやはり通常の考え方であると私は思っております。
 ただ、この場合、それが相当性があるのかどうかという問題は当然考えるわけでございまして、給付が実現した趣旨等は、税務行政そのものではありませんけれども、当然、税務執行上は少しは頭に入れて行動していると確信をしております。
○佐々木(憲)委員 相当性があるのかどうかといいますが、これは趣旨に反するんですよ。家計支援と言っているわけですから、家計の支援のために渡したのに税務署がぽんと持っていくというのは趣旨に反する。非常に与謝野大臣らしくない、歯切れの悪い答弁だと私は思いましたね。
○与謝野財務・金融担当大臣 差し押さえることの相当性があるかどうかというのは、佐々木先生が言われたことと同じことを言っているつもりでございます。
○佐々木(憲)委員 それで、法律上、差し押さえてはならないというものが決められています。これは差し押さえ禁止対象です。
 配付した資料の3ページを見ていただきたいんですが、児童手当法の第15条、「児童手当の支給を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。」児童扶養手当法第24条、「手当の支給を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。」このように規定されております。どういう理由でこれが設けられているのか、厚労省にお答えいただきたいと思います。
○北村政府参考人(厚生労働省大臣官房審議官) お答え申し上げます。
 児童手当などの支給を受ける権利の差し押さえ禁止規定の趣旨についてのお尋ねでございますけれども、これらの手当の支給を受ける権利、法律上の性格といたしましては、これはいわゆる一身専属的な権利でございます。したがいまして、受給権者の一身専属権の保護を図るために差し押さえ禁止規定が設けられているところでございます。
○佐々木(憲)委員 具体的な例を挙げたいと思うんです。
 これは鳥取県の話なんですけれども、今の答弁は、支給の対象の専属権の保護という話でございました。ところが、昨年の6月11日の事例ですけれども、不動産業者Aさんが銀行口座を持っておりました。その口座に児童手当が13万円振り込まれたわけです。ところが、鳥取県東部総合事務所に差し押さえられた。理由は、県税の事業税、自動車税の滞納24万があったからだ、こういうわけです。
 Aさんはどういう家庭かといいますと、保育園児から高校生まで五人の子供がいらっしゃるわけです。病弱で働けない妻、認知症のある父を抱えて八人家族、もう本当に生活は大変だと思います。事業の方が経営難に陥りまして、今では夜の警備の仕事をしていますけれども、収入は月15万円足らずです。一生懸命頑張ってこられたわけですね。
 この児童手当約13万円は、この家庭にとっては大変大きなお金であります。これは、小学校の給食費を滞納していたので、その分9万円と、それから高校の教材費滞納分が7万7千円あった、その一部に充てるということで約束をしていたわけです。まさに、法の言う「児童の健全な育成及び資質の向上」のために使おう、これは目的どおり使おうとしていたわけです。そのやさきにいきなり差し押さえられた。これは明らかに法の趣旨に違反する行為じゃありませんか。
○北村政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど申し上げました児童手当法の差し押さえ禁止規定でございます。これは、その支給を受ける権利の差し押さえを禁止しているものでございますけれども、支給されました口座の預金債権を差し押さえることまでを禁止しているわけではございません。そういうものを禁止していないものでございます。
 したがいまして、一たん支給された後の当該口座の預金債権の差し押さえにつきましては、私ども厚生労働省として判断することは困難でございまして、それぞれの税務当局においての御判断に基づいてなされているというふうに考えているものでございます。
○佐々木(憲)委員 これは全然だめですね。
 では総務省に聞きますけれども、これは、児童手当法に規定している、差し押さえてはならない禁止対象なんです。それを口座に入って直ちに差し押さえている。
 次の、最後のコピーを見ていただきたいんです。これはこの方の預金通帳です。御了解を得て配付をしております。
 この預金口座の2008年6月11日、そこを見ていただきたいんです。下線の部分、6月11日振り込み、「トツトリシジドウテアテ」、これは鳥取市から児童手当がここに入っている、13万円入ったと。その前の預金残高は幾らか、これは73円ですよ。したがって、残高が13万73円。それがその日、九分以内に引き出されたと言われております。「ケンゼイジムシヨ」、県税事務所が13万73円根こそぎ持っていってゼロですよ。
 こんなやり方は余りにもひどいんじゃないか。これはどこから見ても児童手当そのものを差し押さえているんです。明確な違反じゃないんですか。総務省、答えていただきたい。
○佐藤政府参考人 ただいまお答えがありましたように、差し押さえ禁止財産とされておりますのは児童手当の支給を受ける権利ということに法律上なっております。したがって、そういった児童手当などが一たん納税者の預金口座に入りました場合には、この性格がそのまま属性が承継されるというものではないと考えております。
 このことは、一般的に言いますと、預金口座にはそういった児童手当などの差し押さえの禁止されている債権に係る振り込み以外にも、さまざまな振り込みですとか預け入れというのも存在するものですから、そうなりますと、受給者の一般財産にそういうものが混入してしまっているということになりまして、そうしたことから、そのことについて差し押さえ禁止財産としては扱っていないものと考えております。
 なお、個別の事案について我々、知識があるわけではございませんが、実際、鳥取県においてこうした差し押さえをするに当たりましては、当然ながら滞納者の個別的な事情、具体的な事情というのを考慮した上でのことだろうと思っております。
○佐々木(憲)委員 これは何の考慮もされていないんだよ。
 いかにも何か合理的なことをやったかのように言いますけれども、一般財産に混入されている、つまり、ほかの預金もある、そこに児童手当が入った、お金に色がついていないのでどれがどれかわからない、だから差し押さえ可能なんだと。この財産はどうなんですか、この預金は。13万円は、丸々13万円しかないんですよ、前の残高が73円なんですから。児童手当をいきなり差し押さえたという事例じゃないですか。
 しかも、重大なのは、総務省のQアンドAをちょっともう一回見ていただきたいんだが、先ほどのところの下に何と書いてあるか。これは定額給付金の例ですけれども、「同じ団体の職員同士であっても、税の滞納者の情報を税務当局から給付金担当部局に伝えたり、逆に、ある者に対する定額給付金の給付の有無・時期等を給付金担当部局から他部局に伝えたりすることは、公務員の守秘義務や個人情報保護との関係が問題となる。」こういうことを書いているじゃないですか。
 これは明らかに、このAさんに児童手当13万円が入る、こういう情報が市から県の税務当局に伝わっている。入った途端に、九分以内に引き落とされているんですよ。明確に個人情報保護法あるいは守秘義務違反になるんじゃありませんか。これは調査して是正すべきだ。こんなやり方は絶対認められない。どうですか。
○佐藤政府参考人 我々は、このAさんの預金通帳という書類だけから判断することはなかなか難しいのでございますが、一般的に、滞納者の財産を差し押さえるに当たってはいろいろ現場の裁量というものがあるわけでございます。
 これは推測になりますが、Aさんの預金通帳だけを見てそういったことを判断するのは我々はちょっとできないのでございまして、この県税事務所におきましては、当然Aさんの生活の状況ですとかあるいは財産の状況ですとかということを調査した上で、これは法的に違法ではない、適切だという判断をした上でなされたのではないか、そういう推測をいたします。
○佐々木(憲)委員 そんなのは、あなたの勝手なでたらめな推測ですよ。まず調査をして是正する。調査ぐらいしなさいよ、どうなんですか。
○佐藤政府参考人 個別の事案でございますので、調査といいましても、鳥取県の税務当局にはまた守秘義務もあるわけでございまして、我々の調査が十分にできるとは考えられません。
 また、一つ一つの事案につきまして、それはまさに地方団体の税務当局の判断と責任においてなされているものでありますので、我々としては、そこに一つ一つ入っていくということまでも考えているということではないわけでございます。
○佐々木(憲)委員 そんなのじゃ全然だめだよ。税務当局に守秘義務があるからというのはどういうことですか、それは。指導的立場にあるのはあなた方じゃないですか。当然調査すべきだ。だめだ、そんな答弁は。
○田中委員長 ちょっと速記をとめてください。
〔速記中止〕
○田中委員長 速記を起こしてください。
 総務省佐藤大臣官房審議官。
○佐藤政府参考人 国会の委員会におきましてこのような問題提起がなされたということを鳥取県の税務当局に伝え、適切な執行に努められるよう注意喚起をいたしたいと思います。
○佐々木(憲)委員 一つわからないのは、受ける権利は差し押さえることはできないが、預金の中に入ってしまったら差し押さえの対象になるという、その論理がわからないんです。
 これは明確に、預金口座に入って、それしかないんですから、児童手当しか入っていないんですから、それを差し押さえたら児童手当を受ける権利の差し押さえになるんじゃありませんか。まず、その関係を説明していただきたいんです。
○佐藤政府参考人 法律上は「児童手当の支給を受ける権利」となっておりまして、実際支給がなされました場合には、この権利というのは消滅するんだろうと思います。実際に支給があれば、この権利は消滅するんだろうと思います。
 児童手当の支給を受ける権利というのは、税務当局が差し押さえします場合にはその支給をする者に対して通知をし、勝手な処分といいますか、そういったものをとめるという効果を持っております。一たん銀行に入りましたら、要するに鳥取市が支給をするということはなくなるわけですから、その場合には、差し押さえるのは金融機関に対して、その口座から勝手な処分をしないようにとめる、言うということになろうかと思います。
○佐々木(憲)委員 さっぱりわかりませんね、それは。児童手当が入る、それをその趣旨に基づいて、それに沿って利用するというのが権利の行使なんじゃないんですか。何で権利がなくなるんですか、入ったら。
 厚労省はどうですか。厚労省、説明してください。
○北村政府参考人 お答えを申し上げます。
 先ほど申し上げましたけれども、児童手当法の差し押さえ禁止規定、これは、支給を受ける権利の差し押さえを禁止しているものでございますけれども、支給された口座、そちらに一たん入りますと、その預金債権、こちらの方の預金債権を差し押さえる、そこまでは禁止されていない、そういう性格のものでございます。
○佐々木(憲)委員 その手当しか入っていない口座ですよ。その口座を差し押さえたら権利の侵害になるんじゃないんですか。全然、問題のすりかえですね。これは余りにもおかしいと思いますね。
 大臣、どうですか。児童手当が入りました、その預金口座には児童手当しかありません。それを差し押さえるということは児童手当を使う権利を侵害する、つまり、法律では児童手当を差し押さえてはならないとなっているわけですから、当然それはやってはならない、こうなるわけじゃないですか。それを差し押さえたら権利を侵害してしまう、法律に違反するということになるんじゃないですか。どういうふうに思いますか。
○与謝野財務・金融担当大臣 法律上の問題と法律の具体的な、どう適用するかという問題と二つあるんだろうと思います。
 法律論は、確かに今の総務省、厚労省の説明したとおりだと思うんですけれども、そもそも、児童関係の法律で差し押さえを禁止したことは、やはり児童手当とか児童福祉法で出すお金が具体的に子供たちの養育に使われるように、その目的が達成されることを主眼に置いた規定であって、権利の差し押さえはいけないけれども、具体的に支給されたものが実際使用できなくなるような状況にすることもまた禁止されているというふうに解釈することが正しいと私は思います。
○佐々木(憲)委員 要するに、児童手当が支給されたAさんは、滞納している給食代に払いたい、そのためにこれを使うということを予定していたわけですよ。児童手当が入ったら、給食代、滞納しているのを払いたいと。そのためにそれを使おうと思っていた。使おうと思っていたのに、差し押さえられたら使えなくなってしまうわけですね。本来の法律の趣旨と全く反するわけであります、そういう事態は。
 だから、大臣がおっしゃった、その目的のために使われるべきであるということと違う事態が起こっているわけですね。私は、これは非常に重要な問題で、今何か、預金口座に入ればそれはもう別なんだ、入ったら何でもやれるんだ、差し押さえ対象なんだ、こういう解釈自体が間違っているというふうに思います。
 本当に今、そういう事例があちこちで起こっておりまして、挙げたら切りがありませんけれども、高知の四万十市では、寝たきりの老人の収入に滞納処分をかけて差し押さえる、年金の入金口座を入金日の朝一番に差し押さえる、こういうことがやられておりまして、これは余りにも横暴だと思いますよ。今、景気後退の中で、どれだけ低所得者の方が生活が苦しい状態に追い込まれているか、そういうことを考えると、寝ている病人の布団をはぐようなやり方というのは本当に許せないと思います。
 基本的な姿勢として、最後に大臣の考え方を確認したいと思います。
○田中委員長 時間の関係がございますので、手短にお願いいたします。
○与謝野財務・金融担当大臣 国税当局はちゃんと血も涙もあるので、その辺は誤解していただきたくないと思うんです。
 例えば、国税徴収法第151条第2項に書いてありますことは、具体的には、滞納者について、納税に対する誠意があり換価の猶予が認められる場合において、差し押さえにより生活の維持が困難となるおそれがある財産の差し押さえを解除することができるとされている規定があるくらいでございますから、国税に関しては、そんな無慈悲なことをやっているわけではございません。
○佐々木(憲)委員 そういう、大臣が今お答えになったことに反することが具体的にあれば必ず是正していただくということ、それから総務省の、地方税の場合も基本的には同じだと閣僚の一員としておっしゃったんだろうというふうに理解をいたしまして、質問を終わります。

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