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財政(予算・公共事業), その他 (災害支援)

2011年07月20日 第177回 通常国会 財務金融委員会 【622】 - 質問

衆院で剰余金処理法案可決 東電救済策に反対

 2011年7月20日、第二次補正予算案の財源をつくるための剰余金処理法案が、衆院本会議で民主、自民、公明などの賛成多数で可決されました。日本共産党は反対しました。

 これに先立つ財務金融委員会で、佐々木憲昭議員は、第二次補正予算案に盛り込まれた「二重ローン対策」を取り上げ、金額が微々たるだけでなく運用次第では中小零細企業が切り捨てられる可能性があると指摘しました。
 第二次補正予算案では、二重ローン対策として774億円が計上されていますが、共同施設の復旧事業など直接関係のない項目が含まれており、厳密に二重ローン対策と言えるのは、3分の1の265億円にすぎません。
 金融庁の調査でも被災地で返済を一時停止したり条件変更をしている債務者が1万8009件、5564億円にのぼるが、このうち何割が救われるのかと質しました。
 自見庄三郎金融担当大臣は、この間の政府の対応を述べるだけで、質問には全く答えられませんでした。
 佐々木議員は、「再生可能性を判断する間の利子負担の軽減策」184億円について、「再生判断が困難、再生が困難と見なされる事業者も対象にされるのか」と聞きました。
 野田佳彦財務大臣は、「その通り」と答えました。
 佐々木議員は、剰余金法案について二重ローン対策も微々たるもので零細業者などすべての業者を救うものになっていないと指摘しました。
 また、第二次補正予算案の最大の問題は、東電救済のための原子力賠償支援機構に出資し、4兆円の交付国債と政府補償をつけることだと指摘。これは、国民負担につながるものでもあり到底認められないとのべ、その財源づくりのための剰余金法案に反対しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 提案された剰余金処理法案は、第二次補正予算案の財源をつくるための法案であり、補正予算案と一体のものであります。そこで、第二次補正予算案の中の二重ローン対策についてただしておきたいと思います。
 総額1兆9988億円、約2兆円、このうち二重ローン対策として計上されているのは幾らでしょうか。野田大臣は、意欲のある企業は可能な限り救いたいと答弁されましたが、これで十分というふうに考えておられるかどうか、確認をしたいと思います。
○野田財務大臣 今般の補正予算において、被災中小企業者の震災からの着実な復興のため、二重債務問題に適切に対応するための支援として、合計774億円を計上させていただいておりますし、佐々木委員がお示しをしていただいている資料に詳細書いてございますが、774億円です。
 これですべてかというと、先ほどもちょっと議論がございましたとおり、今、現時点で774億ですが、まだ検討すべき課題としてさまざまな課題が残っています。債権の買い取りの問題とかを含めまして、さまざまな議論がありますので、これはさらに三次補正等において必要な額は積み増しがされていくということになるかと思います。
○佐々木(憲)委員 私は、774億円というのは余りにも少ないんじゃないかと思うんです。
 しかも、一覧表で今お配りをしておりますが、その中に二重ローン対策と言えないものが入っておりまして、配付した資料の中の、例えば、この丸でいいますと上から五番目の被災地域産業地区再整備事業、それからその次の中小企業組合等共同施設等災害復旧事業、それから水産業共同利用施設の機器等の整備拡充、木質系震災廃棄物等の活用可能性調査。
 何でこれが二重ローン対策なのかよくわからないんですが、きょうは経産省の方に来ていただいておりますので、経産省にかかわる所管の部分について、なぜこれが二重ローン対策なのか、理由を説明していただきたいと思います。
○豊永政府参考人(中小企業庁次長) お答え申し上げます。
 今般の二次補正予算案につきましては、二重債務問題対策として、中小企業再生支援協議会のような予算に加えまして、今御指摘のございましたような、仮設工場、仮設店舗等の整備事業に215億円、中小企業等のグループ施設整備に100億円を計上させていただいてございます。
 仮設工場、仮設店舗につきましては、中小企業基盤機構が、原則無料で被災地の中小企業に、整備し、また貸し出すということにしております。これによって事業者の事業の早期再開を支援するものでございます。また、中小企業事業者のグループの施設整備等の事業は、震災で損害を受けた事業者に対しまして、その復旧に国と県で四分の三を助成するものであります。
 いずれも、新たな借り入れをできる限り行わずに、円滑に事業を再開できる環境の整備に資することを目的としておりまして、したがって、今回の二重債務問題対策として補正予算案に計上してございます。
 なお、このことは、6月17日に関係閣僚会合で定められました二重債務問題への対応方針において示されているところでございます。
○佐々木(憲)委員 中小企業対策としてこういうものが必要だというのは、私はわかるんです。
 ただ、二重ローン対策というふうになりますと、これは要するに復旧整備のための施策でありまして、新たな融資を受ける、それがなかなか難しい、過去の借金があるので、その借金をチャラにしてもらわないとゼロから出発というのはできないんだ、こういう被災者、被災地域の中小企業の課題に直接こたえるということに二重ローン対策というのは必要なわけであります。どうも、まあ間接だから、別に否定すべきではありませんけれども、余りにも何か二重ローン対策という枠にどんどんいろいろなものを入れちゃって、膨らませている感じがする。
 確かに、この項目の中には、中小企業再生支援協議会を核とした相談窓口の体制強化とか、基盤整備機構等が出資する新たな仕組みですとか、再生可能性を判断する間の利子負担の軽減等々、二重ローン対策に直接役立つと思われるものは、もちろん入っております。どうも、774億円というのは全体の中では非常に小さいんだけれども、小さい中にまたいろいろなものが入っていまして、本当に二重ローン対策になるのかな、こういう疑問を持ってしまうわけであります。
 この中で、直接二重ローン対策というふうに我々が考える部分を抜き出しますと、265億円ですね。上の四つと一番下、これが二重ローン対策と言えば言える。果たして、これでどの程度役立つのかということであります。
 次のページを見ていただきたいんですけれども、次の資料は、これは金融庁が調査をしたものでありまして、東日本大震災以降に約定返済停止等を行っている債務者数及び債権額というもので、被災三県の金融機関からのヒアリング結果であります。
 これを見ますと、返済を一時停止している、つまり返済ができないということでとまっているもの、それから返済の条件変更をしたもの、これを合わせますと、足し算をしますと、1万8009件、5564億円、こういう規模になるんですね。
 これは、まだ、全体の中では一部だと思います。必死になって支払っている方は、このほかにもたくさんいらっしゃるわけであります。もう限界だという方がいるわけです。
 今回のこの二重ローン対策で、このうち、つまり、この1万8千件のうち、どの程度救われるのか、何割救われるのか、お答えをいただきたいと思うんです、金融担当大臣。
○自見金融担当大臣 佐々木議員にお答えをいたします。
 6月17日に決定されました政府の二重債務問題への対応方針においては、被災地、被災者の置かれた状況が千差万別でございます。非常に、個人でも、また、先生御存じのように中小企業、私も石巻に行かせていただきましたけれども、水産加工業を初め、たくさんの中小零細企業があるわけでございますから、そういった中で、千差万別の中でさまざまな施策を組み合わせる、いろいろな政策を組み合わせて、政府としても可能な限り対策を講じることにしているわけでございます。
 事業者を一例にとれば、今、中小企業庁からも答弁がございましたけれども、再生に向けた相談窓口の体制の強化、あるいは事業再生の可能性がある中小企業に対する出資や債権買い取りの支援、また、再生可能性を判断するまでの間の利子の負担の軽減といった幅広い施策を組み合わせた支援を行うこととしており、二次補正予算では、そのために必要な経費を手当てしているところでございます。
 また、先般この国会でも全党一致で可決していただきました金融機能強化法、これは、金融庁といたしましても、地域における金融機能の確保、あるいは預金に対する万全な措置を図る目的として、成立させていただいたわけでございます。
 また、個人の債務者の債務が円滑に進むように、御存じのように、個人債務者の私的整理に関するガイドラインの策定をやらせていただいたところでございまして、いろいろ申し上げましたけれども、いろいろな政策を組み合わせて、政府一丸となって被災者の生活支援、被災地の復旧復興に取り組んでいく必要性がある、こういうふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 自見大臣、質問に答えてくださいよ。
 今、金融庁の出したこの資料の中のどの程度が今回の補正予算で救えるのか、それを聞いているわけですよ。今説明したのは、私、全部知っているんです。聞かなくたってわかっているんです。ですから、質問に答えてください。つまり、今の答弁は結局、質問に対して答えられない、そういう答弁だったということになるわけです。
 ですから、いろいろ調査はやっているんだけれども、今回の対策でどこにどれだけ支援の手が行き届くのか、どの程度の方々が救えるのか、そのくらいの見通しも出さないで、予算を組みましたと。それでは全然だめだということであります。
 具体的にもうちょっと聞きますけれども、窓口の体制強化、現在の人員はどの程度で、何人ふやすつもりですか。
○豊永政府参考人 お尋ねがございました中小企業再生支援協議会の現在の体制についてお答えいたします。
 現在、同協議会では、中小企業の再生に係る相談、再生計画の策定などを支援するために、中小企業や事業再生の専門家を常駐させておりますけれども、おおむね各協議会五名程度ということになってございます。
 現状だけでよろしいでしょうか。
○佐々木(憲)委員 何人ふやすかという答えはありましたか。
○豊永政府参考人 続けます。
 今般の二次補正予算では、小規模事業者などの相談も含めて、多様な相談に、幅広くきめ細かく相談できるよう、また、債権買い取りなども新しい業務として追加し得るよう、その体制強化を目的として、30億円計上してございます。これによりまして、各協議会におきましてそれぞれ30名程度増員する、各30名ふやして、五名を35名程度にするということを想定してございます。
 ただ、具体的な体制につきましては、各県の事情を踏まえて詳細を詰めたいと思っております。
○佐々木(憲)委員 そこで、この二重ローン対策の中で一番多いと思われるのが、再生可能性を判断する間の利子負担の軽減、184億円であります。その対象になる中小企業はどの範囲でしょうか。
 配付した資料の三枚目を見ていただきたいんですけれども、与党の二重債務問題に対する対応スキーム、この中で、事業性ローン、これは上の方にあります、下には住宅ローンです。この事業性ローンのうち、「再生が可能」「判断が困難」「再生が困難」、この三つに分かれております。再生可能性を判断する間の利子負担というのは、この三つのうちのどの部分が対象になるんでしょうか。
○豊永政府参考人 お答え申し上げます。
 今の、お示しをいただきました資料をつまびらかに拝見しておりませんけれども、被災事業者がこの協議会に持ち込まれまして、再生可能性を判断するまでに一定の時間がかかるのは御指摘のとおりでございます。この間に旧債務が雪だるま式に増大し再生を阻害することを避けるという観点から、この間の利子補給を検討するということになったわけでございます。
 今、選択肢を幾つかお示しになられました。その選択肢のどれに当たるのであるかという一定の結論を得るまでの期間の金利負担ということでございます。恐らく、過去の経験則でいいますと、数カ月かかるのではないかと思っておりますけれども、この間の金利負担だと承知してございます。いずれにしましても、一定の結論が出るまでと承知しております。
○佐々木(憲)委員 結論は、「再生が困難」というのはもう既に出ちゃう、最初の窓口の段階で出るということになります。これも対象になるということですか。
○豊永政府参考人 お答え申し上げます。
 今の御指摘に該当し得た案件も含めまして、再生支援協議会に持ち込まれる可能性は高いと思っております。したがいまして、その再生が可能であるかそうでないかを見きわめることも含めまして、再生支援協議会で総合的な相談事業を行うということを想定してございます。
○佐々木(憲)委員 再生支援協議会というのは、この上の方にあります「再生が可能」と見られた中小企業を対象として行うものであります。ですから、「判断が困難」の中の、上に行く部分と、それから下に行く部分が、これは二つに分かれますね。結局、再生支援協議会で相談をされている間ということになりますと、再生が可能であるというものしか対象にならないんじゃありませんか。
○豊永政府参考人 持ち込まれた案件につきまして、再生が可能であるかどうかをどこかの段階で判断する組織が必要になります。
 私どもは、この再生支援協議会が幅広く相談を受けて、この中で、再生可能性があると判断したものにつきましては、別途御説明する機会があろうかと思いますけれども、新しい機構、県ごとに置きます産業再生機構のようなものでございますけれども、そうした機構に債権の買い取りが移行するわけでございます。その間の検討を協議会で行う。
 その中には、おっしゃったように、再生可能と判断されるものもありますし、残念ながらそうでないものもあろうかと思っております。その意味では、両方を含み得るのではないかと考えてございます。
○佐々木(憲)委員 そうしますと、「再生が可能」だけではなく、「判断が困難」それから「再生が困難」というふうに思われる対象、これはすべて利子補給が可能となる、こういうふうに理解してよろしいですね、財務大臣。
○野田財務大臣 そういう理解でよろしいかと思います。
○佐々木(憲)委員 債権買い取り機構というのは、この中小企業再生ファンド等、これの衣がえということでよろしいんでしょうか。
○豊永政府参考人 お答え申し上げます。
 新しい機構といいますのは、中小企業基盤機構と地域金融機関が出資するものでございまして、例えば、先ほど申し上げましたように、何々県産業復興機構のような名称のものを想定してございます。
 お尋ねの、従来の中小企業再生ファンドのお話がございました。これにつきましては、御指摘のとおり、従来は厳密な再生計画を求められる、また、結果として比較的規模の大きな中小企業を対象にしてまいりました。したがいまして、今回の震災による被災中小企業の救済には十分ではないのではないかという御指摘もございます。
 したがいまして、今般の対策におきましては、この対象範囲を抜本的に拡大するために、小規模企業者も含めた幅広い事業者を対象とする、また、中小企業基盤機構の出資割合を、従来5割を8割に引き上げるといったような形で、被災事業者支援のための、実質的に的確に対応し得る、より強固な実施体制を構築するというふうに考えてございます。
○佐々木(憲)委員 もう時間がありませんので終わりますが、提案されているこの剰余金処理法案は第二次補正予算案と一体のものと我々は考えております。
 この第二次補正予算案には非常に重大な問題点が含まれておりまして、二重ローン対策というのは極めて微々たるものであり、かつ、零細なところは切り捨てられる可能性が十分にあると私は思っておりまして、これは不十分だと思っています。
 それから、最大の問題は、原子力損害賠償支援機構法、これに基づいて予算を計上しているという点でありまして、これは事実上、東京電力の救済スキームというべきものであります。出資金などを計上したり、交付国債発行限度額2兆円、政府保証枠2兆円を設定している。
 これはもう、ともかく東電を生かして、そして、幾らでも資金援助を政府はやるんだ、その負担は公的資金、つまり財政負担、それから電力料金の値上げという形ではね返る、そういう予算になっているという点で、我々は予算に反対でありますので、ワンセットのこの剰余金には反対であるという立場を表明しておきたいと思います。
 以上で終わります。

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