金融(銀行・保険・証券), その他 (災害支援)
2011年06月08日 第177回 通常国会 財務金融委員会 【613】 - 質問
金融機能強化法改正案 被災者の要望に応えよ
2011年6月8日、財務金融委員会は、金融機能強化法改正案を全会一致で可決しました。
この法案は、東日本大震災で被災した金融機関を支援するため、国(預金保険機構)が資本参加し、被災企業に対する債権放棄や新規融資を進めるのがねらいです。
佐々木憲昭議員は質疑で、被災者支援のために地方銀行や信金、信組に対する資本増強は求められているが、震災後も何千億円もの黒字を見込む大手銀行にはまったく必要ないと指摘しました。
自見庄三郎金融担当大臣は「震災の影響などを審査のうえ、個別的・具体的に判断する」とのべ、体力のある大手銀行は実際には対象にならないとの考えを示しました。
佐々木議員は「(資本増強で)体力はついたが、被災者に役立たないのでは意味がない」と指摘。国が資本参加した金融機関が、返済猶予や債権放棄、新規マネーの供給などを進めるよう求めました。
東祥三金融担当副大臣は「貸付条件変更、新規の信用供与などを金融機関が『経営強化計画』に記載することも考えられる。金融庁は同計画策定の過程で、復興に資する方策についてもよく議論する」と答えました。
佐々木議員は、この法案は「二重ローン解消のための一歩だ」と指摘。この問題の解決のためには、より大きな救済の枠組みを速やかに作る必要があると主張しました。自見大臣は「菅総理からも知恵を出すよう指示があった。政府全体の問題として大至急取り組む」と答えました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
きょうは、法案の内容に絞ってただしたいと思います。
質疑の前提として、金融機関の被災状況についてお聞きしたいと思います。
大手銀行、地銀、信金、信組、それぞれ違うと思いますけれども、業態ごとに被災の実態、特徴を説明していただきたいと思います。
○自見金融担当大臣 佐々木議員にお答えをいたします。
今次の震災の経営への影響については、現在、平成23年度の3月期決算の確定に向けて作業を進めている金融機関があるため、現時点では確たることは申し上げられません。
しかし、一般論として申し上げれば、被災の影響は、営業地域が全国に広がっている大手銀行においては限局的である一方、被災地を含む都道府県を中心とした営業地域としている地域銀行、また被災地を主な営業地域としている、今さっき申し上げましたように協同組織金融機関においては、相対的に影響が大きいというふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 被災地に密着した地銀ですとか信金、信組、この場合は被災の影響が非常に大きいということだと思うんです。したがって、資本増強の必要性、その要請というのは確かにあると思います。
しかし、体力があるメガバンクのような場合には違うと思うんですね。例えば大手銀行4グループのことし3月期決算によりますと、4グループとも増益であります。例えば来年の予想を見ますと、三井住友フィナンシャルグループは4千億円の黒字、りそなホールディングスは1500億円の黒字を想定しているわけです。
そこで、こういう体力のある大手銀行が手を挙げて資本参加を求めるということは今回の法案では想定されているのかどうか、これを確認したいと思います。
○自見金融担当大臣 佐々木議員にお答えをいたします。
震災特例の対象となる金融機関は、「東日本大震災の影響により自己資本の充実を図ることが主として業務を行っている地域における円滑な信用供与を実施するために必要となったもの」と定められておりますので、法文上、大手銀行が除外されるわけではございません。
しかしながら、いずれにせよ、実際に申請があった場合には、震災の影響により当該大手銀行が地域における円滑な信用供与のために自己資本の充実が必要となっていると認められるかどうかについては、震災の影響等の審査の上、個別的、具体的に判断することになるというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 震災の影響で、自己資本の増強が必要となるほどの影響を受けているということは相当なものでありまして、先ほど言ったように、大手銀行の場合は、全国に展開して、また予想も何千億円という黒字が、震災後も、来年の3月期決算で予想されている、そういうわけですから、これはほとんど現実的には対象にならないというふうに私は思っておりまして、今も大体そういう確認がされたと思います。
そこで、資本参加を求めるという金融機関、大変影響があった金融機関でありますが、経営強化計画を提出するということになるわけですが、今度の法案では、この記載事項の中に、これまで必要とされておりました収益性及び効率向上の目標、これは不要とするということになっていますね。まず、その理由を説明していただきたい。
○東金融担当副大臣 もう何人の委員からも御指摘があることでありますが、まず、今回の大震災をどういうふうにとらえるかという、そこに帰着するんだと思います。平時なのか非常事態なのか。非常事態だと。
したがって、一般論で申し上げれば、今まで経営強化計画をつくるに際して、平時の場合、これはそれなりにきちんとやっていかなくちゃいけない。しかし、非常事態でありますから、また、言うまでもなく、今回の大震災を通してありとあらゆるいろいろな大影響を種々こうむっている、そういう状況の中で、その影響に対してきちんとこたえられる、そういうためには、経営計画の中で盛られている記載事項についてもそれなりに柔軟化が必要なんじゃないのかと。
こういう視点から、今御指摘の収益性等について、収益性は見込みだけは書くようにというふうに言っているわけでありますが、それをそのまま今回使うということに関してはいかがなものなのか、こういう視点で、取り払っているということでございます。
○佐々木(憲)委員 確かに今回は、通常の経営をやっていて、通常の状態のまま経営計画を出すという場合と全く違うわけでありまして、経営の責任に属さない、簡単に言いますと外側からだ、そういう事態に直面をして非常に大きな影響を受けるという状況ですから、当然、経営責任を問うとか、利益が上がらなければ資本参加しないとか、そういう条件をつけないというのは理解できるところであります。
次に、省令で、震災からの復興に資する方策を提出させるということになっておりますが、その方策というのはどのような内容を求めているのか、方策の適否、適当なのかどうかというものを判断する基準というものはどういうものなのか、説明をしていただきたいと思います。
○東金融担当副大臣 今回資本参加を受けようとする金融機関というのは、申請に際して、中小企業に対する信用供与の円滑化等地域経済の活性化に資する方策、和田政務官が何度も説明させていただいておりますが、経営強化計画を策定することとなって、省令において、震災からの復興に資する方策を初めとする内容を求めることとしているわけであります。
その内容について、基本的には各金融機関がそれぞれの地域の実情等を踏まえて策定すべきものであって、特定の方策の記載を一律に、これが基準なんだということを定められるものではないと思います。
しかしながら、例えば、復興需要に対応するための信用供与あるいはまた被災した顧客の既往債務に係る貸し付け条件の変更等に係る取り組みといったことを記載することも考えられます。
また、法律上、今回のこの方策が、当該地域において中小規模の事業者に対する金融の円滑化が見込まれることその他、当該方策が当該地域における経済の活性化のために適切なものであることが資本参加の要件とされており、この要件に照らして、震災からの復興に資する方策の内容が、地域経済の活性化に資するものとして適切かどうか、精査することになると思います。
○佐々木(憲)委員 今説明がありましたように、肝心なことは、国の資本参加によって資本を増強した金融機関が真に債務者のために役に立つかどうか、そこにあるわけであります。だから、体力はついたけれども被災者のためにならないというのでは、これは全く意味がないわけであります。
確認ですけれども、被災者に対するメニューとして、債権放棄、返済猶予、新規マネーの供給、さまざまな手段があり得るということで理解してよろしいですね。
○東金融担当副大臣 メニューとしてはそういうことがあると思うんですが、繰り返しになりますけれども、震災からの復興に資する方策の内容について、これはもう佐々木委員御案内のとおり、地域によっていろいろ違いがあります。各金融機関が存在するその地域の諸情勢、また、地域の実情等を踏まえて策定すべきものなんだろうというふうに思います。その意味で、特定の方策の記載を一律に、これこれあります、これに基づいて云々ということはできないんじゃないのかというふうに思っております。
ただ、議員御指摘のような、被災した顧客の既往債務に係る貸し付け条件の変更等に係る取り組みだとか、あるいはまた新規信用供与等について記載することも当然考えられます。
いずれにせよ、金融庁としては、資本参加を受けようとする金融機関が経営強化計画を策定する過程においては、震災からの復興に資する方策についてもよく議論していきたいというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 一般的な計画を、つまり復興に資するための方策を金融機関が出すと、大体それでいいだろう、そういうふうになるとして、問題は、その金融機関が債務者に対してどういう対応をするか、個別具体的な対応が問われてくるわけであります。
どのような対応をするかについて最終的に決めるのは、これは金融機関の経営者の判断、こういうことになるわけでしょうね。その辺、確認をしたいと思います。
○自見金融担当大臣 佐々木議員にお答えいたします。
震災からの復興に資する方策の内容については、まさに震災やその復興の現場にある各金融機関の経営者、これはいろいろ産業構造の違いがございますから、広い地域でございますから、その金融機関の経営者が、それぞれの地域の被災状況や経済状況、復興のために努力している企業の実態などを、これは長いおつき合い、特に地域の信金、信組というのは、その辺は非常によく御存じでございますから、さまざまな実情を踏まえて、創意工夫の上で策定することが適当だと思っております。
国の資本参加に際しては、当該方策の適切性を当局が審査することになりますが、いずれにせよ、金融庁といたしましては、資本参加を受けようとする金融機関が経営強化計画を策定する過程においても、これは出してきた書類を、計画を、イエスかノーか、そういうことでなくて、これはぜひ、地域の金融機関に、資本参加に協力していただきたいと思います。
これはしかし、基本的には、金融機関の経営者がお決めになることでございますけれども、一たんお決めになられたら、金融機関が経営強化計画を策定する過程においても、まさに被災から復興に資する方法についてしっかり金融庁も相談に乗らせていただいて、しっかり我々も、お互いの共通の目線で議論をしていきたいというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 最終的には個別の判断は金融機関が行うと。
そうなりますと、債務者の要望にきちっとこたえることができているのかいないのかということが、金融機関が今度は問われるわけであります。
例えば、債務者が、私の場合は工場も建物も全部流されてしまった、もう債権放棄をしてもらいたい、あるいは20年、30年、返済猶予してもらいたい、こういうことを金融機関に要望する。金融機関の方は、いやいや、あなたの場合は能力があるんだから、10年で返してもらわないと困りますよと。こんなことで、実際には、現場の窓口では、何といいますか、やりとりが行われる。そうなると、なかなか問題が解決しないということが現場では起き得るわけです。
そうすると、例えば苦情が出た場合、あるいは要望がある場合、これに対して一体どういうふうにその被災者の立場に立ってこたえるかということが、銀行側が今度は問われる。その場合、従来だと、中小企業に対する金融円滑化法、これがあって、相談に応ずるようにと。断った場合には、その理由をはっきりさせなきゃならぬ、金融庁にその理由を届けなければならない、こういうふうになっていますね。しかし、今度の法律は、それがないわけです。
その辺は、一体どういうふうに要望、苦情に対応するのか、その点についてお聞きしたいと思います。
○和田内閣府大臣政務官 今、内容的には佐々木委員からも御指摘になったとおりでございまして、結論だけ申し上げますと、今御指摘いただいた中小企業金融円滑化法は、被災地域の方々に対しましてもあまねく適用される法律でございますので、この金融機能強化法の条文にはおっしゃるような趣旨は書き込まれておりませんが、この円滑化法の運用をしっかりとやることによって、先ほどの、拒絶した理由をしっかりとチェックし、さらに、苦情がある場合には、相談室を設けてそれに対応する体制をしっかり整えてまいりたいと思います。
○佐々木(憲)委員 それから、復興に資するという法律の趣旨に反した場合といいますか、本来信用供与をやるべき対象なのにやらない、方策として銀行が出しているのにそのとおりやらない、こういうことも起こり得るわけですね。そういう場合にどういう対応があるのか、あるいはペナルティーがあるのか、この点を説明していただきたい。
○和田内閣府大臣政務官 佐々木委員の論理的な御指摘という意味では理解いたしますが、まず、この金融機能強化法の運用につきましては、先ほどたしか山本委員の御質疑の中でも御指摘がありましたが、金融機関が債権を償却するのに役立てていただくということが本来の目的ではなく、債権償却や資金返済の猶予等を柔軟に行うことによって、最終的に、市中に資金がどんどん供与されて、地域経済が活性化されるということを目的にしております。
そのため、今御指摘の方策を各金融機関が創意工夫を凝らして書いていただきますが、その際にも、最終的に地域経済が活性化するのかどうかということを判断のメルクマールにしようと考えていますので、今のような法律の枠組みの中で考える限り、先ほどのような、方策に違反するような場合はあってはならぬことであり、ないように審査させていただくということがまず第一でございます。
そして、仮に万が一、そうした方策をきちんと実行せず、不十分な場合はあり得るかもわかりません、それはしっかりと別な意味でフォローさせていただきますが、全く方策と違ったことをやっているという金融機関に対しましては、金融庁として、自分たちの持っている法制上、監督権限がございますので、その監督権限の中でしっかりと是正指導してまいるということになろうかと思います。
○佐々木(憲)委員 信金、信組の場合は、預金保険機構の預金保険の枠組みの中でその負担が行われて対応できるようになっていると。
しかし、全金融機関を対象とする一般的特例という場合、その場合には政府保証によって借り入れを行って、その資金で資本参加する、こういう仕組みになっていますね。
この場合、最終的な損失が出たときに、その負担というものはどうなるのか、説明をしていただきたい。
○和田内閣府大臣政務官 時間もございませんので、簡単にお答えしたいと思います。
協同組織金融機関以外の一般的な機関についての特例の場合には、御指摘のように、その損失負担をするということになっておりませんので、参加資本の毀損を想定してはおりません。しかし、金融機能強化勘定全体として万が一損失が発生するような事態に至る場合には、それは最終的に予算措置、財政措置によって埋めるということになります。
○佐々木(憲)委員 次に、今回提案された法案というものは、被災地の債務者それから地域経済、その復興のために資するものであると。
しかし、簡単に言いますと、体力を増強する、そういう仕組みに限定されているわけでありますから、二重ローン問題の解消という点からいうと極めて限定的なものであって、二重ローン解消そのものに直結してこれが役立つという形にはまだなっていないというふうに私は思うわけです。
そこで最後に、大臣にお聞きしたいんですけれども、二重ローンの根本解決というのは、今回の法案、もちろんこれも一つのステップかもしれませんが、より大きな枠組みというものが必要だというふうに思うわけです。
現在、政府部内で調整中であり、各党の案も、我々も案は出していますけれども、それをいろいろな形で、協議中ということになっておりますけれども、今後速やかにこの仕組みをつくっていかなきゃならぬ、この点について大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○自見金融担当大臣 御指摘のとおり、二重ローン問題は大変重要な問題と認識しておりまして、この問題は、私は民間金融機関を所掌させていただいておりますが、民間金融機関の原資は基本的に個々人からお預かりした預貯金でございますから、そういった特徴がございますから、通常の民間機関だけによる対応だけではなかなか解決し得ない問題だと思っておりまして、幅広く検討する必要があると思っております。
先生も今おっしゃったように、先般、私もこの問題は何度も閣僚懇で発言をさせていただきまして、総理からも、内閣本府、金融庁、財務省、農林水産省、経済産業省、国土交通省に対しまして、しっかり知恵を出してやるようにという御指示があったところでございました。関係各大臣と合わせてスピーディーにやっていくことが大事でございますから、政府全体の問題として取り組んでまいりたいというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 以上で終わります。ありがとうございました。