2008年06月20日第169回通常国会【0】 - 答弁書

刀剣協会の不正疑惑　佐々木議員の指摘を政府が全面的に認める

　2008年6月11日、佐々木憲昭議員は、「財団法人日本美術刀剣保存協会（佐々淳行会長）執行部による刀剣審査等の不正疑惑に関する質問主意書」を提出。6月20日、政府の答弁書が送付されました。

　主意書のなかで佐々木議員は、文化庁が行った日本美術刀剣保存協会への実地検査の概要を求めるとともに、次の点をただしました。
　　①協会の現職常務理事や課長の指示による不正な審査受付
　　②架空の名義（幽霊会員）による審査申請の実態
　　③協会の内部規程に反する「非会員」からの申請
　　④現職常務理事による申請書・発表用ゲラ改ざん疑惑
　これらの点について、具体的事例をあげてただしていました。
　政府は、これらの指摘を全面的に認めました。

　佐々木議員は、さらに、今年2～3月の刀剣審査においても受付期間外の申請を不正に受け付けていた、審査手続きの途中で申請者名が変更されている、申請者が同一住所であるにもかかわらず異なる姓名が記載されている（幽霊会員の存在）、協会の回答に反し「非会員の全員が会員となっていない」など、新たな不正事実を明らかにしています。
　協会の刀剣審査で上級ランクに指定されれば一本数千万円相当に価格が跳ね上がることがあります。
　このことから、審査が特定の者の「判断」によらず、透明かつ公正であることがいっそう求められています。

　今回、政府も認めざるを得ないほどの不正行為が明らかになっただけに、公益法人としての協会のあり方が根本から問われています。
　「調査の結果を踏まえて適切に対応していきたい」（渡海文科相、2月28日予算委「答弁」）と言明していただけに、政府の厳正公正な対応が求められます。

議事録

平成２０年６月２０日受領
答弁第５２１号

　　内閣衆質１６９第５２１号
　　平成２０年６月２０日

内閣総理大臣　福田康夫
衆議院議長　河野洋平　殿

衆議院議員佐々木憲昭君提出財団法人日本美術刀剣保存協会に対する文化庁の実地検査ならびに「平成１３年問題」についての協会の「釈明」に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

衆議院議員佐々木憲昭君提出財団法人日本美術刀剣保存協会に対する文化庁の実地検査ならびに「平成１３年問題」についての協会の「釈明」に関する質問に対する答弁書

一について
　文化庁では、財団法人日本美術刀剣保存協会（以下「協会」という。）が行う刀剣及び刀装具の審査（以下「刀剣等審査」という。）の実態を把握するため、平成２０年２月２７日から４月２３日までの期間にわたる合計１２日間、協会に対する実地検査を行った。実地検査においては、刀剣等審査の実施状況、刀剣等審査の申請状況その他個別の刀剣等審査に係る事項等に関し、協会が保有する書類等を調査するとともに協会役員及び職員から説明を聴取した。

二の（一）の①について
　御指摘の件については、実地検査において、①平成１９年６月及び７月の刀剣等審査において、受付期間外の申請を受け付けていたこと、②同年６月の刀剣等審査における申請番号６３０番の申請及び同年７月の刀剣等審査における申請番号１１８２番から１１８９番までの申請については、いずれも受付期間外の申請であるにもかかわらず、申請が受け付けられており、それぞれ、申請書に御指摘の内容のメモが付されていたこと、③同年６月の刀剣等審査における申請番号６３２番の申請についても、受付期間外の申請であり、当該申請の申請者及び扱者が御指摘のとおりの者とされていたことがそれぞれ確認された。
　また、御指摘の事項以外に平成１９年１０月、平成２０年２月及び同年３月の刀剣等審査においても、受付期間外の申請を受け付けていたことが確認された。
　さらに、刀剣等審査の審査結果について協会の規程上必要とされている決裁を得ていない事例があること、刀剣等審査において申請の受付後から指定書の交付までの間に申請者名が変更されている事例があること、役職員が個人として預かった刀剣等を寄託手続によらずに収蔵庫に保管している事例があることが確認された。また、刀剣等審査の申請書等を点検すると、同一住所であるにもかかわらず異なる姓名が記載されている申請書等が複数組あること等も確認された。

二の（一）の②について
　御指摘の件については、平成１７年９月２６日付けの「小泉忠雄」名の刀剣等審査の申請書に記載された会員番号は存在しないことが確認された。協会によると、御指摘の「小泉忠雄」氏については、当該申請書が提出された平成１７年９月当時、非会員であったにもかかわらず、刀剣等審査の申請を受け付けたものであるが、平成２０年１月までに入会手続を完了したものであるとのことである。
　なお、当該申請書に記載された住所で示された地域が広範囲に及ぶことから、「小泉忠雄」氏が当該住所に居住しているか否かについては、確認できなかった。

二の（一）の③について
　非会員からの申請については、協会から文化庁に提出された平成２０年１月３１日付けの報告書によれば、平成１６年度及び平成１７年度の刀剣等審査における合格者であって、申請の際に非会員であったもの（以下「非会員合格者」という。）は合計４３名であり、全員が協会に入会したとされていたが、実地検査においては、非会員合格者の数が４３名より多いことが確認されており、非会員合格者の全員が会員となっていない可能性がある。

二の（二）について
　文化庁としては、平成２０年５月３０日付け文書により、受付期間外の申請を受け付けるなど協会で定めた規程等が遵守されていない実態について速やかに改善するとともに改善のため講じた措置を報告すること、これまでに協会から文化庁に提出された報告書の内容と異なる事実が見受けられたこと等について確認し、報告すること等を指導したところである。

二の（三）について
　御指摘の太刀については、実地検査において、協会役員から、平成１９年１０月２３日から２４日に開催された第５３回重要刀剣等審査の第二段階審査の結果、当該太刀の名称に「伝古吉井」を用いることとされ、当該結果について会長までの決裁を得た後、同年１１月６日に田野辺理事が当該太刀に関連する有力な文献の記述を新たに発見したため、協会内部の審査員とともに当該文献の記述を踏まえて当該太刀の審査結果を見直し、その結果、当該太刀の名称には「伝新田庄」を用いることとしたものである旨の説明を聴取した。
　文化庁としては、審査結果について会長の決裁を得た後に改めて会長の決裁を得ずに審査結果を変更したこと等については、協会が定める規程に反することから、今後は規程に則った手続をとるよう指導したところである。
　なお、協会の美術刀剣等審査規程は、平成１９年１０月１５日付けで改正され、審査会に審査委員長を置くこととされている。

三について
　文化庁としては、協会から文化庁に提出された平成１３年１１月７日付けの文書は、協会の職印が押印されていること等から、協会としての意思に基づくものであると理解しているが、当該文書の内容を協会内で周知させるべきところ、周知がなされていなかったことについては、協会から文化庁に提出された平成１９年３月３０日付けの文書により報告を受けているところである。
　いずれにしても、文化庁としては、協会においては、刀剣等審査の公正性及び透明性が確保されるために必要な対応をすべきであると考えている。

検索語	ANDOR
日付
国会	第回委員会

刀剣協会の不正疑惑 佐々木議員の指摘を政府が全面的に認める

刀剣協会の不正疑惑　佐々木議員の指摘を政府が全面的に認める