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その他 (刀剣協会の不正問題)

2007年03月27日 第166回 通常国会 文部科学委員会 【385】 - 質問

刀剣協会「等級審査」の不正…現職理事らが36件

 2007年3月27日、文部科学委員会で、佐々木憲昭議員は、日本刀剣等級審査を担っている「日本美術刀剣保存協会」(佐々淳行会長)が、不公正な協会運営・刀剣審査をおこなっていた問題で質問しました。
 刀剣協会の林専務理事など現職理事4人がかかわる違反件数が、2002年から06年の4年間で、36件にのぼることが分かりました。
 日本刀には4つの等級があり、等級があがるほど刀の価値が高くなります。
 そのため、文化庁は2001年に、インサイダーの疑惑を招かないよう「協会理事などの刀剣は審査に出さない」などの規制をおこなうよう協会に指導していました。
 佐々木議員が、3月1日に予算委員会の分科会で質問したときに判明したのは、2001年11月から2007年1月までの5年間で600件近い違反が明らかになっていました。
 今回、新たに、専務理事みずからが審査を申請しているなどの規制違反が、36件もあることが特定されました。
 審査の公正・透明性があらためて疑われる事態となっています。
 佐々木議員は、申請書を調査し、大手刀剣商による不正申請の疑いを指摘し、文部科学省の対応をただしました。
 これにたいし、伊吹文部科学大臣は「ご指摘はごもっともだ。28日に会長からよく話をきいたうえで、私どもとして措置をとらせていただく」と答えました。
 協会の内規では、4等級のうち「重要」刀剣、「特別重要」刀剣の申請は協会会員しかできないこととなっています。
 しかし、非会員からの申請は、2004年の「特別重要」刀剣の部だけでみても、22件の申請のうち15件を占めています。
 さらに、数人の氏名の違う人物が同じ会員番号を使って申請するなど、不自然な審査がありました。
 佐々木議員は「これは実体のない幽霊会員ではないか。刀剣商が架空の会員名を使って申請しているのではないか」と指摘しました。
 文化庁に対し、協会への実地検査を含む調査が必要です。
 佐々木議員は、日本美術刀剣保存協会会長の佐々淳行氏を、参考人として招致することを求めました。
 文部科学委員長は、「理事会で協議する」と答えました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 私は、3月1日に予算委員会第4分科会で、伊吹大臣に、公益法人に対する監督権限の問題について質問をいたしました。大臣は、民法で監督権限が定められているというふうに答えられたわけであります。
 それに該当する民法の条文は、67条の2項、「主務官庁は、法人に対し、監督上必要な命令をすることができる。」3項、「主務官庁は、職権で、いつでも法人の業務及び財産の状況を検査することができる。」71条、法人が「主務官庁の監督上の命令に違反し、その他公益を害すべき行為をした場合において、他の方法により監督の目的を達することができないときは、主務官庁は、その許可を取り消すことができる。」というふうになっていると思いますが、これに間違いありませんね。
○玉井政府参考人(文部科学省大臣官房長) お答えを申し上げます。
 今委員御指摘になられました、民法第67条第2項、第3項及び71条で、それぞれの公益法人の監督に関する主務官庁の権限を規定しているものでございまして、委員の御指摘のとおりでございます。
○佐々木(憲)委員 非常に強力な権限を持っているわけであります。
 そこで、取り上げたいのは、文部科学省の所管のもとにある公益法人日本美術刀剣保存協会、これが、刀剣、刀装具の審査に不正が見られた。役員、職員、その親族が申請できないにもかかわらず、不正に申請をしていた。そのため、文化庁は2001年に改善の指導をし、協会はそれに応ずると言っていたわけであります。
 ここに、2001年の10月29日付の、業務の改善措置結果報告についてという、内部の稟議書のコピーを私いただいておりますが、ここに、今常務理事で当時学芸部長の田野辺道宏さんの判こがはっきりと押してあるわけであります。ところが、にもかかわらず、不正が繰り返されております。
 昨年5月17日に文化庁は刀剣協会に対して指示を出したそうですが、その内容はどういうものだったでしょうか。
○高塩政府参考人(文化庁次長) お答え申し上げます。
 昨年の5月17日に日本刀剣協会の担当者を呼びまして事情を徴したところでございますけれども、その際には、平成13年のいわゆる業務改善の措置の報告にたがう事例があるかどうかの報告を求めたということでございます。
○佐々木(憲)委員 このときは、その要請の内容は、一部の役員と一部の業者の癒着があると投書及び電話があったそうであります、この癒着によって私物化され、信用が失墜されていると。文化庁として、放置できない、したがって早急に文書で回答されたい、回答文書は、林専務理事、後藤事務局長及び田野辺前学芸部長、それぞれ作成し、回答をお願いします、こういうことだったと思いますが、そういうことですね。
○高塩政府参考人 今先生御指摘のございました日本美術刀剣保存協会の3名の理事に対しまして、同協会の刀剣審査の透明性、公正性に疑義が生じていることに関しまして、事実関係を調査し、報告をするよう求めたところでございます。
○佐々木(憲)委員 私が紹介をしたとおりのことを求めたと。
 当時この刀剣協会の会長は橋本龍太郎元総理でございます。橋本さんは、昨年5月18日に開催された理事会・評議員会に出席をされております。そして、この文化庁からの指示内容について確認をし、その内部の文書に協会の中で判を押して決裁をされているわけです。その上で、この評議員会で、橋本さんは、それを実行するようにということで、筋の通った発言をし、それを確認されております。こういうことですね。
○高塩政府参考人 昨年5月18日に開催されました理事会におきまして、私どもはその理事会の議事録を入手いたしておりますけれども、橋本前会長におかれましては、文化庁の指導を守る旨の発言をしたというふうに承知いたしております。
○佐々木(憲)委員 橋本元総理は、このときは、3人それぞれ、一括して回答するんじゃなくて、一人一人の良心に従って回答するように、こういうふうな発言もされていると聞いております。
 その際、理事会・評議員会では、人事関係についてはこの案件処理の後のことである、こういうことも確認されたと承知しておりますが、間違いありませんね。
○高塩政府参考人 5月18日の議事録によれば、その前日私どもを訪れました当時の庶務課長が、文化庁の指導として、まずは文化庁の指導を守る、人事はその後からという発言をしておりますけれども、私どもといたしましては人事案件について言及したということはないというふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 最後の言葉がよくわからなかったんだけれども、人事案件について、どういうことなんですか。どう言いました。
○高塩政府参考人 私どもといたしましては、日本美術刀剣保存協会の人事につきましては、協会内部のことでございまして、私どもが介入することは適当ではないということから、人事について私どもの方から言ったことはないということでございます。
○佐々木(憲)委員 それはでたらめじゃないですか。「人事関係については、上記の案件処理後とする」、つまり案件の処理が先だ、人事は後だと、はっきりとあなた方はこの指示内容をそういう形で出しているじゃないですか。違いますか。
○高塩政府参考人 私どもの指導といたしましては、文化庁といたしましては、今先生から御指摘ございましたように、刀剣審査をめぐる事実関係につきまして、林専務理事、後藤事務局長から早急に文書で回答いただきたいということでございます。さらに、その上で、人事の件につきましては文化庁は介入できないわけでございますけれども、審査をめぐる疑惑の事実関係の解明を先に行ってほしいということは申し上げたところでございます。
○佐々木(憲)委員 だからそのことを聞いているんですよ。「人事関係については、上記の案件処理後とする」、人事については処理後であると明確にそういう指示をし、内部でもそのことが報告され、そして橋本元総理もそのことを確認し、判こを押し、そして組織的に評議員会で確認をされているわけです。文化庁が指示をしただけじゃないんです。まあ、指示はできないと言いますけれども、要請をした。それに対応して、はっきりとその方向でやりますということが内部の評議員会で確認をされているわけです。
 ところが、昨年の7月1日、橋本元総理がお亡くなりになりました。それ以後、事態が急変いたします。人事は行わないとされていたにもかかわらず、8月14日、突然緊急理事会が招集をされました。まあ、8月14日といいますとお盆ですよ、大体みんながお休みのときですけれども。当時、そのとき常務理事であった佐々淳行氏が突然会長となりました。後藤事務局長を即刻、当日解雇する、それから日高、野原両氏を契約が切れるまで自宅待機だ、こういう命令を出す。
 しかも、張り紙まで、こういうものが張られていた。これはコピーでありますが、後藤事務局長は本日をもって解雇となりました、日高庶務課長(管理課長兼務)、野原会計課長は1カ月の自宅待機の後解職となります、以上、事務連絡いたします、平成18年8月14日、財団法人日本美術刀剣保存協会会長佐々淳行。手書きのこういうもの、張り紙を入口に張ってある。これは、一般の人も博物館に行ったらこういうものが目に入るわけですよ。何が起こったんだろうと当然普通は思うわけでございます。驚くべき状況なんですね。
 しかも、9月1日、新しい人が突然事務局長だといってあらわれたそうでございますが、これは、人事関係は案件処理が終わってからだという文化庁の要請、あるいは橋本龍太郎会長のもとで行われた刀剣協会の側の確認を覆すものであります。
 伊吹大臣にお聞きしますけれども、こういうやり方は非常に私は異常だと思いますが、真っ当なものだと思いますか。
○伊吹文部科学大臣 先生と予算委員会の分科会でお話をした認識は私は変わっておりません。
 あす、今お話しの佐々会長が文化庁次長のところへ面談に来るようでございますので、よく話を聞かせまして、余りに非常識なことが起こっている場合は、一番最初におっしゃった民法の規定にのっとって適切に対処していただくようにお願いをしなければならないと思っておりますが。
 監督官庁という言葉はいかがかと思いますけれども、民間の公益法人との関係は、余り公権力を強制的に発動せずにうまくおさまっていくのが本来のあるべき姿だと私は思って、我慢に我慢を重ねてきているということでございます。
○佐々木(憲)委員 そろそろ堪忍袋の緒が切れるころだと思うんですね。このやり方というのは余りにも常軌を逸していると私は思います。
 それだけではありません。いたたまれなくなった職員がこういうビラも配布をしたそうなんです、お願いというものですね。これを見ますと、今文化庁の指導を無視すれば、刀剣協会は財団法人としての存続が難しくなり、数年後の公益法人の見直しを前に解散させられる危機的状況にあります。こう訴えて、協会は、刀にかかわるすべての人のためにあります、ある一部の人のためのものではありません、文化庁並びに故橋本会長が言明したように、文化庁指導の処分が終わらないうちに人事を優先することは断固反対いたします。こういうことで、庶務部一同ということで、こういうビラを出したんですね。
 ところが、これに対して、これはけしからぬということで、佐々淳行氏を初めとする関係者が懲罰委員会というものを開きまして、そして、だれが首謀者だということで庶務部の全員を一人一人つるし上げるみたいなことをやった。本当に私はびっくりしましたけれども。
 しかも、12月1日には、庶務課内で4名の不当な配転が行われております。1週間後に引き継ぎ、翌日即日席を移動せよ、こういうことでありましたので、職員は、もうこれは大変だというので、庶務課の5人が女性ユニオン東京という労働組合に加入したんです。そして、この不当なやり方に闘っているわけですね。
 これは、私、今の事態というのは非常に重大な事態で、文化庁の要請にもまともにこたえないばかりか開き直り、内部で、反対するあるいは常識的な行動をする者を排除するというようなことが行われているとすれば極めて重大でありまして、委員長にお願いしたい。佐々淳行氏をこの際、参考人として呼んでただすべきだと思いますが、理事会で諮っていただきたい。
○桝屋委員長 後刻理事会で協議をいたします。
○佐々木(憲)委員 次に、協会役員、職員、審査員などの内規違反の問題、これもたくさんあるんですよ。
 平成13年の文化庁指導を受けて、協会では、理事会で、役員は刀剣を申請できないと決めたはずです。ところが、現職理事が内規に反して申請をしている。これは前回、私も一部取り上げました。その後新たに判明したことを含めてただしたいんですけれども、ここに一枚のコピーがありますが、右の物件について審査を申請しますというふうに書いているんですね。平成16年3月16日、申請者氏名は林盈六と書いてあります。この林氏は専務理事の林盈六氏であることは間違いないと思いますが、いかがですか。
○高塩政府参考人 林盈六氏は現在も専務理事でございます。
○佐々木(憲)委員 専務理事はできないんです、こういうことは。それをやっている。
 もう一枚あります。平成16年9月30日、鯉沼昇。この人は、重要刀剣への申請でありますが、申請者は小林祥人となっているんです。この小林祥人という人は非会員、会員じゃないんです。それで、重要刀剣、特別重要刀剣への申請というのは会員でなければできないんです。鯉沼理事は非会員からの申請を扱っている。非会員からの申請を扱うのは違反じゃありませんか。
○高塩政府参考人 日本美術刀剣協会におきましては、重要、特別重要につきましては、会員からの申請のみを受け付けているというふうに承知しております。
○佐々木(憲)委員 私どもが調べたところによると、2002年4月から2006年4月までの4年の間に現職理事が違反したのは、林盈六氏9点、森政雄氏16点、小泉陽氏3点、鯉沼昇氏8点、これだけあるんですよ。
 さらに看過できない実態があります。我々が独自に調べたら、こういうことなんですね。本来会員しか申請できない重要、特別重要刀剣に、非会員ということで申請されている、非常に多いんです、これが。しかも、会員番号が同じなのに申請者の名前が次々と変わっている。
 例えば、平成17年、重要刀剣の部で、会員番号25010054、この方は、名前は明確にはここで言いませんが、あるときはNさん、あるときはIさん、あるときは、別の受付でNさんと、ころころ変わっているわけです。番号は同じなんですよ、会員の番号は。平成16年、特別重要の部で、同じ会員番号の方が、Kさん、Nさん、Nさんと名前を使い分けて申請しております。さらに不可解なのは、今紹介したこの番号のNさんが、平成15年の重要刀剣の部では26000859、全く別の番号で申請されているんです。
 これは何を意味するかということですが、Nさん、Iさん、Kさんなどと次々と名前が変わるというけれども、これは実体が伴わない、実際には幽霊会員である、あるいは非会員である。しかも、これらの申請者を扱っているのが、私が前回指摘した刀剣商の真玄堂、高橋歳夫氏であります。つまり、刀剣を扱う刀剣商が、みずからの名前あるいは親族の名前で申請することができない、あるいは目立ち過ぎる、何度もやると目立ち過ぎる、したがって架空の名前を使って申請したことが考えられると思います。
 こういう事実は当然把握しているはずでありますが、非会員からの申請が非常に多いわけです。平成16年、特別重要刀剣の22件の申請の中、非会員が15件、7割近いんですよ。やってはならないのが、何で7割もあるんですか。これは一部でありますが、こうした非会員の人たちは本当に実在するのかどうか、私は、これは徹底してこの内容を調査すべきだ。
 単に文化庁との関係だけではないんですよ。内部の審査のあり方が根本的にもうでたらめになっている。これは業者との癒着があり、その裏に金が動いているかもしれない、そういう状況なんですからね。これは明らかに、こういうものを放置しておくとすれば、文化庁や文科省そのものの、あるいは大臣の姿勢さえ問われかねないという事態であります。文化庁はぜひこれを調査し、そして違反者ははっきりと処分をするということで、根本的に出直すという指導をやるべきだと思います。
 大臣、いかがでしょうか。
○伊吹文部科学大臣 公権力の行使には否定的な日本共産党の先生から、特にしっかりやれということでございますので、拳々服膺して、あすの、会長が文化庁次長のところへどういうことを言ってくるかもよく踏まえて、先生が御心配になっていることはごもっともなことだと思いますので、よく話を聞いた上で私どもとして措置をとらせていただきたいと思います。
○佐々木(憲)委員 以上で終わります。

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