国会での活動
国会での活動 − 国会質問、金融(銀行・保険・証券)
【02.11.13】「金融再生プログラム」による公的資金投入策の不当性、地域金融機関の合併と地域経済への影響など質問
2002年11月13日、財務金融委員会で、預金保険法改正案、地域金融機関組織再編特別法などの審議が行われ、7日の本会議の代表質問に引き続いて佐々木憲昭議員も質問しました。
「金融再生プログラム」の2つの公的資金投入策=金融危機と関係なく平時の税金投入も検討
11月13日の財務金融委員会で、佐々木憲昭議員は、政府が10月30日に発表した「金融再生プログラム」に盛り込まれた大手行への公的資金投入問題について、竹中金融担当大臣に質問しました。
「金融再生プログラム」では、資産査定を厳格化などによって経営悪化した大手銀行にたいし、公的資金を投入する仕組みをつくっています。
そのひとつが、現行の預金保険法にある危機対応策を発動して、公的資金を投入する方法です。
現行の預金保険法では、「信用秩序の維持に極めて重大な支障が生ずるおそれがある」金融危機の場合に、公的資金の投入を認めています。これに対して、今回の「金融再生プログラム」では、「個別金融機関が経営難や資本不足もしくはそれに類似した状況に陥った場合に」、現行法に基づく試行的資金の投入を「即時適用する」としています。
佐々木議員は、現行法に比べて今回の「プログラム」が、公的資金を使うケースを幅広くとらえていることを問題にし、「経営難や資本不足、それに類似した状態で、現行法が適用できるのか」と、竹中大臣の認識をただしました。
竹中大臣は、「一律に、一概に、前もって申し上げることはできない。個々の判断をしていかなければならない」と述べ、明確な答弁を避けました。
これに対し佐々木議員は、預金保険法に危機対応の仕組みを導入した際の法案審議のなかで、政府が危機対応の発動を限定的なものだと説明していたことを指摘し、「現行法から逸脱している」と批判しました。
「金融再生プログラム」は、もうひとつの公的資金のルートを盛り込んでいます。「不良債権処理を終結させるため、迅速に公的資金を投入することを可能にする新たな制度の創設の必要性などについて検討し、必要な場合は法的措置を講ずる」というものです。
この新たな公的資金投入策について、佐々木議員は、「システム的な危機とは全然関係のない金融が安定している状態で、不良債権を処理するために税金を投入する、いわば平時の税金投入体制を検討するものか」と竹中大臣を追及しました。
竹中大臣は、「かねてより専門家の間で、危機の対応だけで十分かとの問題が提起されてきた。現行法の限定的な形だけで平成16年度までに不良債権問題を解決できるのかどうか、この点について、枠組みが必要かどうかということも含めて、検討をすすめたい」と佐々木議員の指摘を否定しませんでした。
佐々木議員は、「これまでの政府の説明では、公的資金を使うことは、システミックリスクの恐れのあるときのみに使えるということで限定されていた」と指摘。今回の新たな投入策について「これまでの枠を越えて、国民の税金をどんどん注ぎ込んでいこうと言うことがよくわかった」と述べました。
「不良債権処理で資金回る」は空論=新生銀行の実態を示し追及
次に、佐々木議員は、“不良債権処理をすれば必要なところに資金が回る”という小泉「構造改革」論に根拠がないことを明らかにしました。
「リスクとしての不良債権を取り除くこと」が「きちっとした企業にお金を回していけるようなシステム」をつくる手だてだとする竹中平蔵金融・経済財政担当相にたいし、佐々木議員は、不良債権を処理しても融資が大幅に減っている新生銀行の実態を示し追及しました。
新生銀行は、一時国有化した長銀を政府が巨額の税金を使って不良債権を処分し外資が買った銀行です。同行の2002年3月末の国内向け貸し出しは4兆8000億円で、新生銀行が発足した2000年3月末の7兆5000億円に比べ2兆7000億円も減少しています。
佐々木議員は、税金で不良債権を処理してもらっている新生銀行の貸し出しが大きく減っていることを踏まえて、不良債権があるから新しい貸し出しができないのではなく、リスクを取ろうとしない銀行の姿勢に問題があると指摘しました。
これに対し竹中大臣は、「(新生銀行は)新しいビジネスモデルを模索し移行している途上である」と答弁。貸し出しが減少する要因が不良債権ではなく「銀行の姿勢の問題」であることを認めました。同時に竹中大臣は、新生銀行の不良債権比率が20%と高い数字を示していることを強調しましたが、佐々木議員は、瑕疵担保特約によって旧長銀から新生銀行が引き継いだ債権が不良化すれば国に買い戻して貰えることを重ねて指摘し、新生銀行には不良債権に関し何の心配もないにもかかわらず、貸出を減らしていることを批判しました。
佐々木議員は「ビジネスモデルを理由に各銀行が不良債権を処理しても貸し出しを縮小することはある。やるべきは中小企業に資金が回るように銀行の行動を是正していくことだ」と強調しました。竹中大臣は「その限りでは、まったくその通り」と認めながら、「(佐々木氏と)違う点は銀行の姿勢を変えさせるためには不良債権を取り除くことだ」として不良債権処理の加速にあくまで固執する姿勢を示しました。
銀行の一方的な金利引き上げを是正せよ=“問題があれば必要な措置をとる”と金融庁が答弁
政府の不良債権処理のもとで、銀行による一方的な貸出金利の金利引き上げが横行しています。佐々木議員は、金融庁にたいし、優越的地位を利用した銀行の一方的な金利引き上げをただすよう求めました。
佐々木議員の質問にたいし、竹中金融担当大臣は、「貸し手という優越的な地位を利用するような形で、不当な取引の押しつけのようなことがあっては絶対にならない」と述べたうえで、「これは、公正取引委員会に窓口がある。一方で、我々は、貸し渋り貸し剥がしホットラインというものを設けて、これが地方の財務局でも稼働できるような体制に持っていったところ」だと述べました。
佐々木議員は、新設された「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」が、被害を受けた借り手から訴えを受け付けるだけなく、具体的に調査もし、銀行の側に非があると認められる場合には是正をさせるよう、金融庁としての指導を求めました。
答弁に立った五味金融庁監督局長は、「法令上問題がある、あるいは銀行経営の適切性という面から見て問題があるということであれば、報告徴求といった行政上の手続きを踏んだ上で、事実を確認し、必要な措置をとる」と明言しました。
地域金融機関の合併が地域経済にマイナスに
佐々木議員は、「地域金融機関組織再編特別措置法案」の質疑に立ち、地域金融機関の合併と地域経済への影響を質問しました。
この質問で、佐々木議員は、塩川財務大臣が、一律の基準で地域金融機関の合併を進める考え方を示していることを取り上げました。
塩川財務大臣は、政府経済財政諮問会議のなかで、信用金庫が預金8000億円、地方銀行で預金1兆円という基準を示し、地域金融機関の合併をすすめる必要性に言及しています。
しかし、金融庁のデータでも、塩川大臣の基準を上回っている金融機関は、全国349の信用金庫のうち23金庫、第2地方銀行では54行のうち19行にすぎません。塩川大臣が示した基準に照らせば、大合併は必至です。
佐々木議員が、基準の根拠をただしたところ、塩川大臣は、「腰だめ的な数字だ」と無責任な答弁。その一方で、行員1人あたりの生産性を念頭に置いたものであることを明らかにし、「金融機関の体力向上のために非常に大きいスケールでの合併をしてもらいたい」と述べました。
佐々木議員は、「規模は小さくても立派な経営をしている信金、信組はたくさんある。大きくなればいいことだというのはまったく現実とは違う」と反論し、金融機関の合併によって貸し出しをストップされるケースが発生していることや、支店の廃止や職員の大規模な削減によって、地域との関係が希薄になる事態が生まれるなど、合併による地域経済の悪影響を指摘しました。
また佐々木議員は、これまで合併した信金、信組について調べたところ、合併後に収益も預金も減っている例があることを示し、合併すれば収益が上がるという政府の考え方を実態にそくして批判しました。