2014年03月25日 第186回 通常国会 財務金融委員会 【780】 - 質問
TPP交渉、条文・内容の異常な秘密、撤退を求める
2014年3月25日、佐々木憲昭議員は、財務金融委員会で、環太平洋連携協定(TPP)交渉をめぐる政府の異常な秘密主義を批判しました。
TPP交渉では内容も協定の条文構成すらも国民には秘密にされています。
安倍政権は、「秘密契約」を根拠に徹底した秘密主義を取り続けています。交渉内容は甘利明担当大臣や安倍晋三総理大臣、菅義偉官房長官ら閣僚と与党幹部などのごく少数しか知らされていません。協定の条文が何章でなりたっているかも国民には隠されています。
佐々木議員は、アメリカでは議会に交渉権限があり、議員が交渉内容を知ることができることをあげ、TPP協定の条文についてマレーシアの通商大臣やアメリカ議会調査局の昨年12月報告書が「29章」と公表していることも紹介し、事実を確認しました。
TPP問題を主管する内閣官房の成田耕二参事官は「政府としてはコメントを差し控える」と述べて公表を拒み、日本の特異な姿勢を浮き彫りにしました。
佐々木議員は「他の国では当たり前のように公表されているのに日本だけ秘密にするのはあまりにも異常。開けてびっくり、国民が被害を受ける」と強調し、TPP交渉から直ちに撤退するよう求めました。
また、この日、「関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案」「国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案」の採決が行われ、全会一致をもって原案のとおり可決しました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
まず、法案に関連して、関税の役割について確認をしておきたいと思います。
言うまでもなく、主食であるお米は、非常に重要な守るべき課題であります。米の暫定税率は今何%か、それが日本の米生産を守る上で果たしている役割、この点について麻生財務大臣の認識をお伺いしたいと思います。
〔委員長退席、菅原委員長代理着席〕
○麻生財務・金融担当大臣 これは、先生、関税が無税であるいわゆるミニマムアクセス米に対して、枠外の輸入として民間が輸入する米については、一キログラム当たり49円の関税がかけられておりますほか、一キログラム当たり292円の納付金が政府により徴収されておりますので、今、WTOの関税と納付金の合計を従価税で換算しますと778%になるというように理解をいたしております。
○佐々木(憲)委員 その上で、その関税が国内の米を守る上で大変重要な役割を果たしていると思いますが、どのような御認識でしょうか。
○麻生国務大臣 このミニマムアクセス米の枠外の民間による米の輸入量というのは、これは極めて微量なものだと思っておりますが、関税によって国産米というのはかなり保護されているというのは間違いないんじゃないでしょうか。
○佐々木(憲)委員 それで、TPP交渉で、米も含む重要五品目が一体どうなるのか、大変重要な関心を集めているわけでありますが、特に、そのうち586のタリフライン、細目について日本がどのような交渉を行っているのか、政府にこれをただしても、なかなか内容を明らかにいたしません。今後の日本の行方を左右する重大問題なのに、何をやっているのかさっぱりわからないというのでは困るわけであります。
なぜかとお聞きしますと、秘密保持契約があるんだ、こういう答弁ですね。なぜ秘密保持が必要なのか、交渉だから必要だと。単純な話ではないと思うんです。これは大変重要な日本の食料あるいは経済基盤にかかわる全国民的な問題でありますから、その内容を議会や関係者に明らかにして、意見を聞きながら交渉するというのは当然だと思うんですが、どのようにお考えですか。
○麻生国務大臣 これは、この交渉が始まるときに、我々は後からおくれて行っている方で、カナダとか日本とかおくれてこの交渉に入っている方だと記憶しますが、少なくとも、この交渉に入るときに、この交渉に関しての一切の交渉事は漏らさない、口外しないという約束で話をスタートしておりますから、これは日本だけが漏らさないんじゃない、各国も同様な条件がついていると理解しております。
○佐々木(憲)委員 秘密保持契約は誰を縛るのかということですが、内閣官房からも来ていただいていると思いますが、直接交渉に当たっている政府と担当者を縛るもの、こう理解してよろしいですか。
○成田政府参考人(内閣官房内閣参事官) お答えいたします。
まさに交渉を行っている者にこの保秘契約がかかっているという理解でございます。
○佐々木(憲)委員 では、どの方々が交渉内容について知っているのかという点でありますけれども、甘利大臣はみずから交渉に当たっておりますので、当然、全部知っていると思います。あとは、安倍総理、官房長官、これは責任ある立場ですから、当然、報告を聞いて全容を知っていると思います。
麻生さんは副総理でありますから、交渉内容を知っていると思いますが、いかがですか。
○麻生国務大臣 比較対照だとは思いますけれども、かなり知っている方だと思いますけれども、その知っているということも申し述べることはございません。
○佐々木(憲)委員 知っているかいないかも言わないというのも、これはちょっと奇妙な話でありまして、内閣官房にもう一回お聞きしますけれども、閣僚の中でどの範囲までこの交渉内容を知っておられるのか、その範囲をお聞きしたいと思います。
○成田政府参考人 お答えいたします。
TPPに関する情報につきましては、TPPに関する主要閣僚会議における閣僚間の申し合わせに基づきまして情報を厳密に管理しているところでありまして、それに基づいて、甘利大臣以外の閣僚におかれましては、各省庁の所管分野に係る情報が共有されていると認識しております。
なお、甘利大臣も、この点について聞かれた際に、次のようにお答えをしておられます。全体を俯瞰して承知している人数というものは極めて少数だと思います、私以外、これは甘利大臣以外ということですが、担当閣僚で全体を見ているという者はいないと思います、このようにおっしゃっておられます。
○佐々木(憲)委員 極めて少数というより、一人しか知らない、全容を知っておられるのは。
そうしますと、関係閣僚会議がTPPに関してあると思いますが、その中で、官房長官、安倍総理大臣、それからこの中には外務省、財務省、農水省、経産省それぞれの大臣が参加をしておられると思いますが、これは、その分野にかかわる内容については知っている、こう理解してよろしいですか。
○成田政府参考人 それで結構でございます。
○佐々木(憲)委員 そうしますと、与党の幹部はどうかということになるわけです。
自民党の石破幹事長は甘利さんと同様に交渉内容を知っておられるのか、あるいは、自民党のTPP対策委員長は交渉の内容について知っているのか、この点はいかがですか。
○成田政府参考人 与党の幹部とは、交渉の進捗状況に応じまして、政府と与党との連携のあり方について随時必要な御相談をさせていただいておるということであります。
○佐々木(憲)委員 随時必要な相談をしているということは、当然、交渉内容についても情報を共有しながら相談しなきゃいけないわけでありますから、知っているということになるわけですね。
内閣委員会の3月7日の甘利大臣の答弁では、「自民党の石破幹事長も、例えば、輸入実績がないものも一切何もしないということでは交渉にならぬというのはそのとおりだ」というようなことで、石破幹事長の名前を挙げて、この中身についてある程度知っているという答弁をされているわけであります。
そうすると、与党の幹事長は一定のレベルまでかなり知っている、甘利さんが評価するほど知っているわけであります。
公明党の幹事長は与党ですから当然知っていると思いますけれども、全く同じ情報を共有しているのか、自民党と公明党の間に違いはあるのか、この点、説明していただきたいと思います。
○成田政府参考人 政府と与党との連携のあり方について随時必要な御相談をしているということでありまして、与党とは一体として対応させていただいているということでございます。
○佐々木(憲)委員 これは、同じレベルの情報を自民党幹事長と公明党幹事長は知っている、共有している、こういう理解ですね。いいんですね。
○成田政府参考人 基本的には同様であると認識しております。
○佐々木(憲)委員 基本的にはということでありますが、完璧にはということではないようであります。
それはそれとして、では、次にお聞きしたいのは、この秘密保持契約というものは、一番最初にお尋ねしたところ、交渉を担当している政府のメンバーに守秘義務を課している、こういうことであります。しかし、与党となりますと、これは政党でありますから、政党に対して政府から情報を提供する、あるいは漏らしてもいい、こういうことになっているわけですね、現在、実情として、現状として。
この点では秘密保持契約との関係は一体どういうふうになっているのか。この点は契約上どういう規定になっているんですか。
○成田政府参考人 お答えいたします。
契約の内容につきましては、TPP交渉参加国との信頼関係もありまして、公表することができませんけれども、交渉の具体的内容にかかわることは秘密にしなければならないものとされておるわけであります。
与党の幹部とは、連携のあり方について随時御相談をさせていただいておりますけれども、その内容につきましては、基本的に保秘契約を踏まえた対応をさせていただいているということでございます。
○佐々木(憲)委員 もう一つよくわからない答弁ですが。
これは、予算委員会、昨年の10月22日ですけれども、甘利大臣の答弁でこういうのがあるんですね。「各国がセンシティビティーとして持っている分野があります」、「我が党として聖域ということを発言したのは、死活的利益にかかわる分野である。それは、今、西川委員長のところでもいろいろ精査の作業をしているわけであります。」と。西川委員長は、当然、重要五品目、とりわけその中での細目についていろいろ精査をしている、こういうわけでありますから、相当詳しく知っている、こういうことだと思うんです。
それでは、ほかの国の場合はどうなのか。ほかの国の場合は、情報については日本とかなり扱いが違うのではないか。日本の場合には政府に交渉権がある。アメリカの場合は、最終権限は、議会にあるのか、大統領にあるのか、お答えいただきたいと思います。
〔菅原委員長代理退席、委員長着席〕
○森政府参考人(外務省大臣官房参事官) お答えいたします。
アメリカにおきまして交渉権限がどこにあるかということでございますが、我が国を含めましてTPP交渉の当事国は、米国の行政府が現在通商協定の交渉権限を有しているということを前提に交渉に当たっているところでございます。
米国の国内法の中身について確定的なことを申し上げることはできませんけれども、私どもが承知しておりますのは、米国憲法上、米国議会は外国との通商を規制する権限を有する、こういう規定がございます。他方において、米国大統領は憲法上有している執行権に基づきまして通商交渉権限を有する、このように解されているところでございまして、大統領府にありますUSTRが米国行政府を代表して交渉を行っている、こういう理解でございます。
○佐々木(憲)委員 議会は最終的な権限を持っているけれども、実際の交渉はUSTRが行うと。そうしますと、議員は、公聴会などを通じてUSTRに対して、交渉内容はどうなのか、こういうことをただすことができる、そういう仕組みになっていると思います。
ところが、日本は、交渉内容を知ることができる方々が非常に限られている。甘利大臣は一番よく知っているが、それ以外の閣僚も知っている人と知らない人がいる。担当の閣僚はその分野しか知らない。そして、与党もごく一部の方々しか知らない。守秘義務が課せられている。こういうわけでありますので、これは非常に、日本の国民にとってはなかなか情報に接することができない、こういう状況だと思うんですね。
具体的にお聞きしますけれども、TPP交渉の条文、これは今何章で成り立っているのか。私が得ている情報では、29章であって、幾つかの章で内容について固まっているが、それ以外は交渉中、こういうふうに聞いていますが、これはどうなんですか。
○成田政府参考人 テキストの章の数につきましては、コメントを控えさせていただいております。
中身につきましては、進捗しているところもありますし、まだ難題を抱えているところもあるという状況にございます。
○佐々木(憲)委員 マレーシアのことし2月21日付のサン・デーリーという新聞、これによりますと、ムスタパ通商大臣は、TPP協定は29章あって、そのうち八章で交渉を完了し、残り21章は未解決問題を含んでいるので交渉中、こう報じているわけです。
アメリカ議会調査局が出した報告書、これは昨年12月でありますが、協定条文は29章というふうに述べております。
29章ということで議論されていることは、これは間違いないんじゃありませんか。
○成田政府参考人 重ねて恐縮でございますけれども、何章あるかは、日本政府としては公表を差し控えさせていただいております。
他国の公表につきましても、そういう情報は承知しておりますけれども、日本政府としてそれについてコメントするのを差し控えさせていただいております。
○佐々木(憲)委員 まことに奇妙な対応ですね。ほかの国では、29章だというのは交渉参加国の担当大臣がしゃべっているし、アメリカでは議会の報告書の中で章立てについて29というふうに言っている。日本政府は、数字は一切言いませんと。
これは余りにも奇妙な秘密主義でありまして、こういう状況ですので、国民がこの状況を見ますと、当たり前のようにほかの国では公表されていることが日本では公表されない、これは極めて異様ですよね。
論点もいろいろありますけれども、もう時間がありません。
例えば、今いろいろと公表されているのを見ましても、ISDSの導入を目指すアメリカに対して、マレーシア、ベトナム、オーストラリアが反対しているとか、国有企業改革の導入をアメリカが目指しているけれども、マレーシア、ベトナムが反対している。こういう事実があるんだけれども、こういうことも公表しない、こういう状況であります。
私は、何かこういうふうに国民にも議会にも隠したままでともかくまとめようなんという話を、甘利大臣は自分が全部知っているんだと全権を持っているかのように、それで勝手な交渉をやって、中身はわからない。こんなことをやっているようでは、大変な事態になるかもしれない。あけてみてびっくりと。日本が、経済全体がおかしくなる、国民が被害を受ける、こんなことになっては大変なことになりますので、私は、こんなやり方はやめるべきだと思いますし、TPP交渉から直ちに撤退すべきだ、このことを主張して、質問を終わりたいと思います。