税制(庶民増税・徴税) (関税・EPA(経済連携協定)・TPP)
2012年03月16日 第180回 通常国会 財務金融委員会 【665】 - 質問
財務大臣「コメ守る」明言できず TPP参加やめるべきと批判
2012年3月16日、佐々木憲昭議員は、財務金融委員会で、「コメ輸入に一定の歯止めをかけている関税まで撤廃される環太平洋連携協定(TPP)に参加すべきでない」とただしました。
佐々木議員は、国内大手スーパーが国内産米より2割〜3割安い中国産米を7都県で発売するとされていることにふれ、「外国産米が大量に流通したら、日本のコメを守れるのか」とただしました。
安住淳財務大臣は「そんなに大きな問題にはならない」と無責任に答えました。
佐々木議員は、野田佳彦総理大臣がTPP参加に関し「守るべきものは守る」とのべたことをあげ、「コメは『守るべきもの』か」と追及しましたが、安住大臣は「現時点では言えない」とのべました。
佐々木議員は「コメを守るとはっきり言えないのは重大な問題だ」と批判しました。
例として、日本国内に子会社に持つ米ウォルマートが、日本のTPP参加が「貿易上・競争場の障壁について取り組む好機だ」と米政府に意見をのべていることをあげて、「関税撤廃のチャンスだと米政府に圧力をかけている。日本の農業を守れるとなぜ言えないのか」と迫りました。
安住大臣は「守るべきものは守る」と空疎に繰り返すだけでした。これでは、日本の農業も主権も守ることはできません。
佐々木議員は、「守るべきなら議題に乗せるべきではない。TPP参加自体が間違いだ」と厳しく批判しました。
この日の財務金融委員会で、関税定率法等の一部改正案は、全会一致で可決されました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
安住大臣、きょうは私が最後ですので、よろしくお願いしたいと思います。朝早くから薄暗くなるまできょうやってまいりましたが、夜なべではありませんので、間違いないようにお願いをしたいと思います。
関税定率法に関連をしてお聞きしたいと思うんですが、以前は、米については、輸出入、これは国家管理のもとに置かれておりました。これがWTO協定のもとで、関税化、自由化の方向に切りかえてきたという経過があります。
私どもは、日本の農業を守る、そういう観点からいうと、この流れは非常に問題があるということで反対をしてまいりました。この立場は現在でも変わっておりません。ただ、現在、非常に高い関税率、778%、これによって米輸入については一定の歯どめがかけられている面もあると思います。
財務大臣は、この関税制度によって日本の米は完全に外国との関係で守られている、そういう認識でおられるかどうか、確認したい。
○安住財務大臣 済みません。では、夕なべ、本当にありがとうございます。
ミニマムアクセス米は、当時の政権を思い出しますと、本当に大変な議論が国内でありまして、しかし、とにかく、あの時点では私はやむを得ない措置であったと。今現在、玄米換算で大体年間77万トンですか。ただ、これは主食用として使っているわけではなくて、現時点では、一部は主食用でごくわずか使っておりますけれども、飼料用や加工用米、援助米として使っておりますから、そういう点では、国内での流通全体から見ますと、今先生が御指摘のようなことからいえば、日本の主食用の米としては、日本でつくっておられる農家の皆さんの米は守れているのではないかと思っております。
○佐々木(憲)委員 実績からいうと、主食用もミニマムアクセス米の約1割ぐらいありますので、結構な数だと私は思っております。
注目しておりますのは、大手スーパー西友が、3月10日から、中国産の米を関東六都県、静岡県の149店舗で発売するということで報道されていることであります。5キログラム入り1299円というわけですから、これは低価格の国内産米より2割から3割安い。外国産の米を流通大手が本格発売するのは初めてだ、こういうことであります。
私もこれを食べてみたんです。若干ぱさぱさした感じがしますけれども、主食として流通可能な感じがするわけですね。
これは私、非常に危機感を覚えたわけです。この米は、一体、ミニマムアクセス米として輸入されたものなのか、高い関税を乗り越えて入ってきたのか、これはどういうことになっているんでしょうか。
○五十嵐財務副大臣 事実関係ですので、私から。
これは中国吉林米というものでございますが、国家貿易制度の中に認められた方式の中、幾つかあるんですけれども、SBS方式、輸入方式、売買同時契約方式というのがありまして、この仕組みにのっとって、政府が売買差益を取った上でミニマムアクセス米として輸入されたものでございます。
○佐々木(憲)委員 そうしますと、西友はもともと米国資本のウォルマート・ストアーズの子会社でありまして、中国にも200近い店舗を持っておりまして、中国米の現地調達能力もある。
仮に、日本にミニマムアクセス米として、今言われたような方式で大量に流通をふやしていく、こういうことになっていきますと、現実に日本の米より安い米がスーパーで販売されるということになりますので、これは、日本の米をこういう状況で本当に守れるのかどうか。この点はどうですか、大臣。
○安住財務大臣 とりあえず、SBSを使った方法で、ミニマムアクセスの中で、範囲でということですから、それについては、これがどんどん広がっていくということではないのではないかなとは思います。
やはり環境の問題とか安全性とか、本当にさまざまな問題があるので、私は、日本の消費者の皆さんは、日本でおつくりになっている農家の皆さんの米に対する信頼性は非常に高いと思いますから、そういう点での信頼感というのはまだ市場にあるので、こうしたものが本当にどんどん入ってきて脅威を感じるかといえば、今のこの枠組みでやっている範囲の中であれば、そんなに大きな問題にはならないかとは思いますが、しかし、議員の御指摘のようなことも今後の課題としてはあるのかなと思っております。
○佐々木(憲)委員 これは一つのルートをつくっているということでありまして、これはTPPとも関連が非常に深くなってくるわけです。
そこで、基本的な姿勢を聞きたいんですけれども、野田総理は、昨年11月11日の記者会見で、守るべきものは守り抜き、かち取るものはかち取るということで、TPP交渉に関して発言をされております。
日本の米は守るべきものに入っている、こういう理解でよろしいんですか。
○安住財務大臣 総理は、当時、特別に何か特定の品目を挙げてお話しになっておられるわけではなかったと思います。守るべきものは守り抜き、かち取るものはかち取るべくという発言をいたしましたが、守るべきものは守り抜くということだと思います。
○佐々木(憲)委員 これは、特定というか、私は米について聞いているわけでありまして、守るべきものに米を入れているというふうに言えないんですか。
○安住財務大臣 想定することはあり得ますけれども、正式にまだ、どの品目をというところまでは言える段階ではないという認識でございます。
○佐々木(憲)委員 相手側がどういうふうに言ってこようが、日本が守るべきものは米である、こういうことは言えないんですか。
○安住財務大臣 現時点では、私が先ほど申し上げたとおりでございまして、特定の品目についてこれだというところまで、まだ関係国との協議をしている最中でございますので、委員の御指摘のことは十分わかりますが、日本における米の重要性というものも私もわかっているつもりでございますけれども、現時点では、特定の品目を挙げてこれということではないと思います。
○佐々木(憲)委員 守るべきものを、主食である米をこの中に入れているかいないか、はっきりしないという話は、政府は一体何を考えているんですか。今でさえ部分的にミニマムアクセス米という形で主食が入ってきているわけですよ。高関税によって一定程度守られているけれども、これをゼロにせよというのがTPPの基本的なルールじゃないですか。そのときに、いや、米はまだはっきり言えないんだ、そういう姿勢だと、重大な問題だと私は思うんですよ。
それで、例えばアメリカで、TPP協定について、「日本との協議に関する米国政府意見募集の結果概要」というのが外務省から出されていまして、主要団体の意見詳細というのが公表されております。
この中に、現にウォルマートの意見としてこれが載っているわけですよ。何を言っているかというと、米国政府への要望としてこういうことを言っているんです。米など食品に対する高関税は、同社の店舗における食料品店頭価格を著しく引き上げていると。つまり、日本の米の高関税が食料品価格を引き上げている、こういう不満を述べておりまして、その上で、日本をTPPに追加することは、日本における同社の事業を妨げる貿易上、競争上の障壁について取り組む好機であると。要するに、TPPに日本を参加させれば、この米の高関税を撤廃させることができる、そういうチャンスだと。日本、カナダ、メキシコをTPPに追加することは、同社にとって極めて重要な経済連合をつくり出すと。これはもうはっきりと、外務省が翻訳したその概要の中に載っているわけですよ。
米国産の米を、当然、アメリカの店舗でもこのウォルマートは扱っている、それを日本に輸入をしたい、関税が高過ぎるからこれを撤廃させなきゃいかぬ、だからTPPに日本を参加させよ、こういうことを業界としてアメリカ政府に明確に圧力をかけ、アメリカ政府に、TPPに参加するように日本に対して働きかけなさい、こういうことを言っているわけです。
これは、日本が、いや、守るべきものの中にはお米というものはまだ入るかどうかわからぬのだ、最初からこんな姿勢では、日本の米なんというのは守れないでしょう、日本の農業は。どうなんですか、その点は。
○安住財務大臣 先ほどの外務省の公表した文書というのは、つまり、アメリカ政府が業界団体からヒアリングをして、こうしてほしいという業界のニーズですよね。ということは、要するに、一方的に自分たちにとって利のあることを政府に陳情しましたと。先生、日本だって逆に、多分、業界団体が陳情すれば、同じようにアメリカ側にそういうことを言う。しかし、だからといって、それをもって日本がそれに屈するという話ではないので、守るべきものは守っていくということだと思うんです。
○佐々木(憲)委員 だから、守るべきものは米だと言えばいいじゃないの。何で言えないんですか。アメリカは業界が米だ米だと言っているんですよ。日本政府がだめだと言わないと主食を守れないでしょうが。それを言わないというのは、何が守るべきものは守るだ。そんな抽象的な話をして国民を煙に巻いてだましたってだめですよ、それは。大体、守るべきものであると言うなら、TPPの議題にそういうものはのせるべきではない、それから、TPPに参加すること自体が間違っていると我々は思っております。
したがって、今のような答弁では、これは本当に心もとない、日本の農業はこんなことをやっていたら壊滅状態になる、そういう危険性を感じましたので、きょうはこれで質問を終わりたいと思います。