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雇用・労働, その他 (規制緩和, 「成長戦略」, 国家戦略特区)

2013年11月20日 第185回 臨時国会 内閣委員会 【759】 - 質問

国家戦略特区法案 労働法制の規制緩和が検討されていることは憲法違反

 2013年11月20日、佐々木憲昭議員は、内閣委員会で、15日に引き続いて質問に立ち、国家戦略特区法案について新藤義孝地域活性化担当大臣に対して、その後、安倍晋三総理大臣に対して質問しました。さらに質疑終局後、反対討論を行いました。

 佐々木議員は、緩和しきっている日本の労働法制を、さらに緩和させようとする「国会戦略特区」の雇用問題について、国家戦略特区で労働法制の規制緩和が検討されていることは憲法違反だと批判しました。

佐々木議員は、国家戦略特区の具体策を検討したワーキンググループ(WG)で解雇の規制緩和が検討されたことに対して「労働者を解雇しやすくする規制緩和が雇用を生み出すという理屈は成り立たない」と批判。新藤大臣は「雇用ルールを明確にする」と繰り返しました。
 佐々木議員は、WGが雇用ルールについて労使の協議がなくてもよいとしているが、「労働者の代表を入れず規制緩和の議論をすること自体に民主主義の手続き上の問題がある」と批判。法律で定められた労働のルールを特区を利用して緩和することは、労働者に不利益を与える「治外法権」をつくりだすと指摘し、労働者の生存権と勤労権を保護する立法を要請した憲法27条2項に違反すると強調しました。

また、法案では、内閣府設置法に基づく「戦略特区諮問会議」という強い権限を持つ組織を新設することになります。総理が任命する諮問会議メンバーを規制改革推進派で固める一方、労働者や消費者はもちろん、関係閣僚さえ意志決定過程から排除し、総理を中心とするトップダウンの仕組みをつくりあげるものとなっています。
 佐々木議員は、規制緩和に関する安倍総理のトップダウン体制づくりではないかと、安倍総理に質問しました。

 質疑終局後の討論で、佐々木議員は、法案に反対する第1の理由として、この法案が、規制緩和を「国家意志」として上から一方的に国民に押しつけるものとなっていること。
 第2の理由は、規制緩和に対する勤労国民の懸念の声、社会的・経済的な悪影響を受ける側の声を、まともに反映する経路がないこと。
 第3の理由は、対日規制改革要望など、アメリカの積年の要求に応え、外国資本を特別扱いする余地を残していることをあげました。
 さらに、この法案が、大企業優遇税制とワンセットで提案されていることも重大であると指摘し、この法案は、国民生活に新たな格差と貧困をもたらすことになると、反対しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 きょうで法案の質疑終局と言われておりますけれども、我々、まだまだ質疑が足りないというふうに感じております。
 きょうは、戦略特区の雇用問題についてただしたいと思います。
 大臣、最近ブラック企業という言葉がいろいろ広がっております。これは、若者を大量に新規雇用しまして、精神的にも肉体的にもぼろぼろになるまで働かせて、大量に使い捨てにするという企業のことでございますが、新藤大臣は、このブラック企業についてどのような印象をお持ちでしょうか。
○新藤地域活性化担当大臣 このブラック企業という言葉の定義が定まっているかどうか、よくわかりません。しかし、最近よく使われる言葉であるというふうに承知をしております。
 そして、過重労働や賃金不払い残業など、特に若者に対して使い捨てのような、そのようにもし疑われる企業があるとするならば、それは社会経済の健全な発展には問題がある、このように思っております。
○佐々木(憲)委員 そこで、5月10日のワーキンググループの会議録を見ますと、八田座長の見解が載っておりまして、これはワーキンググループの労働法制の緩和を議論したときの見解ですが、人材に関して雇用が流動化しないことの根本に、やはり解雇法制がある、みんな解雇できないから怖くてなかなか雇えないし、雇われた人は終身雇用なので全然ポジションがない、こういう発言をされているわけであります。正直、私驚いたんですけれども、働く方々の立場を余り理解していないなという印象を私は受けました。
 大臣にお伺いしますけれども、ここで言われている、労働者を解雇しやすくする規制緩和というものが雇用を生み出すんだ、こういう理屈だと思うんですが、これは成り立たないと私は思うんですが、いかがでしょうか。
○新藤国務大臣 それは何度も総理、また厚労大臣からも御答弁をさせていただいている、このように思いますけれども、この前後も見ていただけばわかると思います、議論の中で、そういった観点からの議論が進んできたわけではありませんし、私どもはあくまで、雇用を拡大していく、その中で、労働の予見性であるとか紛争の未然の防止、こういったものに役立てつつ、雇いやすく、雇用の拡大につながっていくような、そういうものを考えていくということで、ずっとテーマとして議論させていただいております。
○佐々木(憲)委員 雇用の法制を緩和する、より具体的に言いますと、解雇しやすくしてほしい、こういう要望が一部にあるわけです、企業側ですけれども。そういうことをすれば、何か他方で流動化してどんどん雇用がふえていくというのは、これはなかなかつながらない話であります。
 例えば、ILOの労働問題研究所所長のレイモンド・トレス氏は、こういうふうに言っております。これは、ユーロ圏における仕事の危機、動向と政策対応2012、こういう文書の中でこのように言っております。17カ国中13カ国が、2008年から2009年の間にしばしば雇用規制を緩和する方向で労働市場の柔軟化改革を実施した、しかし、これらの政策は、雇用創出の効果を生じないまま、解雇をふやすことにつながる。つまり、雇用規制緩和で雇用増になるというのは科学的裏づけがない、こういう主張をされております。
 それで、もう一点大臣にお伺いしますけれども、前提として、日本の解雇規制、これはそもそも、諸外国、とりわけヨーロッパと比べて緩いのか厳しいのか、この基本的認識はいかがでしょうか。
○新藤国務大臣 さまざまな指標がございます。それから、それぞれの習慣、慣行があると思いますね。成り立ち、それぞれ違うわけでありますから。ですから、一概にこれが緩いか厳しいかというような比較を私はなかなかできないのではないか、このように思いますが、私どもとすれば、これは緩いか厳しいかではなくて、いかに不明確な状態をできるだけなくすか。
 したがって、雇用ルールがわかりにくいということが新たな企業への投資阻害要因にならないように、そういったことを明確にしよう、また予見可能性を高めよう、こういうことを取り組んでいるつもりでございます。
○佐々木(憲)委員 実は、政府の平成24年度の労働経済の分析というのがありますが、これを見ますと、OECDの雇用保護指標について310ページのところで紹介をされております。ここで、こういうふうに書いているんですね。「日本の雇用保護指標は第一〜第三指標について、またその内訳である「常用雇用要因」「臨時雇用要因」「集団解雇要因」を個別にみても、すべての指標でOECD平均を下回っており、日本は比較的雇用保護が弱い国であるといえる。」と。
 雇用保護がヨーロッパ等と比べて、OECD諸国と比べて弱い、これが日本の政府の見解ではないかと思いますけれども、そういう見解ではございませんか。
○新藤国務大臣 私はそこの所管の者ではないことは御承知だと思いますし、今委員が御紹介された部分のものは、私、現状においてまだ確認をしておりませんから、今私がコメントしようがないわけでございます。
 しかし、先ほど言いましたように、いろいろな考え方があって、指標がある。ですから、先ほど言いましたように、雇用の拡大、また雇用ルールを明確化していく、それが重要だということには変わりはございません。
○佐々木(憲)委員 それでは次に、日本の労働者の置かれている労働条件というのは非常に厳しい事態になっておりまして、最近は、過労死ですとかあるいは過労自殺というのも後を絶ちません。
 そこで、実態を紹介していただきたいんです。厚労省にお願いしたいんですが、10年前と最近の統計で、この過労死とか過労自殺についてはどのようになっているか、紹介をしていただきたいと思います。
○大西政府参考人(厚生労働省大臣官房審議官) 御質問の過労死に関するデータでございますけれども、脳・心臓疾患による死亡ということにつきまして、労災認定件数でございますけれども、直近の平成24年度では123件、10年前の平成15年度は158件というぐあいになっております。また、必ずしも過労のみを原因とするものではありませんけれども、精神障害による自殺についての労災認定件数につきましては、直近の平成24年度が93件、平成15年度は40件というふうな数字になっております。
○佐々木(憲)委員 深刻な事態であるということが続いているわけですね。
 日本は、ILOが制定する労働時間と休暇に関する条約で、一号条約、これは1日8時間、週48時間を盛り込んだものであります。それと、47号条約、これは週40時間の規定ですね。132号、これは年次有給休暇に関する条約であります。それから140号は有給教育休暇でありますが、何一つこれを日本は批准しておりません。
 なぜ日本は批准をしていないのか、その理由について厚労省にお聞きしたいと思います。
○生田政府参考人(厚生労働省大臣官房総括審議官) お答えいたします。
 ILO条約につきましては、それぞれの条約の目的や内容などを十分検討して、国内法制との整合性を確保した上で批准する必要があるというふうに考えております。
 御指摘いただいた四つの条約につきましては、国内法制との整合性につきましてなお検討すべき点がございまして、現在、未批准となってございます。
○佐々木(憲)委員 国内法制との整合性を考えてということなんですが、日本の労働保護法制はなかなかこの条約の水準に達していないということのあらわれでありまして、私は、早急にこの条約の水準に合わせると同時に、条約と同時に抜本的に国内で法整備を行い、条約の批准も行うということが必要だと思っております。
 これは、日本国憲法の基本的人権の大きな柱であります国民生活の安心、安全の向上のために、こういう条約を批准するということが大変大事だというふうに考えるからであります。
 次に、資料に基づいて具体的にお聞きしたいと思うんですが、ワーキンググループが提出した、9月20日付、資料五、この二に雇用というのがあります。
 お配りした資料を見ていただきたいと思いますが、ここで、厚労省とワーキンググループのやりとり、それぞれの主張点が並べて記載されております。この中で、厚労省は、「そもそも、雇用は特区になじまない。」というふうに主張されております。その根拠をお聞かせいただきたいと思います。
○大西政府参考人 委員御指摘の資料につきましては、国家戦略特区のワーキンググループにおいて、各省からのヒアリング内容を国家戦略特区ワーキンググループの座長が整理されたものというぐあいに承知しておりまして、その具体的な内容について、私どもからお答えするのはなかなか難しいのではないかというぐあいに考えております。
 いずれにいたしましても、10月に日本経済再生本部で決定いたしました検討方針には、政府としてどのような対応が可能なのかいろいろ検討した上で、雇用分野の方針についても取りまとめられたというぐあいに承知しております。
○佐々木(憲)委員 これは、確かに、ワーキンググループの八田座長が、厚労省はこんなことを言っているよと自分なりの解釈で整理をされたわけであります。ですから、この主張をこのまましたというふうに、それは確認されていないと思いますけれども、ただ、このときにどのような主張をされたのかということを今確認しているわけです。
○大西政府参考人 一般的に申し上げまして、雇用に関する基本的ルールであります労働基準法とか労働契約法とか、そういう法律があるわけでございますけれども、一部地域を対象として緩和することについては、雇用関係のルールの特性を踏まえつつ検討されるべきものであるというぐあいに私どもは考えているところでございます。
○佐々木(憲)委員 それは、私どもの見解からいえば、緩和の中身自体が労働者にとってプラスかマイナスかという角度からきちっと評価しなけりゃならぬというふうに思います。全国でやれば何でもいいというものでもないというふうに思っております。
 このワーキンググループの見解の方を見ますと、この右側ですけれども、「こうした理由で「特区になじまない」といったら、およそ特区は成立しない。」こう言っているわけです。特区には雇用についての独自のルールを適用すべきだという見解なんですけれども、担当大臣として、新藤大臣、この見解、どのように思いますか。
○新藤国務大臣 これはまさに座長がまとめられた中での、各種、厚労省の見解とワーキンググループの見解が出ました。まさにこういうふうに、意見に見解の相違があって、それらを議論していただいたわけであります。
 ですから、これについてのコメントはどうかといえば、八田先生は、この人は規制改革の分野での権威でもありますし、そういう方が一つの見識をお示しになられた。しかし、それについてはいまだ結論は出ていない、こういう状態でございますし、私どもとしては、その議論を踏まえた中で、結局、雇用条件の明確化、有期雇用の特例、この二点はきちんと検討していこうではないか、こういうことが日本経済再生本部の中で方針として決定をさせていただいたということであります。
 ですから、議論をしていく中の過程における一つ一つのコメントについては、それぞれその方の御見解を示されたものだと、これ以上でもないし、これ以下でもございません。
○佐々木(憲)委員 資料の下の方を見ていただきたいと思うんですが、厚労省としては、「雇用ルールは、条約上、労使間で協議することが求められており、労政審での審議を経ることが必須。」というふうに述べたとされております。
 ILOは、労働基準に関する立法については、政労使の三者によって協議するということを根本原則としていると理解しておりますが、間違いありませんか。
○熊谷政府参考人(厚生労働省政策統括官) お答え申し上げます。
 労働法制の見直しなど労働政策に関する重要事項につきましては、さまざまな会議の御意見もよく伺いつつ、ILOの三者構成原則の趣旨も踏まえまして、公労使の三者で構成される労働政策審議会で十分に御議論いただくことになるものと考えております。
○佐々木(憲)委員 私が確認したのはILOの原則について確認をしたんですが、もうちょっと広くお答えになったわけであります。
 ワーキンググループの見解を見ますと、労使間協議を行う場が労政審である必要はない、別の場を設けて迅速に協議しても構わないはずだと。これは厚労省の見解ともILOの見解とも違うと思うんですが、大臣は労政審で協議する必要はないというふうにお考えでしょうか。
○新藤国務大臣 私は、内閣の閣僚として政府の方針に従って仕事をするわけであります。政府の方針は、今厚生労働省からお話がありました。そして、一方で、特区を議論する中で、ワーキングの中でそのような御意見が出た、そういう問題提起に対する議論を踏まえて行われているということだと思います。政府としての方針は、先ほど厚労省が述べたとおりでございます。
○佐々木(憲)委員 確認をいたしたいと思うんですけれども、いろいろな組織がありますよね。産業競争力会議、あるいは規制改革会議、国家戦略特区ワーキンググループ、こういう組織が今この委員会でも話題になっておりますけれども、メンバーでありますが、企業の経営者あるいは一部の学者等で構成されていると思います。この中に労働者を代表する委員というのは含まれているのかどうか、これを確認したいと思います。
○川本政府参考人(内閣官房地域活性化統合事務局長) お答えを申し上げます。
 今お話しのあった産業競争力会議、規制改革会議、それから国家戦略特区のワーキンググループはそれぞれ、産業競争力会議は、我が国産業の競争力強化や国際展開に向けた成長戦略の具体化と推進、規制改革会議は、経済社会の構造改革を進める上で必要な規制のあり方の改革に関する基本的事項、国家戦略特区ワーキンググループは、産業競争力会議での議論を踏まえて国家戦略特区の具体的な制度設計等の検討を行うため、設置されております。
 それぞれの調査、審議に当たって、識見の高い方というものを選んで委員としているというふうに理解をいたしておりまして、今お話にありました労働者の代表という観点からの人選は行われていないというふうに理解をいたしております。
○佐々木(憲)委員 労働法制の規制緩和というようなことを議論する際には、当然、政労使ですとかあるいは労使、こういうものの両方の参加を得て、バランスをとってやるというのが本来の筋だと思うんですが、どうも、今確認したように、労働者の代表が入らない中で労働法制の規制緩和のあり方を議論するということ自体が、これは非常に手続上の問題があるのではないか、民主的手続という観点からいっても問題があるというふうに私どもは思います。
 有期雇用の特例の問題についてお聞きします。
 資料を見ますと、厚労省の側は、「労働者に対し無期転換権を放棄するよう、使用者が強要する可能性があるため、不可。」となっております。これはワーキンググループの座長のまとめでありますので、そういうふうに書かれております。
 厚労省に確認ですけれども、この要点、このときはどういう趣旨で説明をされたのでしょうか。
○大西政府参考人 委員御指摘の資料の内容につきましては、先ほど申し上げたとおり、ちょっとお答えを差し控えさせていただきたいと思います。
 一般論といたしまして、今、有期契約労働者の問題でございますけれども、有期契約労働者に対して無期転換の申込権が発生する以前に申込権の放棄を認めるということは、労使の交渉力の格差を背景として使用者が事実上その権利放棄を強要する状況を招きかねず、労働契約法18条の無期転換のルールの趣旨を没却するものであり、こうした有期契約労働者の意思表示は、公序良俗に反して無効と解されるというぐあいに考えております。
○佐々木(憲)委員 ワーキンググループの見解のところには、労使双方の同意を前提とする労働契約というのがあるわけです。このワーキンググループの見解は、厚労省の見解とかなりこういう点で違うんですけれども、大臣として、この点について何かお考えがあれば、お述べいただきたいと思います。
○新藤国務大臣 私は、雇用に関してさまざまな議論があることは、それは妨げるものではない、このように思いますし、ワーキングはワーキングの、規制緩和という観点から、そしてまた経済の起爆剤としての特区における雇用の拡大という観点から、このような意見が出たということであります。しかし、それに対して、政府側、厚労省と見解の相違があり、議論をした上で、現状における検討項目が、先ほど申し上げた二つになったということであります。
 私は、議論は議論として、このような見解がある、そういうお考えがおありの人たちがいるわけでありますから、それを踏まえた上での議論をきちんとしていけばよろしいのではないか、このように思います。
○佐々木(憲)委員 現実の厳しい労働環境の中では、労使の同意とか合意というのは形骸化しやすいわけです。つまり、使用者側の力が圧倒的に強いわけですから、仮に労働者がそれに同意しましたという形だけ整えても、それは、渋々同意せざるを得なくなった、あるいは、仕方なく、言われたからそういうふうに契約したんだと。本人が望んでいるかどうか、これをチェックするのは非常に難しい問題があるわけですね。
 したがって、労働法制の規制という問題を考える場合に、これまでの経緯を見ますと、使用者側の契約の自由ということに余りにも力点を置き過ぎますと、労働者の側に非常に不利になる。したがって、資本側による契約の自由を制限する、規制するということが、この間のルールづくりの根本にあったわけなんです。
 これは大変大事な観点ですので、今、厚労省が答弁されたことも、政府の基本方針、今までの考え方ということで言われていますけれども、その部分が何かずるずると崩れていくような感じがして、これは労働者の側にとっては非常にまずい事態になりつつあるなと、私は危険性を感じているわけであります。ぜひその点を念頭に置いて対応していただきたいというふうに思っております。
 ワーキンググループのペーパーを見ますと、特区内の開業5年以内の事業所に対して解雇ルールということで、契約締結時に、解雇の要件、手続を契約条項で明確化できるようにする、仮に裁判になった際に契約条項が裁判規範となることを法定する、矢印で、労働契約法第16条を明確化する特例規定として、特区内で定めるガイドラインに適合する契約条項に基づく解雇は有効となる、こういうことを規定する、検討事項としてこう明示しているわけです。
 これは、仮に解雇を認めるということを契約で押しつけられたら、それを理由に首切りが自由に行われるというようなことになってしまうと、これはとんでもない話でありまして、この解雇ルールの問題について、厚労省としてはどういうスタンスなんでしょうか。
○大西政府参考人 解雇についての御質問でございます。
 一般的に申し上げまして、解雇の、有効か無効かということが争いになることがあるわけでございますけれども、単に、労働契約とか、あるいは就業規則に書いてある解雇理由というものだけではなくて、労使間で実際にどういうやりとりがあったかとか、あるいは雇用管理の実態などに関する事実認定ということを含めて、そういうものが総合的に司法で判断される、最終的には司法で判断されるべき性格のものであると考えておりますので、労働契約の内容のみをもって判断することはなかなか難しいのではないかと思います。
○佐々木(憲)委員 ですから、労働契約だけで、そこに書いているからということだけではだめであって、現実の、労使関係の実態を踏まえて対応する、こういうことが大事だということであります。
 総理は、8日の衆議院本会議でこういうふうに答弁されています。「一時、解雇特区などという事実誤認のレッテル張りが行われましたが、そもそも、そのような考えは、もともと存在しませんでした。」と答弁をされております。
 確かに解雇特区という言葉は使っていないですけれども、ワーキンググループの資料を見ますと、解雇ルールということで検討したということは、これはさまざまな意見があるというふうに大臣もおっしゃいましたように、解雇ルールの検討ということは行われた、これは事実ですよね。
○新藤国務大臣 雇用の一環の中での解雇についての議論というのが既にこうやって行われているわけでありますが、しかし、その主眼は、解雇しやすいルールをつくることではなくて、そもそも雇用ルールがわかりにくいということが新規の企業の投資阻害要因になり得ないか、そういう問題意識から雇用ルールを明確化するための議論をずっとやってきた。総理が答弁をされておりますのは、そういった趣旨において雇用の拡大を図るためのさまざまな議論が行われてきたんだ、こういうことを申し上げているわけだと認識しております。
○佐々木(憲)委員 この点は、また総理が御出席になるということですので、そのときにも伺いたいと思っております。
 次に、10月4日に八田座長は記者会見を行っておりまして、それまで一般的な雇用問題について主張されていたと思っておりましたが、それと違う、方向転換をされたような感じの記事が出ておりましたので、私は、その全文の資料要求をしましたが、そんなものはないということでありました。メモはないのかと言ったら、メモもない、そういう返事でありました。
 そこで、この記者会見で何を主張されたのか、八田座長の記者会見の内容を簡単に紹介していただきたいと思います。
○川本政府参考人 お答えを申し上げます。
 10月4日のワーキンググループ八田座長の記者会見についてでございます。これについては、雇用に関する特例措置の検討について、解雇特区といったような、議論されていた内容と異なる報道がなされていたということから、こうした誤解がされることがないようということで八田座長が会見を開かれたものでございます。
 会見の中では、雇用に関する特例措置の検討の意図するところは、雇用関係の予見可能性とそれから働き方の柔軟性、これらを高めることによって企業の投資と働き手の意欲を引き出す、それによって雇用の拡大を目指すものであって、解雇を促進する、そういったものではないということを御説明されたものと認識をいたしております。
○佐々木(憲)委員 ただ、こういう、それまでの、今紹介したような主張を見ますと、八田座長が解雇を促進する方向を考えているということは、結果的には明確だと私は思います。
 それで、労働時間の規制の特例については今回は先延ばしだけれども、有期雇用と解雇ルールに対する点については対象を限定する、こういうふうな記者会見ではないかと新聞報道では想定をしております。
 限定をするということになるという記者会見だったのではないかと思いますが、そうじゃないんですか。
○川本政府参考人 限定をするというよりは、これまでワーキンググループで取り組んできた基本的な考え方と今回の国家戦略特区の制度設計の中で、当面盛り込むべき事項として考えている事項としては雇用ルールの明確化と有期雇用の特例だ、こういう御説明をされたというふうに私どもは理解をいたしております。
○佐々木(憲)委員 別紙二という資料を配付資料の四ページ目におつけしましたが、ここでは、有期雇用、解雇ルール、労働時間、この三つが検討されていたわけですね。それを、この記者会見以後のところでは、雇用条件の明確化、有期雇用の特例ということに絞っているということは、資料によって明らかだと思います。
 次に、限定したからといって、例えば弁護士とか会計士、あるいは博士号、修士号の取得者に限定する、これの国家戦略特区関連法案を提出したいというような報道もあります。
 ただ、私は、限定したらいいものになるというふうには思わないので、今のような派遣労働が蔓延しているきっかけになったのは、最初はわずかな、限定した専門職、ここから始まったわけなんですね。例えば、通訳の場合は派遣労働でいいだろうというようなことから始まってきたわけであります。それがどんどん拡大して、今や製造業にまでそれがつながっていった。これが社会問題を引き起こして、賃金の低下、雇用の不安定、そして少子化というような問題にまで関連する事態になっている。
 こういうふうになってくる一番のきっかけは、専門性があるからそこだけは認めろという、そこから始まったんだということを思い起こす必要があるというふうに思います。
 さて、次に、憲法との関係でお聞きをしたいと思います。
 言うまでもなく、憲法には、25条で生存権、27条一項で勤労権、こういうものを保障しておりまして、使用者による一方的な解雇を規制すべきだというのは、この憲法上の基本的人権から導き出されるものであります。
 労働者にとっては雇用の機会を得るということが生活を支える経済的基盤であって、雇用の喪失は生活に深刻な打撃を与えるということになるからでございます。
 憲法27条二項は、賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準、これは法律で定めるとしております。これを根拠に労働基準法が我が国における労働の最低基準を定めており、労働契約法を初めとする各種の労働法が労働のルールを定めているわけです。
 つまり、労働者の生存権、勤労権を保護する、そのために立法によって契約の自由を規制するということでありまして、これは憲法上の要請に由来すると思いますが、大臣の基本的見地をお聞きしたい。
○新藤国務大臣 まさに、国家戦略特区におきましても、そういった規制改革等の施策の総合的、集中的な実施は国民経済の発展と国民生活の向上に寄与するものである、これを目指す、また目的とするものでございますから、生存権、労働権それぞれに適合するものと考えております。
○佐々木(憲)委員 特区を利用した労働法制の規制緩和というのは、私は、どうも、労働のルールを緩めて、その規制を緩めることによって労働者に不利益を与える、そういう治外法権をつくり出すものになるのではないか、憲法27条二項に違反するのではないかという考えを持っております。
 次に、地方自治体との関連でお聞きしますけれども、14日の参考人招致で、山口二郎北海道大学教授はこういうふうに述べております。
  憲法第95条では、一つの地方公共団体のみに適用する法律に関しては、その地方公共団体の住民投票による合意がなければ法律は制定できないと規定してあります。この95条の立法の趣旨は、国の法律によって特定の地方公共団体の自治を剥奪する、あるいは特定の地方公共団体の住民に対して法のもとの平等を侵害することを防ぐという点にあります。
こういうふうに陳述をされました。
 ワーキンググループの論点では、こういう視点はほとんど出てきておりません。私は、この教授の指摘は大変重要なことだと思いますけれども、大臣はどのようにお考えでしょう。
○新藤国務大臣 今御指摘の、憲法第95条に言う「一の地方公共団体のみに適用される特別法」とは、これは、一または二以上の特定の地方公共団体についてのみ適用があり、その特定の普通地方公共団体について他の同種の地方公共団体に対する一般的な取り扱いと異なった取り扱いを規定する法律のこと、このように解釈をしております。
 そして、この国家戦略特区法案というのは、一定の要件を備えた区域について、政令により国家戦略特別区域として指定することであります。具体的な地方公共団体を法律で特定するものではない、こういうことでございまして、憲法95条に規定する、そうしたものには該当しない、このように考えているわけでございます。
○佐々木(憲)委員 私はそういうふうに思いませんで、一定の地方公共団体を含む地域を、総理主導のもとで、特定の、ほかの地域と違う制度をそこで推進する、設定される、こういうふうになりますと、これはいろいろ憲法の規定に抵触することが出てくるというふうに思います。
 それから、もう時間がだんだんなくなりましたので、もう一点、地方公共団体との関係、それから、被害を受ける方々との関係についても確認したいんです。
 山口教授は、地方からの意見を述べる機会を保障する、あるいは地方側の同意を得るという手続を課すといった点でもう少し議論を深めていただきたい、上からの主導で特区を指定する、そして、特定地方公共団体について、ある人にとってはそれはビジネスチャンスの拡大かもしれないけれども、違う立場の人にとっては権利の侵害であるというような事態が生じるわけであります、こう述べているわけです。
 新藤大臣が特区の素案を公表されて、その素案で書かれていたのが成案で消えた部分は、提案者以外の関係者の批判的意見も広く聞く、この部分が別な文章に変わっているんですけれども、意見を聞くプロセス、これがこの法案には私は欠けていると思うんですけれども、そうはなっておりませんか。
○新藤国務大臣 コンセプトの素案から、素案でないコンセプトの方になぜ抜けているかというと、それはこの間も申しましたが、その素案の段階は、この戦略特区を進めていく側も含めて、ワーキングの人間も含めて、どういうふうにこれを進めていこうかという、提案する側と提案を受ける側と双方からの観点を入れて、さまざまなものをお出ししました。
 そして、コンセプトペーパーとして出させてもらったものは、応募しようとする方に対して、こういうことで御応募くださいというものでありましたから、審査する側の観点の部分は、あえてそこは、混乱をするから外した。それから、わかりやすくするために、これは皆さんで考えた上で、文言を整理した、字数を削った、そういうことでありまして、今の、住民の意見を聞くことが必要でないから削ったわけではございません。
 それから、そのコンセプトペーパーの中には、地域の意見をきちんと取り込むということを私は書かせていただいたと思っております。これは、公共団体の長の意見を聞く、また関係者の意見を聞くという中で、公共団体の意見を出すときには、当然のごとくその地域の声を集約したもので、この長の方はそれを御発言されると思いますし、私どもも、地域の声をきちんと聞きながら、そういう中で、住民の声、いろいろな団体の声も聞きながら総合的な判断を進めていくこと、これは政治の要諦でございます。
○佐々木(憲)委員 法案を見ますと、被害者の訴えをこのような経路で吸い上げていくという部分がほとんどないものですから、それで、私は非常にこれは問題がある法律だなというふうに感じたわけでございます。
 最後に、一言だけ述べます。
 資料の一番最後にありますように、対日規制緩和要望をアメリカが出しておりました、2002年の小泉構造改革のときに、特区の項目を細かく提示しております。大臣は、最初にお聞きしたときは、私は聞いたことがないというふうな趣旨をおっしゃいましたけれども、配付資料を見ますと、これはホームページに載っているわけです、在日アメリカ大使館。その中で、実現していないのは、特区内の外資の法人税減税、それからアメリカ企業の優遇、これが実現されていない。
 前回の私の質問は、税制問題で外資優遇になるのを導入すると、結果的にこのアメリカの要望そのものを実現することになるという趣旨でお話をさせていただきました。
 今度の法案は、ほかにもいろいろな議論しなけりゃならぬ部分があるわけですけれども、以上の点、時間が参りましたので、指摘をさせていただいて、終わり

ます。
 ありがとうございました。

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