2013年04月11日 第183回 通常国会 倫理選挙特別委員会 【723】 - 質問
ネット選挙運動法案 選挙権を行使するのは主権者である「国民固有の権利」
2013年4月11日、政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会で、佐々木憲昭議員は、5日に引き続き、インターネット選挙運動解禁法案の解禁対象は、有権者であるべきで、企業が含まれるのは問題だとただしました。
佐々木議員は、公務員の選定や罷免は「国民固有の権利」だと定める憲法15条を示し、選挙権を有する「国民」には企業が含まれるのかと質問。法案提出者は「権利の性格上、自然人のみが有する。つまり自然人=国民だと一般的に解釈されている」(自民・逢沢一郎議員)、「全く同じ」(民主・田嶋要議員)だと認めました。
佐々木議員は、「これはあらゆる選挙の基本原則であり、当然ネット選挙運動でも踏まえるべき原理」だと主張。逢沢議員は「選挙の主役は選挙権・被選挙権を行使する国民」だと答弁。田嶋氏も「会社が1票を投じたり立候補することはできない」と認めました。
また、佐々木議員は、国政選挙啓発費が2009年衆院選では11.5億円だったのに、12年衆院選では4分の1の4.4億円へと大幅に削減されてきたことを示すと、委員室では「ほー」という声が上がりました。
佐々木議員は、国民にネット選挙運動解禁の内容を周知徹底するために「必要な予算をどーんと確保するべきだ」と求めました。
この日の衆議院倫理選挙特別委員会は、インターネットを利用した選挙運動を可能とする法案を全会一致で可決しました。
日本共産党は、自公維案に対して修正案を提出。佐々木議員が、趣旨説明を行いました。
また、採決に先立ち、佐々木議員が討論を行いました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
いよいよ大詰めということでございます。きょうは基礎的なことを確認しておきたいと思います。
ネット選挙運動を解禁するという場合、誰に対して解禁するか、これが重要であります。当然、国民に対して解禁するということだと思うんですね。
では、国民とは何か。憲法第15条には、「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。」という規定がございます。この憲法15条で言う参政権、選挙権を持つ国民に企業が含まれるかどうか、それぞれ提案者にお聞きをしておきたいと思います。
○逢沢議員(自民) 憲法15条、公務員の選定について定められているわけでございます。憲法15条の公務員の選定、罷免の権利、罷免権については、その権利の性格上、自然人のみが有すると解されている。つまり、自然人、国民というふうに一般的に解釈をされているというふうに理解しております。
○田嶋議員(民主) 全く同じ答弁でございます。
○佐々木(憲)委員 1993年4月21日の予算委員会における大出内閣法制局長官の答弁によりますと、憲法15条で規定するところの国民は、自然人たる国民を指しており、いわゆる法人というものは含まれない、このように明確に答弁をされております。つまり、選挙権の行使は、一人一人の主権者である国民固有の権利であるということであります。
これはあらゆる選挙の基本原則でありまして、当然、ネット選挙運動でも踏まえなければならない原理だと思いますけれども、提案者、いかがでしょうか。
○逢沢議員 佐々木先生から以前の議論でもこのことについて触れられました。選挙の主役は誰か、つまり、国民そのもの、選挙権を行使する国民、被選挙権を行使する国民、そのように申し上げておきたいというふうに思います。
○田嶋議員 同じでございますけれども、例えば、○○商事という会社が一票を投ずるとか、○○商事という会社が立候補することはできないという意味で、この15条というのは、選挙権に関しては自然人だということになっていると思います。
○佐々木(憲)委員 その点が非常に大事なことだというふうに思うんですね。
企業というのは、主権者ではなく、選挙権も被選挙権も持っておりません。有権者ではないわけであります。営利を目的とする、そういう組織体ですね。その企業が組織力や資金力に物を言わせてネット選挙運動を仮に行った場合、選挙に大変大きな影響を与える。そういうことになりますと、国民の基本的権利を侵す、そういう懸念がございます。
したがって、我々は、あくまでも有権者個人に対してウエブもメールも全面的に解禁すべきだと考えております。その立場から修正案を準備しておりまして、後で提案をしたいと思います。
そこで、自公維案の提案者に確認をしておきたいんですけれども、ウエブは、情報を得たい人がみずからアクセスして情報を得るのが基本であります。また、衆人環視も働きやすい。SNSの場合は、参加した者の相互のやりとりが中心ですね。これに対して電子メールの場合は、情報提供者が、受け手の受信意思とは関係なく、一方的に送信することが可能であります。それから、密室性も非常に高いというのが特徴だと思うんです。
このような実態を踏まえますと、仮に企業に対して解禁するという場合に、メールの場合とウエブの場合では違いが出てくるというふうに思うんです。その違いをどのように認識されているのか、お答えをいただきたいと思います。
○橋本(岳)議員(自民) お答えをいたします。
ウエブと申し上げてもいろいろなサービスがありますので、個々に言えばいろいろ議論は出てまいりますが、一般論として、佐々木議員が今御指摘されましたとおり、ウエブサイトなどについては見たい人が見に行くという性質のもの、そして、電子メールというのは、情報を送りたい人が送る、逆に言えば、受け取る人は勝手に送られてくる、送られたものを受け取るしかないというような性質の違いというのはあるというふうに申し上げて差し支えなかろうというふうに思っております。
そういう意味で、企業、団体にウエブサイト等を解禁する、あるいは電子メールを解禁する、企業、団体については私たちも認めるという法案を出しているわけでございますが、仮に両方認めるとした場合の影響力の違いという問いでございますけれども、見に行くものについては、企業、団体なのかあるいは個人なのかを問わず、注目度の高い、見たいと思わせるものを一般の方は見に行くわけですね。そういう意味で、企業だから特に有利とか団体だから特に有利、あるいは個人がというようなことではなかろうというふうに思っています。
一方で、電子メールを解禁するとした場合、これまでの質疑などで佐々木議員からよく御指摘をいただいたように、いろいろな営業上の目的のためであることが一般的だと思いますが、電子メールなども当然たくさん収集されているということも、企業が活動としてやっているということはあろうと思いますので、その影響の差が、やはり個人よりも企業、団体の方が有利ということ。個々にはいろいろあると思いますが、一般論として申し上げられることではないかなというふうに思っております。
以上でございます。
○佐々木(憲)委員 私も、基本的には共通の認識を持っているところであります。
次に、周知徹底の問題であります。先ほども少し議論がありました。
先日の各党協議の中でも、ガイドラインをつくる、こういうことが議論になったわけです。これは、協議に参加している各党の意見、衆参の審議内容も踏まえて、より精緻なものにしていくべきだというふうに思っております。
問題は、内容を国民にどう周知徹底するかということであります。それがなければ意味がないわけであります。それぞれ提案者はどのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
○遠山議員(公明) お答えいたします。
佐々木委員におかれましては、日本共産党を代表してずっと各党協議会に参加をいただきまして、さまざまな建設的な御意見をいただいてまいりましたこと、まず大変感謝を申し上げたいと思います。
その上で、本改正案が成立をした場合には、現在と比べて一般の方々が選挙運動を行う機会が増大するということは間違いないと思っております。もう委員御指摘のとおり、国民の皆様一般に、本改正案で定められたルールについては、当委員会でもるる議論をさせていただいたところでございますが、これらについて正確に御理解をいただくということは非常に重要なことであると思っております。
よって、これまでの各党協議会で出された御意見、また、先週来、衆議院の倫選特、当委員会で行われてまいりました議論、それから、衆議院の後に参議院にこの改正案は行くわけでございますけれども、参議院においてもさまざまな御議論があろうかと思います。そういった御議論を集約して、できる限りわかりやすいガイドラインを作成いたします。
そして、私ども法案提出者といたしましては、総務省や各選管ウエブサイトへの掲載、また新聞等のメディアを通じまして、改正案の内容やガイドラインの内容についてわかりやすく周知徹底をしてまいりたい、このように考えているところでございます。
○田嶋議員 佐々木委員おっしゃるとおり、法律をつくることも大事でございますが、さらにそこから周知徹底ということが極めて大事になってこようかと思います。
わかりにくいこと、そしてグレーな状況のようなことは、今の公選法でもいろいろございますが、この機会に改めて、ネット選挙解禁というタイミングで全てを確認していかなきゃいけないというふうに考えておりますが、対象は同じでございまして、一般有権者であり、そして、候補者であり、政党であり、各種団体であり、そういうところ全体にしっかりと周知をしていかなきゃいけない。
特に、今回はインターネット選挙だけを解禁するわけでございますので、これは現実的に公選法のほかの課題は残っている部分もございます。それによる誤解とか勘違いということも十分注意しなきゃいけない。
そして、最後にもう一つだけ。
ネット選挙解禁というと、これまで全面禁止だったわけですから、それが解禁となると、そこだけ言葉がひとり歩きしてしまいますので、何でもかんでもできるという勘違いが起きると、また国民が知らぬ間に法律を犯してしまうリスクもありますので、その周知をしっかりしなきゃいけないと考えております。
○佐々木(憲)委員 それが非常に大事な点だと思っております。
このガイドラインというのは、つい最近情報としていただきましたが、非常に薄っぺらくて、あれじゃまだまだ足りないと思っておりまして、きちっと充実をして対応できるようにぜひやっていきたいと思っています。
選挙管理委員会のホームページにわかりやすい解説を載せる、こういうのは当然だと思うんですけれども、例えば候補者などが自分のホームページにリンクを張れるようにするとか、ネット上で周知徹底できるように工夫するというようなこと、いろいろ考えられると思いますので、お願いをしたいと思います。
そこで、そのためには一定の費用がかかるわけです。
例えば、国の予算の選挙啓発費というのがありますね。これは、この間大幅に減っているんですよ。衆議院選挙の啓発費という項目を見ますと、2009年の11億4909万円から2012年の4億4304万円へと、4分の1近くに減っているんですよ。それから、明るい選挙推進費というのがありますね。これは、2009年度は3億7857万円、2012年はわずか2659万なんです。14分の1に減っているんです。選挙制度が変わったときの1995年度は23億9022万円でありましたが、これに比べると90分の1という驚くべき減り方でございます。
新しくネット選挙運動をやっていく、周知徹底をし啓発をしていく、そういうことをやろうというときに、こんなに予算が減ったんじゃ、これは非常に問題があると思うんです。これをどおんとふやす、そういう決意で臨んでいただきたい。どうですか。
○遠山議員 佐々木委員から今教えていただいた数字を聞いてみますと、2009年の衆議院選挙から2012年、昨年の選挙でどおんと減っている項目が、明るい選挙を推進する費用などがありますね。これは、民主党政権下の事業仕分けか何かにひっかかったのかなという印象を受けましたけれども、それは民主党の……(発言する者あり)ひっかかりましたという御答弁が既に席からありますので、それはいろいろな角度から検証されて減らしたんでしょう。
私どもも、今回のネット選挙の解禁によりまして、新たなルールの周知徹底の必要性が生じるということはありますけれども、一方で、国民の皆様一般から、税金の無駄遣いになるような形での選挙運動経費の使い方ということについては、厳しい御視線もあると思います。
そういう意味では、なるべく経費がかからないような形で選挙を行っていくということを原則としながら、必要な予算については政府においてしっかりと確保をして、特に、今回のネット選挙の解禁は新しい地平を公職選挙法の世界で開くわけでございますので、そこに必要な予算はぜひ獲得をしていかなければならないと法案提出者として考えているところでございます。
以上です。
○田嶋議員 先生、大変いい御指摘をいただいたと私は思うんですが、インターネット選挙運動を解禁するわけでございますから、まさに、その周知徹底もインターネットを使うべしというふうに思います。
そういう意味で、まさに、お金の余りかからない道具が今いっぱい広がっているわけです。例えば若い方々は、余り新聞を読んでいないよというような方でも携帯ツールはいつも持っている。そういう方々には、お金のかからないやり方で、いろいろ工夫をして周知徹底を図っていきたいというふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 事業仕分けは、我々、見ていてちょっとやり過ぎじゃないかと思う点がありました。そういう意味で、必要なところにふやすという御指摘は共通しておりますから、よく現実を見て、周知徹底という場合には、やはり国民に対してどれだけ周知し啓発するかというのが大事なのであって、そこに力点を置いた予算の配分ということを今後ぜひやっていただきたい。これを要望しまして、質問を終わりたいと思います。