2013年02月14日 第183回 通常国会 内閣委員会 【708】 - 質問
「中小企業の倒産防ぐ」円滑化法延長求める
2013年2月13日、佐々木憲昭議員は、内閣委員会で、補正予算関連法案である企業再生支援機構法改定案について質問しました。
政府提案は、企業再生支援機構は地域経済活性化機構に名前を変えて延長するというものですが、しかし中小企業が“頼みの綱”としてきた金融円滑化法は3月で終了します。
佐々木議員は、金融円滑化法を利用した中小企業は30万〜40万件、一方、企業再生支援機構を利用した企業はJALを含めて28件で、そのうち中小企業はたった11件だと指摘。圧倒的多数が利用している金融円滑化法をやめ、中小企業がほとんど利用していない企業再生支援機構を延長する理由はどこにあるのかと追及しました。
甘利明経済再生大臣は「中小企業を機構が全部カバーすることはできない」と釈明するのみで、まともに説明できませんでした。
佐々木議員は、「金融円滑化法が中小企業の倒産防止に大きな役割を果たしてきた」と強調。打ち切りを前に、金融機関による中小企業の選別が始まっており、東京商工リサーチによると3年間の潜在的倒産件数を2万〜3万件と推測している事実をあげ、「弱体化した中小企業が金融機関の選別にさらされ、倒産しかねない。貸し渋りや貸しはがしが再び起こり、日本経済に重大な影響を与える可能性がある」と指摘しました。
寺田稔内閣府副大臣は、経営改善計画が策定されないモラルハザードが起きているなどと決めつけ、「金融円滑化法の精神を盛り込みつつ、新たな利用者支援などを用意した」とのべました。
佐々木議員は「それは、融資をする銀行の側に立った説明だ」と厳しく批判。「経済状況が厳しい中、貸し付け条件の変更を銀行に促し倒産を防いできたのが金融円滑化法だ。この円滑化法を再延長するべきだ」と主張しました。
この日の内閣委員会では、日本共産党の赤嶺政賢議員が反対討論を行いました。
企業再生支援機構法改定案は、この日の衆院本会議で、賛成多数で可決しました。日本共産党、みんなの党、社民党が反対しました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
日本の企業の数は約400万社と言われておりますが、その中で、中小企業は企業数で99・7%を占めております。従業員の数でも圧倒的に大きな比率を占めているわけであります。
それで、政府提案は、従来の企業再生支援機構を地域経済活性化機構に名前を変えて延長するというものであります。しかし、中小企業が頼みの綱としてきた金融円滑化法は3月で終了する。そのやり方でいいのかというのが疑問でございます。
実績を聞きたいんですが、企業再生支援機構を利用した中小企業の件数、それから金融円滑化法を利用した中小企業の件数、それぞれ教えてください。
○甘利経済財政政策担当大臣 円滑化法を利用した件数は3、40万社だったと。そして、この企業再生支援機構を利用した企業数は、28件の支援決定を実施しておりまして、中小企業に対する支援案件は11件であります。
○佐々木(憲)委員 今お答えになりましたように、金融円滑化法は40万というような単位なんですね。ところが、企業再生支援機構は、JALを含めて28件。これはもう圧倒的な差があります。
中小企業が圧倒的に利用している円滑化法をやめて、中小企業がほとんど利用していない企業再生支援機構を、名前を変えて、中身を若干変えて延長する、その理由は一体どこにあるのか、説明してください。
○甘利経済財政政策担当大臣 御指摘のとおり、円滑化法を利用した企業数と、今回提案をしている組織の前の仕組みを活用した例というのは、はるかな乖離があるわけであります。
第一義的には、地域の金融機関が、対象とする中小企業に対してどういう姿勢でどういうバックアップをするかだと思います。ですから、円滑化法が終了いたしましても、地域の金融機関が手のひらを返したような対応をされては、これは大変なことになるわけであります。
地域金融機関というのは、メガバンクと違ってと言っていいんでしょうか、地域の企業とともに生きているわけでありますから、これは引き続きお客さんも生きていてもらえなければ、自分も貸し先がなくなるわけであります。そういった意味で、金融庁からは、丁寧な対応をするようにという指導は行っております。
あわせて、その金融機関がマンパワー等で、専門家の人材が足りないというときには、その人材を派遣して、企業の経営改善策をしっかりつくっていけるような、そういう支援体制をしっかりしたということであります。
あわせて、今度の機構法につきましては、地域の中心となっている企業が倒れたりした場合には、地域経済そのものがおかしくなってしまう、面的に支援をしていくという発想を加味して対応する。
でありますから、先生御指摘のとおり、小さな企業、中小企業について、この機構が全部カバーするということはできないと思います。それぞれ役割分担で、まず金融機関がしっかり支援をする、そして協議会が対応していく、それからこの機構が対応する。それぞれが補完するような関係で機能を発揮していくという設計になっていくと思います。
○佐々木(憲)委員 地域の金融機関の姿勢が大事だというふうにおっしゃいました。
金融円滑化法は、倒産防止に非常に大きな役割を果たしたんです。これをやめる理由というのが、どうも今の話を聞いても余りよくわからないんですが、今はまだ中小企業にとっては経済環境というのは非常に厳しいわけでございます。円滑化法を廃止するということになったことを見越して、銀行の姿勢が、今おっしゃったような、態度をころっと変えている、こういう状況というのが生まれております。
例えば、銀行の方から、あなたの企業はもう法的整理を検討したらどうかというようなこととか、あるいは自主廃業をしたらどうかと。つまり、銀行にとって利益が出ているところはこれからも貸しますけれども、非常に危ない今の経済状況の中で厳しい状況にあるところは、もう貸し渋り、貸し剥がしというような感じで、また態度が変わってくる。こういう例があります。
東京商工リサーチの情報本部長はこういうふうに言っているんです。この3年間の潜在的倒産件数を、2万から3万あると推測している。これらの弱体化した中小企業は、金融機関の選別にさらされ、倒産しかねない。再び貸し渋り、貸し剥がしが横行して、この日本経済に大変大きな影響を与えるという可能性がある。そういうふうに言っているわけですが、大臣はそう思いませんか。
○寺田内閣副大臣 お答えをいたします。
まず、円滑化法の利用対象となった件数ですが、民間調査機関のデータ等による推計ですと、おおむね30万社から40万社というふうに推計をされておられます。
円滑化法、これは委員おっしゃるとおり、金融の円滑化には資する面もあったわけでありますが、条件を変更しております。例えば、支払い期限を延長する。そのことによって、逆にニューマネーが出なくなってしまった。あるいは、これは絶大なるモラルハザードを発生せしめた。また、事業再生に必ずしも資していない、すなわち経営改善計画の策定につながっていないというデメリットも顕在化をしているところでありまして、我々といたしましては、円滑化法の精神は、新機構法の64条で金融の円滑化への努力義務規定として盛り込みつつ、さらに事業再生支援などの新たなツールを用意しているところであります。
金融機関に対しましては、貸し剥がしをしないような指導をいたしておりますが、今後とも丁寧な対応の指導に努めてまいります。
○佐々木(憲)委員 今の説明は、銀行の、融資をする立場の代弁のような説明で、中小企業の側から見ると、自分の経営の責任で危機に陥るというのは、それは自分の責任かもしれない。しかし、今は経済状況が非常にまだ厳しいわけですよ。そういう中で、経営困難に陥っているところが銀行に頼んで、リスケをやってくれ、条件変更をやってくれと、そういうことで銀行は対応してきた。それを促す法律が円滑化法なんです。
その法律の一番のポイントは、その状況について、つまり、銀行が中小企業の要望に応じてどのような改善をしたか国に報告しなさいというのが一番大事な点なんですよ。それがなくなるわけです、今度。だから、そういう点でいうと、私は法律を廃止するというのは非常に問題があるというふうに思います。
最後は時間がないので大臣に。
今度の、こういう報告義務がなくなるというような状況のもとで、倒産に追い込まれるような事態が、銀行の姿勢も先ほど言ったようなことで変わってくると、起こりかねない。そういうことに対して、やはりきちっとした支援をすべきだと私は思います。私はこの円滑化法の延長をすべきだと思いますけれども、どうですか。
○甘利経済財政政策担当大臣 大事なことは、単なる延命策ではいけないということでありまして、改善策にならなければいけないと。そこで、この円滑化法が期限を迎えるに当たって、改善策をより手厚くしっかりしていくと。企業が再生できる余地があるところについてはそれを最大限引き出していくということを重点に対応していくということであります。
○佐々木(憲)委員 改善策をやるのは私は当然だと思います。それが本当に今回の廃止によって後退するのかどうか、これはきちっと注視していかなきゃならぬと思います。
もう時間が参りましたので。問題点、ほかにもいろいろありますので、討論の中で表明させていただきます。どうもありがとうございました。
○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
私は、日本共産党を代表して、株式会社企業再生支援機構法の一部を改正する法律案に対して、反対の討論を行います。
反対する理由の第一は、事業再生に係る金融機関や民間再生事業者の負うべき債権破綻リスクを国民の税金で肩がわりする制度を拡大、延長するものだからであります。
政府は、中小企業の倒産防止の上で大きな役割を果たしてきた金融円滑法を、昨年、本法律と一緒に、1年間延長する提案を行いましたが、今回は金融円滑化法の延長はありません。機構による中小企業支援の実績はこれまでわずか11例しかなく、機構の企業再生支援は、税金による肩がわりという問題に加えて、厳しい経済環境に置かれている多数の中小企業支援策としてはほとんど無力というのが実態です。その機構を延長し、数十万件の実績のある金融円滑化法を打ち切ることは、中小企業支援策としては本末転倒であります。
反対する理由の第二は、日本航空等の再建において従業員の不当解雇や不当労働行為を行ってきた機構を存続させるものだからであります。
機構が再生支援で行った出資額の95%は、大企業、日本航空の再生にかかわるものでありました。その日本航空の再建においては、日航の稲盛会長が、雇用の維持は経営上不可能ではないと述べていたにもかかわらず、労働者の解雇が強行されたのであります。本法律は、目的で「雇用の安定等に配慮しつつ」と規定していましたが、この規定は全く意味をなさなかったのであります。さらに、機構は、労働組合のストライキにも不当介入さえ行いました。こうした姿勢の機構が存続し、業務を拡大すれば、各地で労働者犠牲の企業再生が拡大しかねません。
以上、反対の討論とするものです。