税制(庶民増税・徴税), 金融(銀行・保険・証券) (消費税, 中小企業融資, 社会保障・税一体改革)
2012年11月07日 第181回 臨時国会 財務金融委員会 【700】 - 質問
「消費税負担増の試算公表を」「金融円滑化法の延長を」要求
2012年11月7日、佐々木憲昭議員は、財務金融委員会で、消費税負担増の試算公表の問題と金融円滑化法の問題について質問しました。
佐々木議員は、消費税増税で低所得者層へ大幅な負担増となることを示した試算を内閣府が民主党議員にのみ出していた問題を取り上げ、暮らしも景気も壊す消費税増税の負担の実態を世帯ごとに試算し、公表することを求めました。
内閣府の試算は、消費税が10%に引き上げられた場合、年収300万円の世帯(40歳以上の会社員の夫・専業主婦・子ども2人)で、消費税増税分で年間8.2万円、「一体改革」による社会保険料の値上げなどを含めると家計全体で27.3万円もの負担増となるものです。
佐々木議員は「月収20万円の家庭で月に2万3千円も負担が増え、その分可処分所得が減り、消費に影響が出る。これでは低所得世帯では生活が成り立たなくなる」と指摘し、あらゆる世帯での負担を試算するよう要求しました。
藤本祐司内閣府副大臣は、先の試算が内閣府によるものであると認め、その他の世帯の試算公表も約束しました。
城島光力財務大臣は「低所得者対策について立法措置を含めた具体化を検討している」と答弁。
佐々木議員が「検討中で確定していない。実施したら負担増はなくなるのか」と追及すると、城島大臣は「負担軽減になる」としか答えず、低所得世帯への負担増発生を否定しませんでした。
佐々木議員は、消費税増税などで負担増総額が約20兆円となることについて「これだけ負担が増えると家計消費に影響する。景気にマイナスに作用する」と主張しました。
佐々木議員は、中塚一宏金融担当大臣が金融円滑化法の再度の延長はしないとしている問題を取り上げ、中小零細企業の経営実態を見れば来年3月末の期限も延長すべきだと求めました。
金融円滑化法は、中小零細企業などに対する金利負担軽減などの条件変更や再生計画の支援を金融機関に行わせるために導入されました。
佐々木議員は、「300万件の条件変更が行われ、一定の効果があった」と評価。「金融機関が中小企業の相談に応じてきたのはどのように対応したかを報告する義務があったからだ」と述べ、同法が廃止されると、これまで金融機関に課されていた報告義務がなくなると指摘。「それがなくなると実効性が伴わないことになる」と批判しました。
中塚大臣は「監督・検査は引き続き変わりません」と述べるにとどまりました。
佐々木議員は、中小零細企業は「大変な業況」であり、金融円滑化法は延長すべきだと主張。経営再建の援助強化を求めました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
まず、城島財務大臣に消費税問題についてお聞きしたいと思います。
さきの国会で、政府・与党は、自民、公明と三党合意を結んで消費税増税法案を強行したわけでありまして、我々は反対しました。
この消費税増税は、2009年の民主党のマニフェストに書いておらず、総選挙で民主党幹部が消費税の引き上げは行わない、こういう公約をしていたにもかかわらず増税をした。これはまさに公約違反であると我々は思っております。したがって、法案を通す前に解散して信を問うべきだということを我々は言ってまいりました。
ところが、政府の答弁は、法案を通した後、税率を引き上げるまでの間、その間に総選挙があるので、そこで国民に信を問えばいいというものでありました。
大臣にお聞きしますけれども、次の総選挙で、当然、この消費税増税を実施すべきかどうかについて信を問うということになると思いますが、いかがでしょうか。
○城島財務大臣 それで信を問うということになるかどうかは別として、民主党政権にとってみますと、政権によるさまざまな重要な政策についての判断で信を問うということになると思います。その中の重要な一つだと思いますけれども、そのことだけで問うということではないと思います。
○佐々木(憲)委員 消費税増税は信を問う中の重要な柱である、そういう答弁であります。
したがって、信を問うということになりますと、判断材料として、例えば消費税増税によって、あるいはその他の負担増によって各世帯がどのようになるのか。一体改革でどのような負担を負うことになるのか。あるいは、改善されるというものがあれば何が改善されるのか。この点をきちんと説明をする、そういう説明責任を果たさなければならないと思うんです。
そこで、お配りした資料を見ていただきたいんですが、これは、9月23日の朝日新聞に出ていたわけであります。
これは、民主党議員に対して負担増の試算を示したという記事でございます。六つの世帯類型で、そこにありますように、2011年4月と2016年4月でどれだけ年間負担額がふえるのか、これが試算されているわけです。
内閣府副大臣がお見えだと思いますが、こういう試算をしたことは間違いありませんね。
○藤本内閣府副大臣 お答えいたします。
9月23日の朝日新聞の記事のベースになったものは、恐らく、内閣府から民主党の議員の依頼に応えたものだというふうに思います。
それは、民主党議員からの個別の依頼がございまして、世帯における給付と負担の変化について、今六つの世帯類型というふうにお話がありました、その議員から示された六つの世帯類型の具体例に当てはめまして、2011年の4月の時点と2016年の4月の時点での水準の差を、やはりその議員が示した前提に基づいて機械的に計算をして議員にお渡ししたものでございまして、内閣府の意思に基づいて内閣府が前提条件を決めたものではなく、その議員の意思と、その議員の前提条件に基づいた機械的な計算ということでございます。
ただ、試算の前提の置き方が政府の考え方と必ずしも一致しないものもございまして、政府として一体の見解を示すという趣旨のものではないということはぜひ御理解いただきたいと思います。
○佐々木(憲)委員 前提はいろいろあったとしても、内閣府が試算をした、そういうことをお認めになったわけです。
前提は若干の誤差があるとしても、内閣府が試算をした結果、ここに報道されているようなものが出てきたわけですが、私は、低所得者層の負担が非常に重いというのに非常に驚いたわけです。
試算によりますと、40歳以上の会社員の夫、専業主婦、子供二人の世帯では、年収300万円の場合は、消費税増税による負担が8・2万円、他の負担も合わせると27・3万円ということでありまして、ボーナスを三カ月と仮定しますと、月収20万の家庭で月に2万3千円の負担ということになるわけで、当然その分、可処分所得が減るわけで、可処分所得が減りますと消費に影響が出てくる。
改めて言いますけれども、40歳以上の会社員の夫、専業主婦、子供二人の世帯で年収300万だと27・3万円の負担になる。この計算自体は内閣府としてやったわけですけれども、この数字はそのとおりなんですか。
○藤本内閣府副大臣 お答えします。
それぞれの前提条件に基づいて、いわゆる保険料、年金保険料とか医療保険料とか、あるいは消費税とか、そういうものは個別に出したものでございますが、これは単純に足し合わせたものでございます。
今、佐々木委員がおっしゃったように、いわゆる低所得者への配慮、これは、臨時的、暫定的な措置として、簡素な給付措置というのをこれから講じるということで、将来的には給付つき税額控除あるいは複数税率ということを今後議論していくことになるわけでございますし、この場合は、やはり給付を下げないでも済むようにする、そういうプラスの面もあろうかと思いますし、医療であるとか、いわゆるサービス、負担と給付との関係があるわけですから、そこのところをしっかり見ておかないと、この数字だけ見てしまうと、総合的に見て、全体的に見て、誤解を生じる可能性はあるのかなというふうには思っております。
○佐々木(憲)委員 これから改善するものというのはこの中に入っていない、それは当然でありまして、検討するということになっているわけであります。つまり、確定したこの一体改革の内容に沿って計算をするとこのような結果になるということを一定の前提を置いて内閣府が試算をしたものであるということであると。それは非常に大変な数字だと思うわけですね。
しかし、私は、この類型はまだ全体の中の一部でありまして、ほかにもいろいろな類型、世帯の構造は違うわけでありますから、それで、これに当てはまらないケースもたくさんあると思うんです。国民に判断を仰ぐ場合は、それぞれ、あなたはこういう類型に当てはまるということをきちっと知らせる必要があると思います。
例えば、会社員の40歳以上の夫、専業主婦の世帯で夫の年収300万、500万、700万、900万の場合の試算はどうか。また、会社員の40歳以上の夫、専業主婦、小学生の子供二人の世帯で年収700万、900万の場合はどうか。さらに、会社員の40歳未満の単身世帯で年収500万、700万、900万の場合はどうか。そういうことも含めて、それぞれ、例えば2009年4月、2011年4月、2016年4月、この試算を示すというのも当然やらなければならぬと思いますが、私が今示した内容について、試算をぜひやっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○藤本内閣府副大臣 佐々木委員から多分11月2日の時点でファクスでいただいているのに加えまして、今お話があったのは、5日に口頭でいただいた、さまざまな世帯類型をもう少しふやして、あるいは年収をいろいろふやしてということと、2009年度、2011年度、2016年度ですか、その各時点の具体的な税の税目まで示していただいておりまして、消費税であるとか復興財源のための税制措置、あるいは年少扶養控除を廃止した後の所得税とか住民税、あるいは年金保険料、医療保険料、さまざま、こうした個別の額について出してくれというお話だったというふうに理解をしております。
現在、委員から前もってお話があったこれらの依頼を踏まえまして、個々の税額あるいは保険料額につきましては、担当する財務省であるとか総務省であるとか、あるいは厚生労働省において今作業をしている最中でございますので、追加の部分も含めて、その数字について、算出できた段階で委員にお示ししたいというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 ありがとうございます。
財務大臣にお聞きしますけれども、年収300万の場合に、ほかの負担も合わせて27万3千円の負担がふえるわけです、この試算によりますと。これは年収の約1割弱の負担増ということになるわけで、非常に重いと思うんですよ。低所得者世帯は、これはなかなか生活が成り立たなくなるのではないか。世帯の努力で対応できるような負担ではないと思うんですが、大臣はどのように認識されておりますか。
○城島財務大臣 消費税率の引き上げは、今もお話ありましたけれども、その負担の面だけ取り上げて見るべきではなくて、今回は、御承知のように、一体改革では、引き上げた分が全額社会保障財源として国民に還元されるということ、そして社会保障制度は所得の低い方々を中心に給付が行われるということから、給付と負担の両面をあわせて考えてみる必要があると思っております。
また、今回の一体改革では、社会保障の充実の一環として、きめ細やかに低所得者対策を講ずるということとしておりまして、具体的には、国民健康保険の保険料や、あるいは介護保険の高齢者の保険料の低所得者軽減の強化といったことが盛り込まれております。
その上で、消費税率の引き上げに当たっての所得の低い方々への配慮については、今も答弁いたしましたように、税制抜本改革法において、給付つき税額控除について、所得の把握、資産の把握の問題、執行面での対応の可能性を含めさまざまな角度から総合的に検討することとされており、他方、複数税率について、財源の問題、対象範囲の限定、中小事業者の事務負担等を含め、これもさまざまな角度から総合的に検討することとされております。
さらに、消費税率8%の段階から給付つき税額控除または複数税率の実施までの間の暫定的、臨時的な措置として簡素な給付措置を実施することとしており、その内容については、真に配慮が必要な低所得者の方々にしっかりとした措置が行われるよう、今後、立法措置を含めた具体化を検討することとしております。
政府といたしましては、これらの具体化に向けて、三党における議論も踏まえて、税制抜本改革法に示された諸課題を含め、幅広い観点からきちっと検討してまいりたいと思っております。
○佐々木(憲)委員 負担のみではなく給付の面もと言いましたが、計画を見ますと、給付も減っていくわけですね。年金の給付も減る、あるいは医療の負担もふえる。そういうことを総合的に、合わせて結果的に幾らになるか、こういう試算を求めていて、今、後で計算が出てくると言うので、それを見た上でまた議論したいと思います。
今大臣がおっしゃった低所得者対策ですが、給付つき税額控除、軽減税率等は今検討中なんでしょう。これは確定していないわけですね。検討中だと言うんですけれども、仮に実施されたら、低所得者層の世帯では負担増というのは全くなくなる、こういうことが可能なんですか。
○城島財務大臣 全くなくなるかというような、全くという表現がついておりますけれども、今申し上げたように、低所得者の方々への配慮をするということできちっと詰めていくことになると思います。少なくとも、負担の軽減ということは間違いないと思います。
○佐々木(憲)委員 それは、低所得者対策を何かやれば若干軽減部分が出てくるとは思いますが、27万3千円という負担増というものが全部解消されるような軽減策なんというのを政府が考えているはずがないです。それは全然、ほんの微々たるものであります。大臣の答弁でもゼロになることはないと言っているわけですから、結果としてこれが実行されなければ、結果的には負担が大変なものになるということなんです。
それからもう一つは、負担の総額なんですけれども、消費税では13・5兆円、10%ですね。年金、介護、医療、子ども手当、この負担増と給付減というものを合わせると6・5兆円。約20兆円負担がふえるわけです。これだけ負担がふえると、当然、家計消費に影響すると思います。
景気にマイナスに作用するという認識はありますか。
○城島財務大臣 これは、過去の例からいっても、ならしてみると景気に影響はないというふうに思いますし、ないようにしていかなきゃならぬというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 過去の事例は、影響が物すごく大きくて、全体として税収まで減ってしまったんですよ。消費税部分はふえたかもしらぬが、ほかは、法人税、所得税が減って税収全体が落ち込んだというのが実態なんですね。これだけ負担をふやしますと、当然その部分の所得が減るわけでありまして、そういう点の認識が全然ないというのは極めて楽観的。非常に大きな問題があると私は思います。
次に、中塚大臣にお聞きしますけれども、金融円滑化法の延長をしないということなんですが、これは、今大変な中小零細企業の業況でありまして、金融機関が、この円滑化法があったおかげで、中小企業に対するリスケジュールなどの支援が結構行われて、約300万件の条件変更が行われました。我々、この法案にも賛成しましたけれども、これは一定の効果があったと私は思います。
しかし、これがなくなるということになると、大事なことが抜け落ちるんじゃないか。いや、同じことを求めるんだ、先ほどの答弁では、変わりはありませんというようなことを言っていましたけれども、しかし、法律上、抜け落ちるものがあるんじゃありませんか、どうですか。
○中塚金融担当大臣 今、300万件とおっしゃいました。それで、この中に、足元ですと、再リスケと言われるのが大体8割ぐらいになってきているといったようなこともあります。金融機関に対する監督検査の姿勢は、もうこれは変えません。他方、条件変更だけではなかなか再生してこないところについては政策パッケージをしっかりとやっていきたい、そういうふうに思っております。
今先生から御指摘のあった変わる部分というのは、恐らく報告のことだろう、そういうふうに思っておりますが、検査監督は変わらないと申し上げましたけれども、これは、私は、この法律がなくなっても、金融機関は、特に地域金融機関はビジネスモデルを変えていただきたい、この3年間の取り組みは、変えていただくぐらいのことだと思っておりまして、定着させていきたいと思っています。
ですので、監督検査は引き続き変わりませんが、より光を当てるということで徹底をしてまいりたい、そう思っております。
○佐々木(憲)委員 この法律では、中小企業がリスケの要求をした場合に相談に応ずる、あるいは体制を整備すると。これは、検査マニュアルなどでチェックするということによって対応できると思いますが、報告義務がすっぽりなくなるわけです。
今まで金融機関が中小企業の相談に応じてきたのは、報告義務があるので、どのように対応しましたかということを報告しなきゃならないということで一定の大きな効果があったわけです。それが抜けてしまうということになりますと、幾ら号令をかけても、これはなかなか実効性が伴わないということになりますので、私どもは、この円滑化法については、来年、延長すべきだという立場であります。その上で、今言われたように、経営再建の援助をする、それはそれとしてしっかりやる、こういうことでやるべきだという点、もう時間が参りましたので、このことを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
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