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金融(銀行・保険・証券), その他 (同意人事)

2008年03月25日 第169回 通常国会 財務金融委員会≪聴聞会≫ 【445】 - 質問

日銀の新副総裁から所信を聴取し質問

 2008年3月25日、財務金融委員会が開かれ、20日に日本銀行副総裁に就任した白川方明氏と西村清彦氏から所信を聴取し質問しました。
 佐々木憲昭議員は、これまでの日銀の政策・役割について、どのように評価しているか、2人の認識を確かめました。
 ひとつは、1980年9月の「プラザ合意後の日銀による超低金利政策が、バブルの引き金を引く要因になったという認識はあるか」とききました。
 白川氏は、バブル経済の要因の一つとして「長期に渡る金融緩和があったと認識している」とし、「社会全体として忘れてはいけない教訓だ」と述べました。
 西村氏も「金融緩和が(バブル経済の)一つの底流をなす動きをした」と答えました。
 佐々木議員は、日本と同様「プラザ合意」でアメリカのドル高是正で強調したドイツが、低金利政策をすぐに脱却したのにたいして、超低金利を2年以上継続した日銀の対米従属姿勢を批判しました。
 そのうえで、その教訓を踏まえれば、金融政策について「対外協調を優先するのではなく、国民の生活・経済に軸足を置くべきだ」と主張しました。

議事録

【佐々木議員の質問部分】
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。私は、これまでの日銀の政策とその役割、これをお二人がどのように評価をされているか、お聞きをしたいと思います。
 まず、80年代のバブル経済、それと金融政策の対外的な自律性の問題についてお聞きしたいと思うんです。
 1985年9月、プラザ合意というのがありました。アメリカのドル高是正で各国が協調するということで合意されたわけですけれども、このとき日本は、円高への誘導それから超低金利政策、こういう方向に転換をするというのが求められました。日本は、既に当時、地価の上昇が発生しておりました。にもかかわらず、連続的な公定歩合の引き下げがありまして、5回にわたって、5%だった公定歩合を2.5%、当時としては超低金利政策であります、そういう状態に引き下げたわけです。
 ところが、日本は2年間その状態を続けましたが、ドイツなどは早々と低金利政策から脱却をしておりました。したがって、この日本だけが、いわば対米協調を最優先させる形で超低金利政策を長期間に続け、結果として、国内のバブルの火に油を注ぐ形になったというふうに私は思います。
 それで、元日銀総裁の三重野氏は、94年2月にこういう話をしております。当時の経済活動の過熱全般について金融政策面からもう少し早くブレーキをかけることができたら、経済活動の振幅はもう少し小さなものとなっていただろう、こういうふうに言っているわけです。
 そこでお聞きしますけれども、バブル経済を発生させた要因として日銀の超低金利政策があった、そういう認識がおありかどうか。
 それからもう一つは、国内経済、とりわけ国民の生活、この面にマイナスの影響が及ぶということが想定されるような政策、例えば超低金利政策、こういうことが、国際的な協調ということでアメリカとの協調を優先させて、いわば国内を二の次に置くような、私はそういうことをやってはいけないと思いますけれども、そういう局面に至った場合に、軸足を、自主的な方向でかじを切るのか、それとも対外的な協調ということを最優先させるのか。
 これはなかなか判断は難しいかもしれませんが、私は、国民の生活、経済のところに軸足を置くのが基本であるというふうに思いますが、この二点についてそれぞれお答えをいただきたいと思います。
○白川参考人(日本銀行副総裁) お答えいたします。
 80年代のバブルの経験は、私にとっても大変大きな経験でございました。当時はまだ中堅の職員でございましたけれども、金融政策を担当する局の調査役という肩書でございました。十数年前に私は銀行の同僚と一緒にバブル経済に関する論文を書き、本を出版いたしましたけれども、実は、そのときの強烈な思い出があっての話でございます。
 今の委員の御質問についてお答えをいたします。
 80年代後半のバブルでございますけれども、このバブルの発生につきましてはいろいろな要因が作用しているというふうに考えられますけれども、そのいろいろな要因の中に、一つとして、長期にわたる金融緩和、これもその一端があったというふうに認識しております。
 では、なぜそういうことになったのかということでございますけれども、バブル発生に至る金融政策を振り返りますと、国内経済は、85年のプラザ合意以降の急速な円高進行の影響が懸念されるという状況でございました。このため、日本銀行は公定歩合を2.5%まで引き下げ、委員御指摘のとおり、この政策が1989年まで2年以上続いたということでございます。
 こうした金融緩和がなぜ続いたかというその背景でございますけれども、これは事実の分析としてのまず説明でございますけれども、第一は、景気の回復傾向が次第に強まる中、足元の物価上昇率がこれはゼロ%台でございました。したがって、物価上昇が今目に見えていないじゃないか、そういうふうな議論が強かったというのが、これが第一の要因でございます。
 第二の要因は、国際的に大幅な経常収支の黒字の是正あるいは円高の回避が優先的な課題として考えられていたということが指摘できると思います。そうしたもとで金融緩和が長期にわたって継続するという期待が生まれたということがその原因だというふうに考えます。
 このことは非常に多くの教訓を、これは苦い教訓でございますけれども、提供しているというふうに考えております。先ほど、冒頭も少し申し上げましたけれども、金融政策は効果波及のタイムラグは長いこと、それから、金融と実体経済の間には複雑な相互依存関係がありますことから、足元の動向だけでなくて、中長期的なリスクについても十分な目配りをする必要があるということが、これが大きな教訓であります。この教訓は、日本銀行自身にとってもこれは忘れてはならない教訓でございますけれども、しかし、社会全体としてもこれは忘れてはいけない教訓だというふうに思っております。
 それで、御質問の国際協調でございますけれども、私は、国際協調あるいは国際的な政策協調という言葉が、多少人によって都合よく解釈されているなという感じがいたします。一国の中央銀行が責任を持って対処すべきは、これは、国内の物価安定のもとでの持続的な経済成長というふうに思います。このことは、世界経済がどうなってもいいということではもちろんございませんで、世界全体の金融、経済の安定、これは常に意識いたしますけれども、しかし、最終的に責任を持つべきは、国内の経済、物価の安定であるというふうに思っております。
 そういう意味で、中央銀行が常に何を基軸に持たないといけないかということですけれども、それは、日本銀行法に書かれていますとおり、物価の安定を通じて国民経済の健全な安定に資するということに尽きるというふうに思います。
 問題は、そのことをその時々の状況においてどういうふうに解釈していくかということでございますけれども、例えば、ある為替レートを固定的に維持していくとか、あるいは経常収支の黒字額を減らしていくとか、そういうふうに、何か物価安定のもとでの成長以外の目的をそこに外から入れ込みますと、これは長い目で見て必ず経済は不安定になっていくというのが、私自身が常に心にとめている大きな教訓だということでございます。
○西村参考人(日本銀行副総裁) お答えいたします。
 私自身、92年か3年か自分でも忘れましたが、「日本の株価・地価」という本を出しまして、その中で、バブル経済についての、株価それから地価の方から分析したことがございます。私はあの時点ではもう既にバブルであるというふうに申し上げたんですが、随分いろいろな方からいろいろな御批判を受けたということを感じております。
 事ほどさように、あの時期において、実態が、バブルの中においてバブルであるというふうに感じるということは極めて難しいということが言えるのではないかというふうに思います。そういうことから考えますると……(発言する者あり)お答えさせていただきますと、そういう問題の中で、例えば金融緩和というものがどういう影響があったかということですが、それに関しましては、金融緩和がそういった全体の流れの中の一つのいわば底流をなすような動きをしたということは間違いないのではないかというふうに思います。
 そういうことから考えますと、やはり金融政策の効果のタイムラグというのは極めて長くて、かつ可変であるということから考えて、先を見た、先を見据えたしっかりした判断、それから丁寧な分析、そして機動的な政策というものがやはり重要であるというふうに考えております。
 それから、その後の金利政策の問題ですが、これは私も非常に心に重いものは感じておりまして、低金利政策の副作用というものは、先ほども御質問がありましたけれども、利子の収入の減少、それからもう一つは、年金などの機関投資家、特に、将来の社会保障の問題に関してのやはり運用難というようなものは極めて大きなものが生じてしまったということがあります。こういった副作用というようなものが今も続いているということは認識しております。
 それから、そうではありますけれども、こういった低金利によって、逆に言えば、非常に危険な状態にあった日本経済がようやくある程度自分で歩けるようになったということも事実だと思いますので、雇用環境の改善や設備投資の増加といったものについてのこの効果というのを見据えながら、少しずつ、望ましい経済政策のポリシーミックスというのをうまく考えていかなきゃいけないのではないかというふうに考えております。
 その中で、軸足のものですが、これは、国際協調とそれから日本経済も見るということは、私は矛盾するものではないというふうに考えております。やはり、日本経済が国際化しているということは、国際の中で日本ということを考えなきゃいけないということですし、それと同時に、やはり、日本経済の中で日本銀行が考えるべきことは国民の経済厚生ということですから、国民の経済厚生を考えて、そして、日本という国家の中の制度ということを考えて望ましい政策を考えていくというのが正しい考え方だというふうに考えております。
 以上です。
○佐々木(憲)委員 国際協調と国内経済に対する政策とどちらを優先させるか、それは矛盾するものではないという状況ももちろんあるでしょう。しかし、矛盾する場合もあるわけですね。その場合にどちらに軸足を置くかということが問われるわけでありまして、それは、国内経済、基本的にはそういうことだというふうに先ほどの答弁ではおっしゃったと思います。
 さて、それで次に、今の景気を景気回復の軌道に乗せていく、その場合、今までのような輸出依存型の景気回復あるいは経済成長、これは、統計上も寄与度は輸出寄与が非常に高いわけですね。しかし、これは今や、国際的な景気の実態からいいますと、なかなかその輸出依存型では景気回復というのは望めない。そうなりますと、国内経済、とりわけ内需、これをどう拡大していくかということになろうと思うんです。
 そこで、先日、聴聞の際、白川副総裁にはお聞きしたんですが、GDPの6割は個人消費でありますが、この個人消費と、それから公共投資、それから設備投資、この点、白川副総裁のお話はお聞きしました。西村副総裁の見解をお聞きしたいと思うんですが、この三つのうち、どこに軸足を置いて今後の景気回復を図っていくのが望ましいか、この見解をお伺いしたいと思います。
○西村参考人(日本銀行副総裁) お答え申し上げます。
 先ほど白川副総裁も申し上げましたように、6割は個人消費、これはGDP以上に極めて重要なものであります。それと同時に、個人消費というのは、比較的安定した動きをするという性質を持っています。ということはどういうことかといいますと、個人消費はいわば日本経済の底を決める、底というか底流を決める非常に重要なものです。と同時に、長期的にこれを押し上げていかなきゃいけないというものであります。
 それに対して設備投資というのは、これは極めて変動の激しいものであります。輸出もそうなんですが、こういうものに関しては、やはり短期的な動きに関しては十分な注意を払って、これに対して対応していなければいけないというふうに考えます。
 したがって、マクロ経済運営にありましては、特に長期に関しては、この個人消費をいかに底上げしていくかということを第一の、第一といいますか、プライオリティーの高いところに持っていかなきゃいけないというふうに考えていますし、それから、短期的な変動ということを考えれば、設備投資が安定した動きをするような対応をする必要があるというふうに考えております。
 以上です。
○佐々木(憲)委員 西村副総裁にもう一問お聞きしたいんです。
 2002年の10月に、エコノミックレビューというもので、小泉内閣の構造改革路線についてこういうふうにお述べになっているんですね。「金融の面は重要であるが、それを強調しすぎると日本経済の真の問題を見えなくしてしまう。」という表現があります。これはどういう意味でおっしゃったのかという点が一つと、それから、2004年に出された著書で「日本経済 見えざる構造転換」という本がございます。その中にもありますが、諮問会議民間委員の主張する法人税率引き下げも、経済産業省の主張する投資優遇政策減税も、税引き後収益率の若干の上昇をもたらすが、過去を引きずる日本の低収益率を劇的に改善することにはならない可能性が高いと指摘されているんですね。
 この意味は、法人税率の引き下げというのは効果が低いからやっても余り意味がないということなのか、それとも、いや、大胆な減税をやらなきゃいけないんだ、そういうおつもりでこのように述べておられるのか、ちょっとよくわかりませんので、その真意をお伺いしたいと思います。
○西村参考人(日本銀行副総裁) お答え申し上げます。
 まず、私の論考を読んでいただきまして、ありがとうございます。
 この二つ、2002年も2004年も、実は、この書いた時期はちょうど日本経済が一番悪かった時期であります。その時期といいますと、基本的には、いわゆる三つの過剰、私は過剰という言葉は余り好きではないんですが、よく使われておりますのでそれを申し上げますと、雇用、設備、債務の過剰、この状況のもとで不良債権問題に直面していたということが私のこの議論のもとになっております。
 そのもとになっておりますのは、日本に投資をする、これは世界のどこかに日本企業が投資するというのではなくて、日本に投資をする、その日本に投資をするときのリターンが、私的なリターンといいますか、企業の収益という意味でのリターンが小さいということが問題であるということで申し上げたわけです。
 この状況そのものは、三つの過剰は解消はしたんですが、これが劇的に変化したというふうには私は思っておりません。したがいまして、まだ依然として日本に対する収益率はやはり低いということだと思います。
 そういうことから考えますと、その収益率がそもそも余り高くないというところで法人税率の引き下げや投資優遇税制を行ったとしても、それが極めて劇的に、劇的にというのは、非常に高くなるということではないだろうというふうにこの時点では申し上げたわけです。
 それで、その状況が現在のところ変化しているかどうかというのは、そのときそのときの状況に応じて、これから十分に精査して考えていかなきゃいけないというふうに思っておりますけれども、この時点において私が申し上げたかったのはそういうことです。
 逆に言えば、日本で今本当に必要なのは何かというと、これは金融政策と離れてですけれども、必要なのは、日本に投資をする、この投資をすることの重要性というものを我々が見て、そして、その幅を広げるようないろいろな措置をすべきではないかということをこの時点で申し上げたということでございます。
 以上です。
○佐々木(憲)委員 時間が参りましたので終わります。

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