アドレス(URL)を変更していますのでブックマークされている方は変更してください。
<< ホームへ戻る

金融(銀行・保険・証券), その他 (同意人事)

2008年03月11日 第169回 通常国会 議院運営委員会≪聴聞会≫ 【439】 - 質問

議運委で日銀総裁・副総裁候補の所信表明と質疑

 2008年3月11日、衆参の議院運営委員会がそれぞれ開かれ、日銀総裁候補の武藤敏郎副総裁、および白川方明・伊藤隆敏副総裁候補の所信聴取・質疑がおこなわれました。
 佐々木憲昭議員は、衆議院議院運営委員会における所信聴取と質疑に参加しました。

 佐々木議員で「武藤氏は、5年間日銀で働いたと言いますが、財務事務次官時代の意識がほとんど変わっていない。庶民・家計の痛みへの思いがない」と指摘しました。
 武藤氏は、言葉では「自主性」や「独立性」を言いますが、具体的な問題になるとその言葉とはまったく違う姿勢があらわれます。
 たとえば、1985年9月の先進5カ国蔵相会議での合意=「プラザ合意」後、アメリカの圧力下で、日本銀行は5回にわたって公定歩合の引き下げをおこない、それを2年間の長期に渡って維持したため、バブルの“火に油を注ぐ”かたちとなりました。
 佐々木議員は、このことについて、「どう評価しているか」と質問。武藤氏は「低金利と公共事業拡大と正しい判断だった」と述べ、当時、日本政府と日銀が取った政策を肯定しました。

 次に、佐々木議員は、国債の大量増発と日銀引受けについて聞きました。
 佐々木議員は、日銀引き受けの赤字国債発行を原則禁止していることについて、どのように認識しているかと聞きました。これに対して、武藤氏からは、直接引受けについては批判的な言葉がありました。
 しかし、武藤氏が財務事務次官の時代、2002年12月の政策決定会合で、財務大臣が日銀に対して、1ヵ月当たりの買い入れ額を増額すること、そのために制約となっている銀行券発行残高の歯止めを停止することを要請しています。
 佐々木議員は、日銀の立場なら、どう対応するのが正しいかと問いました。
 武藤氏は、「デフレスパイラルという状況下で、ありとあらゆることをやる」「決してまっとうとは言えないとしても、状況によっては異例なことをやることも十分ありうる」と述べました。
 これでは、財政規律も日銀の役割も否定するようなものです。

 最後に、社会保障抑制政策についてききました。
 佐々木議員は、内需拡大の中心は家計消費にある、政策の軸足を家計に置くことが重要だと思うがどうか、と問いました。また、武藤氏が財務事務次官のとき、社会保障の自然増を3000億円も圧縮しました。それをきっかけに、毎年2200億円の圧縮政策が続けられてきました。
 佐々木議員は、「この政策を始めた責任をどう感じているのか」と聞きました。武藤氏は「社会保障の自然増は抑制しなければならない。3000億円削減は受け入れられた」と述べました。
 その結果、国民のなかにどれだけ苦しみが広がったか、まったく眼中にない発言です。

議事録

【佐々木議員の質問部分】
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 先ほどから自律性、独立性というお話がありますが、私は、対外的な金融政策の自主性という点について考えをお聞きしたいと思います。
 少しさかのぼりますけれども、1985年9月のプラザ合意、この時点で日本はアメリカのドル高是正で協調する、協力するという立場で、5回にわたる連続的な公定歩合の引き下げを行いまして、5%から2.5%、当時は超低金利と言われたんですね。ドイツなどはこの低金利政策から脱却したにもかかわらず、日本はこの水準を2年以上続けた。これがその後のバブルの引き金になったということはもう明白だと思うんです。
 そのことについて、元日銀総裁の三重野氏は、金融政策面からもう少し早くブレーキをかけることができたら経済活動の振幅はもう少し小さなものとなっていただろうというふうに振り返っているわけです。
 そこで、お聞きしますけれども、一つは、バブル経済の背景に日銀の低金利政策があった、こういう認識がおありかどうか、これが一点。
 それから、アメリカとの協調ということが余り優先され過ぎますと、国内経済、国民の生活、これが犠牲にされかねないような事態も起こり得るわけでありますので、やはり国内経済に軸足を置く、そういう自律的な金融政策が求められるのではないかと思いますが、今後の対応をどのようにお考えかということであります。
 それからもう一つ、これは国債の増発と日銀引き受けの関係についてですけれども、財政法4条で赤字国債、同5条で日銀の引き受け原則禁止ということになっているわけですね。私どもは、これは戦前の教訓からこういうものができたと思っております。憲法9条の戦争の放棄とか戦力の不保持、これを財政面で裏づけるものだというふうに我々は思っておりますが、財政インフレの防止を図るという意味でも、これは非常に重要だと思うんですね。
 日銀引き受けの赤字国債発行原則禁止、こういうことについて、武藤さん、どのように御認識になっておられるか。
 それから、あなたが財務事務次官の時代に、2002年12月のことですけれども、財務大臣が日銀に対して、国債を、1カ月当たりの買い入れ額を増額するように、そう申し入れた。そのときに、制約となっている日銀券発行残高の歯どめを停止してほしい、こういう要請をされたわけです。
 当時、日銀の側はそのまま受け入れなかったと思いますけれども、日銀の立場なら当然これは拒否すべきだと私は思いますけれども、当時は財務事務次官でありました。この要望が真っ当なものであったのか、それともそうではないと今思っておられるのか、その点についてお聞きをしたいと思います。
 最後に一点。事務次官のときに、社会保障の自然増を3000億円圧縮したということがありましたね。それが2200億円毎年削減ということにつながってきて、いわば消費低迷の一つの要因になったと私たちは思っておりますが、家計に軸足を置くということが非常に大事だというふうにおっしゃいましたから、内需拡大という意味で、従来のこういう社会保障自然増圧縮政策というものについて今どのようにお考えか、以上の点をお聞きしたいと思います。
○武藤参考人(日本銀行総裁候補者(日本銀行副総裁)) まず、日本銀行の独立性について、プラザ合意後の引き下げ、2年以上にわたって2.5%という超低金利政策をやったことがバブルの引き金を引いたのではないかという御下問でございますけれども、まず申し上げておきたいことは、このときは日銀法改正前のことでございました。したがって、大蔵大臣が日銀総裁の解任権を持っていた時代でございます。今はそういうものはありません。
 そういう中で、確かに日銀は政府の影響を受けやすい状態にあったということは、法律上の問題としてある程度言えるかと思います。しかし、それでも金利の決定権は政策委員会にあった、日銀にあったというふうに思います。後でいろいろ、ああすればよかったこうすればよかったということは、あるのだろうとは思います。それはあるのだろうとは思いますけれども、決めようと思えば決めることはできたのだと思います。ですから、それはなぜ決めなかったのかという問題についてもやはり十分検証する必要があるというふうに私は思います。
 それから、米国協調ということで利下げするということに対して、国民経済生活を犠牲にするのではないかということでした。
 それはおっしゃるとおりかもしれませんが、しかし、円の為替レートを余りにも安く置くことが世界経済を混乱させるという大きな問題があのときあったわけでございます。これは一つの政治判断として、やはり円レートというものを適正化すべきだということはありました。そこから円の切り上げが始められたわけでございます。
 そうなったときに、日本経済は輸出に依存するということが非常に困難になりますので、内需拡大が必要ではないかということでありました。この判断はやはり正しかったと思います。したがって、そのために、金融政策としては金利の引き下げ、それから財政政策としては公共事業の増額という財政出動を行ったわけでございます。
 そのパッケージが本当に必要であったか、どこまでが必要であったか、何かやり過ぎたのではないか、そういう微妙な問題はもちろんあるかもしれませんけれども、基本的方向としては、私は、そういう政策を当時とるということは、当時の状況の中では正しい判断であったのではないかというふうに思っております。
 それから、国債増発、日銀引き受けをやることについてどう考えるかということにつきましては、これは、国債の発行を直接日銀が引き受けるということはやってはなりませんし、法律上も明確に禁止されておりますので、やろうと思ってもできないわけでございます。しかし、マーケットから国債を買うというのは結果的に同じような影響があるのではないのかというのが御下問のポイントかと思います。
 しかし、金融政策というものは、マーケットにある金融資産を買ったり売ったりすることによって行うわけでございますので、アメリカがそうでありますように、最も安全な資産、すなわち国債をてことして資金量の調節を行うというのは、これはいわば当然の原則でございます。
 その際、考えておかなきゃならないのは、発行された国債をすぐ買い取る、マーケットをワンタッチのようにして買い取る、事実上引き受けと同じではないかというようなことが起こってはいけません。今の日本銀行の10年国債の平均利回りは5年ぐらいでございます。保有国債の利回りですね。したがって、マーケットに流通している国債を買ったり売ったりすることによって資金供給を行うということでございますので、私は、財政インフレという観点からは十分配慮した金融政策が行われているというふうに思っております。
 それから、2002年に財務省から国債の買い切りオペの増額を申し入れたのではないかということ。
 詳しい状況を今、ここでつまびらかに覚えておりませんけれども、あの当時、要するに失われた10年からの脱却、いわばデフレスパイラルのふちにあるということでありました。本当にもう、物価上昇率がマイナス1%とか、そういう状態にあったわけでございます。
 そのデフレスパイラルというような状況の中で、ありとあらゆることをやろうと、もうそれこそゼロ金利でも、こんなゼロ金利というのは大体世界に前例のない仕組みでございますけれども、そういうものでもやろうじゃないかというような状況の中でそういう議論が行われたわけでございます。正常な状況の中で真っ当かと聞かれれば、それは決して真っ当だというふうにまで言うことは難しいかもしれませんけれども、状況によっては異例なことをやるということも十分あり得るのではないかと思います。
 それから最後に、社会保障の削減の問題がありましたけれども、この問題は、社会保障制度というものができるだけ国民に手厚いサービスを提供するべきであるという観点からのみ議論をするのであれば、それはもうできるだけ多い方がいいということになるのかもしれませんけれども、サステーナブルな社会保障制度でなければ、結局はその社会保障制度が崩壊してしまうという問題があるわけでございます。
 したがって、自然増という形でどんどん増額を認めていくのか。現職の人々の給与水準が下がっているときに、年金レベルというものをいつまでも上げていくということが本当にいいのかどうか。そうすると、やはりバランスをとったような形で抑制していかなきゃならないのではないか。
 もちろん、財源の問題がありますので、財源が許されるのであるならば、必要な措置をできるだけ講じていくということがいいかとは思いますけれども、しかし、この問題が簡単ではないのは、財源の問題と社会保障サービスの水準がどうあるべきかということと、それがサステーナブルなものであるかどうか、こういうことを全部考え合わせたときに、当時、自然増3000億円の削減というのは、政治的に受け入れられた判断であったというふうに私は思っております。
 すべてお答えができたかどうかはあれですけれども。



○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭です。
 簡単に、二点お聞きします。
 一つは、景気の動向ですけれども、アメリカ経済が減速したもとで、輸出依存型の従来の成長というのはかなり限界に来ているというふうに言われています。内需拡大という場合、どこに重点を置くべきか。設備投資ですとか公共投資ですとか家計消費、あると思いますが、その重点の置く置き方といいますか、どこに軸足を置くか、この点の考え方をお聞きしたい。これが一つ。
 それから二つ目ですけれども、福井総裁があるファンドに出資をして個人的な利益を上げたことが大変大きな国民的批判を浴びました。国会でも議論になりました。この問題についてどのように受けとめておられるか。それから、個人的な資産の運用についてどうあるべきか、日銀の総裁、副総裁として。そのお考えをお聞きしたいと思います。
○白川参考人(日本銀行副総裁候補者(京都大学公共政策大学院教授)) 第一問でございますけれども、今後、需要項目としてどれに期待すべきかということでございます。
 経済、GDPの6割は、これは個人消費でございます。設備投資が伸びていくことも、最終的には消費がふえていくという期待があって初めて国内での投資も活発になるというもので、そういう意味で、需要項目に占める大きさからして、当然、消費が堅調に伸びていくという経済じゃないと、やはり経済は持続的に成長しないというふうに思います。
 ただ、このことは別に設備投資とか外需が重要じゃないということを意味するものではありませんけれども、しかし、経済の基本は、やはり消費者が将来の所得に対して希望が持てて、そのもとで消費がふえていくというのが基本的な原理だろうというふうに思います。
 それから、福井総裁のファンドへの出資の問題でございます。
 福井総裁が、民間の時代でございましたけれども、村上ファンドの村上氏の投資哲学に賛成をされて当時投資をされたということでございます。これ自体は、当時の日本銀行の規定に照らして違反であったということではないというふうに認識していますけれども、しかし、結果として日本銀行に対する信頼が低下をしたということは事実だというふうに思います。それは、日本銀行に長く勤めた者としては残念であったというふうに思っております。
 総裁、副総裁の資産の運用についてどうあるべきかということでございます。
 これは、私がもう退職した後でございますけれども、外部のコンプライアンス専門官をお招きして、しっかりとした服務準則を定めたというふうに聞いていまして、私自身もホームページでそれは読みました。仮に私が選任された場合には、その服務準則に従ってすべて運用するというふうに理解をしております。
 以上でございます。

○佐々木(憲)委員 簡単に一点だけお聞きします。
 伊藤副総裁候補は、経済財政諮問会議のメンバーで、民間4議員の1人として、財界の側の2人の代表を含めた四議員のペーパーを毎回のようにお出しになって、諮問会議をリードされているというふうに承知しているんですが、日銀の副総裁ということになりますと、やはり立場上、従来のそういう関係というのを断ち切って純粋に日銀の役割を果たそうということにしようと思っておられるのか、それとも、いろいろな関係者との協調というのを重視されるということもあるでしょうから、従来のそういういわば諮問会議での民間4議員的な親密な関係というものを維持される、そういう立場で副総裁をお務めになるか、今後の基本的なスタンスですね、そこをお聞きしたいと思います。
○伊藤参考人(日本銀行副総裁候補者(東京大学大学院経済学研究科教授)) ありがとうございます。
 御懸念はよくわかりますが、私は、一たん日銀の副総裁として就任することができれば、日銀の立場というのを第一に考えて、中央銀行が経済に果たす役割ということを十分自覚して、そのために全力を尽くしていきたいというふうに思います。
 経済財政諮問会議というのは、総理に対してアドバイスをしていくという機関でありまして、アドバイスをするけれども決定機関ではないわけですね。したがいまして、4人の民間議員の役割というのは、政策に対して、我々は外から見ていてこう思うということを申し上げる立場にあると思います。つまり、政府と一体ということではなくて、政府に対して外からアドバイスをしていくという立場で、したがって非常勤で務めておるわけです。
 したがって、議事録を読んでいただくとわかると思うんですけれども、かなり厳しいことも、いろいろ各省に対して注文をつけていることもありますし、我々の考えがそのまま採用されないこともありますし、そこはもともとかなり緊張関係があるというふうに考えて、ぜひ御理解いただきたいというふうに思います。

Share (facebook)

このページの先頭にもどる