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金融(銀行・保険・証券) (証券取引所, 電子化)

2004年05月11日 第159回 通常国会 財務金融委員会 【246】 - 質問

証券2法案の問題点を追及 実効性あるルールづくりを求める

 2004年5月11日の財務金融委員会では、前回4月27日に続いて、証券取引法改正案が審議されました。

 佐々木憲昭議員は、(1)銀行窓口での証券仲介業の解禁は、銀行業界の要求によるものであり、経営をおびやかされる地方の中小証券会社は反対していること、(2)法案には、不公正取引などのルール違反にたいする「課徴金」の新設が盛り込まれているが、その水準がルール違反を抑止するために十分でないことなど、法案の問題点を追及し、実効性あるルールづくりを求めました。

 またこの日は、「株券ペーパーレス化法案」があわせて審議されました。この法案は、証券決済システムの電子化にともない、株券をペーパーレス化するためのものです。この法案では、電子化にともなって株主の保有株数を過大記載するなどの証券会社等のミスを、株主に転嫁する仕組みになっています。佐々木議員は「投資家の権利が縮減されるということになる」と政府の対応をただしました。

 この日の財務金融委員会で、「証券取引法改正案」「株券ペーパレス法案」の証券2法案が採決され、日本共産党が反対するなか、自民党、公明党、民主党の賛成多数で可決されました。
 採決に先立ち、佐々木憲昭議員が、日本共産党を代表して反対討論に立ちました。

 この質疑の最後の増井金融庁総務企画局長の答弁について、内容に誤りがあったとして、5月14日の財務金融委員会冒頭で、謝罪と訂正の発言がありました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 本題に入る前に、竹中大臣に、先ほどの年金の未納問題に関連をして確認しておきたいと思います。
 大臣は先ほど、結果的に11カ月未納となったというふうに御説明されました。そこで、確認をしたいんですけれども、それは、大臣になって11カ月目に気がついて払ったのか、それとも、ずっと三年間未納であって、最近気がついて2年間さかのぼって納めたけれども、結果として11カ月未納期間が残ったという意味なのか、これはどちらなんでしょうか。
○竹中国務大臣(金融担当大臣) 後者でございます。
 4月に手続をして2年さかのぼった、結果的に11カ月が未納として残ったということでございます。
○佐々木(憲)委員 そうしますと、気がついたのはいつでしょうか。払ったのはいつでしょうか。
○竹中国務大臣(金融担当大臣) 私、国家公務員共済に入っているというふうに思っておりましたんですけれども、いろんな問題が生じましたので、念のために、3月だったと思いますけれども、内閣府の人事の方に、国家公務員共済に入っていますねということで確認をさせていただきました。
 その結果、4月の最初ごろに、いや、実は国家公務員共済の制度は短期と長期に複雑に分かれておりまして、短期には入っているんですけれども長期には入っていないということがわかりましたと。それを受けまして、すぐ手続をとって、その時点のものを払って、かつ2年間さかのぼって払わせていただいたということであります。
○佐々木(憲)委員 なるほど。そうしますと、4月27日の答弁で、今は国民年金に入っておりますし、保険料を払っておりますというのは、今はというのは、4月の中旬以降の時点の話だということがわかりました。となりますと、年金の法案を提出するときにサインをされたわけですが、その際には未納のままであった、その時点では未納のままだったということでありますね。わかりました。
 やはり、これは責任は非常に大きいと思います。官房長官はおやめになりましたけれども、あとの大臣はおやめにならないということでありまして、これは責任を感じていただかなきゃならない。私はやめるべきだというふうに思いますので、その点を申し上げておきたいと思います。
 さてそれで、具体的に、証取法改正案に関連をして聞きたいんですけれども、金融機関が証券仲介業を窓口でできるように求めたのは銀行業界なのか、それとも証券業界なのか、これはどちらでしょうか。
○竹中国務大臣(金融担当大臣) どういう要望、どういう趣旨で今回の取り次ぎを解禁したのかという問いかけだと思いますけれども、証券仲介業務につきましては、昨年の金融審議会の第1部会におきまして、銀行界の代表者からも解禁の要望はございました。同時に、市場機能を中核とする金融システムに向けた制度改革の1つとして、事務局の方から問題提起をさせていただいて、各界の有識者等から構成されるこの部会においていろいろ御指摘をいただいた。指摘の内容は、顧客の利便性の向上、投資家層のすそ野の拡大、アクセスの改善といった、政策としての意義がある、銀行であるがゆえに必要となる有効な弊害防止措置を条件にこの国会で所要の法的措置を行うことが望ましい、そうしたことを金融審の有識者から御提言いただいたということでございます。
 証券界、銀行界に関して申し上げますと、証券界には銀行等との競争激化を懸念する意見もございますが、一方で、市場のすそ野を広げる施策としておおむね御理解をいただいているというふうに認識をしております。
 この部会においては、学界、経済界、金融、銀行界以外の委員からも、政策としての意義にかんがみて解禁すべきだ、その意味では、審議会の場でありますので、それぞれの場を代表して、幅広い方々からの御議論をいただいて、このような方向性が出てきたということであります。
○佐々木(憲)委員 いろいろな意見があったというふうにおっしゃいましたが、具体的に、例えば全国銀行協会、全銀協などが、金融機関への証券仲介業の解禁に関する私どもの意見という意見書を昨年12月19日に出されております。この中で、「金融機関にとって」「むしろ収益源の多様化、リスク分散が図られ、経営の安定化に資すると考える。」ということが言われ、それから、そのために具体的に解禁をしてもらいたい、こういう要望が出されております。銀行業界としては極めてはっきりした要望を出している。
 これに対して、証券業界は、おおむね理解をいただいたというふうに先ほどおっしゃいましたけれども、果たしてそうなのかどうか。とりわけ中小の地方の証券会社というのは一体どういう対応をされているか、その点についてお聞かせいただきたい。
○増井政府参考人(金融庁総務企画局長) お答え申し上げます。
 証券業界自体、中小の証券業界で特定の意見をまとめて何か物を発表しているということではないかと思います。
 したがいまして、証券会社によっても経営戦略上いろいろな判断があると思いますし、特に、今回の解禁につきましては、中小証券会社にとっても金融機関のネットワークを通じました顧客層の拡大等のメリットがあるという観点から、そういうビジネスチャンスがあるというようなこともありますので、必ずしも中小証券会社の経営を圧迫するということではないというふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 それは全く違いまして、全国の証券業界というのは、さまざまありまして、証券業界は会社ごとに立場が違う。したがって、先ほどの銀行業界のように統一した意見を出そうとして、例えば昨年の12月10日にそういう会合を開いたようなんですけれども、地方証券は激しく反発したということで、結局まとまった意思統一ができない、こういう状況だったと言われております。
 したがいまして、地方証券、中小の証券というのは大変不利な立場に置かれていくのではないか、こういうことで、実際に、この法案に対しては批判的な立場をとっているようであります。例えば、新聞報道によりますと、「全国銀行協会など金融機関の7団体は、早期の解禁を要望しているが、証券業界は会社ごとに立場が異なり、意見統一ができない」「証券業界では、地方の中小証券が、地元の地方銀行に客を奪われるとの懸念がある。」こういうことが報道されているわけであります。
 実際考えてみましても、地方の中小証券は、個人の投資家の委託注文の受注を主な営業対象としております。ですから、銀行による幅広い支店網を生かした営業によりまして顧客を奪われることになるのではないか、こういう懸念を持っているわけですね。実際に、実態上そのような形になるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○増井政府参考人(金融庁総務企画局長) お答え申し上げます。
 先ほども申し上げましたように、恐らく、いろいろな証券会社によって、つまり、中小証券会社によってもいろいろな経営戦略があると思いますし、意見はまちまちだというふうに思います。
 今の証券仲介業の解禁によりまして証券の販売チャネルが拡充するということでございますから、そういうことによって顧客層がふえるということで、それがまた中小証券会社のメリットにもなるということを考えるところもございますし、あるいはこれは、中には地域の銀行と連携提携をして、こういった形での顧客を開拓していこうというような考え方を持つものもあるかと思います。したがいまして、証券会社によっていろいろだというふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 そういう説明をしても、現実の、現場の中小証券会社自身がこれは激しく反発しているわけですから、幾らそういう説明をしても実態とは違うと思います。
 例えば、早稲田大学の上村達男教授は、日経金融の1月26日付でこういうことを言っているんです。「証取法65条の緩和論は、不良債権問題に苦しむ銀行に収益チャンスを与える「不健康対応」が目的で、不公正取引の取り締まりなど資本市場のインフラを整える「健康対応」ではない」。不健康である、この対応の仕方が。こういうふうに厳しく指摘をしているわけであります。
 銀行は、支店がたくさんありますから、幅広い支店網を生かして顧客を囲い込むことができる、新たな手数料を得ることができる、しかし、中小証券は銀行に客を奪われて営業に大変大きな打撃が加えられる、こういう格差がこのことによって非常に広がるのではないか。これは私ははっきりしているというふうに指摘をしておきたいと思います。
 次に、課徴金問題についてお聞きをします。
 証券市場の信頼性が必要だという点について前回私質問させていただきました。今度の証取法改正では、市場監視機能の強化を掲げまして、不公正取引などのルール違反に対して課徴金を新設するということになっているわけであります。
 そこで、大事なことは課徴金の水準なんですね。ルール違反を抑止するということでありますと、そのために十分な水準でなければならないと思うわけであります。つまり、違反をして、違反で手に入れた利得というのは、これは吐き出すのは当たり前だと思うんですね、それは不当な利得ですから。しかし、違反をしたら割に合わないという、ペナルティーを科すような水準というのが私は必要だというふうに思うんですけれども、この点はいかがでしょうか。
○増井政府参考人(金融庁総務企画局長) お答え申し上げます。
 今回の法案の課徴金制度でございますけれども、インサイダー取引などの証券取引法違反行為の抑止を図って、証券取引法の法規制の実効性を確保する、そういう行政目的の達成のために、証取法の一定の規範の違反者に対して金銭的な負担を課す行政上の措置でございます。
 その水準については、今御指摘のように、違反行為によってその違反行為者が得られる経済的利得相当額を基準として、算定方法を法律に定めておるわけでございます。
 そういう観点から申し上げますと、今回、こういった制度を初めてある意味で導入をするということもございまして、違反行為の抑止のための水準として、経済的利得相当額を基準というふうにしておりますけれども、あくまで違反行為を抑止して、この法規制の実効性を確保するための行政上の措置という観点でございます。
 したがいまして、この課徴金の水準につきましては、初めての措置でございますので、こういった制度が達成できるかどうかという観点から、よく検証はしていく必要があるというふうには考えております。
○佐々木(憲)委員 この点について、この法案では必ずしも十分ではないと私は思うわけです。
 例えば、金融審議会の金融分科会第一部会報告、これを見ますと、こういうふうになっているわけです。「ルール破りは割に合わないという規律を確立し、規制の実効性を担保するため、少なくとも違反行為による利得の吐き出しは必要であるが、違反行為が市場への信頼を傷つけるという社会的損失をもたらしていることをも考慮し、抑止のために十分な水準となるよう検討すべきである。」つまり、不公正取引などの不当な行為によって得た利得、これは当然、吐き出すのは当たり前なんであります。しかし、ペナルティーを科すというようなことをやらないと抑止力にならないというのがこの金融分科会第一部会の報告なんですね。
 実際にそうなっているのかどうかということ。今回の法案は、今御説明ありましたように、不当な利得だけは吐き出して結構ですが、それ以上は結構ですよ。これでは抑止力にならない。
 具体的に外国の事例を聞きたいんですけれども、不正取引に対する制裁金制度は、アメリカの場合、例えばインサイダー取引については利益の何倍を上限にしているか、フランスでは、違反行為についての課徴金は利益の何倍を上限にしているか、イギリスは上限があるか、この点について答えていただきたい。
○増井政府参考人(金融庁総務企画局長) お答え申し上げます。
 欧米主要国では、これまで、証券取引規定に違反する行為に対して課徴金制度が導入されておりまして、その水準について、各国それぞれ定めを置いております。
 まず、アメリカの場合でございますけれども、これは、特に重大な違反につきましては、自然人に対しては10万ドル、日本円にして1000万円ちょっとということだと思いますが、法人に対しては50万ドル、5千500万かそのぐらいかと思います。これをその上限として課徴金を賦課できるというふうにされておりまして、かつ、これらの金額よりも多額の利得が違反者にもたらされた場合には、その利得額を上限とするというふうにしてございます。さらに、インサイダー取引につきましては利得額の3倍を上限としております。
 これらの上限額の範囲内で、米国証券取引委員会が個別の事案ごとに、違反の内容あるいは深刻さの度合い、違反者の支払い能力、それから違反者の協力度などのさまざまな要因を総合的に勘案して課徴金の額を決定するというふうにされております。
 それから、イギリスの場合でございますが、イギリスは、法律上上限の定めはございませんけれども、英国金融サービス機構、FSAが、違反行為の深刻さや得られた利得の額等を総合的に勘案して課徴金の額を決定することとされております。
 それから、ドイツの場合でございますが、ドイツは、上限額は150万ユーロでございまして、約2億円、フランスの場合には、上限額が、150万ユーロと利得額の10倍のいずれか高い方というふうにされております。
○佐々木(憲)委員 いずれの場合も日本よりはかなり厳しいわけです。アメリカは、インサイダー取引については利益の3倍を上限にしている、フランスは利益の10倍、こういうところまで可能である。ですから、この不当利得を吐き出すだけではだめだというのがこの第1部会の報告であるにもかかわらず、現実にそういうふうになっていないんですよ、法律が。
 法案の策定過程では、利益の2倍を上限にしようということが言われておりまして、ことしの1月15日付日経によると、「課徴金の金額は不当利益の2倍を軸に調整している。」という報道があります。つまり、調整した結果、結局その利益と同じだ、こういう低い水準になってしまったということが結果として出ているわけで、ほとんど効果がないです、これは。つくらないよりつくった方がいいという意見もあるかもしれないが、しかし、これでは効果が上がらない。やはり欧米並みにしっかりとしたペナルティーを科すべきだというふうに思います。
 それから次に、株のペーパーレス法案についてお聞きをしたいと思います。
 証券決済のシステム改革というのは、これは、安全性を確保し、効率よく、利用者の利便性を高めるということがあれば望ましいと思いますが、現在提案されている案は、体力のあるところとないところでかなり格差が生まれるんじゃないかという懸念を持つわけです。
 具体的にお聞きしますが、今度の株のペーパーレス法案が実行された場合、株式の発行会社や証券決済を行う個々の金融機関というのはIT化のためにどの程度の設備投資が必要になるか、また、関連する金融機関全体では幾らの設備投資が必要となるか、この点について回答していただきたい。
○増井政府参考人(金融庁総務企画局長) お答え申し上げます。
 この法案は、株式等について、ペーパーレス化を図るとともに、新たに振替制度の対象とするための枠組みを示すものでありまして、今後、この法律案を仮にお認めいただければ、その枠組みに沿って、実務界におきまして、振替制度の具体的なスキームの策定をいたしまして、しかる後に、その制度を実際に稼働する上で必要となるシステム開発が行われるということになります。
 したがいまして、今の御指摘の、証券会社などが負担するコストにつきましては、こういった実務界における検討の後に初めて算出可能になるものでございまして、現時点においてその算出を行うことはなかなか困難であるというふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 例えば、昨年1月から始まりました国債のペーパーレス化では、システム導入の設備投資に数百億円を要した、中小証券会社にとっては過大な負担になったと言われております。それならば、みずから開発をせず、そのシステムに参入したらどうか、つまり、大手のところに接続すればいいじゃないかとか、こういう発想もありますけれども、しかし、かなり手数料が高いということで、国債業務をやめる中小証券が続出をしております。これが現実ですね。
 今回の株のペーパーレス化にまでいきますと、一社当たり数十億円の設備投資が必要だ、あるいは、関連する金融機関全体で500億円程度の投資が必要ではないかと言われているわけであります。ですから、費用を負担できないところが生まれるわけであります。
 この法案によると、結果的に、やはり体力の弱い中小証券、先ほどから中小証券のことばかり言いますけれども、ここにはかなりの負担がかかっていくのではないか、それに耐えられないところも出てくるのではないかと思いますけれども、そういう傾向は現実として起こると思いますが、いかがですか。
○増井政府参考人(金融庁総務企画局長) お答え申し上げます。
 先ほど国債のお話が出てまいりましたが、国債の場合には、いろいろなほかの設備投資も含めて、一体としていろいろなシステム開発を行っているということがありまして、なかなかこれを切り分けて考えることが難しいようでございます。
 さらに、中小証券会社のコストの関係でございますけれども、今申し上げましたように、実務界における検討を踏まえてコスト負担の算出が可能になるということでございますので、必ずしも今の段階でわかるわけではございませんが、一方で、今ちょっとお話にございましたように、新しい振替制度では、振替機関と投資家の間に証券会社等の口座管理機関が複層的に介在することを可能とする多層構造を実現いたしております。これは、中小証券会社からのいろいろな要望も踏まえてそういったことをしておりまして、そういう観点から、証券会社等が振替機関に直接に口座を開設しなくても、より安い手数料を提示する他の証券会社等に口座を開設するという選択が可能となるといったことでございまして、そういった実務界の意見も踏まえまして、振替制度に係るコストが低減するように配慮をいたしているところでございます。
○佐々木(憲)委員 多層構造になり、ほかの大手のところに軒先を借りるんだ、こういう話でありますけれども、それもかなりの手数料を取られるということで、現実に、国債の事例でも、そういう国債業務をやめるというところが出てくるほど大きな負担になっているという点を指摘しておきたいと思います。
 それから次に、このペーパーレス化によって株主の権利というのは一体どうなるのか、これを確認したい。
 2年前の5月17日の衆議院財務金融委員会で、証券決済制度等の改革による証券市場の整備のための関係法律の整備等に関する法律、長い名前の法律の審議が行われました。そこで、ペーパーレス化が社債、国債について行われるというその法案の審議が行われましたが、株式がそこから除かれたその理由について、柳澤金融担当大臣はこう説明していたわけです。「もし過大記載があったときにはどうやって責任をとれるんだということが非常に問題になります。 特に、経済的な問題だけでしたらいろいろな解決の方法もあり得るわけですけれども、株主権というような議決権、こういうようなものが絡んでまいりますと、なかなかここに難しい問題が出てくるというようなことがありまして、そういったことで、なおこのあたりのことについては時間をとって結論を出さなければいけない、」こういうふうに説明をされているわけですね。つまり、株主権が損なわれないように検討していかなければならない、まだ結論は出す段階ではない、これが2年前の話でありました。
 さて、そこで、今回、一体それがどのようにクリアされたのかという点でありますが、例えば過大記載が発生した場合、ミスをした機関が消却義務を負うということになっておりますが、その消却義務が履行されない場合は、例えば1株または1単元の株主の場合、これはどのようになりますか。
○増井政府参考人(金融庁総務企画局長) お答え申し上げます。
 今御指摘の過大記録がなされた場合でございます。これは、過大記録の状態が解消されない間はどういうことが起こっているかといいますと、振替口座簿に記録されている株式数が発行者の発行済み株式総数よりも大きくなりまして、すべての振替口座に記録された株式について権利行使がされますと、発行者によって全く不合理な結果を招くということになりますので、過大記載を行った振替機関等の傘下に口座を開設する加入者等は、過大分に相当する株式についてはその持ち株数の割合に応じて会社に対抗できないというふうにしてございます。
 ただ、しかしながら……(佐々木(憲)委員「1株当たりどうなるのか、1株の株主はどうなるのか」と呼ぶ)1株の株主でございますか。
 したがいまして、そこの口座にある株主については、その部分について持ち株数の割合に応じて対抗できないということでございますから、その分だけ割合が減るということになると思います。――もうちょっとよろしいですか。
○佐々木(憲)委員 いや、もう時間がないから。
 それで、つまり、1株の権利というものは1株でなければならぬのです。しかし、過大記載、つまり、これは現実に株がある今の状態と違いまして、すべて記録が電子化されるわけですから、電子化された場合、100を300と間違えて書くということもある。そういう場合に、1株の権利というものが、複雑な説明はやめますけれども、結果的に1株の株主は0.9とか0.8になるわけですよ。ですから、株主の権利というものがしたがって制約をされる、結果的にそういうことを招くということなんですよね。
 したがって、この法案では、投資家の権利が縮減されるということになるわけでありまして、そうなりますと、一体、2年前の、株主の権利という大変大きな重い問題がありますから、これを解決するためには大変時間がかかるんです、検討しなければならぬのですと言っていたのが、いつの間にか、何か株主の権利が制約される、もちろんゼロにはならぬという意味で、ゼロにはならぬけれども、しかし0.9とか0.8になり得る、そういう結果をもたらすということになるわけでありまして、もう時間がありませんから、質問時間も終わりましたので、一方的に言っちゃいますけれども、そういう内容の法案になっているわけですから、これは問題がクリアされておりません。
 したがいまして、私どもは、さまざまな問題点を持っておりますのでこれらの法案については賛成するわけにはいかないということを最後に申し上げまして、終わらせていただきます。
○田野瀬委員長 訂正。はい、どうぞ。
○増井政府参考人(金融庁総務企画局長) 恐縮でございますが、今の私の説明の中で一つ訂正させていただきたいと思います。
 1株の場合には、1株は対抗できます。要するに、何株もあった場合にはその割合が減りますけれども、1株株主の場合には1株ということで対抗できるという規定を設けております。
○佐々木(憲)委員 1株は今言ったようなとおりかもしれないけれども、つまり、何株かあった中の株の重さは、株の権限は縮小されるわけです。つまり、過大記載が行われたり、そういうミスが起こった場合、その処理のためには株主が被害を受けるということを認めるということになるわけです。だからそれは反対だということを言っているわけです。

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