憲昭からの発信
憲昭からの発信 − 寄稿文
【08.05.22】関税ゼロで大企業は太る一方名タイ
「名古屋タイムス」『政論紙上バトル 愛知の国会議員が斬る』
愛知選出の若手・中堅国会議員による連載コラム
2008年5月22日
ASEAN経済連携協定進む
今国会に、「日本・ASEAN包括的経済連携協定」が提案されています。
これは、いくつかの国と結ばれている2国間協定のうえに、ASEAN諸国全体と包括的に結ぶかたちでつくられる協定です。
その特徴は、ひと言でいえば日本と相手国とのあいだの関税を相互になくすだけでなく、特定の鉱工業品については、ASEANに加盟している国々相互のあいだで日系企業の取引にたいして関税をなくす(累積規程の適用)ということにあります。
なぜ、このような協定を結ぼうとしているのでしょうか。すでに、日本の自動車・電機を中心とする大企業は、ASEAN諸国に生産拠点を移し多国籍企業化しているからです。
先日、外務省、経済産業省、農水省からレクチャーを受けました。そのとき配布された資料に、次のような解説がありました。――「現在、多くの日系企業が、日本およびASEAN各国で工程を分ける企業内・工程間分業を実施している」。この協定が結ばれれば、これら日系企業は、ASEAN域内から幅広い材料調達を行って生産した製品にかける関税をゼロに出来るようになるから、「日本およびASEAN域内における物品の流通の拡大が期待できる」。
私は、『変貌する財界──日本経団連の分析』(新日本出版社、2007年1月)のなかで、次のように書いたことがあります。「日本の貿易に占める巨大企業の比率はきわめて高い水準を保っているが、その内容は次第に海外の現地法人との取り引きに置き換えられている。また、各国に設立された現地法人相互間の取引を増加させている」と。
今回の協定は、財界の意向を受けて、これまでのように2国間で関税をゼロにするだけでなく、さらにすすんでASEAN域内なら、どこでも日系企業の企業内貿易の関税負担をゼロにできるというものです。
これで、日系企業はいっそう大きなメリットを得ることになります。
それは、もともと日本経団連やトヨタをはじめとする自動車会社、電機会社などが、以前から要求していたものです。
日本国内からは、エンジンなどの高級部品を供給し、賃金の安いASEANでは中間財の生産・組み立てをおこない、それをASEAN域内で販売するだけでなく欧米・日本市場に輸出するという“生産ネットワーク”がより高度に形成されることになるのです。
その結果、何が起こるでしょうか。――日本国内では、今後、大企業の生産・組み立て分野を中心に、下請企業へのいっそうの単価切下げ、労働条件の引き下げ、雇用の削減などが予想されます。そしてそれは、地域経済の衰退をもたらす危険があります。