国会での活動
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【14.06.03】年金の安全運用逸脱、積立金の株投資を批判
2014年6月3日、佐々木憲昭議員は財務金融委員会で、国民の年金保険料でつくられた年金積立金を運用する独立行政法人が運用先を国債から株式に移行させようとしている問題を取り上げ、「安全運用」の原則から逸脱していると主張し、中止を求めました。
独立行政法人・年金積立金管理運用(GPIF)は約129兆円にのぼる国民の年金資金を管理・運用しています。運用先は国内債券が55%、株式は国内(17%)、外国(15%)合わせて32%などとなっています。今回、株式への運用を増やすことを狙っています。
佐々木議員は「年金の積立金は投資目的ではなく国民から預かったお金であり、運用は安全、確実が原則だ」と強調。安倍晋三総理が「運用の多様化」を唱え、「株への依存を高めることは、国民の財産に穴をあける危険を高めることになる」と警鐘を鳴らしました。
佐々木議員はさらに、最低保障年金部分の積み立ては株などへのリスク投資を避けるアメリカやカナダ、スウェーデン、オランダなどの運用例を示しながら、「日本のやり方は国際的に見ても特異だ」と指摘しました。
麻生太郎財務大臣は「専門家を中心に引き続きしっかりした検討が行われることに期待する」と述べるにとどまりました。
佐々木議員の主張
財務金融委員会で一般質疑がおこなわれ、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の資金運用と政府の株価つりあげ政策について質問しました。
実体経済がよくならない限り、株価の買い支えには無理がある
「アベノミクスは、株価が支え」とも言われていますので、はじめに今年の日本の株価動向についてききました。
金融庁の答えは、今年いちばん高かったのは1月8日の1万6121円、昨日2日の終値は1万4935円と答えました(日経平均株価)。この5カ月で1200円も下落しています。
今年に入って、株価がジワジワと下がっています。なぜこうなったのでしょうか。一昨年末からの株高は、外国人投資家によってつくられたことは明らかで、当初は買い越しになっていたが、昨年半ばからは売り越しになっています。
先日の調査で、野村證券から聞いた話では、「ヘッジファンドはサッと来て、サッと帰って行く」と言っていたのが印象的でした。外国人投資家、とりわけヘッジファンドの売買が株価に影響を与えているのが実態ではないでしょうか。
大臣の認識をききましたが、まともに答えませんでした。
株価は、何によって決まるか。最終的には実体経済を反映するものです。
この間の株価低迷の背景にあるのが、4月からの消費税増税や年金の給付減などによって、家計消費が大幅に減っており、今後、内需がどうなるか大きな不安材料があることです。それが、株価下落というかたちで反映していると思われます。
こんな時に、外側から無理にあげようと、PKO=株価維持操作をおこなっても一時的な効果しかもたらしません。このことは、はっきりしています。
国民から預かった年金積立金を株につぎ込むのは許されない
麻生財務大臣は、4月16日の財務金融委員会で、「GPIFの動きが6月以降出てくる。そうした動きが出てくるとはっきりすれば、外国人投資家が動く可能性が高くなる」と述べ、問題視されました。
GPIFは、厚生年金と国民年金の積立金約130兆円を有する世界一の公的年金資金運用機関です。この資金が「出てくる」というのは、株式投資にそれを使おうということでしょう。ついホンネが出たと言うべきでしょう。
そこで、佐々木議員は厚生労働省に確認しました。
2010年12月22日に出された「年金積立金管理運用独立法人の運営の在り方に関する検討会報告(厚生労働省)がある。そこでは、年金積立金運用の基本的な考え方について、こう書いてあります。
「年金積立金の原資となる保険料は投資を目的として徴収されたものではなく、年金積立金は老後の給付に充てるために、一時的に国が預かっているものであることから、安全運用が基本である。また、運用目標を大幅に下回った場合には、国民の負担増加に直結する重い問題である」と、的確に書かれています。
佐々木議員が「間違いないか」ときいたところ、厚生労働省は事実を認めました。
これまでは、ごく一部については市場運用しながらも、「安全運用」を基本としてきたことは明らかです。年金基金は国民の大切な財産であるから、安全・確実に運用し、国民に損害を与えてはならないのです。
しかし安倍内閣は、違う方向に舵を切ろうとしています。
安倍総理は、2月24日の予算委員会で「運用対象の多様化についても検討していく必要がある」と述べました。
アベノミクスを実行することを目的に、昨年11月、「公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議」の「報告書」が出されました。
そこには、運用目的について、安倍政権の経済政策(三本の矢)の一環として、「日本経済にいかに貢献し得るか」を考慮して資金運用をすると書いています。
これでは、これまでの「安全運用が基本」はどこに行ってしまうのでしょうか。国民から預かった財産という発想は、二の次三の次になっていると言わざるを得ません。
外国では最低保障部分を損なう危ない運用はやっていない
そもそも、有識者会議報告書に出ている外国制度紹介の表で、外国でも株式運用をやっているかのようにいっていますが、とんでもない間違いです。
たとえば、ノルウェー政府年金基金グローバル(GPFG)は、年金という名前がついていますが、そもそも年金制度と直接的な関係はありません。産油国であるノルウェー政府特有の財政システムのひとつです。
また、アメリカのカリフォルニア州職員退職制度(CalPERS)と、オランダ公務員総合年金基金(ABP)は、いわば上乗せの「企業年金」的な部分です。
いずれも、運用結果が、公的年金の給付水準に直接的な影響を及ぼすことはない仕組みになっているのです。
厚生労働省は、この事実を認めました。
カナダのCPPIBと、スウェーデンのAPファンド、この2つの基金は、確かに公的年金積立金の運用機関ですが、日本と決定的に違うのは、いずれの国も1階と2階で構成される公的年金制度のうち2階部分の積立金を運用していることです。
だから、運用の結果が、最低保障機能を担う1階部分には、影響を与えない仕組みになっているのです。
この点も、呼応労相は認めました。アメリカの公的年金基金OASDIは、全額、非市場性国債で保有しているのです。
日本のGPIFは、積立金の運用の結果によって、1階に位置づけられている基礎年金の給付水準が左右される仕組みになっています。
運用で損失が発生したばあい、スウェーデンは「自動収支均衡機能」、カナダは「不十分な料率条項」というのがあって、将来世代に先送りせず、即座に処理する仕組みが備わっています。
日本にはそうした仕組みがなく、運用損失は投資の意思決定に参画していない将来世代に先送りされることになるのです。
日本の場合、そもそも、リスク運用に耐えうる制度となっていません。
いまのポートフォリオを変えて、株価維持に使うのは、国民の財産を博打(ばくち)に使うようなものです。
いまは、約55%を国債で運用し、日本株の比率は17%程度です。日本株の比率をわずか1%高めるだけで、1.3兆円の資金が株式市場に流入することになります。
3%だと4兆円、倍にすれば約20兆円が新たに株式市場に流れることになります。きわめて大規模な株価維持政策、PKOの有力な手段となります。
安倍内閣が運用委員会のメンバーを総入れ替え
しかも重大なのは、そのために着々と体制づくりをしていることだ。運用委員会のメンバーは4月になって、ほぼ総入れ替えとなっています。
10人の運用委員のうち9人が任期を終えたが、再任されたのは1人。新たに任命された6人のうち、委員長になった早大大学院の米沢康博教授ら3人は、GPIFの運用見直しを提言した有識者会議のメンバーです。他の3
人は全員、投資会社等金融機関の勤務経験者なのです。
まさに、日本株の比率を増やし、博打を打とうという布陣ではないでしょうか。
運用委員会委員長になった米沢康博氏は、こう言っています。「(年金財政の検証で出てきた)公的年金の運用目標である『名目賃金上昇率プラス1.7%』を達成するのは簡単な話ではない。……国債中心の運用では目標には全然届かない。……ありとあらゆることをやる必要があるということだ。」と述べています。
これは、本末転倒ではないでしょうか。「安全運用が基本」であった年金積立金の運用を、リスクの高い株や海外の金融商品に投資をして、あわよくば株価を押し上げようなどという無謀なことはやめるべきです。
年金基金は、国民の大切な財産であって、アベノミクスの株つり上げの道具ではないのです。