2014年06月03日 第186回 通常国会 財務金融委員会 【787】 - 質問
年金の安全運用逸脱、積立金の株投資を批判
2014年6月3日、佐々木憲昭議員は財務金融委員会で、国民の年金保険料でつくられた年金積立金を運用する独立行政法人が運用先を国債から株式に移行させようとしている問題を取り上げ、「安全運用」の原則から逸脱していると主張し、中止を求めました。
独立行政法人・年金積立金管理運用(GPIF)は約129兆円にのぼる国民の年金資金を管理・運用しています。運用先は国内債券が55%、株式は国内(17%)、外国(15%)合わせて32%などとなっています。今回、株式への運用を増やすことを狙っています。
佐々木議員は「年金の積立金は投資目的ではなく国民から預かったお金であり、運用は安全、確実が原則だ」と強調。安倍晋三総理が「運用の多様化」を唱え、「株への依存を高めることは、国民の財産に穴をあける危険を高めることになる」と警鐘を鳴らしました。
佐々木議員はさらに、最低保障年金部分の積み立ては株などへのリスク投資を避けるアメリカやカナダ、スウェーデン、オランダなどの運用例を示しながら、「日本のやり方は国際的に見ても特異だ」と指摘しました。
麻生太郎財務大臣は「専門家を中心に引き続きしっかりした検討が行われることに期待する」と述べるにとどまりました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
私も、GPIF、年金積立金管理運用独立行政法人、その資金運用に関連してお聞きしたいと思うんです。
まず、前提としまして確認したいのは、ことしの株価動向であります。ことしの初めと直近の日経平均株価、この数字を示していただきたいと思います。
○桑原政府参考人(金融庁総務企画局長) お答え申し上げます。
日経平均株価の本年の終わり値での最高値は、今先生がおっしゃいました年初にございまして、1月8日、1万6121円でございます。直近の値につきましては、昨日の終わり値で、1万4935円となっております。
○佐々木(憲)委員 ことしに入って株価がじわじわと下がってきているわけであります。
なぜこうなったのかという点ですけれども、一昨年末からの株高というのは外国人投資家によってつくられていて、当初は買い越しになっていたんだけれども、昨年半ばぐらいからは売り越しになっている。
先日の当委員会の視察で、野村証券でお話をお聞きしますと、ヘッジファンドというのはさっと来てさっと帰っていく、こう言っていたのが大変印象的でありました。
大臣の認識をお聞きしたいんですが、外国人投資家、とりわけヘッジファンドの売買が、この間、株価に大きな影響を与える要因となったのではないかと思いますけれども、どのように把握しておられますか。
○麻生財務・金融担当大臣 これは、佐々木先生、株価が、昨年1万6千円が、きょう、前場で1万5千円に行きましたかね、1万5千円ちょっとぐらいになっていると思いますが、この株価の指数について、これは、昨年1年間で大幅に株が上昇したことに対して調整が起きているんだという意見とか、また、第三の矢というようなものの内容が出るまで手控えているとか、いろいろな話を皆さんがしておられますので、これはどういうもので動くかよくわかりませんし、また、金融担当大臣やら何やらやっていると、こういったものにうかつに言うと話がまた込み入ってきますので、コメントは差し控えさせていただきたいと思っております。
いずれにしても、こういった株というものは、日本の企業の内容がやはりきちっと、デフレから脱却してインフレ傾向になり、企業の内容がしっかりしてきた等々してこないと、これは思惑だけで動かれたのでは話になりませんので、会社の実体がそれに伴っていないと安定したものにならぬ、そう思っております。
○佐々木(憲)委員 直接お答えにならなかったんですけれども、確かに、株価は、実体経済がどうなるか、これによって最終的に決まると言っていいと思うんですね。
この間の、ことしに入ってからの株価低迷の背景にあるのは、考えてみると、4月から消費税の増税があった、あるいは年金が給付が下がったとか、そういうような要因によって家計消費が4月以降大幅に減っております。内需がどうなるか、これが非常に不安定要因として、あるいは将来見通しを暗くしているということで、それを反映しているのではないかと私は思うんです。そういう状況で株価そのものを無理やり外側からいろいろな形で引き上げようとしても、これは一時的な株価操作であって、これはもとに戻ってしまう、そういうものであると思うんです。
麻生大臣は、4月16日の当委員会で、GPIFの動きが6月以降出てくる、そうした動きが出てくるとはっきりすれば外国人投資家が動く可能性が高くなる、こう答弁されたわけであります。
先日の視察でGPIFにも行ったんですけれども、厚生年金と国民年金の積立金約130兆円を有する世界一の公的な年金資金運用機関であります。
6月以降出てくる動き、この意味をちょっと説明していただきたいと思います。
○麻生国務大臣 GPIFについては、先ほども御質問があっておりましたが、昨年の成長戦略を受けましてことしの1月に閣議決定をされております実行計画において、財政検証の結果を踏まえた新しい基本ポートフォリオを決定するなど、所要の積極的な対応を行うと規定をされております。
したがって、これを踏まえて、今月中に行われる予定の成長戦略の改訂版の策定等々を初めとして、私どもとしては、種々の作業の中でGPIFの資産の運用のあり方についても議論されるものだ、そういうふうに考えておりますので、御指摘の発言はそのような意味で申し上げたというふうに御理解いただければと存じます。
○佐々木(憲)委員 出てくる、こういうことは、株価に関連して言うと、株式にGPIFの資金が出てくる、そういう意味だろうと思うんですね。それが果たして国民にとってプラスなのかどうか、こういう問題になると思うんです。
まず、基礎的なことですけれども、厚労省に確認したいのは、2010年の12月に出されたGPIFの運営のあり方に関する検討会報告というのがありますね。そこでこのように書いているわけです。「年金積立金の原資となる保険料は投資を目的として徴収されたものではなく、年金積立金は老後の給付に充てるために一時的に国が預かっているものであることから、安全運用が基本である。また、運用目標を大幅に下回った場合には、国民の負担増加に直結する重い問題である」そういうふうに書かれているわけです。これは間違いありませんね。
○藤井政府参考人(厚生労働省大臣官房審議官) 御指摘の、平成22年の12月22日に取りまとめられました、年金積立金管理運用独立行政法人、すなわちGPIFのことでございますが、これの今後の運営のあり方に関する検討会の報告書におきましては、さまざまな御意見が報告をされてございますが、その中の一つとして、議員御指摘の御意見も記載されているものと承知をしております。
○佐々木(憲)委員 これまで政府も、国民の財産である、したがって運用は安全確実に、こういうことを言われてきたと思います。ところが、安倍総理が最近、運用対象の多様化について検討していく必要がある、こういうふうにおっしゃっているわけですね。
国民の財産の安全確実な運用を行って国民に損害を与えてはならないというのが基本だと思うんですが、それを多様化というようなことになっていきますと、これは今までの基本原則とまた違ってくるのではないかと思いますが、そういう方向転換ということを政府として考えているのかどうか、麻生大臣に確認をしたいと思います。
○麻生国務大臣 今のお話ですけれども、まず一番大事なところは、先ほどGPIFの話に出ていましたけれども、これは佐々木先生も御存じのように、加入している人たちの安全と、それに対する利益が少しでも多く確実になるように運用しているのであって、先ほどの答弁と、少し私の意見が違うのかもしれませんけれども、何となく、少し一番肝心なところが忘れられた話になっているような気がして聞いておりました。
いずれにしても、これは専ら被保険者の利益のために行うということになっているはずですから、したがって、資金の運用というのは、これは株価維持を目的とするものではないということははっきりしておる、私もそう思っております。
したがいまして、私どもとして注意しておかないけませんのは、一昨年の4月―9月でしたか、上半期のところは、たしかあれは1・5兆円ぐらいのマイナスになったんだと思いますが、年金というのは極めて運用がうまくいっていなかったと思いますが、それが、一昨年の10月からことしの3月ぐらいまで約18カ月の間に約20数兆円の黒字になっておるということは、どうしてそんなことになったんだといえば、これは失礼ですけれども、厚生省の年金運用課長がそんな有能なやつが来たなんて話は考えられませんから、常識的には、単に株価が上がって、持っている株の価値が上がったから運用資金の額がふえたというだけの話なんだと思っております。これは、うかつにそういった才能のある人が出る方がむしろ危ないので、確実に運用させておくというのは大事なところで、それをどの程度の確実なものにするかというところが意見の分かれるところかなとは思います。
いずれにしても、一番肝心なところは、加入者、そういった方々の持っておられる資産、そういったものが確実に保証されていくというのが一番肝心なところだと思います。
○佐々木(憲)委員 株への依存度が高まるということがいいことか悪いことかというのは見解が分かれるところだと思いますね。
株に余りにも、年金基金129兆という膨大な資金をそちらにシフトすることによって一時的に株価が上がるかもしれないけれども、しかし下がる場合もありますから、下がって大変な穴をあけた、今おっしゃった、そういう時期もあったわけですね。まだ取り戻していないんですよ、全部。そういうようなことを考えると、これは果たして正しいやり方なのかどうか、根本的にここは考えなければいけないと思います。
そういう点でいうと、昨年11月に有識者会議の報告書というのが出されまして、これは、いわば安倍政権の、アベノミクスの一環としてこの運用を考えていく、そういう立場で報告書が書かれているわけです。果たしてそれがいいのかどうかですね。今、安全確実にということで、国民の財産を毀損してはならない、これがやはり大事な点だと思うんですよ。それが、今回の有識者会議の報告書を見ますと、どうも、株式の方にずっと力点を置いて、軸足をそっちへ持っていこう、こういう報告書になっている。
そもそも、この報告書を見ますと、外国でもやっているんだというような表がありますね。ところが、本当にそうなのかという点なんです。
例えば、ノルウェーの政府年金基金グローバル、GPFGというのがその表に載っております。これは、年金という名前がついていますけれども、そもそも年金制度と直接関係がなくて、産油国ノルウェーの固有な財政システムの一環ではないか、こう言われているわけですね。それから、アメリカのカリフォルニア州職員退職制度、カルパースと言われるものですけれども、それとオランダ公務員総合年金基金、ABPは、いわば上乗せ部分の年金なんであります。
したがって、例として挙げられているこれらは、いずれも、運用した結果が公的年金の給付水準に直接影響を及ぼすことにはならない仕掛けになっている、そういう制度だと思いますけれども、確認をしておきたいと思います、内閣府に。
○赤石政府参考人(内閣官房日本経済再生総合事務局次長) お答えさせていただきます。
お尋ねの有識者会議、これは資産運用の観点から、海外の年金基金の運用等について検討を行ったものでございまして、それぞれの国の年金制度自体について調査を行ったものではございません。
ただ、そうした中で、一般論として申し上げますと、御指摘のノルウェーの政府年金基金グローバルは、石油価格が下落した場合あるいはノルウェー経済が収縮した場合に、財政政策を調整する余地を残すために、政府の石油・ガス事業からの収入を積み立てている基金であると理解しておりまして、専ら年金給付のための運用をされているものではございませんが、将来の年金支出へ備えることも運用目的の一つに含まれているというふうに理解してございます。
それから、もう二つ御指摘がございました、カリフォルニアのカルパース、それからオランダ政府のABP、これらにつきましては、カリフォルニアであれば、州政府の職員を対象として積立金を運用する年金基金でありまして、おっしゃるとおり、全国民を対象とした基礎的な年金部分に当たる社会保障信託基金の給付に上乗せする形のものでございまして、ABPも似たような仕組みのものである、そのように理解してございます。
○佐々木(憲)委員 ですから、年金水準に直接影響を及ぼすような運用はしていないわけなんですね。
それから、カナダの年金プラン投資理事会、CPPIBというんですか、それとスウェーデンの国民年金、APファンド、この二つの基金は公的年金積立金の運用機関ではありますが、日本と違うのが、いずれの国も、一階と二階で構成される公的年金制度のうちの二階部分の積立金の運用なんですね。ですから、最低保障機能を担う一階部分には影響を与えない、そういう仕掛けになっていると思いますが、確認をしておきたいと思います。
○赤石政府参考人 お答えいたします。
御指摘のカナダのCPPIBは、御指摘のとおり、基礎的な年金部分に当たる老齢所得保障に上乗せする形で給付を行う報酬比例年金部分の積立金を運用する年金基金でございまして、スウェーデンのAP基金も報酬比例年金の積立金を運用する年金基金でございます。
したがいまして、カナダのCPPIBにつきましては、基礎的な年金部分に当たる年金基金とは別に運営されているほか、スウェーデンにつきましても、所得比例年金による給付が一定水準に満たない者に国庫負担で一定額の年金給付を保障する仕組みでございまして、いずれの場合も、運用状況が基礎的な年金部分あるいは最低保障部分の給付の水準に直接の影響を与えるものではない、そのように理解してございます。
○佐々木(憲)委員 アメリカの公的年金基金、OASDIは全額非市場性国債で保有している、これはもう公知の事実であります。
このように考えますと、日本のGPIFの積立金の運用の仕方というのは、国際的に言って極めて特異といいますか、全財産を丸々運用する、その運用の仕方も丸々株式等々にポートフォリオを振り分けていく、こういうやり方をしているわけなんです。したがって、毀損をしたら、年金の基礎的な部分も全部影響される、年金の給付水準に影響が出てくる、こういう問題を発生するわけです。
これは、やはり制度としても私たちはよく見きわめておかないと、ほかの国も株で運用しているからいいんだ、日本でもやろうじゃないか、これは仕掛けが全然違うわけです。ほかの国の場合は、基礎年金、基礎的なところに影響は及ばないような、そういう運用をやっているわけですね。しかも、損失が出た場合に、スウェーデンの場合とかカナダの場合は即座に処理する仕組みが備わっているということであります。
そういうふうに考えていきますと、私は、今のGPIFの基本ポートフォリオの仕掛けを変更して株式の方に軸足を移していくということは、麻生大臣が言われたように国民の財産そのものを預かっているわけですから、それを毀損するようなことにつながる、非常にそういう危険性をふやすということになるわけでありまして、我々は到底これを認めるわけにはいかないわけです。
そこで、今度は、今回、人事で、その運用のための体制を変えていますね。それはどういうものかというと、運用委員会、これは4月にほぼ総入れかえになっているわけですけれども、この運用委員会のメンバーがどうかわったか、説明をしていただきたいんです。
新しいメンバーの中で、金融機関の出身者は何人いるのか、また、有識者会議のメンバーだったのは何人なのか、お答えいただきたいと思います。
○藤井政府参考人 お答えいたします。
GPIFの運用委員につきましては、十名中九名の方の任期満了に伴いまして、4月22日付で七名の方を任命したところでございまして、現在八名というふうになってございます。
現委員、その八名のうちでございますが、内閣官房の有識者会議の委員であった方が三名いらっしゃいまして、また、先生お尋ねの、これは各委員から提出をされました略歴等によればでございますが、民間金融機関に在籍したことがある方は三名というふうになってございます。
○佐々木(憲)委員 今、報告がありましたように、八名中、株式で運用すべきだという報告書を出した有識者会議のメンバーが三名、それから、運用によって利益を上げるという現場に近いところにいた方が三名。これは、今までの構成とはがらりと変わっているんですよ。これは、余りにも株式投資に軸足を移している人事だと言わざるを得ない。安倍内閣の人事がいろいろ言われておりますけれども、こういうところにもそれがあらわれていると言わざるを得ないですね。私は、年金の加入者、国民から見て、これでは余りにも危ないなと言わざるを得ないですよ。
政府全体の方針が多様化という方向。ポートフォリオを今回見直して株式に軸足を移す。しかも、日本の年金は丸々、その財源として活用されていく。外国と比べても全く危ない橋を渡ろうとしているわけです。しかも、それを運用していくことを決めていく人事が、株式運用の方に軸足を移すという発言をされている方、そういう考えの方が多数を占めるような状況になっている。
私は、こういうやり方というのは余りにも危ない橋を渡ることであって、こんなやり方はやめるべきだということを申し上げたいというふうに思います。
時間がもうちょっとありますので、最後に大臣の見解をお聞きしたいと思います。
○麻生国務大臣 これは厚生省所管の話なんですが、このGPIFの改革については、ことしの1月に閣議決定がされております産業競争力の強化に関する実行計画の中にあったと思いますが、デフレ脱却を見据えた資産運用の見直し、現在のポートフォリオの見直し等々を含め、リスク管理体制のガバナンスの見直しなど、これは合議制の体制とか専門人材の確保などなど、いろいろと書かれているところなんですが、有識者会議の提言というのが出されておりますので、私どもとしては、長期的な健全性というものに十分に留意しつつ、引き続き、専門家を中心にしっかりとした検討が進められていくことを期待いたしております。
○佐々木(憲)委員 私はこういうやり方は非常に危ないと思っておりまして、また、手数料ももっと上げなさい、そういう報告書も出ているんですね。これでは国民の財産を食い物にするようなもので、ばくちに財産を使っちゃいけない、ちょっと言い方がどうかは別として、そういうふうに思いますので、再検討していただきたい。
以上で終わります。