国会での活動
【政治経済キーワード】人権擁護法案
2002年5月17日
「個人情報保護法案」とともに、言論・表現の自由を制限するものだと反対の声が広がっている法案が、いま参議院で審議されている「人権擁護法案」です。
法案では、報道機関の取材や報道について、過剰取材やプライバシー侵害の判断を「みだりに報道」「過剰取材」などのあいまいな規定で新設する「人権委員会」にゆだねています。報道機関からの異議申し立ては認めていません。「人権委員会」は法務省の外局であり、人的にも法務省とほぼ一体となっています。
これは、表現の自由に対する行政の介入となり、国民の知る権利を奪うものです。政治家の金権事件や公権力の人権侵害に対する報道が規制される恐れがあり、メディアよる被害者家族への粘り強い取材で警察の怠慢・隠ぺいを暴いた桶川ストーカー事件のような報道が困難になります。
さらに、広く国民の言論・表現活動も「差別助長行為」などの規定で規制対象としており、何が「差別的」かを委員会が判断します。言論・表現の自由や内心の自由にまで行政が介入するものとなります。
一方、わが国では雇用の場での人権侵害が極めて重大であるにもかかわらず、労働分野での差別的取扱いを特例として委員会の対象から外している点も問題です。先進諸国の人権救済機関は、雇用の場での人権救済をその中心的課題とし、実効ある措置を取っています。
長年の自民党政治のもとで、国民の人権が憲法の規定から大きく立ち後れているなか、市民団体や日弁連など多くの人びとが人権侵害を迅速・簡易に救済する新たな人権救済機関を求めてきました。国際的にも、国際人権規約委員会が、日本に対し、警察や出入国管理局の虐待から救済する政府から独立した機関の設置を勧告しています。
しかし、政府・与党がすすめる「人権擁護法案」は、公権力による人権侵害の救済にはつながらないどころか、人権の名の下に、政府・自民党の長年の願望であった報道、表現の自由への介入の道を開くものです。このような法案の成立を許すことはできません。日本共産党は、「個人情報保護法案」とともに法案の撤回を要求しています。