金融(銀行・保険・証券) (優越的地位の乱用, 金融消費者保護)
2006年05月10日 第164回 通常国会 財務金融委員会≪参考人質疑≫ 【352】 - 質問
三井住友銀行の優越的地位の乱用について 佐々木議員 銀行に質問
2006年5月10日財務金融委員会で、「金融商品取引法案」(投資サービス法案)に関連して参考人質疑と法案質疑が午前と午後に行われ、佐々木憲昭議員は、融資先中小企業に金融商品の購入を押しつけた三井住友銀行の独禁法違反事件(優越的地位の乱用)について質問しました。
参考人として招致されたのは、畔柳信雄氏(全国銀行協会会長)と奥正之氏(三井住友銀行頭取)です。
佐々木議員は、奥参考人(三井住友銀行頭取)に「違法性のある契約で被害を押しつけられたのだから補償するのは当然ではないか」と迫りました。
奥参考人は「法的に明確に問題があるものは、十分な話し合いのうえで真摯(しんし)に対応していきたい」と補償に応じる考えを示しました。
この後、政府に対して、法案質疑が午前と午後に行われました。
議事録
【参考人の意見開陳部分と佐々木憲昭議員の質問部分】
○小野委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、証券取引法等の一部を改正する法律案及び証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案並びに古本伸一郎君外六名提出、証券取引委員会設置法案の各案を議題といたします。
本日は、各案審査のため、参考人として、全国銀行協会会長畔柳信雄君、株式会社三井住友銀行頭取奥正之君、以上2名の方々に御出席をいただいております。
この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、大変お忙しい中を当委員会にお越しをいただきまして、ありがとうございます。皆さん方のそれぞれのお考えを、きょうは率直に忌憚のない御意見をお述べいただきたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。
次に、議事の順序について申し上げます。
まず、参考人各位から一人10分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。
なお、念のために申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願いいたします。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了解願います。
それでは、まず畔柳参考人にお願いいたします。
○畔柳参考人(全国銀行協会会長) ただいま委員長から御指名をちょうだいいたしました全国銀行協会の畔柳でございます。本日は、証券取引法等の一部を改正する法律案等の御審議に際しまして、私どもの意見を述べさせていただく機会をいただき、心より感謝を申し上げます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
御高承のとおり、我が国の個人部門は、平成17年末で約1500兆円もの金融資産を有しております。現状ではその約半分の48.9%が預貯金で運用されておりますが、そうした豊富な金融資産が民間の成長分野に円滑に投資されること、いわゆる貯蓄から投資へと資金の流れを転換させていくことは、成熟化が進む我が国経済の一段の活性化に向けまして、重要な課題でございます。これを金融システムの観点から見ましても、貯蓄から投資へという動きが進展し、これまでの間接金融を中心とした資金の流れが、直接金融を含めた複線的なものにシフトしていくことは、金融仲介機能の強化につながるものと考えます。
こうした中、最近の金融資本市場を見ますと、市場で提供されております金融商品、金融商品を販売します担い手、金融商品を購入される利用者のいずれにおいても、既に新しい動きが生まれつつあります。
まず、金融商品につきましては、投資性のある金融商品として、株式や投資信託といったいわゆる有価証券に加えまして、金利や通貨のデリバティブ取引を組み込んだ円預金や外貨預金、投資型年金保険など多様化が進んでおります。
次に、担い手という観点で見ますと、かつては、預金は銀行、保険は保険会社、株式は証券会社と、業態ごとに線引きされておりましたが、ここ数年の間に、投資信託や保険商品の銀行窓販が解禁され、証券仲介制度も銀行を含めた一般事業会社に解禁されました。また、この4月からは、銀行商品を一般事業会社が販売する銀行代理業制度の手当てもしていただいたところでございます。つまり、従来は明確であった各業態の垣根を越える形で、金融商品販売の担い手が広がっております。
また、市場の利用者につきましても、株式や株式投信といった投資性商品を選好される個人のお客様が増加するなど、利用者のすそ野が拡大しております。実際、株式や株式投信、外貨預金といった投資性商品が個人金融資産に占める割合は、平成14年末時点では9.1%、127兆円でございましたが、平成17年末時点では15.6%、235兆円に増加しております。低金利の長期化や株価の上昇などを反映しまして、資金運用に積極的な個人のお客様がふえていることを示しております。実際、私ども銀行の窓口でも、投資信託や老後に備えた投資型年金保険などのニーズが高まっていることを感じております。
このように、金融資本市場の構造変化が進み、投資性商品に対するニーズが高まっている中で、金融商品取引法、すなわち、現在の証券取引法を抜本的に改正し、投資性のある金融商品に関する制度を幅広く横断的に整備する法案を御審議いただいていると理解しております。そこで、本法案に関しまして、私の考えを三点ほど述べさせていただきます。
第一は、本法案がタイムリーで意義深いものだという点でございます。
従来はいろいろな法律によって規制されていた商品や法のすき間に落ちていた商品も含め、投資性商品に対して幅広く網をかけ、横ぐしを通す形で横断的に販売ルールを整備することは、利用者保護の観点から大変意義深いと考えます。これにより、利用者の皆様には、従来以上に安心して金融取引を行っていただけるようになると思います。また、金融商品を販売する業者の側から見ましても、ルールの明確化は金融ビジネスを円滑に展開する上での基礎となります。貯蓄から投資への流れがさらに進んでいる中で、利用者の皆様の安心、安全と、金融商品販売業者の健全な発展という形で、両者が共存共栄を確実なものにしていくためにも、今回の法案は時宜を得た、かつ重要な制度整備であると考えております。
第二は、本法案の精神を踏まえまして、金融商品の販売を担う銀行の業界団体として、全国銀行協会の取り組みを進めてまいりたいと考えております。
最近の銀行界の状況を申し上げますと、おかげさまで全体として見れば不良債権問題からは脱却し、金融システムの安定から活力ある金融システムの構築へとフェーズが転換しつつあります。また、金融機関の業務規制の緩和も大きく進展し、金融機関が活躍できるフィールドは従来に比べて格段に広がっております。こうした状況下、各金融機関も戦略を転換し、お客様に少しでも満足いただけるよう、金融サービス業としての競争にしのぎを削っているところでございます。今後、お客様に改革のメリットを享受していただくと同時に、お客様に安心して金融取引を行っていただくためには、金融機関及びその業界団体にいわゆる自由と規律の実践が強く求められているものと認識しております。
今後、本法案を成立させていただきました際には、全銀協として会員銀行が法令に従って適切に対応できるよう活動してまいります。例えば、お客様との間で適正かつ健全な取引関係を構築していくことを目的に、販売、勧誘に際しての適合性原則の確認や説明義務等に関する留意点等を議論し、取りまとめ、会員銀行に周知徹底していきたいと考えております。また、法令に対する会員銀行の円滑かつ十分な対応を促すべく、会員銀行間の情報共有や、各行の取り組み方法に関するアンケート調査なども行ってまいりたいと考えております。
第三に、金融商品取引法案の趣旨を十分に発揮するためにも、法の運用に際しての要望を申し上げたいと思います。
今回の金融商品取引法案は、その規制を金融商品や利用者、いわゆるプロとアマに応じて柔軟に適用できる構造を有している点が大きな特徴と認識しております。
一口に投資性商品と申しましても、そのリスクの大きさや販売実態は商品によってさまざまであります。したがって、説明内容や開示内容、投資家に対する勧誘のあり方は、商品の特性や販売実態を踏まえて柔軟に整備していただく必要があると考えます。現在問題なく行われている金融商品の販売に対して、新たに過度に厳格な規制を追加することは、利用者の金融商品に対するアクセスをかえって阻害し、多くの利用者からごらんになれば、利便性の低下、金融市場の活力低下につながるおそれがございます。新たな行為規制の金融商品への適用に当たりましては、利用者保護の確保とあわせて、利用者利便の確保にも十分に御配慮いただくことをお願いいたします。
また、プロとアマの区分の問題につきましても、利用者のニーズや取引現場の実態をよく踏まえたルールを定めていただきたいと存じます。我が国金融資本市場の利用者のすそ野は拡大しており、これまでアマであった法人や個人の中にも投資経験を十分にお持ちになるケースがふえていくと思われます。アマにとどまるべき利用者が誤ってプロとみなされるようなケースは、利用者保護の観点からは防ぐ必要がございますが、その一方で、プロ同士の取引に関して、規制を緩和して利便性を高めることは、金融取引の一層の活性化を促す意味で重要と考えております。
最後に、繰り返しにはなりますが、貯蓄から投資へという流れが加速しつつある中で、投資性の金融商品に対する横断的な利用者保護ルールの整備を目指す本法案は大変重要であると考えております。
本法案を御審議いただいております諸先生方にお礼を申し上げまして、私の意見陳述を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
○小野委員長 どうもありがとうございました。
引き続きまして、奥参考人に陳述をお願いいたします。
○奥参考人(株式会社三井住友銀行頭取) 三井住友銀行の奥でございます。
本日は、現在御審議中の証券取引法等の一部を改正する法律案につき意見を申し上げます前に、先月27日に、弊行が、金融庁から、銀行法第26条に基づく行政処分を受けるに至りました事態の経緯とともに、今後の再発防止策等につきまして御説明をさせていただきたいと思います。
このような事態に至りましたこと、まことに遺憾であり、まず、弊行を御利用いただいておりますお客様、株主を初めといたします関係各位の方々並びに国民の皆様に御迷惑、御心配をおかけしましたことを深くおわび申し上げます。弊行といたしましては、今回の処分を厳粛に受けとめまして、再発防止、信頼回復に向けて全力を挙げて取り組んでまいる所存でございます。
それではまず、今回の事態について説明をさせていただきたいと思います。
昨年の12月、弊行は、公正取引委員会より、弊行の中堅中小企業取引の窓口でございます法人営業部が過去に販売いたしました金利スワップ取引の一部で、独占禁止法第十九条に規定いたしますところの優越的地位の濫用事案が認められるとの指摘を受け、排除の勧告を受けました。
これを受けまして、弊行では、直ちに社内に、弊行と顧問契約のない第三者であります弁護士が参加いたしました特別調査委員会を設置いたしまして、同様の事態の有無等について、厳正な自主調査を実施いたしました。
この特別調査委員会による調査の対象は、一つは個別事案調査と、二つに、今回の事態を招いた弊行の体制面における原因の二点でございます。
このうち、一点目の個別事案調査につきましては、平成13年4月以降の弊行の金利スワップ契約につきまして、解約先を含めまして、全先の1万8162社に対して実施いたしました。
このうち、電話などによりまして調査要請をいただきましたお客様677社及びそれ以外のすべてのお客様へ弊行からお送りいたしました調査票に対し、優越的地位の濫用に関して問題ありとの御返信をいただきましたお客様1523社を加えました合計2200社につきまして、さらに詳細かつ厳正な調査を実施し、優越的地位の濫用の有無に関する判定を行いました。
この調査の結果、独占禁止法上の優越的地位の濫用事案が17社、優越的地位の濫用懸念事案が51社と判定されました。さらに、この調査の過程で、独占禁止法上の優越的地位の濫用や懸念には該当しないものの、商品の説明不足等の問題から法的に責任が生じる懸念がある事案が181社あることが判明いたしました。
次に、二点目の弊行の体制面に関する調査につきましては、問題が発生いたしました期間の金利スワップの販売体制に関しまして、営業拠点でございます法人営業部及び本部にそれぞれ問題点が認められました。
まことに遺憾な結果ではございますが、この原因を一言で申せば、収益目標を掲げ、これを推進する一方で、それに見合った業務管理や牽制機能が十分でなかったことにあり、こうしたことが今回の事態を招いたものと深く反省をしております。
弊行では、このような事態を二度と生ぜしめることのないよう、改めてお客様本位の営業姿勢並びに法令遵守の意識を行内に再徹底いたしますとともに、業務推進面、管理面など、大幅な改善に向けました業務改善計画を策定してまいる所存でございます。
具体的には、一つは、営業活動におけます独占禁止法に関する研修、同法の遵守状況のモニタリング及び監査の強化等を通じた独占禁止法遵守に関する体制の強化、二つに、金利スワップを販売することができるお客様の対象の厳格化、提案書の内容の改定等の法人営業部におけます金利スワップの販売体制の見直し、三つに、法人営業部におけます業績表彰ルールの大幅改定や商品企画におけます顧客保護等に留意したルールの策定、さらには、お客様の視点で苦情、クレームを経営に反映させるための組織としての品質管理部の新設といったお客様本位の営業体制の整備を行い、再発防止の実施を図ってまいります。
次に、先ほど申し上げました2200社のお客様に対しましては、弊行特別調査委員会による調査結果につきまして、個別の説明、対応を既に3月より順次始めております。お客様への対応に際しましては、真摯かつ誠実な姿勢で臨みますことはもちろんのこと、各法人営業部のみならず本部も十分かみ込みまして、法的な観点も踏まえまして適切に実施してまいります。
今回の事態につきましては、お客様との直接の窓口であります法人営業部のみならず本部も含めまして各種問題点が認められており、経営に携わる者として、真摯に深く反省をしております。つきましては、今後、問題の原因となりました役職員の責任の所在を明確化の上、厳正な行内処分を行ってまいります。
以上が、今回の行政処分の対象となりました事態と再発防止策の概要でございます。
私は、昨年六月に頭取に就任して以来、改めてお客様本位の経営理念を徹底すべく取り組んできておりますが、今後、コンプライアンス意識のさらなる浸透と再発防止策の徹底を図り、一日も早く皆様の信頼を回復すべく、役職員一同、心を一つにして努力してまいる所存でありますので、何とぞ御理解を賜りたくお願い申し上げます。
続きまして、証券取引法等の一部を改正する法律案につきまして、私の意見を簡単に述べさせていただきます。
本法案につきましては、金融資本市場を取り巻く環境変化に対応し、幅広い金融商品につきまして、包括的、横断的な制度整備を図る、極めて重要な法案と認識しております。私ども金融機関にとりまして、お客様の多様なニーズに適切に対応するため、金融イノベーションが一層促進されますとともに、お客様が安心してお取引いただけるような制度が整備されますことは、大変意義深いものがございます。
私どもといたしましては、本法案が成立した際には、まず、業務に携わる役職員全員が、法律の内容やその趣旨をしっかりと理解し、その内容に沿った対応を確実に行うように徹底してまいります。そのためには、単に法律を守るということだけではなく、法律の趣旨の理解を含めた幅広い意味でのコンプライアンス意識を行内に浸透させることが不可欠でございまして、その一環として、弊行では、本年四月に金融商品コンプライアンス室を設置いたしまして、同室を中心に、銀行全体として、新制度への的確な対応を進めてまいります。今後とも、こうした取り組みを進めますことによって、公共的使命を負った銀行として、お客様、国民の皆様の御信頼にしっかりとこたえてまいりたいと思います。
以上、私の意見を述べさせていただきました。ありがとうございました。(拍手)
○小野委員長 ありがとうございました。
以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
○小野委員長 これより参考人に対する質疑を行います。(…中略…)引き続きまして、佐々木憲昭君。
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
今回の行政処分に関連して、私もお聞きをしたいと思います。
まず、奥頭取にお聞きしたいと思いますが、優越的地位の濫用というルール違反を生み出した背景についてでありますが、銀行経営が不良債権処理に追われる、そのためには収益力を上げなければならない、こういうことがあったと思うんです。その背景には、やはり、政府の不良債権処理、これを目標を決めて実施に移すということもその背景にあったのではないかと思うんですが、認識はいかがでしょうか。
○奥参考人(株式会社三井住友銀行頭取) 内部的な要因と外部的な要因がございまして、内部的な要因につきましては、先ほど来当行の部分について申し上げてきておるとおりでございます。
外部的要因につきまして、これも先ほど少し触れましたけれども、当該期間が日本の金融再生それから経済再生のために大変重要な時期であったかと思います。そういう中で、金融というものはまさに経済の血流でございますので、そこにおいての再生を先に果たしていくという課題は当然のことながらあったと思います。
そういった意味での不良債権処理への注力というのは、これは日本の経済を再生していく、現在のような形に持っていくための一つの大きな課題であったわけであります。そういった意味で、私どもも、不良債権処理、そしてその不良債権処理をやっていくための一つの収益力の強化という、二つの課題に向かってきたわけであります。
とはいえ、その収益力の強化というものは、当然のことながら、繰り返すようでございますけれども、コンプライアンスを軽視して上げろ、上げていいというものでは決してありませんし、そういう指示は銀行内でもしたことはございません。ございませんが、結果としてそういう御指摘を受けるような形になったことは、まことに残念で、遺憾に思っております。
今後につきましては、それをしっかりと是正し、対応していきたいというふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 不良債権処理という問題が政治の中心に据わったのは小泉内閣が発足してからでありまして、それ以前の段階、直前には、不良債権処理は基本的には終了した、こういう認識を政府自身も言っていたわけでございます。したがって、私は、この不良債権処理を強引に、政治的に、政策的に推進してきたというところに一つの要因があったというふうに認識をしております。
具体的な数字についてお聞きしますけれども、三井住友銀行は、業務粗利益の6、7%に当たる500億円がデリバティブによる収益で、その半分の250億円が金利スワップによる収益というふうに聞いていますが、大体そういう数字ですか。
○奥参考人(株式会社三井住友銀行頭取) 業務粗利益が約1兆5000億強でございまして、1兆5000から1兆5500ぐらいでございまして、デリバティブズ全体の収益が、先ほど申しましたように、前年度において約1000億、まだこれは速報ベースですけれども、そのうちの金利スワップ取引から上がるところが約500億強、それから法人業務部門から上がるのが四分の三の400億若干超える程度ということでございます。
○佐々木(憲)委員 それは年間の数字だと思うんです。私が言ったのは多分、半分だから半期の数字だというふうに思います。
それで、三井住友銀行は、今数字で確認したように、金利スワップというものがまさにもうけ頭の商品であり、そして、それを推進する法人営業部というのが目標を定めて推進をしてきたというふうに聞いております。
そこで問題は、そのもとで従業員ごとの目標を決める、そういうところまで徹底していたのではないか。つまり、全体としての目標を定めて、中期目標を定め、かつ、それぞれの法人営業部ごとの目標を決め、そして、それを個々の従業員に、あなたは幾ら幾らですよ、今月の目標は幾らだ、こういうところまで徹底をしていたというふうに聞いております。
今回のこの法違反を生み出した一つの要因として、かなり過酷なノルマというものがあったのではないかと思うんです。私が聞いているところでは、従業員一人当たりの半期の目標というのは大体1億から1億5000万という数字になっていたというふうに聞いております。もちろんそれは、それぞればらつきはあると思いますけれども、かなり大きな目標を掲げて、その目標達成のために全力を挙げる、こういうやり方をしてこられたのではないでしょうか。
○奥参考人(株式会社三井住友銀行頭取) 先ほど来、法人業務部の予算といいますか、年間目標の策定の仕方について御説明しましたけれども、本部から、各店当ての割り当てといいますか目標は、一応目線として当然のことながら示達をいたします。その中で、当然、各法人営業部には法人営業部員がおりますので、そういった人にその法人部長が、一つの目線として、それぞれのお客様の地盤に応じた形での個人の目標というのは与えていることは一般に行われていると思いますし、平均幾らだということは私は存じませんけれども、一般的な営業のやり方としては、そういった形が行われていると思います。ただし、それはノルマとかいうことではなくて、一つの年間の目標値としてそれを与えているということで私は理解をしております。
○佐々木(憲)委員 私がノルマと言ったのは、各営業部ごとに目標があり、そして各従業員に、あなたは今月あるいは年間どのぐらいの目標なんだとそれぞれ出させて、そんなんじゃ低過ぎるじゃないか、このぐらいは当然じゃないかということで設定をし、そして毎日それを、一体どこまでいったんだと。月末近くなりますと、まだこんな状況じゃ達成できないだろうということで、相当プレッシャーをかけていたというふうに聞いているわけです。
先ほどのお話ですと、お客さんの声がどこまで届いていたかはよくわからないと。しかし、従業員の声も余り経営者の中には届いていなかったのではないかというふうに私は感じるわけです。
そこで、全銀協の畔柳会長にお聞きしたいと思うんです。今回、こういうやり方で、優越的地位の濫用ということになったわけですが、ことしの一月の時点で、金融庁から、優越的地位の濫用がなかったのかということで調べるように、全銀行が要請を受けたと思うんですね。全銀協としては、これをどのように受けとめて、どういう調査をされたか、お聞きをしたいと思います。
○畔柳参考人(全国銀行協会会長) 本件につきましては、先ほども御質問にお答えしたかと思うわけでございますが、もともと、独禁法に係る公正取引に関しましては、従来から全銀協として、それを各銀行に告知して周知徹底する努力を続けておりました。また、今般の公正取引委員会の勧告を受けまして、昨年十二月からことし一月にかけまして傘下銀行にアンケートを行いまして、独禁法の禁止行為の発生防止策、また、それにとどまらず、価格変動商品の販売時のチェック方法とか、営業店に寄せられた苦情のコンプライアンス担当部署による吸い上げ方法などを、推進の取り組み事例を広くアンケートし、注意を喚起しつつ、そのよい事例を集めて各行に配付するというようなことをやっております。そして、一月の金融庁の御要請、「取引等の適切性確保への取組みについて」ということを踏まえまして、改めて各行は、コンプライアンス体制の強化に取り組んでいるものと考えております。
今後とも、必要に応じまして、こうした対応を行ってまいりたいという方針でございます。
○佐々木(憲)委員 調査というものは、銀行業界の内部で行うものと、相手側といいますか、顧客に対して、一体どうだったかということを行う、この二つがあると思うんですが、今の説明ですと、業界の内部でどうだったかという調査をされたようですね。ですから、これは実態はなかなかつかめないと思うんですよ。そういう限界があったというふうに思います。
それで、三井住友銀行の場合は、調査委員会を今回つくって、そして調査をしたということなんですが、調査票を配付して回収するというようなやり方をされている。これで実態がつかめるかどうかというのが次に問題になるわけで、私は、銀行というのは相当優越的な地位に客観的にあると思うんです。融資を受ける側はやはり立場は弱いですから、どうしても優越的地位の濫用がありましたとなかなか言いにくいというところがあったのではないか。いわば、融資を受ける銀行に対して、違法をやったじゃないかというふうにはなかなか言いにくい。
ですから、1万8000件調査をされた、わずか17件が違法ということで、これは明確な違法性があったというふうにおっしゃいました。しかし、これはさらに広い範囲で、その被害を受けた方々というのを私は聞いております。そういう方は、これは17に入っているのかと聞いたら、それは入っていないと。この数字の、先ほど言った数百の中にも入っていない。そういう人でも、押しつけられた、融資にワンセットで、融資を受けたい、そのときには金利スワップを契約しないと融資はできませんよと、あるいは、契約したら審査が通りやすいから契約してくれ、こういうふうに言われた、そういうふうに言っているわけですね。したがって、この17社以外にかなり大きな問題があるのではないか。
具体的に聞きますけれども、この問題となったところ以外でそういう実態がもしあった場合に、どのようにそれに対して対応されるのか。
それから、被害を受けた方に対して、その被害に対して当然補償すべきだと私は思うんです。これは違法性のある行為をやったわけですから、その契約というものは真っ当な契約ではないと私は思う。押しつけられて、それによって被害を受けたわけですから、それに対して一定の補償をするというのは、これは私は当然だと思う。その点の考え方をお聞きしたいと思います。
○奥参考人(株式会社三井住友銀行頭取) 今回の調査につきましては、私ども、優越的地位の濫用ということのもともとの調査でございましたので、回収するに当たりましては、まず一つは、取引店である窓口を通さずに、すべて本部からやりました。一切そういう取引店からの関与がない形で、本部でやるという形でやると同時に、これについての、独禁法の問題以外にいろいろと御意見それから苦情等ありましたら、それについても同時にお書きくださいという形で別の欄を設けまして、それを行ってきております。
そうした結果が、先ほど2200社のうちの17社が、弁護士が複数入って子細に調べましたところ、独禁法の19条で言いますいわゆる優越的地位の濫用における濫用要件と地位要件、この二つに重なるものが17件ありましたと。ただし、それ以外に51件はまだその疑いがあるかもしれない、引き続き調査を要するというものでございまして、それが51件ありました。ですから、独禁法関係では合計で68件ございまして、この51件については、引き続き本部がお客様と真摯に対応して実態の調査を深めてまいるということでございます。
それ以外にまだ、一般的な説明不足で問題になるかもしれないという案件があったわけでございまして、それにつきましては、引き続き、今度は独禁法とは別に、一般の、これは民法上の不法行為の観点からでございますけれども、これにつきましても調査をしてまいる所存でございます。
そういった中で、法的に明確に問題があるといったものにつきましては、お客様と十分な打ち合わせをした上で、お話し合いをした上で真摯に対応して、金銭的なものについては対応していきたいというふうに考えております。
ただ、これは、それ以外は一般契約法上の問題もありますので、法律的な問題も含んでまいりますが、これについては、本当に我々の現場だけではなくて本部のスタッフも動員いたしまして、個別に真摯に話し合いを進めさせていただくつもりでございます。
○佐々木(憲)委員 参議院の参考人質疑で、西川前頭取がこういう答弁をしているんです。私の耳には一切入っておりませんと、この実態についてですね。それで、責任についても一言も触れない、被害者に対する謝罪もない、こういう態度をとっていて、私は非常に問題だと思っております。その際に、役員報酬の返還だとかいろいろ検討されているようだけれども、具体的なそういうものが出たときにはお受けになりますか、つまり処分をあるいは責任をとるということを受けるのかと。これに対して、具体的なものが出てまいりますと従います、従いますと言っております。
私は、当然、この最高責任者であった西川前頭取が責任をとるのは当たり前だというふうに思いますし、関係の経営陣の責任も重大だと思っております。当然とるべきだと。
そこで、奥頭取は、責任ということについて、経営陣の一員でもあったわけでありますから、どのようにとるおつもりか、お聞かせいただきたいと思います。
○奥参考人(株式会社三井住友銀行頭取) 私も、御指摘のとおり、当時もう経営陣の一員でございました。直接的な問題とは別に、やはり経営陣の一員としてそういった声が入ってこなかった、またはそういう問題についてアクティブに何かその調査をするという行動を自分自身が起こさなかったというようなことは、結果として大いに反省しているわけでございまして、その結果としての責任というのは痛感しておりますので、それなりの、私は自分自身への処分も含めて考えてまいります。
○佐々木(憲)委員 銀行というのは公共的性格というのが非常に強いものだというふうに私は思っております。中小企業は今でも、景気がよくなったと言われている中でも、非常に資金繰りに苦しんでいるわけであります。銀行というのはこういう中小企業をどう支えていくか、どう育てるかというのが本来果たすべき役割ではないかと私は思うんです。
今までの、収益一辺倒と私はあえて言わせていただきますが、そういうやり方をすればするほど、全く逆の方向に行ってしまう。社会的な役割あるいは公共的な性格というものが失われてしまう。そして、中小企業に被害を与え、顧客に被害を与え、みずからの利益だけは拡大する。これは本来、銀行という性格からいいますと、業界としての役割からいいますと、逆方向に行くものになってしまうわけであります。
この点で、今後銀行が中小企業、日本経済にとって非常に大事な公共的性格を果たしていくということをしなければならないと私は思っておりますので、その点についての全銀協会長それから奥頭取それぞれの、もう時間がありませんので、簡単にお答えをいただければというふうに思います。
○畔柳参考人(全国銀行協会会長) 御指摘のとおり、我が国においての中小企業の重要性、これは十分認識しているつもりでございますし、また、銀行が各行とも今後は、営業を行っていく上でも、この中小中堅企業への取り組みというのは基本的に極めて重要なテーマだと思っております。
ただ、そのときに、御指摘のあるとおり、並行してコンプライアンスの充実というものをきちっと図っていかなければこういう問題も起こってまいりますので、それを厳に戒めまして、一層その体制で取り組んでまいりたい、こう思っております。
○奥参考人(株式会社三井住友銀行頭取) 中小企業取引、特に中小企業金融につきましては、大変、銀行が日本経済の発展のために果たさなければいけない機能、ファンクションだというふうに考えております。
そういった意味で、私ども、大変経済が厳しかった2002年から、無担保無保証の中小企業向けの貸し金を始めまして、当時としては画期的だったと言われておりますけれども、スコアリングモデルを使いましてやってきております。これが現在1兆7000億まで来ておりまして、そういった意味での中小企業への金融の血流を常にスムーズに流れるような形で、努力を引き続きしてまいりたいというふうに考えております。
そういう中で、今回の中小企業の取引の中でこういう事態が起きたことはまことに遺憾でございまして、これを大いに反省いたしまして、さらなる中小企業の発展のための金融機関の使命を果たしてまいりたいというふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。