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金融(銀行・保険・証券) (優越的地位の乱用, 金融消費者保護)

2006年05月10日 第164回 通常国会 財務金融委員会 【354】 - 質問

三井住友銀行の優越的地位の乱用について 佐々木議員 政府に質問<午後>

 2006年5月10日財務金融委員会で、「金融商品取引法案」(投資サービス法案)に関連して参考人質疑と法案質疑が午前と午後に行われ、佐々木憲昭議員は、融資先中小企業に金融商品の購入を押しつけた三井住友銀行の独禁法違反事件(優越的地位の乱用)について質問しました。



 その後、6月2日、三井住友銀行は、優越的な地位を乱用して中小企業に金利スワップ取引を強要した問題で金融庁に業務改善計画を提出しました。この計画のなかで、被害者の具体的な救済を表明しました。
 それによると、優越的地位の乱用が明らかな契約(17社)については、解約費用を同行が負担して無償で解約し、取引で生じた損害額も返還します。また、優越的地位の乱用が疑われる契約(51社)や、説明不十分など法違反が疑われる契約(181社)については、無償の解約に応じるなど、個別に対応するとしています。
 これは、この間のマスコミや世論の厳しい声を反映したものです。日本共産党の佐々木憲昭衆院議員や大門実紀史参院議員が国会で一貫して被害者の救済を求めてきました。
 しかし、今回、支払い金の返還も含めて全面的に救済する対象は、17社にすぎません。優越的地位の乱用やそのほかの法令違反の疑いがあるものについては、過去の損害額の返還には応じません。また、なんらかの救済をするとした対象は約250社の枠内のことです。調査対象となった中小企業約1万8000社からみると、ほんの一握りにすぎません。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭です。
 午前中の質問に続きまして、三井住友銀行の法令違反の問題についてお聞きしたいと思うんです。
 この実態調査ですけれども、2001年から2004年度にかけて実態を調査した。そうしますと、濫用を確認したのが17件、濫用の懸念があるというのは51件、説明不足など民法上の法令違反の懸念がある取引が181件、合計249件、こういう数字になっているわけですが、この調査は金融庁が独自にやったものなんでしょうか。
○佐藤政府参考人(金融庁監督局長) ただいま御指摘いただきました調査でございますけれども、私どもが三井住友銀行に対して銀行法24条に基づく報告徴求命令を発して、同行に調査を行わせたものでございます。
○佐々木(憲)委員 結局、法令違反を犯した、法令違反をしたその銀行自身に調査をさせた、こういうことですね。
 つまり、私はなぜこれを問題にするかというと、調査そのものの適正性といいますか、正確な実態の把握がそれでできるのかどうかという点を問題にしたかったからなんです。
 つまり、銀行は、利用者から見ますと、中小企業から見ますと、大変力が強い、いわば優越的な地位を持っているわけです。その銀行が中小企業に対して、銀行が法令違反をしていますか、あるいは、優越的地位を濫用したとあなたは思っているのか、こういうふうな調査をしますと、現に取引がある、融資を受けているわけですから、そういう利用者はなかなか、法律に反したことをやられましたと言うのは非常に困難なわけです。はっきり物が言える中小企業というのは、ほかの銀行から融資が可能である、受けることが可能であるという、いわば比較的優良な中小企業であるというふうに言わざるを得ないわけです。
 したがって、その調査の限界性といいますかそこを十分に認識をして、金融庁としてやはり独自の調査、これは方法はいろいろあると思いますが、そういうものをやるべきだと私は思うんですが、いかがでしょうか。
○佐藤政府参考人(金融庁監督局長) 先ほどお答えいたしましたような銀行法24条に基づく調査を行った趣旨をちょっと説明させていただきたいと思います。
 御案内のとおり、銀行法に基づく報告徴求命令、これは虚偽報告があった場合には罰則がございます。必要に応じて当局検査の際に検証を行うといったことも組み合わせることが可能でございまして、こういったことで実効性は確保されるというふうに認識をいたしております。
 それから、三井住友銀行による調査の手法でございますけれども、この調査は三井住友銀行と顧問契約のない複数の外部弁護士が入った調査委員会において、公正取引委員会の排除措置命令も踏まえて実施、判定されたものというふうに承知をいたしております。
 調査票の発出につきましては、優越的地位濫用事案等を可能な限り把握すべく、金利スワップのすべての契約先を対象に実施したものでございますけれども、その際、調査の実効性を確保する観点から、取引を実際に行っている部署とは異なる部署で調査票を発信し、またその返信の受け付けをする、こういう仕組みによって対応いたしております。また、その調査票発出の際に、これにお答えいただくことによって不利益をこうむることは一切ないという点を明記した上で実施したというふうに承知をいたしております。こういったことで、それなりの工夫を行いつつ調査がなされたというふうに思っております。
 なお、同行におきましては、調査票を返信しなかった顧客について、新たな事実が判明すれば改めて調査することといたしているというふうに承知をいたしております。
○佐々木(憲)委員 今の答弁は、そういうやり方が正しかったということを説明しただけであって、この調査の問題点というものをもう少しよく考えてみる必要があると私は思うんですよ。
 もちろん、虚偽報告をしたらそれに対する罰則があるのは当然ですが、その前の段階で、つまり中小企業の側が銀行に対して物を言うということが大変難しいという地位にあるということを理解しないと、たった17という数字、あるいは合計でも、先ほど言ったように、250件程度の数字しか出てこない。つまり、対象となるのは1万8000件なわけですから、私は余りにも少な過ぎるというふうに思うわけであります。
 それで、もう一つは、調査の対象ですけれども、金利スワップに限定をしたわけですね、1万8000件というのは。それ以外の、いろいろデリバティブの取引の商品というのはあるわけです。報道されているところなどを見ますと、それ以外にもいろいろやっている。そうなると、金利スワップだけに限定したということになりますと、では、ほかの商品はそういう違反はなかったのかということになるわけですね。他の金融商品については絶対に優越的地位の濫用はなかったということが言えますか。
○佐藤政府参考人(金融庁監督局長) 今般の報告徴求命令でございますけれども、御指摘のとおり、金利スワップを対象に調査をさせたということでございます。これは、公正取引委員会の排除命令措置を踏まえて金利スワップを対象に調査させた、そのことの緊急性にかんがみてこれを調査したということでございますが、その結果、優越的地位の濫用事案が多数認められたということのほか、経営管理体制、内部管理体制、そして法令遵守体制について基本的かつ重大な問題が認められたということでございまして、それらを踏まえて業務改善命令を発出させていただいたということでございます。
 この業務改善命令は、業務運営全般について顧客本位の体制を整備するということを求めておるわけでございまして、つまり、金利スワップ商品以外の商品を含めて適切な取引が行われるように、ガバナンス体制あるいはコンプライアンス体制の構築を求めているということでございます。
 同行が、今後、業務改善命令を受けまして業務改善計画というのを策定し、当局に提出してくることになります。この中で、金利スワップ以外の金融取引全般につきましても適切な対応を行う旨が盛り込まれてくるものというふうに想定をいたしておりまして、これが出てまいりましたらば、その後、改善計画について私どもで三カ月ごとのフォローアップをいたしますので、この改善計画に基づくフォローアップということを通じて、こういったことを通じて、金利スワップ以外の商品についての適切な業務運営の確保とそのことの実効性というのを期してまいりたいと思っております。
○佐々木(憲)委員 金利スワップについてのみ調査をした、しかし、銀行の中のそれに対する仕組みというものがどうだったかということを通じてほかの商品にも影響を与えるような、そういう発想でやっていると。
 しかし、例えば金利キャップという言葉がマスコミでも使われておりまして、この金利キャップというのは似たような商品ですけれども、金利があるところまで行くとそれ以上上がらない、こういうものが組み込まれたものであります。それももっと大変な売り方がされているというんですね。つまり、優秀な中小企業ではなくて、非常に経営が困難な中小企業、これを対象にどんどん売り込んでいると。そこに行っても、いや、そんな危ない商品の契約はやりませんと断られる。そのときに、その従業員に今度は上司がついていって、最後は法人営業部の部長まで行って、どうしてもこれがないと融資が続けられない、だから契約してくれ、こういう形で押し込んで、そして被害を広げたと。この事例はほかにもたくさん言われております。
 したがって、金利スワップだけじゃない、金利キャップだとかそのほかのいろいろな商品について独自の調査をしなければ、被害が金利スワップだけに起こっているとは言えないわけであります。そういう意味で、ほかの商品も念頭に置いて被害の実態をぜひ調査していただきたい。
 それからもう一つは、この問題は三井住友銀行だけなのかという問題です。与謝野大臣にお伺いしますけれども、ほかの銀行はこういうことは一切ないというふうに断言できますか。
○与謝野金融担当大臣 念のためでございますが、本年1月5日付で、預金等取扱金融機関一般に対して、金融取引等の適切性について適切な対応を図るよう要請したところでございます。この要請を踏まえまして、通常の検査監督のサイクルの中で、必要に応じ適切に対応を行う所存でございます。
○佐々木(憲)委員 その結果というのは、調査の仕方というのは、結局は銀行に銀行の内部を調査させたということなんです。つまり、結果的には、自分自身を自分で調査するわけですから、なかなか違法していますということは出てこない。
 それで、例えばほかに私が聞いている事例でこういうのがあるんですよ。これはみずほ銀行の例であります。
 自宅を平成10年に住宅ローンで購入した、そしてずっと返済してきている。ところが、平成15年に、自分が代表の会社の運転資金ということで、みずほ銀行のA支店と言っておきましょう、その支店が3000万円の融資を持ってきた。そのとき担当者は、2000万円は定期預金にし、200万円はデリバティブ取引で購入して、残金800万円は自由に使ってもよい、こういうふうに言われたので、そのまま、言われたまま契約しました。これはもう歩積み両建ての話になってきますよね。しかも、必要のない商品をワンセットで売りつける、こういうことをやっている。その間、使用できない借入分の高い金利を払い続けてきました。
 そんな中、平成16年9月にがんになり、3カ月間入院していた。体が回復すれば復帰するつもりでしたので、借入返済を待ってくださいというふうにお願いした。しかし、平成17年1月に清算するように迫られ、一方的に、定期預金した2000万円と500万円を借り入れ返済させられましたと。
 考えてみますと、自分たちだけを守り、私ども消費者、弱者を切り捨てる行為だとしか思えません、また、みずほ銀行は、住宅ローン等についてみずほ保証会社に私どもが支払った保証料ですべて保証されているのだから何らの損失もこうむっておりません、このようなからくりを認めることはできません、こういう訴えがあるんです。
 これは、融資をする際に必要のない金融商品をワンセットで売りつける、こういうやり方をして、結局損をした、こういうことになっているわけです。これはたまたまこういう訴えがあったので私たちは知ったわけですけれども、似たようなことはこのように、三井住友銀行以外でも当然あり得るわけです。
 私が午前中の質問で申し上げましたように、現在のこれまでの政府の金融政策、不良債権処理、そして利益を出すようにという指導、このもとで銀行がどんどんどんどんそういう方向に走ってきているわけです。これは三井住友だけが走っているわけじゃないんです。すべての銀行が多かれ少なかれそういう方向に行っている。したがって、金融商品の売り方もこれは似たような売り方に当然なってくる、したがって、こういう問題がほかの銀行でも起きてくる。
 こういう点について、与謝野大臣、こういう特定の銀行だけではない、金融全体として大きな問題点が発生しているわけですから、もう少し幅の広い対応というものを考えるべきではないのかと思いますが、いかがですか。
○佐藤政府参考人(金融庁監督局長) 御指摘のような可能性というものは全く排除できるものではないというふうに思います。
 そういったことも踏まえまして、先ほど大臣からも御答弁いただきましたけれども、1月5日に、すべての預金取扱金融機関に対して、優越的地位の濫用に当たるような独占禁止法上の問題が生じることがないよう、金融取引、金融商品・サービス販売等の適切性に万全を期すべく、要請を行ったということでございます。
 その要請の要点でございますけれども、一つは、金融機関が融資を通じて取引先に影響を及ぼし得る立場となりやすい、つまり、優越的な立場になりやすいということを踏まえた上で、取引の適切性ということの確保に努力しているかどうか。それから二つ目に、特にその観点から、融資等に関連して寄せられている相談、苦情につきまして、迅速かつ十分な分析、検討、改善が行われているか。この二点につきまして、みずから体制面を含めて検証を行うよう要請した。それに加えまして、問題があった場合にはそれを直ちに是正するよう、こういう要請をしたところでございます。
 ということで、まずは各金融機関が、この要請を受けまして取引等の適切性に万全を期すべく十分な検証を行っていただくことが重要だというふうに思います。その上で、金融庁といたしましては、通常の検査監督のサイクルの中で、問題が発見されれば必要に応じて対応を行い、適切な実効性の確保ということに努めていきたいというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 今度の法案の内容について、もう時間がありませんので、一言だけ申し上げて終わりたいと思います。
 今度の金融商品取引法案は、商品先物取引、海外商品先物取引、海外商品先物オプション取引などの商品デリバティブがその対象に含まれていないわけですね。その被害はこの分野では非常に多いわけです。対象に当然含めるべきだというふうに私は思います。
 不招請勧誘の禁止の問題も、前回私も触れましたけれども、これもやはり幅広くきちっと、すべての金融商品を対象にやるべきだというふうに思います。そうしなければ被害は防げないというふうに思います。
 先ほどの答弁の中で営業の自由という話がありました。これは業界側の論理なんですよ。営業の自由というのは何も消費者の自由ではないんですよ。営業の自由をやればやるほど消費者は不利益をこうむる場合が多いわけです、こういう金融商品については。しかも、不招請勧誘を禁止することに抵抗したのは業界の代表ですよ。審議会の議事録を見ても、業界関係はこういう不招請勧誘については小さく小さく、禁止は狭めていくべきだと。営業の自由の話もそこでやっている。それを、金融庁、政府はその考え方に基づいてこういう法律をつくってくるというのはとんでもない話であるということを、きょうは時間がないので次の機会に、金曜日にこれはまた議論しますけれども、その意見だけ今申し上げておきたいというふうに思います。
 終わります。

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