アドレス(URL)を変更していますのでブックマークされている方は変更してください。
<< ホームへ戻る

金融(銀行・保険・証券) (優越的地位の乱用, 金融消費者保護)

2006年05月10日 第164回 通常国会 財務金融委員会 【353】 - 質問

三井住友銀行の優越的地位の乱用について 佐々木議員 政府に質問<午前>

 2006年5月10日財務金融委員会で、「金融商品取引法案」(投資サービス法案)に関連して参考人質疑と法案質疑が午前と午後に行われ、佐々木憲昭議員は、融資先中小企業に金融商品の購入を押しつけた三井住友銀行の独禁法違反事件(優越的地位の乱用)について質問しました。

 佐々木議員は、行員の証言を紹介して「(金利スワップ販売の)かなり過酷なノルマがあったのではないか」とただしたのにたいして、奥参考人は否定できませんでした。
 与謝野馨金融担当大臣も「違法性を問われた方が積極的にそういう行動(被害の補償)に出るのも社会の常識ではないか」と補償の必要を認めました。
 佐々木議員は、この事態を招いた背後に、小泉内閣がすすめてきた「不良債権処理」と「銀行の収益力向上」を軸とした「構造改革」があったと追及。
 与謝野大臣は、「当時の金融危機に対応するうえで、やむを得ない面があった」と述べるにとどまりました。
 さらに佐々木議員は、三井住友銀行のほかに、みずほ銀行などでも同様の事例があると指摘。
 金融庁の佐藤隆文監督局長は、「ご指摘の可能性は全く排除できるものではない」とし、通常の検査でも問題があれば対応したいと答えました。

 この質問は、午後にも引き続き行われました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭です。
 三井住友銀行が優越的地位の濫用というルール違反を犯して行政処分を受けた、これは大変重大な事態であります。私はその原因をしっかり究明する必要があると思います。コンプライアンスの認識が浅かったとか、そういう認識の問題ではなくて、その背後にある構造的な問題、これを明らかにしなければならないと思っております。
 そこで、具体的な実態ですけれども、銀行側としては不良債権処理というものが大変重い重圧としてこの間位置づけられておりました。そして、それを推進するために収益力の向上が必要である、利益を上げなければならないということで、収益至上主義といいますか、それがかなり大きな、経営の中心的な目標となってきたのではないか。
 三井住友銀行の場合は何によって収益を上げるかといいますと、これは利子、金利は収益はほとんど上がらない、そういう中で、手数料ですとか、あるいはデリバティブなどの金融派生商品、利益の上がる商品を徹底して売っていく、こういうところに経営の重点が置かれてきた。
 しかも、そのやり方として、年間の目標あるいは中期目標を経営陣が決める。そして、それを全国約60程度の法人営業部という拠点があって、そこがそれぞれ収益目標を持って、それを実現する。そのためには、そこの従業員に対して個々人の目標を持たせる。個々人の目標を持たせて、毎月毎月その目標を達成するために、どうするんだ、こういう圧力をかける。こういうやり方をしているわけです。私が聞いたところによりますと、従業員一人当たりの半期の目標、これは2年ほど前には1億とか1億5000万というような数字を目標として掲げていたというふうに聞いております。
 こういうやり方。そしてそれを、全国の支店長会議あるいは法人営業部長会議を開いた際に、短期間で収益が上がる方法だということで、好事例だ、つまり好ましい事例として紹介して広げてきた。こういうやり方をしているわけです。ある支店では、金利収入以外の収入の6、7割はデリバティブで稼げ、こういう檄を飛ばして、しりをたたいた。こういうやり方をした結果、こういう法違反まで広範に生み出すような事態となってきたというふうに思うわけです。
 このような構造そのものを改めるような方向を出さない限りは、問題の根本解決にはつながらないというふうに私は思いますが、大臣の見解をお聞きしたいと思います。
○与謝野金融担当大臣 当時、三井住友においては、不良債権問題への対応が重要な課題であり、そのためにも収益力の向上が必要であったと考えられます。
 こうした背景のもと、同行の幅広い法人営業部において多数の顧客に影響を及ぼす法令等遵守上の問題が生じている状況を踏まえれば、法令等遵守より収益獲得優先が常態化していたものと認められると思います。
 金融庁としては、不良債権処理の財源等を確保するためにも収益力の向上を図ることが重要でありますけれども、その際には、当然のことながら、法令等遵守を徹底しつつ行われるべきものであると認識をしております。
○佐々木(憲)委員 目標が収益力の向上に偏重していた、そういうふうに今おっしゃいましたが、それでは、銀行に対する政府の行政、金融に対する政府の政策、これはどうだったのかということをもう一度問う必要があると思うんです。
 つまり、銀行は自分の考えで不良債権処理を行う、これもあったでしょう。しかし、政府が、不良債権処理の数字を掲げて、いついつまでにこれを達成すべきである、そのために各銀行は努力をせよということで、例えば、公的資金の入った銀行に対しては経営健全化計画を出させて、その目標を政府が承認する。それから、収益力向上のためには何が必要か、手数料はどうします、あるいはデリバティブはこのようにします、こういう目標を出させて、それを政府がオーケーということで、これでやりなさい、そういう行政をやってきているわけです、この間。
 したがいまして、この間のこの不良債権処理を中心とする政府の政策、銀行に対する行政的なやり方、そこに問題はなかったのか。私は、小泉・竹中路線というのがかなり大きな影響を与えたのではないかと思っております。その結果、先ほど言ったような、各銀行の行員にノルマまで課さなければならない事態になっていった。
 その責任は、銀行にもちろん一番の責任はある。しかし同時に、そういう状況をつくってきた政府にも責任の一端はないのか。この点について与謝野大臣の見解をお聞きしたいと思います。
○与謝野金融担当大臣 その当時は、やはり金融システム全体が不安定化するということは日本経済にとって致命的なことであるということで、やはり一つは、金融システムの安定ということは政府の政策の一番大きな目標の一つであったと思います。
 それとあわせまして、それぞれの銀行、金融機関の健全性を一日も早く取り戻す、そういう意味では、不良化した部分をきちんと処理するということを急ぐ、これも一つの物の考え方であったわけでございます。もう一つは、そういう中で、極端な信用収縮が起きたり、あるいは中小企業の金融が逼迫をしたりということももう一方では避けなきゃいけない。
 今になってみますとまた何でもないように思いますけれども、ここ十年間の金融をめぐる環境というのは大変厳しかった。その中で、政府も民間も、また国会も、複眼的な思考でいろいろなことをやってきたと私は思っております。私は、そういうことが今回の法令の不遵守を招いたとは思ってはおりませんけれども、銀行が健全性を回復するためには、政府も国民も、また金融界も、相当多くの犠牲を払いながら進んできた、そのように考えております。
○佐々木(憲)委員 金融の状況が非常に逼迫した事態になっていた、それに対応するためにということが一つの口実として言われるわけです。
 しかし、そういう状況を克服するという方向性が、銀行の収益を上げる、銀行の経営を安定させるというところに、もちろんそれは必要な面もあるでしょう、しかし、余りにも傾斜し過ぎて、その反面で、中小企業は非常に大きな被害を受けたわけです。不良債権処理を理由とした貸し渋り、貸しはがしというのが横行したわけです。その結果、中小企業の数そのものが日本はどんどんどんどん毎年減っております。いまだに減っております。そういう状況というものをつくり出した一つの要因として考えなければならない。やはり私はバランスが必要であるというふうに思うわけですね。
 その意味で、今回の三井住友銀行のこの事案というのは、それが非常に極端な方向に行って、行き過ぎてしまったというところに特徴があるのではないか。したがって、中小企業にとっては、融資を受けたい、そのために銀行に申し入れる。それに対して、銀行側は、融資を受けるなら、こういう商品、金利スワップを契約としてやってもらえますかと要らないものまで押しつけていく、こういうやり方をして、結果的にいわば二重の負担を中小企業に与えて、そこで不利益になった分が銀行の利益になる、いわば利益のつけかえを銀行側に有利にやっていった、こういう結果になっているわけです。そのことを十分私は認識する必要があるというふうに思うんですね。
 したがって、今回のこの極端な事態が発生したその後始末をどうするのか、先ほど私は頭取に聞きました。やはり被害を与えたんですから、加害者としては補償をすべきではないのかと。それは、具体的な状況、相談に応じて対応したい、相談して対応したいというふうにおっしゃっていました。
 大臣としては、このような銀行側の収益優先のやり方で、法違反まで犯して、結果的に中小企業に大きな被害を与えた、このことに対して銀行は当然その被害を補償する、私は当然その補償をすべきだと思いますけれども、大臣はどのようにお考えでしょうか。
○与謝野金融担当大臣 これはいわば独禁法上認められない抱き合わせ販売ということになったわけでございますから、デリバティブ販売に関しまして銀行が得た利益は民法上どういう性格のものか、これはやはり法律的な判断が必要であると思います。
 どういう解決策があるのかということは、民間対民間の話でございますから、私の方からこうすべきだということは、金融庁としては申し上げられる立場ではありませんけれども、それは名の通った銀行でございますから、この件に関しましては真摯な対応がなされるものと期待をしておりますし、また三井住友のプレスリリース等を見ましても、真摯な対応をするということが言われておりますので、それは顧客と銀行との間で適切な解決がなされるものと私は期待をしております。
○佐々木(憲)委員 被害者というのは、法令違反が明確なのは、今17件しかないんです。しかし、さまざまな報道あるいは関係者のお話を聞きますと、かなり広い部分で被害を受けている。例えば、法令違反を、実際に優越的な地位の濫用と言われるようなことをやりましたという人がマスコミに登場して、これは名前は出ていませんけれども、私は50件はやりましたと言っているわけです。したがって、この17とか数百とかという数字ではない、対象が1万8000というわけなんですけれども、そんなに少ない数ではないと思うんですね。したがって、やはり関係者に対する謝罪と被害の補償、これはぜひ私はやるべきだというふうに思うんです。
 ところが、三井住友銀行は、最近、新聞にお知らせというのを出して、これは非常に小さくてわからないんですけれども、このお知らせというのを見ますと、「公正取引委員会の審決に基づくお知らせ」と。
 当行は、当行と融資取引関係にある事業者であって、その取引上の地位が当行に対して劣っているものに対して、融資に係る手続を進める過程において、事業者との間で設定される想定元本を基礎として算定された異なる種類の金利を契約期間において交換することを内容とする金融派生商品の購入を提案し、金利スワップを購入することが融資を行うことの条件である旨または金利スワップを購入しなければ融資に関して不利な取り扱いをする旨を明示または示唆することにより金利スワップの購入を要請し、金利スワップの購入を余儀なくさせる行為が、独禁法に違反するとして、平成17年12月26日、公正取引委員会から審決を受けました、この審決に従い、次の事項をお知らせします、一、当行は、右の行為を取りやめることを決議しました、二、当行は、今後、前記一の行為を行わないこととしますと。
 3月20日付でこういうお知らせが出ているのです。このお知らせには、被害を与えました、謝罪しますという言葉は一言もない。ずっと丸のない文章が延々と、さっき読み上げたように書いてあって、普通の人が見たら何のことかさっぱりわかりません、何の文章か。こういうやり方で国民に対してあるいは被害者に対して対応するというのでは、こういう事態をもたらした銀行としては極めて不適切であるというふうに思います。やはり、被害者、国民に対して明確な責任をとるということが必要だと思います。
 その点について、大臣はどのようにお考えでしょうか。
○与謝野金融担当大臣 金融庁としての処分はなされたわけでございます。それに対しまして、三井住友が行内でどういう責任、どこに責任ということは、明確にされるということは、三井住友の方はその点ははっきりしていると私は思っております。
 先生が御指摘の、被害を受けた人がいるではないかということに関しましては、それは借り手側と貸し手側との間で、民民で解決をしていただくしかないと私は思っておりますけれども、違法性を問われた方が、やはり積極的にそういう行動に出るというのも社会の常識の一つではないかというふうにも思えるわけでございます。
○佐々木(憲)委員 もう時間も参りましたので、引き続き午後、質問させていただきます。

Share (facebook)

このページの先頭にもどる