2014年10月31日 第187回 臨時国会 内閣委員会 【802】 - 質問
公務員給与下げ可決「地域格差拡大する」と反対
2014年10月31日、「給与制度の総合的見直し」の名で一般職国家公務員の給与を平均2%引き下げる給与法改定案と関連2法案が内閣委員会で、自民、公明、民主、生活各党の賛成多数で可決されました。日本共産党は反対し、佐々木憲昭議員が反対討論を行いました。
採決に先立つ質疑で佐々木議員は、人事院が総合的見直しでも給与水準・給与総額は変わらないと説明していることを指摘。給与配分の見直しで格差が拡大するだけでなく、給与総額も200億円のマイナスになることを示し、「労働基本権制約の代償機能としての人事院の役割を果たしていない」と批判しました。
佐々木議員は、地方公務員も含めた公務員全体の給与総額は総合的見直しによって、2500億円のマイナスになることも指摘。「地域格差を拡大し、地方を疲弊させる」とただしました。
有村治子国家公務員制度担当大臣は「民間準拠(の給与改定)を重ねる」としか示しませんでした。
また、この日に先立ち、10月17日にも、人事院総裁に対し「人事院勧告」について質しました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
法案の質疑に入る前に、前回、17日の当委員会で、私は、総合的見直しによって、給与が上がる職員、変わらない職員、下がる職員、それぞれ何人か、全体に占める割合は何%かと質問いたしました。その段階では計算していないということでしたので、もう計算ができたはずでありますので、それを示していただきたいと思います。
○古屋政府参考人(人事院事務総局給与局長) お答えいたします。
お尋ねの、俸給水準がどうなるかということでございます。
一般職の給与法が適用される職員につきまして、俸給水準が一律2%引き下がるものとして試算いたしまして、俸給月額と地域手当で見た場合に、給与水準が引き上げとなる職員につきましては4万5089人で17・7%、おおむね維持となる職員につきましては6万7139人、26・3%、それから引き下げとなる職員は14万3049人で56%となっておるところでございます。
○佐々木(憲)委員 では次に、人事院勧告の内容から確認していきますが、給与制度の総合的見直しは、勧告によりますと、俸給水準を平均2%下げて、その引き下げ分を原資として地域手当の支給割合の引き上げ等の見直しを行う、こうなっているわけですね。つまり、全国共通に適用される俸給表水準を、民間賃金水準の低い地域の官民較差に沿って平均2%下げる、その一方、引き下げた分を原資として、その分を他の手当に振り分ける、したがって給与水準、給与総額は変わらない、こういうことだと思いますけれども、総裁、そういう理解でよろしいですね。
○一宮政府特別補佐人(人事院総裁) 人事院の給与勧告は、国家公務員の給与水準を民間企業従業員の給与水準と均衡させることを基本としていることは、委員のおっしゃるところでございます。
官民比較に当たりましては、同種同等の者同士を比較するということが適当であることから、職員数が最も多い国の行政職俸給表(一)適用職員の給与と、民間企業の事務・技術の業務を行う従業員の給与を比較しております。
今般の給与制度の総合的見直しは、行政職俸給表(一)の給与水準を維持しつつ、給与配分の見直しを行うこととしております。(佐々木(憲)委員「総体は変わらない」と呼ぶ)行政職俸給表(一)の給与に関しては、トータルは変わらないということになっております。
○佐々木(憲)委員 今回政府が出した給与法は、この人事院勧告どおり実施する内容だということであります。これは間違いありませんよね。確認です。
○有村国家公務員制度担当大臣 お答えいたします。
佐々木委員御指摘のとおり、今般の一般職の給与法案は、人事院勧告に基づいて実施するものでございます。
○佐々木(憲)委員 この給与制度の総合的な見直しは、給与水準、給与総額は変わらないということになっているわけです。したがって一般職国家公務員全体の不利益変更ではない、したがって労働基本権制約の代償機能としての人事院の役割は果たした、そういう認識でしょうか。
○一宮政府特別補佐人 人事院は、労働基本権制約の代償機関として、情勢適応の原則に基づいて国家公務員の給与水準を民間の給与水準に合わせるとともに、必要な給与制度の見直しを行うことによって国家公務員の適正な処遇を確保しているところです。
今般の給与制度の総合的見直しにつきましても、情勢適応の原則のもと、地域間の給与配分の見直し等の諸課題に対応し、適正な給与制度を実現しようとするものでありまして、人事院としては、労働基本権制約の代償機関としての責務を適切に果たしているものと考えております。
○佐々木(憲)委員 そうすると、一般職公務員全体の不利益の変更にはつながっていない、こういう話でありました。本当にそうなのかどうかということを確認したいと思いますが、財務省に具体的な数字を聞きたいと思います。
給与制度の総合的見直しを実態に即して計算するとどうなるか、国家財政から見た国家公務員給与総額の増減、それから地方公務員の給与総額の増減、その数字を示していただきたい。
○西田政府参考人(財務省主計局次長) お答え申し上げます。
給与制度の見直しによります人件費削減効果についてのお尋ねでございますが、給与制度の総合的見直しによる影響額は、見直しが完成をいたします平成30年度時点におきまして、国が負担する人件費ベースで三角の600億円程度、地方公共団体につきましては、総務省の試算によれば三角の2100億円程度でありまして、義務教育国庫負担金等の両者に重複している部分を除く国、地方の純計ベースでは三角の2500億円程度となっております。また、このうち一般職の国家公務員については、三角200億円程度の人件費削減効果を見込んでおります。
○佐々木(憲)委員 今、三角と言われたのは、マイナスということでよろしいですね。
○西田政府参考人 マイナスということでございます。
○佐々木(憲)委員 一般に通用する言葉を使っていただきたいと思いますけれども、いずれにしましても、今御答弁がありましたように、国家公務員はマイナス600億円、地方公務員マイナス2100億円、全体で、重複を除くと2500億円の削減、こうなるわけですね。しかも、一般職国家公務員の場合、給与総額はマイナス200億円と。
有村大臣、私はこれはおかしいと思うんですが、全体としてはバランスがとれている、給与総額としては変わらない、こういう話でありましたが、現実の数字は大変大きなマイナスになっているわけですね。
人事院勧告は、民間給与との較差に基づく給与改定によって月例給で0・27%、ボーナスで0・15月分の引き上げを行って、その水準のもとで、全体のパイのうち平均2%下げて、それを原資として地域手当の見直しなどの再配分を行う、こういう説明でありました。全体のパイの大きさは変わらないのに、なぜ給与総額が減少するのか、それを説明していただきたい。
○有村国務大臣 先ほど御確認をいただきました、国家公務員給与については人事院勧告制度に基づくという基本でございまして、地域間、世代間の適正な給与配分の実現を図るという観点から人事院勧告が出され、その人事院勧告が給与制度の総合的見直しを実施することが妥当だということで、勧告に基づいて判断をしております。
ここなんですが、平成27年4月から3年かけて段階的に実施をいたします総合的見直しの結果として、佐々木委員御指摘いただきました人件費への影響が生じます。
○佐々木(憲)委員 要するに、引き下げということになるわけですよ。政府が提案した給与法案は、一般職国家公務員給与の引き下げ法案になっているわけですね。
人事院勧告では、パイの大きさを変更せずに、その中で配分だけを変える、行(一)を中心に計算をした。給与がふえる人もいるし、減る人もいる。私たちは、この配分の見直しは地域格差を拡大するものとして反対でありますけれども、あなた方の説明では、その結果として給与総額は変わらない、だから労働基本権が制約されている一般職国家公務員全体の不利益変更ではない、こういう説明でありましたけれども、パイの大きさが減少して給与が下がって、結果として不利益を与える、こういうことになっているんじゃありませんか、大臣。
○有村国務大臣 上がったり下がったり、あるいは横ばいであったりということがあり得ますが、どのような状況になっても、人事院勧告どおりにする、それを尊重するという立場は堅持させていただきたいと存じます。
○佐々木(憲)委員 では、人事院に確認しますけれども、これは何で全体として数字が下がるんですか。バランスがとれている、総額は同じだ、こういう話だったわけですけれども、下がるという結果が出るというのはおかしいじゃないですか。
○古屋政府参考人 先ほど御説明申し上げたとおり、公務員の給与は、最も一般的な俸給表である行政職俸給表(一)について官民比較を行い、給与水準、具体的な改定の内容を決定していくということにしておりまして、他の俸給表につきましては、行(一)との均衡を基本に改定を行っているということでございます。
そういうことで、一般職給与法職員全体で見た場合には、給与水準の動きというのは行政職俸給表(一)と全く同じ結果になるとは限らないということでございますが、多様な職種を抱える国家公務員におきましては、適用される職員数が最も多く、同種同等の者同士で官民比較を行うことができる行政職の(一)の職員を基本として決定することが現実的であり合理的な方法であるということで、これまでもそういう方法をとってきたところでございます。
○佐々木(憲)委員 労働基本権制約の代償機能としての役割というのが人事院ですよね。労働基本権を制約されている職員、これは一般職国家公務員26万人も含む、そういう全体のものですよね。ところが、計算は、その中のいわゆる行(一)と言われる部分、これをやった、あとは当てはめるんだと。当てはめた結果がマイナスになっているわけですね。
となりますと、要するに、労働基本権の制約の代償機能というのは果たされていない、結果としてマイナスになっている。自分たちは行(一)を基準にやったんだからそれでいいんだ、あとは結果はどうなろうが、それはマイナスになろうがどうなろうが関係ない、こういうことになったら、人事院としての役割は果たせないじゃないですか。
これは、事実上、人事院が総合的見直しをやって、結果として給与引き下げの勧告をした、こういうことになるわけであります。これは私は非常に重大な問題だと言わざるを得ない。一般職全体がマイナスになるわけでありまして、政府は全体で2500億円のマイナスと計算しているわけですね。このマイナスが直撃しますと、大臣、これは特に地方に大きな影響が及ぶわけですね。
だから、今、地方の創生とかいろいろ言われていますけれども、勧告どおりに実行したと言われる給与法の改正によって、実際には地方の公務員の給与ががくっと下がり、そして、それに依拠している、準拠している民間の場合も影響するわけですよ。結局、東京一極集中とかあるいは人口減少とか、そういうことが言われていますけれども、そちらの方にマイナスの影響が及ぶ、こういう結果をもたらすんじゃありませんか。大臣の認識を聞きたいと思います。
○有村国務大臣 佐々木委員、繰り返しで大変恐縮でございますけれども、やはり各地域地域の民間に準拠するということで、1万2千カ所を上回る事業所の確認をとっておりますので、それを丁寧に繰り返すという作業を重ねていくことになるかと存じます。
○佐々木(憲)委員 何の答弁にもなっていないですね。
今回の給与法改正案は、労働基本権制約の代償機能としての人事院勧告としては致命的な欠陥のある、そういうものでありまして、給与水準、給与総額を引き下げて、一般職国家公務員給与の引き下げ法案、こうなっているわけです。これは断固として我々は容認できませんね。
前回の質疑でも明らかにしたように、地方自治体86%、1507団体の地方公務員の給与が下がるわけです。国と地方のトータルでは、財務省への確認のとおり、2500億円のマイナスになる。今回、これが明確になりました。これでは地域格差を拡大して、かつ地方を疲弊させる。
こういう二重、三重に重大な内容を含んでおりますので、我々としては認められない、このことを指摘して、終わりたいと思います。