2014年06月12日 第186回 通常国会 議院運営委員会<参考人質疑> 【790】 - 質問
秘密会設置法案の参考人質疑
2014年6月12日、衆院議院運営委員会で、衆参両院に秘密会(特定秘密の運用監視にあたる「情報監視審査会」)を常設する国会法改定案が、自民・公明・維新・みんな・結い5党の賛成多数で可決されました。日本共産党・民主・生活の3党は反対しました。議会制民主主義の根本に関わる法案を、与党はわずか2日間の審議で採決しました。
佐々木憲昭議員は、11日に引き続き、午前に開かれた参考人質疑、午後の対提案者質疑、反対討論に立ちました。
午前中の参考人質疑で、参考人の清水勉氏(弁護士)は、特定秘密情報を院外で漏らした議員に対して、特定秘密保護法による刑罰があるが、それは「強すぎる」と述べました。
たとえば、(1)議員事務所や所属政党事務所などへの家宅捜査も可能となる。そうなると、(2)議員や政党が保有する情報が警察組織に包括的に吸い上げられることになる。その大元は、特定秘密保護法が国会議員を処罰対象にしているところに起因すると述べました。
議事録
【参考人陳述と佐々木議員質問部分】
○逢沢委員長 これより会議を開きます。
町村信孝君外二名提出の国会法等の一部を改正する法律案、大島敦君外四名提出の国会法の一部を改正する法律案、町村信孝君外二名提出の衆議院規則の一部を改正する規則案、衆議院情報監視審査会規程案の各案を一括して議題といたします。
本日は、各案審査のため、参考人として、拓殖大学特任教授森本敏君、法政大学人間環境学部教授永野秀雄君、弁護士・日本弁護士連合会情報問題対策委員会委員清水勉君及び特定非営利活動法人情報公開クリアリングハウス理事長三木由希子君、以上四名の方々に御出席をいただいております。
この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多用のところ当委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。各案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いをいたします。
次に、議事の順序について申し上げます。
まず、参考人の方々から一人十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いを申し上げます。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないこととなっておりますので、あらかじめ御了承ください。
それでは、まず森本参考人にお願いを申し上げます。
○森本参考人 当委員会にお招きをいただき、大変光栄に存じます。
私個人について言えば、社会に入っておよそ30年、15年間を防衛省に、あと15年を外務省に勤務し、その後、防衛大臣補佐官、国務大臣の防衛大臣と勤務する間、職務を通じてほとんど外交と防衛に関する秘密を扱いながら、職務を遂行してまいりました。
テロやスパイに関する秘密はよく存じ上げません。しかし、我が国の秘密保全の体制というものは、戦後、いろいろな問題が指摘され、かつ、周辺安全保障環境を見ると、どんどんと日本の秘密保全の体制並びに秘密を守ることが難しくなっている状況にあり、過去を振り返ると、周辺国の者によって我が国の情報が、リークした不祥事がなかったとは言い切れません。
政府は今まで情報保全のあり方について長い間検討し、最近では平成18年から、自民党、そして民主党、そして今回の安倍政権と、幾つもの政権にわたり、計8年に及ぶ検討を行った結果、特定秘密保護法が、昨年12月6日、参議院本会議で採決をされ、成立したところでございます。
このような日本の情勢の中で、今なぜ特定秘密保護法が必要になったのかという背景を考えると、当然のことながら、先ほど申し上げたように、我が国には統一された国家の情報機関が必ずしもあるわけではなく、依然として縦割り制度の中で情報が管理され、一貫した情報活動がなかなか難しいこと、さらに、先ほど申し上げたように、周辺国が我が国の情報を狙っていて、他の先進国の情報保全制度が非常に厳しいものですから、比較してやや緩い制度にある日本が情報収集の場として専ら狙われてきたということもあると思います。
さらに、我が国は、同盟国あるいは友好国との情報交換の際、我が国に情報保全の制度が完備していないことが同盟関係や友好関係の情報交換の際の信頼性という問題にかかわってきて、この状態を取り戻すことが喫緊の課題であると思います。今回の法律はそれを、完全とは言いませんが、かなり有効に、この法体系のもとで施行が始まれば、十分な体制ができ、情報保全ができるのではないかと思います。
今年末の施行に向けて、現在、政府及び国会が必要な準備をしていただいていると承知しておりますけれども、既に情報保全諮問会議は一回開かれ、さらに、情報監視委員会並びに独立公文書管理監及び情報保全監察室など、幾つかの機関をこれからつくり、これを動かしていき、施行の日まで必要な準備を整えるということが今求められているということであります。
国会との関係でいうと、国会議員の皆様方は、憲法第51条で秘密というものについての基本的な権能が守られているわけでありますけれども、この特定秘密保護法の法律の運用あるいは適用及び検討を含め、必要な措置を、常に立法府として審議し、監視するという責務を持っていると思います。その意味において、今回与党の提出された国会法の改正案は、かかる国会の機能を果たすべく十分に考慮された、理にかなうものではないのかと考えているところです。
特に、国会が行う情報の管理については、政府が年次報告を出し、あるいは、必要に応じ政府から秘密の提出を求め、常時監視する機能を果たすことができることに加えて、審査についても、国会の特別委員会や常任委員会についても情報の管理について審査をできることになっているわけで、全体として、政府並びに各委員会の情報管理の審査を監視あるいは審査する機能をこの法律のもとで実施できるのであれば、国会における機能を果たす十分かつ有効な手段をこの法律によって確保できるのではないかと思います。
他方、この制度の中で、国会が情報をどのように保護するかということについては、今までになく、非公開の制度を設け、事務局も適性検査を行い、物理的に守られた施設の中で審議をするなど、記録も原則公開されず、漏らした場合は憲法58条に基づく懲罰規定があるなど、一応、国会の保護体制としては、考え得る措置がとられているということではないかと思います。
このような法律が実際に実行されても、やはり、国家の特定秘密が漏れるというおそれは常に我々は持っているわけで、国会が持つ機能が、これを十分に審査、管理するだけではなく、情報保全に重要な役割を果たし、かつ、国家が持っている情報が、国会の審議あるいは政策を評価する場合に、国会の議論で十分活用されることが望ましいと思います。
そのことによって、政府と国会の信頼関係ができ、かつ外国との情報交換の信頼性が高まるということであり、この国会法の改正によって我が国の情報管理の体制がおおむねそろっていくということについて、私は、この国会法の改正を心から期待するところであります。
以上でございます。
委員長、ありがとうございました。(拍手)
○逢沢委員長 森本参考人、ありがとうございました。
次に、永野参考人より発言をいただきます。
○永野参考人 法政大学の永野と申します。
本日は、本委員会にお招きいただき、感謝しております。
私は、与党が提出された国会法等の一部を改正する法案、衆議院規則の改正案及び衆議院情報監視審査会規程案に賛成する意見とともに、民主党などが提出された国会法の一部を改正する法律案には多くの問題があることから賛成し得ないという点につき、日米比較法の立場から意見を述べさせていただきたいと思います。
私は、今回与党が提出された国会法等の一部を改正する法案等は、議院内閣制を前提として、国権の最高機関である国会と実際に特定秘密を扱う行政機関とのバランスをとった、非常にすぐれた制度設計がなされていると思います。
また、米国と比べますと、特定秘密を実際に情報監視審査会等に提出する場合を前提とした規定となっており、非常にリベラルなものであると考えております。
ちなみに、米国では、機密情報が議会に提供される場合には、一定の条件のもとで、コーテシー、すなわち礼譲に基づいてなされております。
米国の上下院の情報特別委員会が行っているのは、インテリジェンス機関による活動の監視と、予算に関する審議等であります。また、上院の情報特別委員会は、大統領が指名したインテリジェンス機関の長等に対する承認を公聴会で行う権限を持っております。
今回の与党による改正法案等は、各院が、特定秘密に係る行政運用の監視、及び委員会等による国政調査への政府の対応への審査を定めており、大きな意義がある法改正であると考えております。
なお、私からしますと、一点だけ、できればこうあってほしかったという点が実はございます。
それは、私もいただきました同法案に関するポンチ絵に言う情報監視委員会における国会が定める保全措置Aと、常任・特別委員会における国会が定める保全措置Bという二種類の保全措置が予定されているという点です。
米国では、その機密レベルごとに保全措置が定められ、機密情報が連邦議会に提示される場合や、インカメラ審理のために司法機関に提示される場合においても、当該機密において行政機関がとっているのと同じかそれ以上の保全措置が要求されており、これは当然のことであると考えております。
この点につき、我が国の特定秘密は、秘密のレベルが一種類しかないので、行政機関がこれに対してとる保全措置も、最高度の保全措置一種類しかないはずです。そうしますと、国会が定める保全措置も、これと同等の保全措置一種類になろうかと思います。
これに対して、Aより軽いBという保全措置がなされた場合にどうなるかを考えてみたいと思います。
特定秘密保護法第十条では、国会に特定秘密が提供される場合の要件は二つあり、一、国会における保護について措置を定めること、かつ、二、行政機関の長が我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認めたときとなっておりますので、前者の国会の定める措置が軽い場合、すなわちBの場合、恐らく後者のおそれが増大することが予想されます。したがって、軽い保全措置Bがなされた常任・特別委員会には特定秘密が提出されにくくなるというおそれがあると思います。
もっとも、本改正案では、その場合であっても、常任・特別委員会は、情報監視審査会に要請して、同会から行政機関の長に対しまして特定秘密の提出、提示を要求できる制度になっておりますので、保護措置Bに伴う問題に関する制度的な担保はなされていると考えております。
次に、民主党が提出された国会法の一部を改正する法律案の問題点につき、私見を述べさせていただきます。
まず、同改正案第104条の二において、「内閣又は官公署は、報告又は記録の内容に事前に同意を得ることなく第三者に提供しないことを条件に提供された情報であつて現にその提供に同意が得られていないもの又は人的情報源に関する情報が含まれる場合を除き、その求めに応じなければならない」と規定されておりますが、ここには三つの問題があると考えております。
第一に、ここで適用除外とされている二つの類型が限定され過ぎているという問題でございます。
これ以外の特定秘密であっても、特定秘密保護法第十条が規定する、我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがある事案も想定し得るところであり、この点に関する行政機関の長による個別具体的な判断を無視する規定は、現実的ではないというふうに考えております。
第二に、先ほど述べた部分の中で、いわゆるサードパーティールールについて、「現にその提供に同意が得られていないもの」との規定は、同ルールにつき誤解があることから生じた規定であり、関係する論文等を読んだ記憶からいたしますと、個別に同意を得ることは一般的ではありません。
また、相手に対して、当該情報が国会に提出される可能性があると言っただけで、相手国のインテリジェンス機関や軍等から信用を失い、我が国に情報が入ってこなくなる可能性があると考えております。
第三に、このような形で情報提供を義務化いたしますと、行政機関の長が、行政機関情報公開法に規定されている存否応答拒否、米国で言うグローマー拒否を行った場合、その後、全く機能しないということになるのではないかというふうに考えております。
次に、同改正法案第104条の二において、行政機関の長が同条第一項の求めに応じない場合につき、議長にその理由を疎明し、その受諾等については副議長等の意見を聞くこととなっております。また、このほかにも、議長、副議長が大きな役割を果たされるという規定になっております。
私は、両院の議長及び副議長は、長年にわたって議員として御活躍になった、高い見識をお持ちの方であると考えておりますが、必ずしもインテリジェンスに関する知識と御経験がある方が選ばれているわけではございません。
したがって、本改正案で予定されている判断を行うのは適当ではなく、やはり、インテリジェンスに関する専門家を擁している行政機関の長の判断を尊重すべきであると考えております。
特に、本条第七項において、議長が、議院または委員会に提出された場合には国家の極めて重大な利益に回復しがたい悪影響を及ぼすこととなると認めたときを除き、行政機関の長は特定秘密を提出しなければならないという規定になっておりますが、このような規定は、外国のインテリジェンス機関等から大きな疑念を持って見られ、重要な情報が我が国に入ってこないという事態を引き起こす可能性が相当に高いというふうに考えております。
最後に、民主党が提出された本法案では、特定秘密保護法第十条で予定している、国会において定める保護措置が含まれておらず、その点を通常国会で明らかにして審議しなければ、特定秘密保護法の施行に間に合わない懸念がある点を指摘しておきたいと思います。
以上で私の意見陳述とさせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○逢沢委員長 永野参考人、ありがとうございました。
次に、清水参考人より御発言をいただきます。
○清水参考人 おはようございます。
やっと国会がこの制度で主役の地位を回復しつつある制度ができるようになってきたということで、陰ながらといいますか、協力をしてきた立場として、かなりの成果だったというふうに思っています。ありがとうございました。
本日は、一弁護士という立場で参加をさせていただいております。
と申しますのは、もともと、私、日弁連の情報問題委員会で、情報公開の問題と、その裏腹に、秘密保全の問題も取り組んできたわけでありまして、その中で、国会の地位がどうあるかということも委員会で議論をしてきましたが、国会の位置づけについては十分議論を尽くしていないものですから、きょうの意見は、私の個人の意見として述べさせていただきます。
秘密保護法案が出てきたときに気になった最大の点というのは、きょうも話題になっています、十条の一項一号のイという規定であります。今成立している法律では条文が変わっておりますけれども、当初の法案では、政令の基準に従わなければ、しかも、行政機関の長の裁量によって国会の場に情報提供するかどうかということでありまして、国会には重要な情報が出てこない仕組みになっているというふうに読みました。
これを変えるためにはどのようにすればいいのかということを考えなければいけなかったわけですけれども、国会が行政機関にコントロールされる対象にすぎなくなっているというのが、もともとの制度設計になっていたかと思います。主権者である国民の代表者である議員によって構成される国会が官僚にコントロールされていいのかということが課題だというふうに考えています。
しかし、他方、なぜ行政機関は国会議員に行政秘密を出し渋るのか。
この点を考えてみますと、といいますか、幾人もの国会議員の方やいろいろな方とお話をしてみると、国会議員は秘密を守らない、国会議員は自分の地位の確保強化のために情報を使う、官僚は仕事がやりにくくなる、取り返しのつかない重大な支障が生じても個々の国会議員が責任をとってくれるわけではないと。はっきりとは申しませんが、国会、国会議員に対する根強い不信感があるということを感じます。
そうしますと、憲法の構造と現実の政治の間に非常に大きなギャップがあります。どちらかが他方に全面的に従属するしか、このギャップは解消できません。しかし、それはどちらもあり得ないわけでありまして、ギャップの解消はあり得ません。
しかし、情報の取り扱いルールは、現実的に考えなければ意味がありません。非現実的なルールは守られません。
これは、公的な情報の管理を全般的に考えたときに、あるべきだ論を幾ら言ったとしても、現実にそれが実行できるかどうか。実行できないものを幾ら厳しくつくっても、できませんし、逆に、意味のないルールを幾らつくっても、効果はないわけです。
国会の秘密会のこれまでの規定を見ますと、運用ルールがほとんど書かれていません。これでは、秘密は名ばかりになりかねません。
この場合の秘密会の秘密は何かというふうに考えてみますと、議論そのものが秘密なのか、そこに提供される資料が秘密なのか、これもはっきりしません。議論は公になってもいいけれども、資料はだめだというのもありますし、その逆ということもあり得るわけです。しかし、その点の検討は、この秘密会の規定では、ほとんどなされていなかったのではないでしょうか。
行政秘密を引き出すためには、情報を外部に出さないためのそれなりの構えが必要だというふうに考えます。このような構えはおよそ嫌だというのであれば、行政秘密は出てきません。国会は、みずからを縛る実効性のある構えをつくり、実行する必要があります。
構えの骨格としては、考え方は、秘密を漏えいしない体制ということになります。
会議の非公開。特定秘密を見る場所の限定。見る者の範囲の限定。独立の事務局体制とその強化。議員についての適性評価にかわる研修、これも必要だと思います。それから、議員に対する牽制の手段があります。
この六番目の、牽制の手段ですけれども、懲罰、これは議会の運営の一部ですので、当然必要なことになってくると思います。現に、これまででも、参議院の規則の中にはこの規定が盛られていますが、衆議院の方には盛られていないという事実があります。
罰則ですけれども、これは秘密保護法の方で既に罰則が規定されていますので、これを前提にこの制度も考えざるを得ないわけですけれども、効果は強いのですが、強過ぎるかもしれないという懸念があります。
実際問題として、名誉毀損や秘密漏示の刑事事件などでは、家宅捜索が行われて、パソコンですとかアイフォンですとかそういったものが根こそぎ押収されていって、中のデータが全部分析されるということが現に行われています。
そうしますと、国会議員について処罰をするということは、議員事務所や所属政党事務所などの家宅捜索も可能ということになります。そうなりますと、議員、政党の保有情報が警察組織に包括的に吸い上げられることになります。
大もとは、特定秘密保護法が国会議員を処罰対象にしていることに起因しています。国会議員を罰則規定から解放するためには、特定秘密保護法を改正するしかありません、この部分については。
そのかわり、私は、懲罰については、問題がある場合にはきちんと運用するということで、現実的な問題としては、いかに刑罰権を行使させないか、その前提として、管理運用のルールをきちんと守るかというところだろうと思います。
それから、もう片方で、七番目はちょっと違う種類の話ですけれども、議事録の作成。これは、この審査会を継続的に運用していく上で、議員が交代をしても、また事務局の職員が交代をしても、継続的に監視をしていく上で必要なことだろうというふうに思います。
ただ、これについては、当面、不開示情報とするのは、これも当然のことだろうと思います。
それから、提出拒否できる場合の限定ですけれども、これは、構えを厳格にするのと引きかえに、提出拒否できる場合を限定する必要があるという、相関関係があります。永野先生の先ほどの御説明も、考え方も、多分これと同じような考え方だろうと思います。
私は、むしろ二重にしておいていいのではないかというふうに考えたのは、つまり、非常に限定したところで見られる方というのは、議員の数を絞らざるを得ません。そうなりますと、ここのところは構えをかなり厳格にしなければいけません。しかし、それ以外の議員の方々が、およそランクのもう少し低いものにしても見ることができないというのは、これはまずいだろうというふうに考えましたので、二重構造というのはあり得るだろう。
ただ、これは現実の運用としてどこまでできるかというのは、結局のところは、この審査会の方で確認をして、これはB基準のところで、見ても構わない、見せても構わないのではないかというような検討が必要になるかとは思います。
あとは、問題は、非秘密化による議論ということは、考えていいのではないかと思います。
委員は、委員以外の議員に秘密を伝えてはなりません。また、もちろん情報資料を見せることもできません。秘密の具体的内容は不可であります。
しかし、特定秘密の内容を曖昧化し要約した形にすれば、情報は特定秘密ではなくなります。また、情報そのものは持ち出せなくても、一定の議論はできます。どの範囲を可とするかは各審査会で検討する必要がありますし、行政機関側への一定の配慮は必要かと思います。
つまり、特定秘密についての議論というものを、生のものを見ながらきちんと議論する方は限られた者になりますけれども、これに関連する議論というのは、もう少し広げて実行できるような方策も考える必要があるだろうと思います。
権限ですけれども、指定解除権がないことが問題だというようなことが報道されたりすることがありますけれども、これは問題ではないというふうに考えます。
国会議員に秘匿性の高い情報を見せたら指定を解除されてしまった、そういう事態が起こる条件のもとでは、秘匿性の高い情報は出てきません。
指定解除ができないのでは意味がないかというと、そうではなく、与野党の国会議員が秘匿性の高い行政情報について活発な議論をすることに意味がある。何が秘匿性の高い情報なのか、なぜ秘匿性が高いのか、どういう条件になれば指定解除ができるのか、そういったリアルな問題を、現物を見ながら議論する。
官僚からすれば、そういった議論を国会議員にされてしまうということ自体が、非常に牽制する意味を持っているんだろうと思います。指定解除を勧告するということだけで十分ではないかと思います。
ただ、私としては、気になるのは、委員構成が八人であり、各会派所属議員の比率による割り当てになっておりますので、与野党議員の比率が不安定であり、少数与党の場合は与党の方が少なくなってしまうのかというような問題もあります。
私は、常に与党側の方が幾らか多くなっている形の方が、議院内閣制の運営としてはよいのではないかというふうに考えています。
以上です。ありがとうございました。(拍手)
○逢沢委員長 清水参考人、ありがとうございました。
次に、三木参考人にお願いを申し上げます。
○三木参考人 情報公開クリアリングハウスの三木と申します。きょうは、よろしくお願いいたします。
本日は、このような機会をいただいて、大変光栄に感じております。本日は、国会法等の一部改正に関する法案等について、意見を述べさせていただこうと思います。
私は、情報公開の問題にかれこれ20年ほどかかわってまいりまして、団体としても、公的機関の拡充について34年間活動をしている団体でございます。そういう視点から、今回の法案については、監視機関の機能という面について特に意見を述べさせていただこうと思います。
初めに、特定秘密保護法というものが存在をする以上は、監視機能を設けるということは決定的に重要であるというふうに考えております。それが、行政機関の中でだけではなく、国会においてもそのような機能を設けるということは、非常に重要だと思っております。
ただ、監視機関は、設ければいいというよりは、その目的と役割を明確にして、効果的に、かつ機能的にあるということが非常に重要ではないかというふうに考えています。
監視というと、とかく不正とか違法とか問題の追及という側面が強調される傾向は確かにございますけれども、監視は、もともとは、よりよく政府が活動する、より正しく政府が活動するということを行うために必要なものであるという位置づけもあると私は思っています。なので、監視は、マイナスの意味ではなく、むしろ積極的に、よりよいものを目指すということを、それぞれが協力をし、かつ独立をしてやるということがとても大事ではないかというふうに感じています。
この監視機能というのは、非公開とか、秘密が強いですとか、それから一般からのチェックが難しいというような、むしろ、信頼を一般的にかち得るのが難しい分野について特に求められているというものであると考えています。ですので、監視機関そのものが効果的かつ機能的でないと、そもそも、制度に対する信頼全体を損なっていくということになるのではないかというふうに思いますので、その信頼性にかかわる問題であるということを十分に御検討いただきたいというふうに考えています。
それから、国会だけではなく行政機関においても監視機能が設けられるという方向で検討されていると承知をしていますけれども、国会が、より独立した立場で監視を行い得る、そういう存在であるということを、十分に御検討の際に考慮していただきたいというふうに考えております。
情報監視審査会の活動についてなんですが、特定秘密の運用について、指定や解除についてどのような実態かということは、恐らく数字の報告を受けてもわからないだろうというふうに思います。
何を監視するのかということが決定的に重要であるというふうに考えておりますが、この点で少し懸念を持っております。
それは何かというと、何を端緒に具体的な特定秘密についての監視を行うのかということがよく見えないということであります。それは、公益通報のようなものを受け付ける、それを合法的かつ安全に受け付ける仕組みというものが、現在の仕組みの中では、ないというふうに考えるからです。
特定秘密保護法に定める情報漏えいというものは、外部に対する情報漏えいという意味合いでよく理解をされがちであるとは思うんですが、これは、情報漏えいということをアンオーソライズドディスクロージャーというふうによく言いまして、権限のない開示ということになります。権限を持って秘密にアクセスしている人間が、その秘密を見る立場、権限のない人に対してその情報を提供すること自体が情報漏えいに当たるということであります。
お配りいただいた資料の二ページ目を見ていただくと、イージスシステムに係る情報漏えい事件というものについてまとめたものがございます。これは、内閣官房がおつくりになったものを、わかりやすいのでそのまま引用いたしました。
これを見ていただくと、イージスシステムの情報は、これは海上自衛隊の中にとどまっていて外に出ておりません。しかし、これは情報漏えい事件として、罰則、刑事罰の対象になりました。
こういうことがございますので、誰が特定秘密に関して通報を受ける合法的かつ権限を持つのかということが、実は非常に重要なのであります。
公益通報のようなものは、具体的な監視の調査の端緒として非常に重要なのではないかというふうに考えております。ですので、こうした公益通報について、合法的に受け付けられるような仕組みというものをぜひ御検討いただけないかというふうに考えています。
ちなみに、アメリカの仕組みを少し調べたところによりますと、インテリジェンスコミュニティーに関しては、議会に対して公益通報ができるという法的な仕組みがあるというふうに認識しております。ぜひ御検討いただければと思っております。
それから、審査会に対して、特定秘密の提出、提示の要求についてなんですが、これはとても重要な仕組みであるというふうには認識をしております。ただ、この仕組みは、審査会が提出、提示を求めるということになっており、全体での意思決定というか、そういうものが必要な仕組みになっております。
審査会の構成については、八人の構成で、所属議員の数に応じて会派で割り振られるというふうに承知をしております。そうしますと、多数で提示、提出の要求がなければ、実は特定秘密が国会に来ないという構造もあり得るというふうに思うわけであります。
そういうことを考えますと、実は、どういう条件であれば提出、提示を求めるのかということについて、例えば三分の一程度が要求をすれば提出を求められるようにするとか、そういうような仕組みがあった方が、独立性という意味でもとてもよいのではないかというふうに考えております。
それから、特定秘密の提示、提出要求について、どういう場合については政府が拒否できるかというその問題は、とても重要なポイントだと思っております。
特に、審査会については、十分な保護措置を講ずるということで、かなり厳格に、施設も含めた要件を定めておられるということでございますので、そこを通じた情報漏えいリスクとかそういう支障というのは、基本的には、ないのではないかというふうに考えております。したがいまして、極めて限定的な場合にのみ政府が拒否できるような厳格性の要件というものを設けるということは、非常に重要なのではないかというふうに考えております。
それから、審査会の議事録に関してですが、会議が非公開で行われるということは、事の性質上ある程度やむを得ないのではないかというふうには思うのでありますが、国会に関しては、非公開で行った議事録がこのまま非公開とされ続けますと、特定秘密については解除の仕組みを設けるということになっておりますが、国会で非公開、秘密にしたものについては、その解除なり公開の仕組みというものが、今の状況では、ないというふうに考えております。
ですので、議事録の非公開というものについても、すぐに公開できないものに関してもいつかは公開するというような行政機関レベルの情報公開の仕組みというものは、ぜひ御検討いただきたいというふうに考えています。
これはなぜ申し上げるかと申しますと、公文書管理法というものがございまして、歴史文書としての公開というものが行政機関についてはございます。
しかし、立法府については、公文書管理法そのものの適用を直接受けておりません。したがいまして、国会におきましてこういうような取り扱いをどうするのかということを御検討いただかない限りはここの情報公開が進まないということになりますので、十分に御検討いただきたいというふうに思っております。
最後に、情報公開という観点から、別の視点で意見を述べたいと思います。
それは、先日、私、アメリカに行きまして、いろいろと現地で秘密指定の仕組み等について調査をしてまいりました。そのときに、非常に印象に残ったことがございます。それは、秘密は過剰になりやすいということについて、立場を超えて、アメリカの関係者、政府機関それから元政府機関の人、それからNGOも含めて、多くの人がその問題を共有していたということであります。
過剰機密がなぜ問題になっているのかということをよくお聞きしますと、それは何よりも機密指定を最小限に絞ることに失敗した結果であるというふうな説明の仕方をされています。つまり、機密はいつかは解除されるという仕組みはございますが、ふえ過ぎると実は解除の仕組みもうまく機能しないという問題が出てくるというわけであります。
ですので、解除の問題にエネルギーやコストを投入するよりも、秘密指定を最小限に抑えるということにエネルギーとコストを費やすのが最もよいということを聞いております。
そういうことを考えますと、監視機関としても、やはり機密をふやさない、最小限に絞る、必要なものに限るということに最大限の機能と役割を果たしていただくということがとても重要だというふうに思います。
さらに、秘密や非公開の問題については、情報公開をずっと求めてきた立場から申し上げられることが一点ございます。
それは、秘密や非公開という判断には主観が入りやすいということであります。それから、理屈に当てはめられれば非公開が維持できてしまうということもあります。それから、公開によるリスクは過剰に見積もられやすいという問題もございます。
資料を見ていただいて、五ページ目に、参考としてお持ちしましたけれども、これは、新聞記事が部分公開になったという判断でございます。
これは警察庁の判断でございますが、情報公開法に基づいて情報公開請求をした結果、新聞記事が部分公開となりました。これは不服申し立てをして審査会というところで争いましたけれども、判断が変わりませんでした。これは法律の解釈論として成り立つという判断でありまして、こういう非公開も成り立つ、要は理屈の問題でなってしまうということでもあります。
それから、もう一枚めくっていただくと、非常に見にくくて恐縮なんですが、これはレーガン政権下のホワイトハウスのEメールであります。
これはアメリカのNGOからいただいてきた情報なんですが、これは実は、見えにくいと思いますが、全く同じEメールです。10日ぐらい異なって同じ人が公開、非公開の審査をした結果、最初に非公開にしたところと二回目の審査で非公開にしたところが別のところであるというところがございます。
つまり、これだけ主観的であったり、判断基準というのは、実は、非公開、秘密の領域は非常に難しいという問題がございます。ですので、そこをどうやって合理的に、かつ客観的に行っていくのかということはそんなに簡単な問題ではないということが、こうした問題を通じて私たちは日々実感をしているところであります。
ですので、こういうことも御認識いただきながら、ぜひ効果的かつ機能的な監視機関というものをつくっていただきたいというふうに思っているわけでございます。
以上でございます。ありがとうございました。(拍手)
○逢沢委員長 三木由希子参考人、ありがとうございました。
以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
きょうは、大変お忙しい中、貴重な御意見をお聞かせいただきまして、ありがとうございます。
私どもは、特定秘密保護法については、国民の知る権利を奪うものであるということで反対をしてまいりましたし、現在、廃止を求めているところであります。
特定秘密保護法第十条では、政府、行政機関は、国会に、秘密保全の措置をとった場合に特定秘密を提供することができる、こういうふうに規定されていて、今提案されている法案は、これに従って、国会の委員会や国会議員が特定秘密を漏らさないような厳格な秘密保全の体制をつくるという、そのためのものであります。
考えてみますと、国会の第一の任務というのは、政府に対する監視であります。そのため、国会は国政調査権を保障されておりまして、公開を原則とし、議員は自由に発言し、質問する権利が保障されているわけです。そのもとで、政府に資料要求をして、政治行政の実態を国民に明らかにする。この自由を失ったら、国会は監視の任務を果たせなくなるわけであります。
ところが、この法案を見ますと、常設の秘密会である情報監視審査会に対して情報を出すかどうか、これは最終的には政府が判断する、こういうことになります。
仮に秘密の一部が開示されても、審査会は秘密会で、議事録は公開されない。委員ですら許可なく議事録を閲覧できない。こういう仕組みになっております。
秘密会で秘密の提示を受けても、議員はその内容を国会の外に漏らせば刑罰に処せられるし、国会の質問で取り上げたら、これは懲罰の対象になって、最高、国会から除名処分まで受けかねない。こういうものなんですね。
そういう秘密保全の仕組みのもとで秘密の開示を受けたその議員は、発言の自由を著しく制約される。私は、これは議員としてまともな活動ができなくなると思いますけれども、この点について、清水参考人と三木参考人に御意見を伺いたいと思います。
○清水参考人 抽象的な考え方としては御指摘のとおりだと思いますが、現実的にというか実際的に考えてみると、では今まで秘匿性の高い情報はこの国に存在しなかったのかと考えると、恐らく存在しました。それは国会に開示されていたかというと、恐らく開示されていませんでした。それは、行政庁内部においてもどこにどのような秘密情報があるかということがきちんと管理されていたかと考えてみると、多分、知っている人は知っているけれども、知らない人は知らないというような、大臣クラスでさえそういう状況がこれまであったんだろうと思います。
途中でも申し上げたように、まず、情報の管理というものがベースとして重要です。それをどういう形で引き出してくるかというのにさまざまな仕組みが必要でありまして、国民にとっては情報公開法がそれであります。
国会については、国政調査権が憲法上規定されておりまして、国会法の104条で規定されていますが、これが十分に機能していたかと考えてみると、私は、機能していなかったろうと思います。
機能していない理由というのは、国会でその情報に迫るだけの攻防がなされていなかったということもあるかもしれませんが、何よりも、国会と官僚との間の不信感が私はあると思います。
不信感というのは、情報が一定の範囲から漏えいすると、特に国際的ですね、国内的な政治のやりにくさの問題というのはおいておいても、国際的な信用の問題というのはやはり国政にはあるわけですから、そこを守りつつ国会の議論をいかに活発化するかということになると、とりあえずは、まず入り口の問題としては、官僚の側がこれは非常に秘匿性が高いんだと言うものについては、ではそれなりに厳格に見ましょうと。
見たところが、これは秘匿性が高くないじゃないですかという議論になったら、そこで、これは指定解除してくださいよという働きかけ、そういう対話が可能になるかと思います。
そういった対話がこれまで行われていなかったのではないかという意味では、今回の仕組みというのは一歩前進だと思います。
それから、国会での質問とか外での議論ができなくなるのではないかという指摘ですけれども、私は、必ずしもそうは思っていません。
と申しますのは、そのデータそのものは外に出すことはできません。あるいは、どこの議員がどういうことを言ったとか、それはだめだと思います。
しかし、秘匿性というものを落として、秘密性がなくなる状態での情報に修正してしまうならば、それは、国会でそれを明らかにしろとか、あるいは外で話をするということも、一定可能だと思います。
それをどこまで許容するかというのは、それぞれの秘密ごと、そのときの政治情勢で、そこの閉ざされたところできちんと議論していただいて、そこだけで議論して、およそ外へ出ないという環境ではないというふうに考えています。
○三木参考人 お答えします。
私は、先ほどの意見陳述でも冒頭で申し上げたとおり、特定秘密保護法というものが現に存在をしているという前提にこの状況ではもう立たざるを得ないというふうに考えておりますので、そうしますと、誰がチェックするのかということをやはり考えざるを得ないというふうに考えております。
そうしたときに、一つが、国会の役割としてそれが望ましいのではないかという議論は、当然、自然な流れであるというふうに思っております。
ただ、先ほど議員が御指摘のとおり、秘密保持というものが無謬的に許容されてしまうということになりますと、逆に、行政の秘密保持というものを無謬に認めるという構造にこれが陥ってしまうということになると思います。
監視機関が設けられる一番大きなメリットは、無謬的に、安全保障上の利益と言った瞬間に秘密や非公開を全て妥当とするというのではなくて、本当にそれが公益にかなった秘密の保護なのか、非公開なのかということを追及していただくということだと思いますので、一定の秘密保持というもののもとにそれをしっかりチェックしていただくということは、それは国会としてやっていただく必要がどうしてもあるのかなと思っております。
先ほどの清水参考人の意見とかぶりますけれども、そういうものを通じて、不必要な秘密指定や解除の遅滞がある場合は、むしろ解除の促進を国会としてしていただくことによって、情報を外に出していただく、あるいは多くの人がそれにアクセスできるようにしていただく。あるいは、例えば、公聴会のようなものを通じて具体的に安全保障部門の政府組織から意見を聞いて、そういうものを通じて一定の情報公開をしていくというようなことなどを積極的にやっていただくことが必要なのかなと思います。
ただ、先ほど来から出ておりますけれども、議員に対しても特定秘密保護法は処罰の対象になり得るという構造になっている。この問題は、やはり少し重過ぎるというふうに思いますので、少し全体のバランスを見ながら、本来であれば修正というものを御検討いただく必要があるのかなというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 国会にこういう秘密会を常設しても、そこに政府の情報が出されるのか出されないのか、これは政府判断で決まってくる。これが今回の仕掛けですね。そうしますと、重要な情報を今まで以上に出すのか出さないのか、これは、政府が判断して出さないとなったら出てこないわけであります。
したがって、これに対して、国民の前に、その開示要求をしていくということが明確に示されなければならない。今までは、それを各委員会の議決によって政府に要求し、できないならできないと、その理由を説明させていた。
ところが、秘密会になりますと、これは、国会に出しますよと言うけれども、出した中身は、どういうものが出てきたのか、国民は知ることができないんです。それで、議員は漏らしちゃいけない、漏らすと処罰される、こういう仕掛けですので、これはかえってハードルを高くしてしまうんじゃないか、私はそういうふうに思っているところであります。
従来もそれが十分にできていなかったということがありますので、私は、その上にこういうハードルをつくるということは、極めて問題が多いというふうに考えております。
もう時間が参りましたので、以上で終わりたいと思います。
ありがとうございました。