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金融(銀行・保険・証券) (金融消費者保護)

2006年05月12日 第164回 通常国会 財務金融委員会 【356】 - 質問

「金融商品取引法案」損失補填の禁止の導入 「示談に困難を持ち込む」と指摘

 2006年5月12日財務金融委員会で、「金融商品取引法案」(投資サービス法案)に関連して参考人質疑と法案質疑が行われ、佐々木憲昭議員は、「損失補填の禁止」について質問しました。

 佐々木議員は、経済産業省に事実を確認しました。
 商品取引所法は、平成10年および平成16年に改正されています。そのとき、「損失補填の禁止」を導入すべきかどうかについて議論がありました。
 たとえば、平成9年の「委託者保護に関する研究会中間とりまとめ」によると、損失補てんの禁止について、「仮にこれを導入するに当たっては、委託者保護の観点から和解金の円滑な支払いに支障を及ぼさないように措置を講ずるべきではないか」という議論が紹介されています。

 しかし、今回の法案では、そのとき課題として指摘された「和解金の円滑な支払いに支障を及ぼさないように」、つまり「示談に障害を持ち込まない」と指摘された点は、限られています。
 示談が認められるのは、「業者が法令違反を認めて申請し、それを主務大臣が確認したとき」、あるいは「裁判所が関与したとき」(「判決」「和解勧告」「民事調停法の裁判所の決定」)、「業界団体(証券業協会・商品先物取引協会)などの斡旋による和解」などと、きわめて狭い範囲に限られています。

 現在、相談件数は4000件を超えると言われていますが、被害件数はその何倍、何十倍もあると想定されています。
 そのうち、弁護士が入って示談で解決するケースが圧倒的に多いのです。

 4月28日の参考人質疑で、日弁連の大田氏は、「具体的な示談書を交わすなりの段階において、自分たちが行った行為が違法であるということを認めるような形の示談書を交わしたことは一度もございません」と述べています。また、損失補填の禁止が盛り込まれると、「業者がその規定を盾に、被害回復に向けての示談交渉を拒否する口実に使われる恐れがある」と指摘されていました。

 今回の法案では、示談に困難を持ち込むことになってしまいます。また、規制の対象となる商品は非常に狭い範囲に限定をされている、あるいは不招請勧誘の問題でも一部後退が見られます。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 経済産業省に事実を確認したいのですが、商品取引所法は、平成10年及び平成16年に改正されております。その際、損失補てんの禁止を導入すべきかどうかについて議論があったと聞いております。例えば、平成9年の委託者保護に関する研究会中間取りまとめによりますと、損失補てん等の禁止を、「仮にこれを導入するに当たっては、委託者保護の観点から和解金の円滑な支払いに支障を及ぼさないように措置を講ずるべきではないか」、こういう議論が紹介されております。
 結局、このときは損失補てんの禁止については盛り込まれなかった、そういう経過だったと思いますが、いかがですか。
○谷政府参考人(経済産業省商務情報政策局消費経済部長) 平成10年、平成16年における商品取引所法の大幅な改正につきましては、それぞれ、商品取引所審議会、産業構造審議会で議論した答申等に基づきまして、政府内において改正の準備作業が行われております。こうした平成10年、平成16年の改正につながります審議会における答申などにおいて、損失補てんの禁止について導入すべきとの答申がなされておらず、このため、平成10年、平成16年、いずれの商品取引所法改正におきましても、損失補てんの禁止が導入されなかったものと考えております。
 なお、議員が御指摘になりました、平成9年、委託者保護に関する研究会は、平成9年5月から、委託者トラブルの防止及び委託者債権の保全に関しまして、農林水産省及び当時の通商産業省の担当課が合同で、実務者の参加を得て行いました実務者レベルの勉強会、研究会でございます。平成9年9月の同研究会中間取りまとめの中におきましては、損失補てん及び利益保証は取引の公正を害しまたは商品先物取引業の信用を失墜させる行為であるため、これを禁止すべきではないか、一方、仮にこれを導入するに当たっては、委託者保護の観点から和解金の円滑な支払いに支障を及ぼさないように措置を講ずるべきではないかとの記述がなされております。
○佐々木(憲)委員 要するに、示談に障害を持ち込まないという議論もあったわけでございます。
 具体的な数字がもしわかれば教えていただきたいんですが、国民生活センターに寄せられた苦情は4000件を超えると言われていますけれども、被害件数というのは、やはり何倍もあるいは何十倍もあると思うんですね。そのうち、弁護士が入って示談で解決するケースというのは圧倒的に多いのではないかと思いますが、示談というのは何件あるのか、そのうち、業者が法令違反を認めるケースは何%あるのか、わかりますか。
○谷政府参考人(経済産業省商務情報政策局消費経済部長) 議員御指摘のとおり、国民生活センターに寄せられました苦情の件数は私どもも把握しておりまして、以前7000件程度でございましたものが、昨年度は4000件と減少しておりますけれども、これ以外にどのような形で示談が行われているか、その件数、内容等の詳細は、現在私、把握しておりません。
○佐々木(憲)委員 示談のケースというのは非常に多いというふうに聞いておりますが、今回は、この法案によりまして、そういう示談というものが非常に困難になるということであります。示談は今までより狭まるのではないかと思うんですが、いかがですか。
○谷政府参考人(経済産業省商務情報政策局消費経済部長) 商品取引員が違法行為等により顧客に損害を与えた場合につきましては、現行の証券取引法と同様に、損失が事故に起因するものであることについて主務大臣の確認を受けている場合や主務省令で定める場合には、損失補てんの禁止規定は適用されないこととなり、当該顧客がこうむった損害の賠償を行うことは可能でございます。
 損失補てんの禁止が定められている証券取引法では、損失補てんの禁止が適用されない場合といたしまして、裁判所の確定判決を得ている場合、裁判上の和解が成立している場合、協会のあっせんによる和解が成立している場合等が内閣府令において定められておりまして、商品取引所法の主務省令にも同様の規定を行う方針でございます。
 したがいまして、商品先物取引で損失補てんの禁止の導入が行われた後におきましても、示談による損害賠償は可能であると考えております。
○佐々木(憲)委員 示談が可能になるケースというのは非常にまれなケースなんですね。業者が法令違反を認めて申請し、それを主務大臣が確認する、こういう事例というのはほとんど考えられませんし、裁判所が関与したとき、例えば判決、和解勧告、民事調停法上の裁判所の結論、こういうものですね。それから、業界団体などのあっせんによる和解。
 ですから、現実に行われている非常に多くの、弁護士が介入をして行われる示談というのは、実際にはこれ以外のことはできなくなるわけでありまして、そういう意味で、今回の法案は今までよりも示談を困難にするものである。
 先日の参考人の答弁によりますと、具体的な示談書を交わすなりの段階において、自分たちが行った行為が違法であるということを認める形の示談書を交わしたことは一度もございませんというわけでありまして、そういう点で、今回のこの法案は示談交渉を非常に困難にし、また、業者がその規定を盾にして示談を拒否するという口実に使われるおそれがあるという指摘は、私は真っ当な指摘だというふうに考えております。そういう意味で、今回の法案の限界というのは非常に明らかであります。
 このほかにも、今回の法案の規制の対象となる商品は非常に狭い範囲に限定をされている、あるいは不招請勧誘の問題でも一部後退が見られる等々、さまざまな問題点が多いということであります。
 その点を指摘いたしまして、もう昼になりますので、質問は終わらせていただきます。

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