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金融(銀行・保険・証券) (金融消費者保護)

2006年04月28日 第164回 通常国会 財務金融委員会≪参考人質疑≫ 【351】 - 質問

「金融商品取引法案」参考人の岩原新作・東大教授、大田清則・弁護士に質問

 2006年4月28日財務金融委員会で、「金融商品取引法案」(投資サービス法案)に関連して参考人質疑が行われ、佐々木憲昭議員も質問に立ちました。
 質問した参考人は、岩原新作・東京大学大学院法学政治学研究科教授、大田清則・日本弁護士連合会・消費者問題対策委員会副委員長です。

 金融被害をなくし被害者を救済すること、そのことを通じて市場の信頼を確保していくことが重要です。しかし、今回提出された法案は、「消費者」という言葉がひとつもなく、「消費者保護」でなく「投資家保護」となっています。
 佐々木議員は、法の枠組みとしては、証券取引法を踏襲していることを見ても業法としての整備に中心が置かれているように思うがどうかとききました。この点については、大田参考人も同様の見解を述べました。
 金融商品の範囲については、平成11年7月6日の金融審第一部会の「中間整理(第1次)」によれば、「株券や公社債券といった証券取引法上の有価証券はもとより、信託の授益権、預貯金、保険、融資といった伝統的な金融商品をはじめとして、デリバティブ取引、さらには、……集団投資スキームの商品についても、……対象として含まれるべきである」とされ、幅の広い商品を対象に考えられていました。
 しかし今回、出された法案は、「投資性商品」のみが対象とされています。そのため、たとえば「商品先物取引」や「融資」が外され、「預貯金」「保険」の一部も外されています。
 イギリスの場合、商品先物取引も融資も、金融サービス市場法の規制対象に入っています。佐々木議員は、今後、日本で本格的な金融サービス法を検討するさい、これらも含めたすべての金融商品を対象とすべきではないかと聞きました。
 この点では、2人参考人と意見が基本的に一致しました。

 この参考人質疑に先だって行われた午前の参考人質疑には、西室泰三・株式会社東京証券取引所代表取締役社長兼会長、筒井高志・株式会社ジャスダック証券取引所代表取締役社長、越田弘志・日本証券業協会会長の3人が参考人として招致されました。 

議事録

【参考人の意見開陳部分と佐々木憲昭議員の質問部分】
○小野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 午前に引き続き、内閣提出、証券取引法等の一部を改正する法律案及び証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案並びに古本伸一郎君外六名提出、証券取引委員会設置法案の各案審査のため、午後の参考人として、東京大学大学院法学政治学研究科教授岩原紳作君、日本弁護士連合会消費者問題対策委員会副委員長大田清則君、以上二名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、大変お忙しいところをこの委員会に御参加いただき、委員会のおくれによりましてお待ちをいただきまして、まことに申しわけございませんでした。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、参考人各位からお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願いいたします。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。
 それでは、まず岩原参考人にお願いいたします。
○岩原参考人(東京大学大学院法学政治学研究科教授) 御紹介にあずかりました東京大学の岩原でございます。本日は、この委員会にお呼びいただきまして私の意見を申し上げさせていただきますこと、大変光栄に存じております。
 私が参考人として招致していただきましたのは、恐らく、金融審議会におきまして、政府提出の証券取引法の一部改正法案についてのもとの案を検討するのに参加したということでお呼びいただいたと考えておりますので、本日は、政府提出法案について私の意見を申し上げさせていただきたいと存じます。
 証券取引法改正法案の一条は、有価証券届け出書の届け出者等に対する資料提出命令や証券取引等監視委員会の犯則調査を強化し、また相場操縦行為、風説の流布、偽計といった不公正取引や、開示書類の虚偽記載に対する罰則の強化等を図るものでございます。証券取引法は、その実効性の強化が非常に大きい課題とされておりますことから、これらの改正は大変適切な改正であると考えております。
 証券取引法改正法案の第二条は、ライブドア事件ですとか夢真の事件など、最近の公開買い付けをめぐる事件によってクローズアップされました問題点を改正することを図ったものでございます。
 ライブドア事件でまず問題になりましたのは、証券市場の時間外取引というものを利用して、一般投資家や発行会社が知らない間に株券等の大量買い付けが行われ、会社支配権の変動が行われてしまって、一般投資家が害されかねない事態が起きたということでございました。
 現行証券取引法二十七条の二第一項五号によりますと、著しく少数の者からの株券等の買い付けは、買い付けにより所有割合が三分の一を超える場合に限って公開買い付けの方法によらなければならないと定めております。しかし、そうなりますと、市場外で少数者から三分の一ぎりぎりまで買い付けて、残りわずかの株券等を市場で買い取るという方法で、実質的に一般投資家に知られずに会社の支配権を左右する株券を入手するということが可能になります。
 そこで、証券取引法改正法案は、二十七条の二第一項四号におきまして、三分の一を超える買い付け等というのを、一定の期間に市場の内外で合わせて三分の一を超える買い付けをする場合には公開買い付けの方法によらなければならないと改正することとしております。また、同様の、不意打ちによる支配権取得をチェックし、情報を公開するという目的で、大量保有報告の特例の限定がなされております。これが改正法案の二十七条の二十六でございます。
 同じくライブドア事件で問題となりましたことといたしまして、公開買い付けがなされている間は買い付け者は公開買い付け外で株券等の買い付けが禁止されているということを利用いたしまして、支配権を争っている者が、公開買い付けがなされている間に証券市場で買い増しを行って、過半数の議決権をとってしまったということが起きたわけであります。これは、会社の支配権の公正な競争という観点からも、また、投資家への情報提供という観点からも問題がございますので、改正法の証券取引法二十七条の二第一項五号は、別の者が公開買い付けを行っている間は、三分の一以上の株券等を所有している者が買い増しをするには、やはり公開買い付けによらなければならないものとしました。
 また、夢真の事件で問題になりましたのは、公開買い付けを始めたところ、会社側が株式分割を行って一株当たりの価値を切り下げてしまったために、買い付け者としては、買い付け価格を引き下げたいと思っても、現行証券取引法二十七条の六第三項は、買い付け価格の引き下げを一切認めていないという問題が生じたわけであります。そこで、改正法案の二十七条の六第一項は、株式分割等のときには価格の引き下げがあり得るという条件つきで公開買い付けをすれば引き下げができるということを認めることにしております。
 このほか、公開買い付けに関し、投資家への情報開示を充実させるために、公開買い付け対象の発行会社に公開買い付けに関する意見表明報告書の提出を義務づけ、その中で公開買い付け者に対する質問をする権利を与えております。また、発行会社に、意見表明報告書において公開買い付け期間を延長することを求める権利を与えてもおります。これは、株主に公開買い付けに応じるべきか否かを検討する時間がもっと必要だという発行会社経営者の判断を尊重しようとするものでございます。
 なお、改正法案二十七条の十三第四項は、一定割合以上の株式所有割合となる公開買い付けを行う場合は、公開買い付け者は応募株券等のすべてを買い付けなければならないということを義務づけております。
 これは、一定割合以上の株式所有者があらわれますと、残りの少数株主は実質的に経営への発言力を失ってしまいますし、実際上も、上場廃止がされて株券等の処分ができなくなることが多いことから、そのような少数株主保護のための改正法案となっております。いわば会社法的な少数株主保護のための制度を導入したわけでありますが、これは、イギリスやEU等において見られます全部買い付け義務をいわば限定的な形で取り入れるものであります。
 以上のような、公開買い付けに関します本改正法案の内容は、最近の事件によって明らかになった問題点を正し、投資家保護、会社支配の公正さを実現しようとするものでありまして、私は望ましい改正と考えております。
 次に、改正法案三条の、金融商品取引法に関する改正について申し上げたいと存じます。
 戦後の我が国の金融制度は、証券、銀行、保険といった金融の各領域を分けまして、それぞれ証券会社、銀行、保険会社が排他的に業務を行い、他の領域には互いに進出しないという専門金融機関制度をとってまいりました。そのような縦割りの制度のもと、証券取引法の適用範囲も、母法であるアメリカの連邦証券諸法とは異なりまして、法律または政令で列挙された有価証券の範囲に限定されてきたわけであります。
 ところが、金融が高度化し、自由化が進んでまいりますと、伝統的な有価証券に含まれない新たな投資性ある金融商品が次々と出てまいります。例えば、各種のファンドですとかデリバティブ等々でありますが、これらは投資性ある金融商品であるにもかかわらず、証券取引法の有価証券の定義の限定列挙主義のために、証券取引法の適用がなく、投資家保護が図られないという問題が生じました。これらの商品も有価証券として政令指定をすればよかったわけでありますが、有価証券とされますと、証券会社しか扱えないという業際問題が生じるために政令指定が難しかったわけであります。
 その後、何度かの立法によって有価証券の定義は拡大されてまいりましたが、まだ十分ではありませんでしたし、また、次々に新たにあらわれてくる新しい投資性ある金融商品には対応し切れないという問題がございました。また、平成十年の金融システム改革法により、専門金融機関制度は大きく崩れて、縦割りの業際問題はかなり薄れてまいりましたが、なお残っております。
 そのために、最近の立法による対応も、なお縦割りの制度を残しながらのいわばパッチワーク的なものとなっておりまして、法令のすき間がなお残っている上に、制度が複雑でわかりにくく、投資家保護になお足りないところや保護の仕組みが機能しにくいといった問題がございました。また、業者の立場からしますと、法制が複雑だったり規制当局が複数にわたったりして、どこまでが許される行為かは明確でないといったような問題もあり、新しい金融商品の開発等がやりにくいといった問題があったわけであります。
 そこで、そのような問題を除いて、投資家保護や金融サービスの一層の発展を図るために、投資性ある金融商品について横断的な投資家保護の法制が必要だとして提案されたものが、この証券取引法改正法案第三条でございます。私も、このような法改正の方向に賛成するものでございます。
 細かい内容は避けますけれども、例えば有価証券の定義が拡充されて、特に包括的定義が設けられまして、これから新しくあらわれてくる金融商品についても、この金融商品取引法の投資家保護の規定が適用されるということになりました。また、投資性の強い預金や保険、商品先物、不動産特定共同事業等については、金融商品取引法の規定を準用したりすることによって、実質的に金融商品取引法と同様の保護を図ることにしております。また、業規制も、横断的、包括的なものとされ、柔軟なものになっております。
 これらを含めまして、この金融商品取引法は、従来の縦割りの金融法制のもとでの投資家保護の穴を埋め、そして金融サービスがより高度化するための基礎を提供するものと考えておりまして、私はこの法案に賛成するものでございます。
 以上でございます。(拍手)
○小野委員長 岩原参考人、ありがとうございました。
 続きまして、大田参考人にお願いを申し上げます。
○大田参考人(日本弁護士連合会消費者問題対策委員会副委員長) 弁護士の大田でございます。
 本日は、このような意見陳述の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
 日弁連では、消費者保護の立場から、従前より金融サービス全般にわたる業界横断的、商品横断的な消費者保護立法の制定を求める提言を再三行ってまいりました。
 今回の証券取引法等の一部を改正する法律案等、以下では金融商品取引法案と申し上げますが、そのような金融商品に関する横断的な規制を目指して法案化されたものではありますが、その内容を見るときに、日弁連が従前より意見書等において消費者保護の観点から問題が大きいと指摘した規定や、十分な議論がなされないまま設けられたもので看過し得ない問題点を含んだ規定も少なからず存在していることから、本年3月24日付で、今回の金融商品取引法案の修正を求める意見書を提出しております。なお、この意見書は、資料一として添付させていただいております。
 私は、日弁連消費者問題対策委員会副委員長の立場で、日弁連のこのような意見書に基づいて今回の意見陳述をさせていただきます。
 ここで申し上げます私の意見は、以下の五点でございます。
 第一に、金融商品取引法案においては、商品先物取引や海外商品先物取引、海外商品先物オプション取引などの商品デリバティブがその対象に含まれておりませんが、その対象に含めるべきだと考えております。
 今回の金融商品取引法案の目的は、その前提となった金融審議会金融分科会における2005年12月22日付最終報告にもありますように、幅広い金融商品について包括的、横断的な利用者保護の枠組みを整備し、利用者保護の拡充によって、既存の利用者保護の対象となっていないすき間を埋めるとともに、現在の縦割り業法を見直し、同じ経済的機能を有する金融商品には同じルールを適用するというところにあったはずであります。
 ところが、今回の金融商品取引法案では、金融先物取引法など四法が廃止されて金融商品取引法に取り込まれたにとどまり、他の金融商品に関する業法は残され、対象とされなかった金融商品については、今回の金融商品取引法における規制と横並びにするという形で修正が加えられたにとどまっているのであります。
 しかし、これでは、先ほどの金融審議会最終報告に言うところの、既存の利用者保護の対象となっていないすき間を埋めるとともに、現在の縦割り業法を見直し、同じ経済的機能を有する金融商品には同じルールを適用するという目的は到底達成し得ないものであると考えております。
 そもそも、法規制のすき間を縫って新たな投資被害が発生するという状況は従来から繰り返されており、近年の外国為替証拠金取引の被害はその典型であります。この被害につきましては、2004年12月の金融先物取引法の改正、2005年7月からの同法の施行に至って、悪質な業者を撤退させるなど一応の成果をおさめてきているわけでありますが、後追い規制によって対応がおくれたとの感は否めません。
 今回の金融商品取引法案によって生ずるすき間の問題として最も懸念されるものの一つに、海外商品先物取引が挙げられます。
 海外商品先物取引については、現在、規制法として海外商品市場における先物取引の受託等に関する法律がございます。しかし、この法律には、その適用範囲が狭く、海外商品先物オプション取引が対象になっていないこと、行為規制はあるものの、業者の参入に関する認可、登録等の規制が全くないなど、規制法としては大きな不備がございます。それにもかかわらず、今回の金融商品取引法案においては、海外商品先物はその対象から除外され、先ほど述べましたとおり、規制法として大きな不備が存在するにもかかわらず、海外商品市場における先物取引の受託等に関する法律については何らの手当てもなされていないという状況にございます。そのため、従来外国為替証拠金取引の業務を行っていた悪質な業者が法規制の不備のある海外商品先物取引へと移行し、その結果、被害件数が急増することが強く懸念されるところであります。
 さらに、海外商品先物オプション取引につきましては、海外商品市場における先物取引の受託等に関する法律の規制対象となっていない関係で、従前から何らの法規制も及んでおらず、その結果、被害も少なくなく、裁判所が問題のある業者に対して損害賠償を命じた判決も数多く存在するところが現状でございます。ところが、今回の金融商品取引法案においては、海外商品先物オプション取引はその対象からは除外されており、また、その法規制の不備を補うための何らの手当てもなされていない状況にございます。
 今回の委員会審議の中で、政府委員から、これらの取引については集団投資スキームにおいて規制可能であるとの答弁がなされていますが、実際上の被害事案を見ますと、ほとんどすべてが国内の商品先物と同じように個別の注文によって取引を行う形式ものでありまして、このような形式のものについては集団投資スキームの規制対象にならないことは明らかであります。
 海外商品先物や海外商品先物オプション取引については、金融商品取引法の対象に含めた上で、登録制、無登録営業禁止及び違反に対する罰則の付与などの参入規制、それから、後に述べます不招請勧誘の禁止や適合性原則などを含む厳格な行為規制がなされなければならないものと考えております。
 さらに、国内の商品先物につきましてですが、これについては、その苦情件数が、国民生活センターのデータで見ても、1993年度には1863件であったものが、その後急増を続け、2000年度以降、直近の2005年度まで毎年、1993年度の苦情件数の2倍をはるかに超える4000件以上もの苦情を出し続けているわけでございます。
 この商品先物取引の被害について、政府委員の説明の中では、2005年の国民生活センターの苦情件数が4212件となっていることをもって、過去2年から大幅に減ったとして、被害が減少した、2005年5月施行の改正商品取引所法における勧誘規制が功を奏したなどとの答弁がなされていますが、本年1月に全国各地の単位弁護士会を中心に実施した全国一斉先物取引・外国為替証拠金取引被害110番では、商品先物取引だけで、前回の2004年の110番の苦情件数よりも91件も上回る多くの被害、苦情の電話が全国各地から入っております。この点については、資料二の一、二の二において提出しておりますので、参照いただきたいと思います。
 また、この110番の中で、改正商品取引所法が施行された2005年5月以降の被害、苦情の内容を見てみますと、しつこい勧誘を受け、断っても勧誘が続き、取引を行うことになってしまい被害を受けたなどという苦情、被害の件数が数多く存在しております。この点については、資料三におきまして具体的に個々の聞き取りの内容を整理しておりますので、参照いただきたいと思います。
 このような点から考えますと、2005年5月施行の改正商品取引所法によって勧誘規制が強化されたとはいっても、それによって直ちに被害を減少させるものであるとは到底評価できないと考えております。
 また、商品先物取引の被害では、その被害額が巨額に上ることが少なくなく、生活資金である預貯金などを根こそぎ奪われた事例や、多数の借金を余儀なくされた事例も見受けられます。また、商品先物被害に遭ったことから、人間不信やノイローゼ、家庭崩壊に及んだ事例、前途の希望を失って自殺に追い込まれた事例、さらには先物取引による損失が原因で被害者自身が横領等の犯罪行為を行ってしまった事例などもございます。最後の事例については、資料四として、新聞報道でそのことが明らかになっている事案を並べておりますので、それについても参照いただきたいと思います。
 このように、国内の商品先物による被害は、単に被害件数が多いというだけにとどまらず、被害の内容が極めて深刻な事案が多いのでありまして、最もひどい金融商品による被害と言えるのであります。
 ところが、このような国内の商品先物取引についても、今回の金融商品取引法案ではその対象から除外され、わずかに、商品取引所法を金融商品取引法における規制と横並びにするということで若干の改正が加えられているにすぎません。そして、今回の商品取引所法の改正の内容を見ますと、先ほど申し上げた国内の商品先物取引被害の件数の多さや深刻さなどを考えると、到底これでは被害の救済は図れないというふうに考えておるわけでございます。
 でありますから、国内の商品先物についても、金融商品取引法の範囲に含めた上で、その危険性の高さや被害の実態を踏まえた厳格な法規制を行うべきと考えております。
 第二に、金融商品取引法案におきましては、電話、訪問による不招請勧誘、いわゆる勧誘の要請をしていない顧客に対する勧誘ということでございますが、これを禁止する規定を置いておりますが、消費者保護の観点から見ますと、国内の商品先物取引、海外商品先物取引、海外商品先物オプション取引を含むすべての金融商品について、原則としてこの不招請勧誘を禁止すべきであります。そして、その適用除外については、それぞれの商品性やコンプライアンスなどを点検した上で、その後になされれば足りるものと考えております。
 金融商品の中で被害の多いのは、国内の商品先物取引や海外商品先物取引、それから海外商品先物オプション取引、さらに外国為替証拠金取引などがございます。これらの被害の大部分は、電話や訪問による不招請勧誘がその発端となっております。とりわけ国内の商品先物については、先ほど述べましたように、被害件数が減っていないということ、それから被害の内容が深刻であることなどがあるわけでありまして、到底、先ほど申し上げたとおり、従来の勧誘規制では足りないということになります。
 そもそも、投資被害の損失をめぐるトラブルの多くは不招請勧誘に端を発していることから考えれば、本来、すべての金融商品について不招請勧誘を原則として禁止することが原則であると考えます。
 このような不招請勧誘に対する厳しい姿勢は世界的な流れになっているのでありまして、我が国においては、わずかに、外国為替証拠金取引を規制しその被害を救済するために2005年7月に施行された金融先物取引法だけにとどまっているわけでありますが、この点から見て、我が国の不招請勧誘規制は大きく立ちおくれているというふうに考えざるを得ないのであります。
 このような意味で、今回の金融商品取引法案において不招請勧誘を禁止することが置かれていることは評価すべきでありますけれども、この禁止対象が政令に定めたものに限るとして極めて限定されていること、それからさらに、横並びの規制であるとされている国内の商品先物についての商品取引所法の改正法案にはこれが盛り込まれていないことなどは、非常に問題であると言わざるを得ません。
 第三に、金融商品取引法案に規定されている適合性原則についてですが、これについては、法律上の実効性を確保する観点から、これに違反した場合については、損害賠償義務、取り消し権、無効などの民事上の効果を伴わせる規定を設けるべきであります。
 金融商品取引法においては、適合性原則が規定され、適合性判断の一要素として投資目的を含めたことは評価できるのでありますが、民事効果が見送られているのであります。
 適合性原則は、投資者保護の観点はもちろんのこと、投資市場における不適格な投資者を排除して投資市場の公正を図るという側面があるのでありまして、多くの行為規制の中で最も厳格に守られなければいけないものであります。そのために、その実効性を確保するためには、適合性原則違反については民事効を付与すべきものであると考えます。
 第四に、プロ、アマの問題でございます。金融商品取引法案においては、プロ、アマ区分を設けて、一般投資家にもいわゆるプロとされる特定投資家に移行する道を開いているわけですが、そもそも、プロ、アマ区分の趣旨としては、アマには適正な投資保護を確保する一方で、プロについては行政規制でなく市場規律にゆだねる、過剰規制による取引コストを削減するということでありますので、一般投資家の保護の観点においては十分に保護されなければならないことは明らかであり、この観点から見ますと、安易にアマからプロへの移行を認めてしまいますと、説明等を受けずにリスクの高い投資に引きずられてしまうことが十分予想されるのでありまして、断じて認めるべきではないと考えております。ここで言うプロについては、機関投資家に限定されるべきだと考えております。
 最後に、金融商品取引法案においては、損失補てんの禁止が規定され、それと横並び規制であるということから、商品取引所法においても新たに損失補てんの禁止が規定されています。しかし、国内の商品先物取引については、被害件数が多いこと、また被害が深刻であることからかんがみまして、損失補てんの禁止を国内の商品先物取引については認めるべきではないと考えております。
 もともと、損失補てんの禁止がありますと、業者がその規定を盾に、被害回復に向けての示談交渉を拒否する口実に使われるというおそれが従来から指摘されているところであり、国内の商品先物については、その内容の深刻さ等から、損失補てんの禁止を置くことになりますと、商品取引員の側から、その規定の存在をもって損害賠償の示談交渉を拒否するという事例が十分予想されるのであります。そして、多くの場合、早期救済が図れなくなり、裁判によるある程度の時間をかけた解決にちゅうちょする人については、その救済を断念してしまうということも考えられるのであります。
 さらに、各地の消費生活センターにおいては、これまで、勧誘当初の事案についてはそのあっせん処理において解決できた場面がございますが、損失補てんの禁止が入ってくることによって、このような救済の道も閉ざされてしまうわけでございます。
 さらに、この損失補てんの禁止規定については、本来、商品先物については従来から慎重な審議をなされてきたわけでありますが、今回においては何らの審議もされないまま、その規定が盛り込まれたところを考えますと、そのプロセスにおいても大きな問題があると思います。
 以上、私が述べましたことについては、金融商品をめぐる救済現場におきます全国の数多くの弁護士の声を集約したものでございます。そして、それはまた、全国各地の金融商品をめぐる被害に遭っている多くの消費者の声でもあります。
 諸先生方におかれましては、何とぞ私たち日弁連の意見を十分に酌み取りいただき、今回の金融商品取引法案が消費者保護のためによりよき立法になるように、修正が必要なところは十分な審議をいただいた上で修正いただきたいと存じます。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
○小野委員長 大田参考人、ありがとうございました。
 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。(中略)続きまして、佐々木憲昭君。
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 お二人の参考人、大変御苦労さまでございます。
 今回提案された法案の基本的な性格をどう受けとめておられるか、まず、大田参考人にお聞きをしたいと思います。
 私は、金融被害をなくし被害者を救済する、そのことを通じまして市場の信頼を確保していくということが大変重要だと考えております。しかし、提案された法案は、消費者という言葉が一言もございません。消費者保護ではなく投資家保護であります。しかも、法の枠組みとしましては証取法を踏襲しておりまして、どうも業法としての整備に中心が置かれているように思うんですが、大田参考人はどのようにこれをお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
○大田参考人(日本弁護士連合会消費者問題対策委員会副委員長) お答えします。
 このいわゆる金融サービス法の議論というのは、十年ぐらい前のビッグバンのときに規制緩和が言われた時代に、規制緩和でいろいろな規制を撤廃する、しかしその反面でいわゆる投資家の保護をきちっとしなきゃいけない、こういう議論の中でずっと展開されてきたと思うんですが、なぜか、いわゆる規制緩和の方はどんどん進んで、いろいろな取引に対する規制がなくなっていったわけですけれども、消費者保護というか投資家保護というか、そういう観点だけがずっと見落とされてきた。それで、今回初めてその消費者保護というか投資家保護に近いような発想で話が進んできたわけですが、実際上はやはりいろいろな省庁間の問題もあり、結局、本来あるべき姿からするとかなり外れた、つまり、本来の意味での投資家保護につながるような内容になっていないというふうに私は考えております。
○佐々木(憲)委員 そこで、金融商品の範囲の問題、先ほどから議論になっておりますが、以前はかなり広い範囲が対象として議論されていたと思うんですね。
 例えば、平成11年7月の金融審第一部会の中間整理によりますと、株券や公社債券といった証券取引法上の有価証券はもとより、信託の受益権、預貯金、保険、融資といった伝統的な金融商品を初めとして、デリバティブ取引さらには集団投資スキームの商品についても対象として含まれるべきである、このように非常に幅広く金融商品をとらえていたわけであります。
 しかし、今回出された法案は、投資性商品ということに限定をされまして、商品先物取引がそこから除外をされている。さらに、融資が外され、預貯金、保険の一部が外されているわけです。しかし、本来ならこういうものもすべて対象として含まれるべきだと私は思うわけです。
 そこで、岩原参考人に、融資が外された原因というのはどうもよくわからないとおっしゃいましたけれども、これは銀行の影響をかなり受けたんじゃないか。といいますのは、銀行側としてはなるべくこういうものは規制の対象からは外してほしいというのは当時からいろいろ言われていたわけでありまして、そういう意味で、その影響があったのではないかと思いますが、どのように受けとめておられるか。
 それから、お金の流れからいうと、利用者からお金を出すという性格に着目をしているというふうにおっしゃいましたが、銀行からお金を出す、これは融資でありますが、それは外される。それは、形式的に言えばそうかもしれませんけれども、実態からいいますと、銀行の最大の金融商品は何か、これは融資ですからね。それを外すのはいかがなものかというふうに、私なんかは思うわけです。
 その点で岩原さんのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○岩原参考人(東京大学大学院法学政治学研究科教授) まず、最初の御質問でございます、融資が外された原因、これはもうさっき申し上げたとおりでございまして、実際上どういう経緯で審議会の検討対象から外されたのかは、私自身は承知しておりません。少なくとも理屈としては、さっき申し上げたように、違った側面があって、統一的なルールをつくる上では、銀行の融資の面ではなくて、むしろ受信する面、利用者からお金を出してもらう側面の方だけを検討対象にしたということではないかと思います。
 それと、もう一つの御質問で、銀行にとっては融資というのは最大の金融商品ではないかと。何をもって最大というかは呼び方次第で、一方で言えば、預貯金がある意味で最大の商品でもあると言えるかもしれませんが。ただ、銀行にとって非常に重要な商品であることは確かでありまして、融資について利用者保護を図っていかなければならない面があるということは確かであります。
 かつては、銀行、特に都市銀行はほとんど大企業にしか融資していなかったわけでありますから、融資の面について特に利用者保護を図らなくても、大企業の方は銀行とちゃんと交渉能力がありますから、それほど心配しなくてよかったわけでありますけれども、最近では大銀行も消費者や中小企業等に対する融資がむしろ融資の中心になってきておりますから、そういうことも考えると、銀行融資についても、利用者保護についての法制整備を今後図っていく必要があると私も考えております。
 以上です。
○佐々木(憲)委員 岩原参考人は、昨年5月27日の金融審の金融分科会第一部会、先ほどほかの委員の方が引用された、変額保険と融資の一体商品の発言をされていますけれども、ここで、勧誘、販売のあり方が非常に問題になったというふうにおっしゃっておられますが、どのような問題というふうに感じておられるか、もう少し具体的にお聞きをしたいと思います。
 もう一つは、顧客に対する説明等のルールについては今後ぜひ検討が必要であるしお願いしたいというふうに発言されておられますが、この意味といいますか、どのようなお考えでこういう発言をされたのか、この二点、お聞かせいただきたいと思います。
○岩原参考人(東京大学大学院法学政治学研究科教授) 確かに私はそのような発言を金融審議会において行いました。
 なぜそういう発言をしたかと申しますと、実際、銀行をめぐる訴訟のかなりの部分が、融資といわば投資性のある商品を一体にして扱った事件が多かった。とりわけ変額保険では数百件の事件が起きています。そういうところでは、特にあれはバブルのときに問題であったんだと思うんですけれども、いわば銀行の方がむしろ中心になって、保険商品の説明も含めて、銀行の方が主導権を持って融資と変額保険との一体の売り込みを顧客の方にした場合があって、そのときの説明が不十分だったために、変額保険が持っているリスクを十分理解しないままに、いわば節税商品のような形で銀行融資を受けた上で変額保険に入ったところ、変額保険の価値が非常に暴落してしまって、そして融資が返せなくなって困ったという被害者の方がかなり出られた。
 この場合、そういうような融資と変額保険なんかの商品を一体にして売り込みを図って、しかも銀行が主導権を持って売り込みを図ったようなときは、これはやはり当然銀行としてもきちんと利用者の方にその商品の性格等を説明して、きちんとリスクを理解した上で入っていただくという必要がありますので、従来裁判所に出てきた事案の中にはそういう点でかなり問題のあった事案があるように思いますので、そういった説明義務等について今後なるべく法制整備を図っていく必要があると考えております。
○佐々木(憲)委員 大田参考人にお伺いします。
 イギリスの場合、商品先物取引や融資などが金融サービス市場法の規制対象に入っているというふうにお聞きしますけれども、今回はそれがそうなっていないわけであります。議論としては、ホップ、ステップ、ジャンプで、今はステップだからそこまで行かないんだ、ジャンプの際には入れるんだという話があります。
 それで、イギリスの具体的な事例、あるいは、諸外国でこういう金融商品の範囲というものをどのように規定しているのか、どういう規制があるのか、ぜひ御紹介をいただきたいと思います。
○大田参考人(日本弁護士連合会消費者問題対策委員会副委員長) 先ほど先生御指摘があったイギリスの金融サービス市場法の中で、一連の、すべての包括的な規定がなされているということで、私もちょっとほかの諸外国の例を余り存じ上げませんのでそこのところしか答弁としてはできないんですけれども、やはり、先ほどあったように、漏れが今あるわけですね。ですから、漏れがあるんだけれどもとりあえずホップでいいんだということではないと思うんですね。
 つまり、現在、漏れているものについて、私が指摘したような商品デリバティブ関係においては非常に被害が出ていて、しかもそれがまた拡大しようとしている。そういう中で、そこはおいておいてとりあえずホップでというわけにはいかない。消費者の立場からいえば、ここをまずきちっとしていただかないと先には進めないと思うんですね、というふうに私は考えております。
○佐々木(憲)委員 では次に、不招請勧誘の問題についてお聞きしたいと思います。
 今提案されている法案では、極めて狭い範囲に限定をされていると私は感じております。対象は政令で定めると。
 現在のところ、店頭の金融先物取引、外国為替証拠金取引しか対象になっておりません。取引所金融先物取引、すなわち市場の外国為替証拠金取引は、再勧誘禁止の対象とされて、不招請勧誘の禁止の対象からは外されております。ということは、極めて限定された部分しか、いわば店頭商品先物取引しかこれは対象にならないというわけであります。そうなりますと、不招請勧誘というのはほとんどの分野で野放しという状況ではないのか。適合性原則の遵守の網はかぶっているといいますけれども、不招請勧誘についてはフリーパス。
 私は、まずは網羅的に不招請勧誘全体を規制する、その上で、個々の取引を検討して、害がないものだと判断されるときにはその規制を外す、そういう発想が必要ではないのかと思うんです。
 何も100%規制せよと言っているんじゃなくて、発想の順序が逆になっているのではないかと思いますが、お二人のそれぞれのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○岩原参考人(東京大学大学院法学政治学研究科教授) お答え申し上げます。
 原則、不招請勧誘禁止の原則を適用した上で問題のないものを外すのか、原則として不招請勧誘の禁止の原則があるとはしない上で、問題がありそうなものを指定するのか、それは言い方の違いでありまして、問題は、実質、どういうものに不招請勧誘の禁止の原則を適用し、どういうものに適用しないかということだと思っております。
 先ほど御指摘のありました店頭の金融先物等について、これはかなり問題が起きているので適用する。ではその次に、店頭でない市場物についてどうかというふうに考えていきますと、市場物でありますと、少なくとも、相対的に言えば、店頭物に比べれば価格形成の透明性とかそういったところはありますので、さっき申しましたように、不招請勧誘の原則を全面的に適用してしまいますと、ほとんど実質的にその商品を利用できなくなるのに近い部分がございます。
 これは政令で指定されることですから最終的にどういうふうな政令指定になるか私は存じませんけれども、多分そういうことで、店頭物と市場物でとりあえず違った扱いをしようという考え方が出てきているのかと理解しております。
 以上です。
○大田参考人(日本弁護士連合会消費者問題対策委員会副委員長) お答えします。
 不招請勧誘につきましては、日本では先ほどの金融先物取引法の中で初めて採用されたわけですけれども、諸外国では既にもう少し広く適用がされているわけですね。
 例えばEU諸国においては、2003年7月に通信に関する指令というのがなされて、十月末からは、消費者の事前の同意がない限り、ダイレクトマーケティングの目的で電話する、あるいはファクス、メールを送信することは禁止されていたり、それからアメリカでも、2003年の10月以降は、ドゥー・ノット・コールという、リストに登録した人については勧誘を行ってはならないとか、そういう形で幅広くもう既に行われているわけですね。
 ですから、日本においてだけなぜそんなに不招請勧誘を最初から限定的にしなきゃいけないか、そういう理由はないわけですよね。ですから、まず、先生言われたように、広く不招請勧誘を適用していって、それから問題のないところは除外していく、これが本来あるべきものだというふうに私は考えております。
○佐々木(憲)委員 岩原参考人にお聞きしますけれども、政令で指定をする場合、今の法案ですと、被害が起きて、訴えがあって、調査をし、これは大変な事態だというのがわかって、その上で議論をした上で政令で指定する、こうなるわけでありまして、その間に被害が広がる。そして、ではその被害を受けた方々の補償は一体どうするのか、こういう問題も生じてくると思うんです。
 そういうことからいいますと、私は、先ほど先生はどちらからやろうがそれほど違いがないとおっしゃいましたけれども、しかし、手順としては全く違うことになるのではないかと思うので、そういう意味で、一度全体的に、この不招請勧誘については厳しく、諸外国と同じように、EUもアメリカもイギリスもドイツも、今、大田先生がおっしゃいましたが、そういう前例を参考にしながらやはり適用すべきではないかというふうに考えますけれども、いかがでしょうか。
○岩原参考人(東京大学大学院法学政治学研究科教授) お答え申し上げます。
 確かに、政令指定をすることによって初めて不招請勧誘の禁止の原則が適用されるということになりますと、政令指定がなされるまでの間に被害が起こり得る可能性はあり得るということになります。
 ただ、一方で考えますと、最初から不招請勧誘の原則が適用されるということになりますと、事実上いわばそういった商品の提供が難しくなるという側面がありまして、あるサービスの適用というのは当然マイナスのこともあればプラスのこともあり得るわけで、本当にその商品が、いわば消費者がアクセスすべきものでないということを事前に判断して、一切市場に出てこないのに近いようなことにしていいのかどうか、これはなかなか難しい問題だと思っておりまして、明らかにこの仕組みというのはこれは消費者を食い物にするようなものだ、そういうのは当然当初から指定して不招請勧誘を禁止とすべきだと思いますけれども。
 本当に、いわば消費者にとってアクセスすべきでない商品かどうか何とも言えない段階で、少しでも疑いがあればすべて不招請勧誘の禁止の原則をあらかじめ適用しておいて、そもそも被害が全く起きないようにする方がいいのかというと、これはちょっと微妙な判断になるのかなという感じがしております。
 以上です。
○佐々木(憲)委員 大田先生にお伺いしますが、これは先ほど、一度網羅的に禁止をしてそれで検討して外すという考え方をおっしゃいました。今の岩原先生のお考えは、そういうことをやりますと事実上その商品の提供が難しくなるというようなことで、いわば消費者が市場でどのような商品があるのかということを理解する機会を失うという話をされたわけです。
 私は、そういう商品があるかないかというのは、広告がなされていれば、何も直接本人に売り込まなくても、その広告を見てアクセスすれば商品の購入ができるというふうに単純に考えるのですけれども、大田先生はこの辺はどのようにお考えでしょうか。
○大田参考人(日本弁護士連合会消費者問題対策委員会副委員長) お答えします。
 私も、先生言われるとおり、同じような意見でございまして、そもそも、いわゆる勧誘からいろいろな商品の取引に入らなきゃいけないのかどうかというのがあると思いますよね。ですから、いろいろな情報は、それ以外にいろいろと消費者の方には流れるわけですから、消費者が自分で判断して、その上で取引に入ることだってできるわけでありまして、必ずしも、そういう勧誘から入らなければ消費者がそういった商品に関与できないとか、そういうことでは全然ないわけですから、そういう、先生言われたような形で、消費者が理解した上で入っても決して問題はないというふうに考えています。
○佐々木(憲)委員 昨年の12月22日の金融審議会金融分科会第一部会の議事録というのを見させていただいたんですが、業界の代表の発言がいろいろありまして、その中に、不招請勧誘の規制についてこう言っているんですね。少し緩めた規定にして早くよい商品の存在を知っていただくことが、実際に取引のニーズのある方々をむしろ実質的に救済することになるのではないかとか、あるいは、不招請勧誘の禁止というのを拡大解釈していくというのは非常に問題であるというふうにおっしゃっているわけで、業界の代表は、この不招請勧誘の禁止に非常に強く抵抗しているというふうに私はこの議事録で印象を受けました。
 この12月22日の会合には岩原先生はお出になっておられるのかどうか、ちょっとよくわかりませんけれども、この業界の代表のこういう見解と消費者の代表の見解というのはやはりかなり私は対立的だと思います。
 目的は一体どこに置くのかということであって、やはり私は、圧倒的多数の国民の利益、これをどう守るかということが非常に大事なことだというふうに思うわけで、その点、岩原先生の、この審議会の審議の状況、業界代表のこういう発言というのは今回の法案に私は影響したのかなというふうに思いますが、どのようにお感じか、お聞かせいただきたいと思います。
○岩原参考人(東京大学大学院法学政治学研究科教授) 業界代表の方の御発言がどれだけ影響したのか、私はよく存じ上げないんですけれども、ただ、業界代表以外の委員の方の中でも、実は、特に経済学者の方を中心に、むしろなるべくそういう商品へのアクセスのチャンスを保障すべきで、一般的に不招請勧誘ということになってしまうと、そもそもそういうマーケットができる可能性をふさいでしまうんじゃないかという危惧を持たれた方がいらしたことは確かでありますし、経済学者以外の、あるいは、いわゆる業界の人以外のビジネス界の方の中でもそういう御意見の方があったように記憶しております。
 以上です。
○佐々木(憲)委員 昨年10月5日の金融分科会第一部会でこういう議論もあるんですね。不招請勧誘についても原則不招請勧誘の禁止をすべきだ、今までの縦割りの法律を横に見る場合でも説明義務なり適合性原則のところについてはかなり似たような規制がなされているわけで、それを共通化することは全然無理ではない、そういう意見も出ているということであります。
 最後に大田参考人にお伺いしますが、ホップ、ステップ、ジャンプのジャンプのところですね。どのようなものにしていくのが消費者にとって利益になるのか、最後にその点をお聞かせいただいて終わりたいと思います。
○大田参考人(日本弁護士連合会消費者問題対策委員会副委員長) お答えします。
 これは本来当然のことだと思いますが、やはり、各金融商品に横断的に包括的に規制をするということが本来あるべき姿であることは間違いないわけでありますから、そういう形に持っていかなければいけない、これは明らかです。
 ですが、ただ、現在すき間のあるところ、これを放置してはいけないわけでありますから、最終的に目標がそこであるから今すき間があってもいいというわけにはいかないわけでして、最低限すき間がないような形で、今回議論されている法律がそういう形でスタートしなければいけないというふうに考えています。
○佐々木(憲)委員 ありがとうございました。
 終わります。

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