2006年05月12日 第164回 通常国会 財務金融委員会≪参考人質疑≫ 【355】 - 質問
カネボウ粉飾決算事件など 「監査人の独立性の確保」が重要と指摘
2006年5月12日財務金融委員会で、「金融商品取引法案」(投資サービス法案)に関連して参考人質疑と法案質疑が行われ、佐々木憲昭議員が質問しました。
参考人として招致されたのは、藤沼亜起氏(日本公認会計士協会会長)と郷原信郎氏(桐蔭横浜大学法科大学院教授)です。
佐々木議員は、カネボウの粉飾決算に加担した今回の事件をはじめ一連の事件で問われているのは、監査される会社にたいして監査人の独立性が確保されていなかったことにあると指摘。
公認会計士協会が2月16日に最終変更した「倫理規則の独立性(第14条)の解説」をとりあげました。
そこには、「独立性に対する脅威」として、「自己利益、自己監査、癒着、擁護、脅迫・威圧」などがあげられています。
佐々木議員は、今回の事件は、どこに問題があったのかと質問。
これにたいして藤沼参考人は、癒着や自己利益等があったことを認めました。
独立性を保つ点でメスを入れなければならない点は、監査される会社から監査する側が報酬を受け取るという矛盾した関係をどうするのかということです。この点では、参考人から明確な解決策は示されませんでした。
議事録
【参考人の意見開陳部分と佐々木憲昭議員の質問部分】
○小野委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、証券取引法等の一部を改正する法律案、証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案及び古本伸一郎君外6名提出、証券取引委員会設置法案並びに小沢鋭仁君外2名提出、証券取引法等の一部を改正する法律案及び証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案に対する両修正案を議題といたします。
本日は、各案及び両修正案審査のため、参考人として、日本公認会計士協会会長藤沼亜起君、桐蔭横浜大学法科大学院教授郷原信郎君、以上2名の方々に御出席をいただいております。
この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げたいと存じます。
本日は、大変お忙しい中を、当委員会で現在、証券取引法等の一部を改正する法律案等の審議を進めているわけでございますけれども、この審議に資する意味で、御出席をいただきまして、参考人としての御発言をいただくこととなりました。どうか御忌憚のない御意見を御披瀝いただきますように、心からお願いを申し上げます。
次に、議事の順序について申し上げます。
まず、参考人各位からお一人10分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願いいたします。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。
それでは、まず藤沼参考人にお願いいたします。
○藤沼参考人(日本公認会計士協会会長) おはようございます。藤沼でございます。よろしくお願いいたします。
まず、カネボウ、ライブドア等、公認会計士が絡んだ会計不祥事の発生は、まことに残念であり、大変に遺憾に思っております。日本公認会計士協会は、公認会計士の社会的使命を自覚し、公認会計士監査の信頼性の回復のため、自主規制を一層強化し、会員と一団となって監査の品質確保に全力で取り組んでいるところであります。国民の期待にこたえるよう最善の努力を行う決意であります。
金融商品取引法案につきましては、ディスクロージャーの強化のため数々の制度が導入されております。協会は、次の五点において高く評価しており、ぜひ今国会での成立をお願いする次第であります。
第一に、財務報告に係る内部統制について、経営者の評価と当該評価に対する監査人の監査という、いわゆる内部統制報告書制度の導入が織り込まれていることであります。
協会は、財務諸表の適正性は、第一義的には、財務諸表の作成者である経営者がその職責を全うすること、次に、当該財務諸表の適正性を第三者の立場で監査し担保する監査人がその職責を遂行することにより確保されるものと御説明してまいりました。
この制度は、財務諸表の作成者である企業が、財務報告に係る内部統制を整備し円滑に機能させることで財務諸表の質を確保するものであり、当該制度の導入により財務諸表の信頼性が向上するものと期待しております。
第二に、有価証券報告書等の適正開示に関する経営者確認書の導入であります。
これは、経営者が、有価証券報告書の記載内容の適正性についてみずから確認し、署名してその責任を投資家に明らかにするものであります。経営者が確認することとなると、作成段階において担当者間での緊張感と責任感が高まり、不実記載の防止には相当に寄与するものと期待しております。
なお、経営者が確認書に署名できるのは、財務報告に係る内部統制が整備され、それが有効に機能していることが前提であります。その意味で、経営者確認書と内部統制報告書は表裏一体の関係にあると考えております。
第三に、会社情報をタイムリーに投資家等に提供する四半期報告書の導入であります。
企業を取り巻く経営環境は激しく変化しており、ビジネスリスクが高まっております。投資者からはタイムリーな情報開示が求められております。四半期財務諸表には、公認会計士はレビューにより検証業務を行うことになります。
四半期報告書制度の導入は迅速かつ適正な会計処理が求められますので、会社の財務報告に係る内部統制が整備され、かつ、それが有効に機能していることが前提であります。その意味では、内部統制報告書と一体となって四半期報告書の制度化が図られることを協会は要望してきたところであります。
第四に、虚偽記載を行った場合の経営者等の実行行為者及び当該企業に対する刑事罰、さらに幇助罪として監査人の刑事罰が強化されたことです。
有価証券報告書等の虚偽記載は、自己責任において証券市場に参加している一般投資家の期待を裏切ることになりますので、個人金融資産の貯蓄から投資への移動を促進するためには、刑事罰が強化されたことは当然のことと理解しております。
以上、内部統制報告書と経営者確認書、刑事罰の強化の三者が一体となって、ディスクロージャーの信頼性は相当に向上するものと考えております。
第五として、集団投資スキームであるファンドを幅広く新法の規制の中に取り込み、投資者の保護が図られたことも必要な措置であると考えております。
ライブドアの会計不祥事を踏まえ、協会は、投資事業組合等に対する監査の深度を高め、投資者の期待にこたえるよう、去る4月6日に会長声明を公表し、会員に注意を喚起したところであります。
投資事業組合の問題は、連結範囲の実務指針等の整備が十分でなかったという課題もありましたので、現在、投資事業組合等の連結の範囲に係る実務指針等の作成作業が企業会計基準委員会で行われております。協会も投資事業組合に対する監査の実務指針を作成する作業に着手しております。
最後に、協会は、財務諸表の適正性の確保には、従来から、経営者、コーポレートガバナンスに責任を持つ取締役や監査役、外部監査人、監督官庁、証券取引所など、関係者についての包括的な制度の整備をお願いしたところであります。本法案には協会の要望が相当に取り入れられており、十分な審議の上、今国会で成立することを再度お願い申し上げます。
本法案では、財務諸表作成者である経営者の責任が強化されますので、監査人もそれに甘んじることなく、会計監査のプロフェッションとして自主規制を一層強化し、公認会計士監査の信頼性確保に全力で取り組む所存でございます。
以上でございます。ありがとうございました。(拍手)
○小野委員長 藤沼参考人、ありがとうございました。
引き続きまして、郷原参考人にお願いいたします。
○郷原参考人(桐蔭横浜大学法科大学院教授) 桐蔭横浜大学の郷原でございます。よろしくお願いいたします。
それでは、今回の金融商品取引法、まず内閣提出法案の関係で、幾つかのポイントに絞って私の意見を申し述べさせていただきます。
まず、現在の証券取引法、そして今回定められようとしている金融商品取引法の目的、性格の問題ですが、私は、証券取引に関する法律というのは市場法的な性格が極めて重要であると考えております。従来、ともすればこの法律が、投資家保護法的な性格のみを強調される形でつくられ、運用されてきた傾向がありました。そういう面で、今回の法案において、市場法的な性格が目的規定の中で非常に明確に打ち出されたことは、大変有意義なことではないかと思います。
二番目に、今回の法律で、どの範囲の取引を対象としていくかという問題です。
現在の証券取引法は、証券に関する取引を基本的に対象にしております。ここからさらに金融商品取引全般を対象にしていこうとしているのが今回の法案だろうと思います。この先に、商品取引なども含めて、投資サービス全体も一つの法律で規制していくべきだという考え方があることも承知しておりますが、このような金融商品取引というのは、それぞれ性格の違いがあると同時に共通性を持っているというものでありまして、そのうちのどの範囲を同じ法律で規制していくかということ、これは一つの政策の選択の問題だと思います。その違いを十分に踏まえながら、共通部分に対して、正しい、適切な規制をしていくという意味において、今回のように金融商品取引を証券取引に限らず全体的に規制していくという方向は極めて望ましいのではないかと思います。
三番目に、市場のルール違反、今回のライブドア事件で大変な問題になりましたけれども、こういうルール違反に対して、どのような手段をもって臨むかということに関しまして、行政処分、課徴金、刑事罰、大まかに言えば三つの手段が用意されているんだと思います。この基本的な枠組みは、今回の法案では、特にその改正は予定されておりません。これは昨年の証券取引法の改正で、2年以内に課徴金についての抜本的な見直しをするという附則が設けられているということと関係しているんだと思います。
今回のこの法案の審議の中でも、後ほど詳しく申し上げますが、課徴金の性格を抜本的に改める必要があると思います。そういう面で、今回の法案にはその点は触れられておりませんが、そういう方向を見出すという面で、今回の改正を有意義なものにしていただきたいと考えております。
そして、四番目に、ルール違反の構成要件をどの程度具体的に定めるかという問題です。
インサイダー取引とか相場操縦などの具体的なルール違反に関する規定に対して、具体的な規定を用いて規制をするという方法と、抽象的な包括規定を用いて規制するという方法、二つがあります。最初に申しましたように、市場法的な性格の法に持っていくということになると、どうしても、複雑多様な取引に柔軟に対応できる包括規定の適用というのが重要なものとなっていくものと思われます。そういう面で、包括規定というのは、逆に、刑事罰を適用する際には罪刑法定主義との関係でいろいろ問題が生じます。逆に言いますと、包括規定をこれから市場規制的な法の中で積極的に使っていく上では、先ほども申しましたように、課徴金の抜本的な改革というのがますます重要になってくるんじゃないかと思います。
そして、五番目に、摘発に当たる機関が、専門機関が適切なのか、一般的な司法機関、検察のような機関が適切なのかということも一つの問題であろうと思います。この枠組みは今回の法律でも特に変わっていないわけでありますが、この問題というのは、最後の、人材確保の問題と関連づけて、今後の制度のあり方、運用のあり方を議論しなくてはいけないものと考えております。
この点に関して、今回、民主党の提出の法案の中で、SECの設置ということが盛り込まれております。これは、アメリカ型のこのような独立した機関をつくって、市場に対して適切な監視を行っていくという方向は大変正しいものだと思います。しかしながら、非常に大きな問題なのは、現在の証券取引を規制する、監視する人材が極めて不足しているということだと思います。まず、監視機関の体制を抜本的に改める、その前提として、人材の確保、人材の養成というのを積極的にこれから進めていく必要があるんじゃないかと思います。そういう面で、現時点でのSECの設置というのは、まずその前提として、人材確保のための体制の整備が先行して行われるべきではないかと思っております。
そこで、今回のその法案に関連しまして、三つほど私が重要と考えている点について、追加して申し述べさせていただきます。
まず一つは、先ほど申しました課徴金制度の抜本改革です。現在の証券取引法の課徴金制度は、経済的利得の剥奪という概念が中心になっております。そのために、制裁としての性格が認められないために金額が非常に低いものになっていること、そして対象となる違法行為の範囲が限られていることという点に問題があるんじゃないかと思います。さらに、市場規制として柔軟に課徴金を適用していく上では、やはり監視機関に裁量権がある程度付与されていることが必要じゃないかと思いますが、その辺は現在の課徴金制度では取り入れられておりません。こういうような課徴金の性格を抜本的に改めることによって、刑事罰ではなかなか柔軟に行いがたい現在の証券取引に関するルール違反に対する監視をもっと強めていく必要があるんじゃないかと思います。
そして、先ほども申しました包括条項の積極適用の問題であります。包括条項の積極的な適用のためには、今申しました課徴金をもっと活用していくことが必要ではないかと考えております。その課徴金の積極的な適用、包括条項に関する積極的な適用ということに関しても、実例をもっともっと蓄積していって、それによって不公正な取引という概念を明確にしていく必要があると思います。
こういう二つの点に関しまして重要になってくるのが、先ほど申しました金融商品取引分野における人材育成の問題じゃないかと思います。金融取引という分野は、一般の刑事事件、一般の経済取引の中でもかなり特殊な性格を持った分野であります。こういった分野に関して、最初に申しました、市場法としての性格を持った今回の金融商品取引法の運用を適切に行うための人材を確保していくことが、今後、重要な課題になっていくんじゃないかと思います。
そういう面で考えますと、現在の証券取引等監視委員会の体制、そこで今活躍している方々の構成というのは、多分に各官庁からの寄せ集め的なもので、必ずしも専門的な人材というのは十分ではありません。今後、若い世代の中から、もっともっとこういった分野において専門的な能力を発揮し得る人材を育てていく必要があるんじゃないかと思います。そのためには、私も法科大学院に教官として勤務しておりますが、法科大学院教育の充実ということをこれから考えていかないといけないのではないかと思います。現在、法科大学院においては、独占禁止法の教育はある程度積極的に行われるようになりました。しかしながら、証券取引法の教育を行っている法科大学院というのは極めて少ないというのが実情であります。
金融商品取引法が、市場法としての性格が明確になって、これから積極的に運用されていくということであれば、独占禁止法、証券取引法を含めた、その共通の性格を持った市場法に対する法科大学院の教育を充実させていくこと、そして、それを受けて証券取引、金融取引に関する専門の法曹の資格をつくっていくこと、そして、それに対応して、証券取引の監視の専門官などの官の側のキャリアというのを創設していくこと、この二つを適切に組み合わせながら、今後のこの分野の人材養成を積極的に行っていくことが必要ではないかと思います。
そして、そういったことの中で、こういう市場法としての証券取引法を司法試験科目に取り込んでいくことといったことも今後検討していくことによって、一層そういう動きが活発になっていくのではないかと考えております。
人材の養成が極めて重要であるということを申し述べて、私の意見陳述を終わらせていただきます。(拍手)
○小野委員長 郷原参考人、ありがとうございました。
以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
これより参考人に対する質疑を行います。(中略)
引き続きまして、佐々木憲昭君。
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
両参考人におかれましては、大変御苦労さまでございます。
まず、カネボウの粉飾決算に加担をした今回の事件を初めとする一連の事件で問われているのは、監査される会社に対して監査人の独立性というものがしっかりと確保されていなかったという問題であります。
公認会計士協会がことしの2月に最終変更をした「倫理規則の独立性(第14条)の解説」というのを拝見いたしました。ここには、独立性に対する脅威として、自己利益、自己監査、癒着、擁護、脅迫、威圧などが挙げられております。
今回の事件は、このどこに問題があったと考えておられるか。これは藤沼参考人にお伺いします。
それから、郷原参考人には、今回の事件に関連をして、この独立性が確保されなかった理由をどのように考えておられるか、この点をまずお聞きしたいと思います。
○藤沼参考人(日本公認会計士協会会長) カネボウのケースでございます。
独立性、佐々木委員のおっしゃるように、ここが一番スターティングポイントだというふうに認識しております。
カネボウの今回処分を受けた会計士たちがどのようにしてその独立性を失ったのか、どういうところに原因があったのかということなんですけれども、最終的には、一つは癒着の問題があったというふうに思っておりますし、あと結果的には自己利益ということがあったんだというふうに思います。また、その会社を失うということに対する脅迫というか、会社の人がそれを脅迫したのかどうかというのは、直接的な脅迫があったのかどうかということはわかりませんけれども、間接的な脅迫概念があったのではないか。そういうことで独立性を欠いた。それで会社の監査に対応してしまったという、基本的なところで大きな誤りがあったのではないかということで、これはやはり重大な問題だというふうに認識しております。
○郷原参考人(桐蔭横浜大学法科大学院教授) 私は、公認会計士に関する問題は、そもそも公認会計士という職業というのがどういう職業なのかというようなところを根本的に考え直してみる契機となるべき事件ではないかと考えております。
ちょうど、我々に関係の深い仕事として、弁護士という仕事があります。弁護士も専門職業人で、弁護士の場合は、依頼者から報酬を受け取ってその依頼者の利益のために法律事務を行うということになります。
それでは、公認会計士というのは、同じように依頼者から報酬を受けるわけですけれども、一方で、公認であるということで、公的なチェックの役割を任されています。そういう公認会計士の公的な役割と、依頼者の利益を図るという役割をどのようにして組み合わせていくべきなのか、そういう公認会計士制度というそのものがこれからどのようになっていくべきなのか、そういう根本的な議論を行う一つの契機にもなる事件ではないかと。まさに、独立性の確保ということも、そういう大きな視点から改めて考え直してみるべき問題じゃないかと考えております。
以上です。
○佐々木(憲)委員 今、郷原参考人おっしゃったこと、大変大事な視点だというふうに思うんですね。
独立性に疑いが持たれるような関係ということの一つとして、特定の関与先または関与先グループから継続的に受け取る報酬、これが収入の大部分を占めてしまうというような場合は、これは独立性に非常に大きな脅威を与えると思います。
公認会計士協会の方では、50%を超える場合は問題があるというふうにされていますけれども、しかし、その50%というのもかなり高い水準ではないかと私は感じるわけです。といいますのは、今回の事件に関与した監査法人も、多くの大手の上場企業を監査しているわけであります。したがって、報酬としては50%よりもはるかに少なかったはずでありますが、癒着というような問題が生まれる。そこで、一社に対する依存度というだけではやはり十分ではないと思うんです。もちろん、それももっと下げる必要があると私は思うんです。
その点で、具体的に、今回の事件が発生した中央青山監査法人のカネボウの報酬というのは、この監査法人のうちのどのくらいを占めていたのか、事実関係としてもしわかったら教えていただきたいと思います。
○藤沼参考人(日本公認会計士協会会長) この数字は、具体的に私つかんでいるわけではないですし、多分、監査法人の収入というのは400億、500億という数字になっていますので、その中で、多くても、せいぜい一億ぐらいの話ではないかなという感じがしていますので、パーセンテージとしては非常に少ないということだというふうに思います。
日本公認会計士協会のルールとして、報酬に占める50%という数字なんでございますけれども、日本の監査事務所というのは非常に、特に中小の事務所の場合には、いわゆるフルサービスということでやるのが一般的なんですけれども、税理士業務は監査人ができないということで、そういう面で監査という立場からできないということで、ただ一方、税理士資格を取得することによってやっているというような問題がありまして、中小の事務所の人にとって、それを、税務とかその他のサービスを省いた上で監査の中に占める割合は何%という話になると、どうしても高い数字が出てしまう。
監査法人では先ほどの50%は十分にクリアされるわけなんですけれども、そういう点の中小の事務所への一応配慮というものと、あと、税理士業界と会計士業界との業際問題というか、そこら辺の区分けの問題等の特殊要因があるということを御理解賜りたいというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 比率だけでは問題は解決しないと思うので、それは大きな監査法人と小さな法人では全然対応が違うと思うんです。したがって、大きな法人の場合に一体何が必要かという点をぜひ考えていただきたいと思います。
具体的な対応策として、先ほど来のお話の中に、ローテーションの見直しとか、あるいはインターバル期間における前任会社の監査に影響力を及ぼすことを排除するというようなことに取り組まれているようですけれども、なおそれでも問題は解決していないわけですね。
この点について、今は7年と2年という形でありますが、アメリカの場合は5年・5年ということですね。もっとこれを具体的に、特定の企業に対する監査の期間を短くする、それから監査をしない間隔を長くする、この関係をアメリカ並み、あるいはアメリカ以上に厳しくすることが大事だと思いますが、その点はいかがでしょうか。
○藤沼参考人(日本公認会計士協会会長) 監査人のローテーションというのは非常に大事なことだと思います。
そういう面で、カネボウ事件等を受けて、公認会計士協会は、公認会計士法で求められている7年・2年のいわゆるローテーションの制度にかかわりなく、ことしの4月以降は、7年以上の者がないように即座に、早期実施ということで各会計事務所に要請をしておりまして、その中で、特に四大法人については、7年・2年ということを当初要請したわけですけれども、やはり社会の期待、会計士の役割の重要性ということの認識から、ことしの4月以降、筆頭の業務執行社員、すなわちトップのパートナー、レビュー関与社員については5年のローテーション、そしてその他の関与社員については7年のローテーション、7年・2年、5年・5年、これはアメリカと全く同じ制度をことしの4月1日から導入いたしました。
それでは中小の事務所はどうなんだという話になるわけですけれども、中堅の事務所については、できるだけこれにフォローできるようにしてほしいということを要請しております。ただ、非常に小規模な事務所については、監査人自身が少ないから、そう簡単にローテーションといってもできないということで、これは品質管理レビュー等を強化することによって対応していこうということでやっておりまして、アメリカ並みのローテーションは4月1日から実行されているということでございます、四大法人についてはです。
○佐々木(憲)委員 それでは最後に、特定企業からの独立性を確保するという意味で、報酬の面ですね、先ほども少しお話をいただきましたが、企業から報酬をもらってその企業の監査を行うというのは、これはなかなか微妙な関係であります。特定の企業との直線的な結びつきをどうしても排除しようということとそのことが矛盾することになるので、私も、昨年の10月28日でしたか、藤沼参考人にその点をお伺いしたことがございます。そのとき、議論が百出しております、ベストな解決策というものはまだ見出しておりませんというお話をいただきました。
それで、どんな議論があって、どうすればいいのか。これは先ほども郷原参考人もそういう点を指摘されましたけれども、私は、報酬を受け取る関係の面で、何らかの独立性を高めていくような方策を考えていく必要があるのではないかというふうにずっと思っておりますが、この点について御両人のお考えを伺いたいと思います。
○藤沼参考人(日本公認会計士協会会長) 監査人が独立監査人と言われていまして、独立監査人の監査報告書を出さなくてはいけない、それが監査する企業から報酬を得ているというのはおかしいではないか、これが一般的な質問で、確かにそういうようなことからすると独立性があるのかどうか、こういう疑問が投げかけられているわけです。
監査制度が発生してからです、これは日本だけではなくて海外でもそうなんですけれども、いつもこの議論はずっと議論されてきた問題でございまして、最近は、例えば証券取引所でお金を集めて、証券取引所がそれを分配したらどうか、証券取引所はそれは嫌だと言っていますけれども、そういうようなこととか、あるいは公的機関が集めてそれを分配したらいいだろうかとか、あるいは保険会社、保険でクレームが、いわゆる監査訴訟があって保険を払うわけですから、監査事務所と企業の問題は一番詳しいだろうから保険会社がそれをやったらどうか、これはアメリカの会計学会なんかで議論をしたわけですけれども、みんなこれらの議論は余り実態が伴っておりませんで、議論倒れという形になっております。
今、実際、それに対する実質的な解決策として、実効が上がるものとして言われているのは、やはり会社のコーポレートガバナンスを預かる体制をもう一度きちっと見直して、会社のコーポレートガバナンスの中に、取締役会の中に外部取締役がいる、取締役から、会社の経営陣から独立した監査役、その人がオン・ビハーフ・オブというか、株主あるいはその他の利害関係者の利益のために行動する、経営陣を監視する、そのような監査役、あるいは監査役会、監査委員会が監査報酬を決定する。これは、アメリカの企業改革法以降、アメリカのオーディットコミッティーはすべて外部取締役。私の友人なんかでこのオーディットコミッティーのチェアマンをやっている元会計士が結構多いわけですけれども、彼らに聞くと、すごくまじめに、このごろ時間数も飛躍的にふえて、かなりやっているということ。
そういう面で、やはりコーポレートガバナンスのストラクチャーを実質的に変えて、監査役会がきちっと外部監査人と監査報酬を決めて払う、こういう制度をするのが一番実現可能性があるのではないかというふうに思っております。
以上です。
○小野委員長 郷原参考人、ちょっと時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いいたします。
○郷原参考人(桐蔭横浜大学法科大学院教授) もし公認会計士の仕事が、厳格なルールを単に守らせるだけ、チェックするだけということであれば、これは国の側で報酬を支払って、国の側の、むしろ公務員としてやればいい仕事だと思います。ですから、そういう仕事ではないということがまず前提なんだと思うんですね。やはり公認会計士の仕事というのは、会計基準の中でいろいろな解釈を、企業の側に立って、ある程度監査というものをそういう立場でやるということがあるから、公認会計士の仕事なんだと思います。
そういう面で、最終的にはこの問題というのは、報酬をもらっているからそれだけで何か疑われるというだけじゃなくて、公認会計士の業界における倫理の確立というような点がこれから重要な問題になっていくんだと思いますし、そういう面で、今これだけ大変な批判を受けた中で、業界の中で自主的な改善の努力が行われているわけですから、まずはそういう自主的な改善の努力を見守ることというのが重要なんじゃないかと思っております。
以上です。
○佐々木(憲)委員 時間がありませんが、最後に一言だけ。
中央青山監査法人の奥山理事長と三井住友銀行の西川前頭取、ぜひ参考人として当委員会にお呼びいただきたいと思います。
○小野委員長 はい。これは理事会での協議とさせていただきます。
以上で佐々木憲昭君の質疑を終了いたします。