金融(銀行・保険・証券), 金権・腐敗政治 (保険会社の不払い)
2007年05月18日 第166回 通常国会 財務金融委員会≪参考人質疑≫ 【394】 - 質問
保険金不払いで生保協会会長を呼び質疑
2007年5月18日、財務金融委員会が開かれ、保険金不払い問題について参考人を招致して質疑をおこない、佐々木憲昭議員も質問しました。
参考人として招致されたのは、生命保険協会会長の斎藤利勝氏(第一生命社長)です。
意見陳述の後、質疑をおこないました。
佐々木議員は、不払いの原因を追及しました。
生命保険協会の斎藤会長は、不払いの原因について、保険契約者に保険金を請求してもらう意識の徹底が欠けていたとのべました。
そのうえで、生保業界の対応として、9月ごろまでに追加で支払うべき契約を特定し、「遅くとも11月ごろまでに支払いを完了する」という考えを示しました。
佐々木議員は、「契約通り保険金が払われないなら契約違反になる。業界も各社も根本的な信用が問われている」と指摘しました。
そのうえで、個人の立場から見ると、契約から支払いまで長い期間がかかる場合があるため、うっかり忘れていたり記憶にないという場合がありうる。そのため請求漏れが発生したら、それは個人の責任になるのか、それともフォローすべき会社側に責任があるのかと質問。
これにたいして、生命保険協会会長の斎藤利勝氏は、契約通り払うべきで「基本的には会社の側に責任がある」と答えました。
さらに佐々木議員は、4月11日の金融庁への質疑で取り上げた、専門的知識を持っている職員を大切にすることの重要性を指摘し、安易な人減らしをおこなわず人員を確保することをもとめました。
また、国民政治協会(=自民党)への企業献金について、2005年まで続けているが、2006年、2007年はどうなっているか、その額はいくらかとただしました。
2006年に第一生命は933万円の献金をおこなっていることを認めました。2007年については、まだ実施していないと答えました。
佐々木議員は、「まず、支払うべき相手は契約者ではないか。政治献金はやめるべきだ」と批判しました。
この質疑に引き続き、損保協会会長の参考人質疑も行われました。
議事録
○伊藤委員長 ただいま参考人として社団法人生命保険協会会長斎藤勝利君に御出席をいただいております。
この際、参考人に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多用中のところ本委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。参考人におかれましては、忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
次に、議事の順序について申し上げます。
まず、斎藤参考人から十分御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願いいたします。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。
それでは、斎藤参考人、お願いいたします。
○斎藤参考人(社団法人生命保険協会会長) 生命保険協会長の斎藤でございます。
本日は、このように保険金等の支払い検証と今後の対応につきまして御説明をさせていただく場を設けていただきまして、まことにありがとうございます。
まず初めに、このたび、多くの生命保険会社におきまして、保険金等のお支払いが不足をしていた事案や請求案内をすべき事案等が多数発生したことが判明をし、お客様及び関係者の皆様に御迷惑と御心配をおかけいたしましたことを深くおわび申し上げます。
保険金等のお支払いは、生命保険事業における最も基本的かつ重要な業務であるとの認識に立ち、これまで以上に各社の経営者が責任を持って業務運営体制を強化し、信頼回復に取り組んでまいります。
本日は、まず、生命保険協会長としての立場で、本件に係る業界全般の取り組みについて、その後、第一生命の取り組みについて御説明を申し上げます。
初めに、生命保険協会としての取り組みの全体像を御説明させていただきます。
まず、現状認識として、生命保険業界における保険金等のお支払いに関する対応につきまして、ケース分けをして御説明申し上げます。
保険金等の支払いに関する対応につきましては、お客様から御請求があるケースとないケースに大別されます。また、御請求いただいたケースでは、さらに二つのケースに分類でき、大きく三つのケースに分けられます。
一番目のケースは、お客様から御請求があったものの、保険会社による事実関係の調査、確認が不十分であったこと等を原因として、本来お支払いするべき保険金等が不払いとなったケースでございます。いわゆる不適切な不払いでございます。このケースにつきましては、平成17年に、金融庁から全社に報告徴求命令が発出されております。各社とも、平成12年度から16年度の過去5年分の検証結果について公表を行っており、不適切な不払いについては対応を終了しております。
二番目のケースは、お客様から御請求があり保険金等をお支払いしているものの、一部支払い金額に不足が生じているケースでございます。支払い漏れと呼んでおります。これは、事務的なミス等を原因として、入院給付金の支払い日数や手術給付金の支払い額等に不足が生じているものでございます。主たる原因はヒューマンエラーでございますが、各案件をより入念に点検することにより発見可能なものでございまして、点検機能が不十分であったと考えております。
最後に、三番目のケースは、保険会社からの請求案内が不十分なケースでございます。案内不足による請求漏れと呼んでおりますが、これは、お客様から入院給付金や手術給付金の御請求を受けた場合で、請求時の診断書の記載事項から類推すると、ほかに御加入いただいている商品についてもお支払いができる可能性があるケースでございます。このケースにつきましては、こうした可能性を踏まえた請求の御案内が、残念ながら、これまで十分に徹底できておりませんでした。
今回の金融庁への報告におきましては、各社とも、ただいま御説明をいたしました二番目と三番目のケースに係る事案につきまして、平成13年度から平成17年度の過去5年分について検証の上、4月13日に報告を行っております。
なお、二番目のケースにつきましては、各社、該当のお客様を特定の上、順次追加のお支払いをしているところでございます。
一方、三番目のケースにつきましては、大半の会社で検証をしている途上でございまして、おおむね9月ごろまでに追加してお支払いすべき契約を特定の上、遅くとも11月ごろにお支払いを完了する予定でございます。
こうした案内不足による請求漏れが生じた背景でございますが、私どもは、お客様からの保険金等の御請求に対して、迅速かつ正確に保険金等をお支払いすることを第一義とした事務基準、体制を構築しておりました。具体的には、生命保険会社は、保険金等のお支払いに当たり、お客様からの御請求に対して、請求書類が到着した日から五営業日以内等の一定期間内にお支払いすることをお約束しております。お支払いを担当する部門におきましては、モラルリスク対策を適切に講じつつ、迅速かつ正確に保険金等をお支払いすることを第一義とした事務基準、体制を構築してまいりました。
しかしながら、今振り返りますと、残念ながらお客様に漏れなく御請求をいただくということについての徹底が欠けており、この点についての意識改革が求められていると考えております。
今後は、お客様からの御請求に基づく迅速かつ正確なお支払いに加え、案内不足による請求漏れをなくすためのお客様への情報提供や体制整備の実施等、お客様に漏れなく御請求をいただくというお客様の視点に立った意識改革を進め、必要な施策を講じてまいります。
現在、生命保険協会では、利用者保護の体制整備をより一層推進していくために、各種ガイドラインの見直し検討を行っております。ガイドラインに基づく各社の具体的な対応例としては、保険金等のお支払いに関するガイドブック等を活用して、保険金等をどういった場合にお支払いができるのかをお客様にお伝えすること等が挙げられます。こうした情報提供によりまして、お客様に漏れなく御請求いただける環境づくりに努めたいと考えております。
また、保険金等の請求について、御請求の際にいただいた診断書等の情報からその御請求とは別の保険金等をお支払いできる可能性を判断できる場合に、御請求を促すような体制整備に努めてまいります。
続きまして、第一生命の取り組みを御説明させていただきます。
保険金等のお支払いにつきましては、御契約の出口に当たりますが、この出口のみではなく、御加入時に当たる入り口、そして御契約期間中の接点でもある中間も含めた取り組みについて、御説明を申し上げます。
まず、御加入時、すなわち入り口の対応でございますが、営業職員が、契約概要や注意喚起情報をもとに、保障内容や保険金等が支払われない場合等の重要事項をしっかりと御説明し、御契約内容についてお客様により一層御理解いただけるよう努めております。
また、保険金のお支払いに係る重要なポイントをまとめた冊子「保険金などのお支払いについて」というものを作成し、この冊子をすべての御契約者にお配りし、御請求いただける保険金等につきまして御確認をいただくこととしております。
御契約期間を通じた中間でございますが、お客様対応体制の強化に努めており、御加入後の営業職員による定期的な御説明やそのフォロー、郵送による年一回のお知らせ等を通じまして、御契約内容を御確認いただく機会を充実させております。
生命保険契約は非常に長期にわたることから、少なくとも1年に一度は、お客様御自身に御加入契約の内容及びどのような場合に保険金等が支払われるかを御確認いただくべく、当社からの情報提供が必要と考え、実施をしております。
最後に、出口に該当します支払い時等の対応でございます。
まず、お客様にわかりやすいチェックシートをお渡しし、御自身で他のお支払い事由に該当していないかどうか御確認をいただくことをいたします。また、万一お支払いができないと判断された場合、お客様に御負担をいただいた診断書費用相当額を当社負担とさせていただき、御請求をしていただきやすい環境づくりをしてまいります。
このように、御契約時からお支払い後のさまざまな局面におきまして、お客様に対し適切な情報を御提供するとともに、お客様御自身に御加入されている契約内容を確認いただく取り組みを行っております。
そのほか、お支払いに関する照会や異議申し立て等の窓口についても充実をさせております。
第一生命の取り組みに関する御説明は以上でございます。
生命保険会社は、死亡、病気、老後などの各種経済的なリスクに備える保障手段を提供することで、国民の生活保障システムの一翼を担っております。満期保険金等を除く死亡、高度障害保険金だけでも年間3兆円以上をお届けしており、医療保障であります入院、手術給付金等を合計いたしますと、年間4兆5000億円、1日当たり120億円を超える保険金等が国民の皆様の生活に役立てられております。
保険金等のお支払いは、生命保険事業における最も基本的かつ重要な業務であるとの認識に立ち、また、お客様に漏れなく御請求をいただくという意識改革を行うことで、再発防止に向けた業務運営体制を強化し、信頼の回復に取り組んでまいります。
以上をもちまして、私からの意見陳述を終わらせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)
○伊藤委員長 ありがとうございました。
以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
これより参考人に対する質疑を行います。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山本明彦君。
(中略)
次に、佐々木憲昭君。
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
契約どおり保険金を払われないということであれば、これは契約違反ということになるわけでありまして、やはり、業界として、あるいは生保の会社としての根本が問われているというふうに私は思います。
2005年の明治安田生命の不適切な不払いを発端にして、それ以外にも不払いがあったという事態、これが判明をする。そして、生保会社全体に、金融庁が再調査を要請したわけであります。締め切りは4月の13日ということでありましたが、38社に対して、追加的支払いを要する保険金等の件数及び金額について報告徴求を受けたと思いますが、報告をした会社というのは、その38社のうち何社でありますか。それから、報告しなかった会社は何社か、お答えをいただきたいと思います。
○斎藤参考人 お答えをいたします。
生命保険協会といたしましては、今般の金融庁の報告徴求命令といいますのは各個別会社に発出されたものでございまして、取りまとめをするという立場にはございませんので、大変申しわけございませんが、全体の数字については把握をしておりません。
○佐々木(憲)委員 これだけ重大な問題になっているんですから、どのような実態になっているのか、せめて報告した会社は何社かぐらいは掌握していただきたいと思うんです。
金融庁の報告によりますと、報告がなされたのは極めて少数であります。圧倒的多数は報告がされておりません。それは、期限までには間に合わない、こういうことでありました。これは、第一生命の場合はいかがでしょうか。
○斎藤参考人 お答えをいたします。
私どもは、4月13日に報告はさせていただきました。
ただし、先ほどの第三の分野、案内不足による請求漏れ、この分野については、4月13日までに、大変遺憾ながら報告をするに至っておりませんでした。
○佐々木(憲)委員 報告が十分になされておりませんで、調査中というところが圧倒的多数でありまして、6月末ですとか、あるいは9月末、こういうことになっているわけです。それだけ事態が深刻であるというふうに私は思います。
具体的にお聞きしますけれども、保険に加入してから支払いまでの間には、相当長い期間というのがあります。個人でいうと、契約したときにどのような内容であったかというものを、うっかり記憶がなくなったり、忘れてしまうというようなことがあると思うんですね。請求漏れというのはそういう中で発生するわけであります。
基本的な考え方ですが、それは個人の責任なのか、それとも会社側にそれをフォローする責任というものがあるのか、どちらに基本的な責任があるとお考えですか。
○斎藤参考人 お答えをいたします。
私ども、この問題につきましては、長らく私どもの会社で、第一生命で、御契約者第一主義ということを標榜してまいりました。御契約者第一主義という言葉が、お題目ということではなくて、お客様に対するコミットメントであるというふうに私どもは言い聞かせておりまして、コミットメントだとすれば、今御指摘のような請求漏れをお客様に起こしてはならないというふうに思い、先ほど申し上げましたとおり、意識改革をして、今後、これ以降、お客様に請求漏れを起こしてはならないということを基本に据えた施策を展開しているところでございます。
○佐々木(憲)委員 午前中視察をいたしました明治安田生命では、追加情報による支払い可能性のあるものは、17万7800件ほどありました。契約ベースでいうと12万件だそうです。この全件に案内を出しているわけです。支払われる可能性がありますよという案内ですね。具体的に、そのうち、払うことになりそうだというのは、9万件ぐらいあるというふうにお話をされておりました。
そこで、第一生命の場合は調査未了件数が約14万件あるというふうに聞いておりますけれども、このうち何件に案内を出されているのか、それから、支払わなければならないと想定されるのは何件ぐらいか、教えていただきたいと思います。
○斎藤参考人 お答えをいたします。
私ども、調査未了は、4月13日の時点で14万件余りという形で発表させていただいております。この多くの部分が通院特約でございますが、これについて、私どものアプローチといたしましては、さっき申し上げましたとおり、これを含めて6月末までに請求案内をすべき御契約を特定するという方向で、現在進めております。
これは、いろいろな方法としては、例えば通院特約についてはかなりの数についてお出しをできるという体制にあるわけでございますが、実は、私どもは、お出しをした後のお客様の反応というものをやはり判断して、これを分割してお出しをするという必要があるというふうに思っています。
十数万の発信をして、お客様から、十数万の方から照会の電話が来る、そういうことの対応が十分できるかどうかということを判断して、これを分割してやっているところでございます。したがいまして、現時点でそういうアプローチをとっているがゆえに、他社さんに比べてあるいは発信件数が少ないという事情はございますが、最終的なターゲットまでには、お客様との間で極めて丁寧な対応をしていけるというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 専門的な知識を持っている職員が私は大切だと思うんです。
先日も、当委員会で、私は山本大臣にお聞きをいたしました。この問題は大変重要であると。といいますのは、10年ほど前ですけれども、生保の内勤者は9万9487人、これが10年後には7万5278人と、2万4000人余り減っているわけです。それから営業職員、これは外回りの職員ですけれども、10年前は36万8561人、それが21万1522人、10年間で約16万人近くマイナスになっているわけです。これは大変重大な減少だと私は思うんです。
保険の商品の中身が非常に複雑化する、専門的に説明をしなければならない能力のある人が求められている、にもかかわらず、業界全体としてこれだけの数が減少している。先ほどもお話がありましたけれども、第一生命の場合も減っている。そうなりますと、お客様との関係で、非常に説明不足、あるいは親切な対応というものがおろそかになる、こういう事態を招きかねないと私は思うわけであります。
今後、職員の、これは質の向上ももちろんあるとおっしゃりたいんでしょうけれども、問題は、これはフェース・ツー・フェースの関係ですから、やはり一定の数が必要なわけでございます。そういう職員の数の確保、あるいはそれをふやしていく可能性といいますか展望、この点についてお聞かせいただきたいと思います。
○斎藤参考人 お答えいたします。
まず、内勤職員もかなりの数が減っていることは事実でございます。ただ、今回の事案にかんがみ、保険金の査定担当者、これについての人員減というものはこれまでございません。
それから、全体の運営といたしまして、おっしゃるとおりフェース・ツー・フェースでございますので、できる限り、一人の営業職員が受け持つお客様の数というものが一定数以上にはならないような形で営業職員の数がある程度確保できるということが大切だと思い、そういった形で努力はしているところでございますが、一方で、今日まで、主にマーケットの事情がございます。バブル崩壊以降の金利の低下ということで、金利の低下ということは、保険料を引き上げざるを得ない、そういったことにもつながりまして、そういう環境悪というものが主因として営業職員の数が減少してきたことは事実でございます。
一方で、お客様に対する対応といたしましては、この部分については、コールセンターというものを充実して、お客様からコールセンターに直接電話をしていただくことによってすべてのお手続が完了できるという方法も別途とっているところでございます。
○佐々木(憲)委員 最後に確認をしたいんですが、協会の会員会社がこれまで国民政治協会に政治献金を行っているわけですが、2006年、2007年も同様に行っているのかどうか、その金額は幾らか、教えていただきたいと思います。
○斎藤参考人 お答えいたします。
生命保険協会として政治献金をしているということはございません。また、私ども会長会社として、他社さんがどうされているかということについても把握をしているところでもございません。
○佐々木(憲)委員 日本経団連が要請をしているということは、各協会を通じて、銀行の場合も行われておりました。
では、具体的に聞きますが、第一生命としては2005年に867万円の献金を行っていますが、2006年、2007年も同様に献金をされているのか、その金額は幾らか、教えていただきたいと思います。
○斎藤参考人 お答えをいたします。
政治献金の実施に当たりましては、政治資金規正法等の趣旨を踏まえまして、社会情勢、経営状況等を総合的に勘案した上で行っております。
2006年についても行っておりまして、993万円の政治献金を実施してございます。なお、2007年については、本日までのところ実施をしてございません。
以上です。
○佐々木(憲)委員 私は、契約者に対して不払いを起こしているという状況のもとで、自民党というか政権党には献金する、こういう構図が果たして社会的に信用をかち取ることになるのかどうか、これはよく検討していただきたい。これは要望であります。最後に申し上げて、終わりたいと思います。