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税制(庶民増税・徴税), 金融(銀行・保険・証券) (障害者控除, 保険会社の不払い)

2007年04月11日 第166回 通常国会 財務金融委員会 【387】 - 質問

障害者控除適用問題、保険会社の不払い問題について質問

 2007年4月11日、財務金融委員会で、佐々木憲昭議員は、障害者控除の適用の問題と保険会社の不払い問題についてとりあげました。

 2月28日の財務金融委員会に引き続き、障害者控除の適用について、厚生労働省は、障害者手帳のない高齢者への障害者控除の適用について、あれこれの条件をつけて「狭く解釈することは、問題」と答弁しました。
 佐々木議員が、一部自治体で障害者控除の「寝たきり」などの条件をつけているのは問題だと指摘したことに対し答えたものです。
 障害者控除は、納税者本人や扶養家族などが障害者の場合、所得税・住民税の所得控除ができるものです。
 障害者手帳がなくても65歳以上の高齢者で、市町村長などによって「障害者に準ずる」と認められた人は、この控除を受けられます。
 障害者と認定されれば、125万円の住民税の非課税限度額も適用になります。
 佐々木議員は、障害者控除の適用について「(一部自治体で見られるように『寝たきりでなければダメ』として申請すら受け付けないのは狭い解釈ではないか」とただしました。
 中村吉夫厚生労働省障害福祉部長は、「身体障害者に準じる方については、障害の程度の等級表で、3級から6級と同程度の障害の程度であるということが基準とされている」と答弁しました。
 「(寝たきりでないとダメというような)ご指摘にあったような形で、狭く解釈するということは問題」と答えました。

 次に保険会社による不払い問題について質問しました。
 多くの生保・損保に対し、行政処分が下されていますが、いまだに全容が明らかになっていません。
 佐々木議員は、具体的な事例も示しながら、不払い、払い漏れに顧客が請求して初めてわかるとか、あるいは顧客が請求しなかったために不払いになってしまったという、保険会社の姿勢を厳しく批判し、金融庁に具体的な指導を正しました。
 これに対し、山本金融担当大臣は、保険の給付は、申請や請求が前置主義とされている原則があるとして、「迅速かつ適切な顧客対応という意味で、いわゆるしゃくし定規な契約の解釈というようなものを盾に不払いをするということは絶対許されない、そういう対応をしていきたい」と答えました。
 また、佐々木議員は、一連の事態を招いた要因として、保険商品の複雑化、多様化という問題があると指摘。これに対して、山本大臣は「多様化、複雑化への対応が保険会社等はおくれていた」と答弁。
 佐々木議員は、保険商品の複雑化、多様化の背景にあるのは、規制緩和あるいは自由化の問題があると指摘。会社側の責任は重大であるが、行政も含めて、事態を招いた背景にどういうことがあったのかを深く分析して対応する事が大事ではないかと正しました。
 さらに、競争激化のなか、各社のリストラ競争、コスト削減の結果、契約者と直接対話をし、商品内容を説明する外務員が大幅に減っています。
 佐々木議員は、東京海上日動の事例を示し、外務員が培ってきた顧客との信頼関係あるいは地域のネットワークを断ち切ってしまう、契約者への説明義務が問われているときに、外務員をリストラするのは、非常に問題があるのであるのではないかと質問。
 山本大臣は、アメリカの地方銀行は、人をふやさなければディテールができない、ロンドンにおける雇用の拡大はほとんど金融機関だという事例を示しながら、「生保、損保を通じまして、いわば情報の非対称を補完すべく、人材の育成や要員というものについて重要視していただけるような業界であってほしい」と答えました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 私は、2月28日の財務金融委員会で障害者控除の問題を取り上げました。障害者手帳がなくても、65歳以上の高齢者で、障害者に準ずると市町村長などの認定を受けた人は障害者控除を受けることができるというのがこの制度の内容であります。きょう来ていただいている厚生労働省の中村障害保健福祉部長は、要介護認定も判断の材料の一つというふうに述べ、申請があれば受け付けるというふうにお答えになったわけであります。
 ところが、この制度は一般によく知られておりません。知らなければ申請もできないわけですね。したがって、このような制度があるということを住民にお知らせするというのは大変大事だと思います。
 例えば、私が知っているある市では、要介護認定を受けている方々にお知らせを出しております。その市では、要介護認定を受けている人が約1万人おります。そのうち、障害者手帳を持っている方を除いて、約6200人にお知らせを出しました。平成18年分の確定申告等をされる要介護認定高齢者の皆さんへ、こういうお知らせであります。申請を受け、審査した結果、3245人が新たに障害者控除を受けられると認定されたそうでございます。これは大変喜ばれているわけですね。
 私は、これは自治体としてなかなか親切な対応だと思いますが、尾身大臣はこういう親切な対応をどのように思われますか。
○尾身財務大臣 これは、要介護認定を受けている者が、市町村によって認められた場合に今の障害者控除の対象になるということでございまして、この点については、市町村において、自己の責任において周知徹底をして、しかるべき対応をしていただきたいというふうに私どもは考えております。
○佐々木(憲)委員 自己の責任において親切な対応をされている自治体があるわけでございます。今、私が例に挙げましたのは、岐阜市の例でございます。
 厚労省に改めて確認をしたいんですが、この例でも明らかなように、寝たきりでなければ障害者控除を受けられないというものではないということでございます。つまり、寝たきり度というか、障害の重い、A、B、Cと重くなっていくわけですけれども、最初から、BでなければならぬとかCでなければならぬというように、寝たきりでなければ一切対象にならないというものではない。この点、もう一度確認しておきたいと思います。
○中村政府参考人(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長) お答え申し上げます。
 所得税法等におきまして、障害者控除の対象となる方につきましては、児童相談所等で知的障害者と判定された方、身体障害者手帳を有している方、それから、年齢65歳以上で、これらに準ずるものとして市町村長等の認定を受けている者などとされております。
 このうち、身体障害者に準じる方につきましては、身体障害者の障害の程度の等級表で3級から6級と同程度の障害の程度であるということが基準とされております。例えば障害六級とは、下肢の肢体不自由の場合、一下肢の足関節の機能に著しい障害がある場合というふうにされております。
 市町村において認定する場合には、申請者から提出された資料等に基づきまして、個別に、先ほど申し上げました基準に該当するかどうか判断されるべきものでございます。
○佐々木(憲)委員 もう少し確認をしたいんですが、寝たきりでなければならぬということで最初から申請を受け付けないとか、あるいは、寝たきりじゃなきゃだめですよというようなことを最初から言うというのは、これは非常に、今の説明からいうと、狭い解釈になりますね。
○中村政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど御答弁いたしましたように、身体障害者に準じる方というのは、身体障害者の障害の程度の等級表で3級から6級と同程度の障害の程度であるということが要件になっておりますので、御指摘のありましたような形で狭く解釈するということは、ただいま申し上げました基準に照らして、やや問題があるかなというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 いろいろな自治体の審査の基準というのがありまして、どうも私は、これは不統一ではないかと思っているんですね。例えば東京都内では、BやCのような特別障害、寝たきりか、あるいは寝たきりプラス重度の障害しか対象にしていないというような区がありまして、我々が調べたところによりますと、港区、江戸川区、品川区、江東区、渋谷区。こういう事例があります。
 今御説明ありましたように、狭い解釈というのは私は間違っているというふうに思いますし、また、そういうことが今の説明でも明らかになったというふうに思っております。
 次は、保険会社の保険金不払い問題でございます。
 保険会社の保険金不払い問題は国民の怒りを大変呼んでおりまして、2005年に、明治安田生命の不払い問題に対する行政処分がありました。それ以後、生保の不払いはもとより、損保の自動車保険、医療保険の第三分野、つまり、がん保険、それから火災保険、こういう分野でも不払い問題が発覚して、多くの生損保に対し、行政処分が下されているわけです。しかし、いまだに全容が明らかになっておりません。
 そこで確認いたしますが、生保、損保の各分野ごとに、これまでの不払い事案の件数それから不払い総額、これに対する行政処分の内容、これをお答えいただきたいと思います。
○山本金融担当大臣 保険業界におきましては、これまで、保険金等の支払い管理体制及び経営管理体制に問題が認められたところでございます。特に、一昨年来、生保会社、損保会社におきましては、保険金等の不払い等といった利用者保護に欠ける問題が明らかになってございます。これは、保険事業に対する保険契約者の信頼を損なうものでございまして、極めて遺憾でございます。
 生保について申し上げます。
 17年10月に、不適切な不払いが多数認められたこと等から、明治安田生命に対し、一部業務停止命令等を発出いたしました。また、このほか、31社につきましても不払い事案が認められております。
 さらに、保険金等の請求を受けながら、本来支払うべき保険金等の一部を支払っていないものが少なからずあり得ることが判明いたしました。このため、保険金等の追加的な支払いを要するものの件数、金額等につきまして、4月13日までに報告を行うよう求めているところでございます。
 損保について申し上げます。
 付随的な保険金の支払い漏れが26社で認められたことから、17年11月に業務改善命令を発出いたしました。その後も、検証が完了していないと認められましたことから、18年11月にさらに報告を求め、遅くも本年6月までに調査が完了するとの報告を受けております。
 第三分野商品に係る不適切な不払いにつきましては、本年3月14日に10社に対しまして業務改善命令を発出し、うち6社につきましては、一部業務停止命令を発出いたしました。この業務改善命令に基づきまして、4月13日に改善計画が提出されることになっております。
 また、火災保険につきまして申し上げます。
 当局の要請に基づきまして、損保各社が、19年3月を目途としまして、保険申込書に記載された契約データ等をもとに、建物構造級別の適用等、誤りの蓋然性の高い契約を抽出して調査を行い、さらに今後1年程度かけてすべての契約について確認をいたしまして、問題がある場合には適正化を図っていくというようにしていると承知しております。
 いずれにいたしましても、今後、生損保各社の報告書等を十分に精査、分析いたしまして、必要に応じ、適切に対応してまいりたいと考えております。
○佐々木(憲)委員 ほとんどの会社で、驚くほど多くの不払いが発覚しているわけであります。
 大臣、これはまだ全体像というものが最終的には明らかになっていない段階だと思うんですが、いつごろまでに全体像をはっきりさせて、その対応策、処分というものを最終的に明確にするのか、その見通しをお聞かせいただきたい。
○山本金融担当大臣 まず生保につきましては、4月13日に報告をいただくことになっておりまして、これで大体の把握ができるように思っておりますし、また火災保険につきましては、今後1年程度かかるというように考えております。
 そうした報告を精査いたしながら、また適宜適切に、全体像について、わかり次第御報告できるかと思っております。
○佐々木(憲)委員 これは何か泥沼のような感じがしないでもないわけで、一企業の問題ではなくて、業界全体にかかわる問題だと私は思っております。これだけ多数の契約者に被害を与えているわけですし、保険金の不払い、保険料の取り過ぎというものまで発生しておりまして、保険に対する国民の信頼は地に落ちたと言わざるを得ないわけであります。
 山本大臣にもう一度聞きますが、信頼を回復するということが大事だと思うんです。そのためには、全容を解明するということ、それから、契約者に謝罪が必要だと思うんですよ、それから、きちんと返金する、返還する、その上でしっかりした再発防止策をとる、こういうことが大事だと思いますが、お考えをお聞かせいただきたい。
○山本金融担当大臣 適時適切な保険金の支払いというものは、保険会社の最も基本的かつ重要な責務の一つでございます。保険金の不払い等の問題が生じていることは極めて遺憾でございます。
 一般論で申し上げれば、こうした不払い等の問題につきましては保険会社側に落ち度があると考えられることを踏まえまして、手紙等において保険会社から契約者へのおわび等がなされているものと承知しております。また、不払い等となっている保険金につきましては、十分に事実確認等を行った上で、支払い可能なものにつきましては支払うなど、迅速かつ適切な顧客対応を行うことが大事でございます。
 金融庁といたしましては、報告徴求等によって不払い等の実態把握に努めておりますが、問題が認められる場合につきましては、業務改善命令等においてしっかりとした対応を進めております。特に、判明した保険金の不適切な不払いにつきましては、迅速かつ適切な顧客対応を図るための体制を整備することを要求しておりますし、また、保険募集業務や保険金支払い業務等の顧客対応に係るすべての業務の検証を行った上で、適切な再発防止策を策定することを要求しております。
 いずれにしましても、金融庁としましては、各保険会社におきまして、入り口である保険募集から出口である保険金支払いまで、保険契約者等の保護の観点から、業務全般を見直し、適切な業務運営に努めていただきたいと考えておるところでございます。
○佐々木(憲)委員 言っていることは、それはそれとして、方向としては正しいんだろうと思うんですが、なかなか、実際に各保険会社が自浄能力を発揮してやっているかどうか、これが問題なわけであります。問題が指摘されて、それで、確認しました、何件で幾らですと言われても、その後からまた出てくるわけですね。こうなりますと、これはもう体質的にどこか問題があるんじゃないかと言わざるを得ないわけです。
 こういう実態に対して、金融庁としては、顧客対応というのが非常に大事だと思うんですが、全体の件数が一体どうなっているのかについて、個々の、会社側と契約者側の対面によって具体的な調査を行うということが必要ではないかというふうに思うんです。そうしないと全容が解明できないんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
○佐藤政府参考人(金融庁監督局長) 全容をできるだけ早く解明するということは大変重要な仕事であると思います。現在、私どもでは、行政処分等を打ちました場合には、必ず、その再発防止体制、保険金支払い管理体制それから募集体制、あらゆる面での顧客の信頼をかち得るような体制整備を求めるということでございますけれども、具体的な不払い等が想像されるようなケースについて、私どもの方で、報告徴求をかけたり、あるいは調査の要請をしたりということをしておるわけでございます。
 各社における具体的な不払い事案の調査の仕方でございますが、不払い事案等に関する調査方法、これは保険会社からヒアリングしたところによりますと、標準的には、おおむね以下のような手順をとっているということでございます。
 まず第一に、保険会社において、支払い請求書そして医師の診断書、こういった書類の確認をする、あるいはコンピューター等で一定の条件に該当するものを抽出するといったことで、不払い等の可能性のある事案をまず抽出するという作業がございます。その上で、これらの契約について、契約者に支払い等の可能性のある旨の案内の文書を郵送するという手順をとりまして、その上で電話等で確認をする。これがおおむね各社ともやっているような標準的なアプローチでございます。
 これらのほかに、御指摘いただきましたような、案内文書の郵送後に個別に訪問することによって契約者に対して直接確認する、こういう調査をやっている会社もあると聞いております。
 それから、火災保険料の適切性の調査につきましては、この火災保険、多くは1年単位で更新されるケースも多うございますので、そういった場合には、契約更改時に契約者を訪問して契約内容を確認するといった会社もあるというふうに聞いております。
 すべての件数を対面で調査すべきではないかという御指摘につきましては、そもそも調査対象の件数が非常に膨大であるということもございますので、まずは保険会社が全体としての調査の実効性を確保するということ、あるいはできるだけ早く調査を一通り終えるという要請、こういった点も踏まえて、具体的な方法を責任ある立場で判断してほしいというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 正確に早くというのが非常に大事だと思うんですが、どうも各保険会社の事実確認というのは非常に不十分で、不正が判明した後も契約者に対して説明がほとんどなく、謝罪もないというようなことが指摘されております。
 私、何人かの被害者から具体的な事例をお聞きしておりますが、例えば、具体的に言いますと、日本興亜損保の火災保険の契約者の場合ですが、この方は、5年前に新築を購入し、火災保険の契約をした。昨年、報道によって火災保険の保険料の過払いなどの不正行為があることを知って、保険会社に電話連絡をした。そのとき、火災保険の契約は時価ベースとなっているのに、再調達価額ベースで保険料を算出して、過大に保険料を払っていたということがわかった。交渉の上、契約を再調達価額に変更することになって、書面で修正を行うことになった。書面を郵送してくるだけで、説明も謝罪もなかった。しかも、それまでの払い過ぎた保険料について、返すのかどうか、何も言ってこないという事例。
 それから、三井住友海上火災の契約者の場合、14年前に新築を購入した。17年間の火災保険を契約しました。昨年末、新聞記事で、平成5年に省令準耐火構造という分類が制定されたということを見た。保険料が、支払った額の半額ほどになっていたということを後で知った。三井住友海上に問い合わせたところ、保険の料率はしょっちゅう計算し直されるので、制度が変わっても契約者には知らせないのが原則だ、こう言われた。この契約者は大変怒っているわけです。
 この準耐火構造の制定というのは、料率計算上の問題ではなくて、それまで木造と鉄筋の二分類しかなかったそういう矛盾を、建築性能の実態に合わせて改めたわけです。新しい社会制度である。当然、その制度を切りかえて契約を改めるというのが当たり前じゃないのかといって怒っているわけです。
 このケースでは、耐火基準の改定があり、それに従って契約内容も変わっているにもかかわらず、損害保険会社は、契約者に連絡もしない、保険料を算定し直すこともしない。これは新聞にも報道されていますけれども、損保は、改定された保険料率の適用は消費者側からの申請がないとできないんだ、こう言って居直っているというふうにも書かれているわけです。
 これは、私は非常におかしいんじゃないかと思うんですね。損害保険会社というのは、こういうふうに、保険料自体が変わっても連絡もしない、契約者が請求しなければ訂正もしない。そういうことなのか、そういう対応しかしないのかということになるわけですね。
 金融庁は、保険会社への要請の中で、先ほどの大臣の答弁にあったように、顧客への親切な対応、この点検をしなさいと言っているわけですね。それから、不正な保険料が判明した場合は、当然、損害保険会社が契約者に謝罪し、再契約のためのお知らせをする、こういう対応をすべきだと思うんです。
 契約者への適切な対応というのは、大臣、そういうことを求めているんじゃないんでしょうか。
○山本金融担当大臣 おっしゃるとおり、一般論で申し上げますと、募集という入り口から支払いという出口、その間に商品管理という大事なことがございます。その間に、いわば顧客と会社側には情報の非対称、募集から支払いまでの期間が生保、損保ともに相当期間経過しますので、個人でいえば、うっかりして忘れていただとか記憶にないだとかいうことがございます。そういったことをフォローするのは会社側であろうというように私どもは考えております。
 その意味におきます平等感というものをこれからどうつくっていくか。特に、今回の業務改善命令の中には、支払い管理体制の中で、苦情処理体制をしっかりしろ、その上でさらに不服申し立て体制もしっかりしろというようなことも申し上げておるわけでございまして、今後、こうしたことのないような、損保、生保ともに構造的な改善をお願いしたいというように考えております。
○佐々木(憲)委員 不払い問題のお粗末な対応というのは、今私が紹介しただけじゃないんです。ほかにもいろいろありまして、例えば第一生命保険は、三大疾病保険の不払い、あるいは払い漏れについて自己検証をしたところ、約1800件の該当する事案があった。そのうち約500件の支払い漏れを確認し、229件保険金を支払ったとみずから公表しているわけです。ことしの1月です。
 そもそも、不払い、払い漏れというのを、顧客が請求して初めてわかるとか、あるいは顧客が請求しなかったために不払いになってしまったんだ、こういう態度は私は非常にけしからぬと思うんですね。契約上の支払い要件を満たしているものであれば、当然その契約者に説明し、支払いの手続をするというのは当たり前なわけであって、該当する事案があったと確認したら、それをしっかりと契約者と確認した上で適切に対応する、適切に支払うというのは当然だと思うんですけれども、金融庁としては、そういう具体的な指導というものをどのようになさっているのか、お聞かせいただきたいと思います。
○山本金融担当大臣 佐々木委員御指摘のように、保険における給付については、申請や請求が前置主義とされている原則は、これはあろうと思います。しかし、例えば自動車事故のように、事故があったことが確認されていて、にもかかわらず付随的条項について告知されていなかったというような話である場合に、当然保険会社側からは、細かな点でございますし、それは告知しようがしまいが、申請しようがしまいが、やはりそこにおいては適切な処置というものが前提になろうという商品設計だろう、私どもはそう考えております。
 したがいまして、顧客に対する適切なサービスをしっかりやっていただくために、迅速かつ適切な顧客対応という意味で、いわゆるしゃくし定規な契約の解釈というようなものを盾に不払いをするなんということは絶対許されない、そういう対応をしていきたいと思っております。
○佐々木(憲)委員 金融庁にお聞きしますけれども、今まで生損保で明らかになった不払い金額があると思うんですが、そのうち、実際に支払いが済んでいるものというのはどのくらいあるんですか。その数字は把握されていますでしょうか。
○佐藤政府参考人 各社において、確認できたものから順次支払いを実行しているというふうには聞いておりますけれども、その定量的なデータを現在持ち合わせておりません。申しわけございません。
○佐々木(憲)委員 実際にどの程度払われているかということはぜひつかんでいただきたいと思います。ある程度の期間がたったときにどの程度支払われたか、これは確認すればすぐわかると思うので、その報告はまた別途いただきたいと思いますが、いかがですか。
○佐藤政府参考人 しかるべき節目で、まとめて御報告をさせていただきたいと思います。
○佐々木(憲)委員 今回のこういう一連の事態を受けて、一部の会社では、再発防止策ということで、保険商品の簡素化の方向で見直しを検討しているというふうに聞いております。
 大臣にお聞きしますけれども、簡素化をする理由といいますか目的、これをどのように把握されていますか。
○山本金融担当大臣 多様化や複雑化が保険商品の傾向でございますが、それに商品管理体制が対応できなかったということで、個社において、不払いの要因にそこをとらえれば、簡素化して、管理ができるというような体制にしていこう、いわば、自分の会社の特質に応じて商品設計をしていくというような再発防止策の一環でなかろうかというように思っております。
○佐々木(憲)委員 保険商品が多様化、複雑化するということは、契約者も理解できないけれども、契約をとりに行く保険会社の側、勧誘する側、あるいは代理店も、理解できないで販売しているという事例もあると聞いております。
 例えば、自動車保険の人身傷害保険の場合、歩いていたときに事故に遭っても保険ができる特約というのがあるそうですね。これは、あいおい生命であるようですけれども。よく理解できずに勧められるままに契約すると、こんな特約というのは忘れてしまう、先ほど大臣がおっしゃったように。当然、代理店も、歩いているときの事故まで聞くことは少ない。実際の請求が漏れる可能性もあるということだと思います。
 さまざまな付加価値といいますか、商品にいろいろな特約を二重、三重につけていきますと、一層複雑になっていくわけです。
 例えば、このことについて毎日新聞の社説がこういうふうに書いたことがあります。損害保険業界においては、自由化以降、商品開発競争が激化し、特約数が一社で千を超えるなど、保険商品の内容が複雑、多様化した。このため、システムを中心とする新商品の支払い部門の整備がおくれた。また、職員、代理店の知識も追いつかず、契約者に対する説明も不十分であった。このことが大量の支払い漏れにつながった。こういうふうに社説で書いているわけです。
 これまでの一連の事態を招いた要因として、保険商品の複雑化、多様化という問題があると私は思いますが、大臣はどのように認識されていますか。
○山本金融担当大臣 委員御指摘のとおり、多様化、複雑化、それに対して、多くの損保会社は代理店制度を構造的にとっております。代理店制度である限りは、保険会社とまた別会社で商品が売られるという事態になっております。
 その点におきましての研修不足あるいは知識不足、そういったものについて認識を今回していただきましたので、そうした面について十全を果たすべく、研修制度や、長期にわたる資格的な観点から、さらに強化した販売体制をとるというように約束もちょうだいしておりますし、そういったことからして、多様化、複雑化への対応が保険会社等はおくれておったということに対して、今回それに追いついてくれるというように期待しておるところでございます。
○佐々木(憲)委員 これは、私は、保険会社あるいは保険業界の責任は非常に大きいと思いますが、同時に、複雑多様な商品を可能にした背景にある規制緩和の問題あるいは自由化の問題というのが、もう一度見直される必要があるんじゃないかというふうに思っております。
 金融庁、当時大蔵省ですけれども、保険会社の新しい商品を認可制から届け出制に規制緩和しましたね。当然、複雑な商品が、競争が激化し、また、アメリカの資本が入ってくる中で、次々と開発されていく。したがって、今日の事態が起こることを予測して対応すべきだったのではないかという感じを私は持っております。
 1995年の保険業法の改正のときに、保険商品及び料率が認可制から届け出制に緩和されました。当時から、保険会社の引受拒否あるいは差別的な引き受け、料率の乱高下、保険料の支払い遅延等の弊害、こういうことが指摘されておりました。
 大蔵省としては、その当時、どういうふうに対応していたかということなんですが、1995年3月17日の大蔵委員会、当時の山口公生大蔵省銀行局保険部長がこういうふうに言っているんです。
 そういったことを十分に私どももよく考えまして、あくまで料率、約款等の自由化につきましては、基本的には、自由な方向、規制緩和の方向に持っていくわけでございますけれども、漸進的にやっていく。また、そういったものを防ぐためには、算定会制度というものの基本は堅持しながら、その自由度を増すことは努めていきますけれども、その算定会による客観的な料率によるダンピング防止あるいは引受拒否の防止というようなことに努めてまいりたいというふうに思っているわけでございます。こういうふうな答弁をされているわけですね。だから、当時も、今のような事態が起こる危険性を早くも感じておられたわけでありまして、そうならないように防止をしたいという答弁もされていたわけです。
 その当時、何か手を打っているかのような話をされているわけですけれども、ところが、現実は、今の不払いというような事態が続発するという結果を招いてしまった。
 やはり今回の不払い問題の背景に、こういう規制緩和、自由化というものの行き過ぎた状況というものがあったのではないか、その点で行政の側もその責任の一端を感じてもらわなけりゃならぬと私は思いますが、どのようにお考えでしょうか。
○山本金融担当大臣 保険商品の多様化が進められたことによりまして、顧客はよりニーズに合った商品を購入する機会を得ているという面もございますが、そのことにおいて、また反面、不払いの大きな要因になったことも事実でございます。さらにまた、価格競争が促進されまして、低廉な保険料で保険商品を購入できるようになったと言われるメリットも他方でございまして、いずれにしましても、競争激化、そして、商品にさらに魅力をつけるための多様化、複雑化というような傾向が今日の特徴であることは間違いありません。
 しかし、反面の問題の不払い事実があるからといって、もう一回許可制にして、商品について単純化でなければならないというようなことに、もとに戻すというよりも、今保険会社も反省し、また、改善を努力すると約束していただいておりますし、今後、先ほど申し上げました支払い管理体制、特に苦情処理、そしてまたさらに不服申し立ての制度等が完璧を期することができますならば、利用者も、また保険会社も新たな次元に進むことができるだろうというように思っておりますので、さらに時代を進化させていくというような観点から金融行政を進めていきたいというように考えております。
○佐々木(憲)委員 私は何も、許可制に今すぐ戻せと言っているわけではありませんで、自由化、規制緩和が行き過ぎたんじゃないか、あるいは、自由化を進める場合に、被害というものが発生し得るので、それに対する規制も同時に強めなければ大変な事態になるんだ、こういうことを言っているわけでございます。
 したがって、現在の事態を踏まえて、今の野放しのような状況を改善するということは当然すべきだと思います。今までの行政はすべて正しかった、問題は会社の側なんだ、これではちょっといただけない。やはり、今日の事態を招いた背景にどういうことがあったのかを深く分析して、それに対応する、今の時点に立った適切な対応策というものを考える、これが大事ではないかということを言っているわけであります。
 さてそこで、次に、競争の激化ということが、この間、規制緩和によって、いろいろな形で発生しました。これは商品の多様化という面だけではなくて、収益性を向上させるために、各社ともこぞってリストラというものを推進したわけです。費差益をふやすというためにリストラを行ってきたと思うんですが。
 この10年間、統計を私ども調べてみますと、インシュアランス生命保険統計号というのがありまして、それによりますと、損害保険の従業員数は、10年前の1996年、11万4630人だったわけです。これが現在8万4959人ですから、10年間で2万9671人のマイナス、約3万人減っているわけです。それから生保の内勤者を見ますと、9万9487人から7万5278人、10年間で2万4209人減っているわけです。約2万5000人減っている。これは内勤者です。それから生保の営業職員、外回りの職員ですけれども、10年前は36万8561人だったんです。それが2006年には21万1522人。ですから、10年で15万7039人、大変なマイナスであります。
 これは、各社のリストラ競争、コスト削減、そしてまた、営業収益を拡大していく、企業の収益を拡大していく、そのために相当ドラスチックにやったんじゃないかというふうに思われます。
 その結果、外務員が非常に減少しております。いわば契約者と直接対話をし、契約者と商品の内容についてお話をする、そういう機会の多い外務員が大幅に減っている。最近は、外資がインターネット販売を拡大するとか、あるいは新規契約高がそのために伸び悩む。そういう中で、外務員に非常に厳しいノルマ、販売目標を課して、それが非常に耐えがたいということで、また外務員の離職を促進しているという面もある。
 保険会社の労働者というのは、そういう意味では、お客さんと直接フェース・ツー・フェースで話し合いのできる窓口ですからね。このリストラが極端に進められると、専門家である保険商品の販売員が保険会社から離れていって、同時に、商品が複雑化していく、この二重の問題が発生するわけです。
 今日の事態を招いたものの一つとしてそういう状況があるのではないかと思いますが、大臣はどのように認識しておられますか。
○山本金融担当大臣 おっしゃるとおり、ここ10年、15年の金融システムリスクの時代におきましては、再編統合がございましたし、リストラを余儀なくされた生損保であったことは間違いないだろうと思います。
 また、さらに別な次元での話としましては、例えば保険商品の販売形態の変化。近時、伝統的な、営業職員によるもののほか、インターネット等を活用した通信販売等、販売チャンネルが多様化しておりまして、必ずしも外勤職員や募集人によらない販売方法が見出されてまいりました。
 保険会社がどのようなチャンネルで保険商品の販売を行い、そのためにどのような体制を構築するかにつきましては、基本的に各会社の経営判断による事項となったわけでございます。ただし、どのような販売チャンネルによる場合でありましても、保険会社が適切な募集管理体制を整備することが必要でございます。その上で、顧客がみずからのニーズに合致した保険商品を適切に選択、購入できるようにするための情報提供や、保険契約に関する重要事項をわかりやすく説明することが必要だと思っております。
 金融庁としましては、保険会社がこうした体制を整備することで、より満足度の高い保険商品の販売、勧誘が実現されることを期待するものでございまして、今後さらに、システムリスクを脱して安定期から成長期に入ったときには、大事なお客様のための従業員数の確保、新規採用を含めてさまざまな採用が増加していくということも言えるかもしれません。そんな意味で期待するところでございます。
○佐々木(憲)委員 やはり外務員とか代理店というのは、専門性それから商品の知識を高めていくということが大事であり、また、それが地域や顧客との信頼関係を構築していく上での基礎になると思うんですね。それがコンプライアンス確立の一つであり、不払いの対策にもつながるというふうに私は思います。
 ところが、収益第一主義で職員をどんどん減らすということが、やはりそれを阻害する要因になっているというふうに思うんです。いまだにリストラをまだまだ進めていくという方針が出ているようでありまして、例えば東京海上日動火災、これは、日動火災の創立以来90年余り、顧客との重要な接点となっていた外務員制度を廃止するというんですよ。
 もともとこの石原社長は、外務員、リスクアドバイザーというらしいんですが、これについてこのように言っておられたわけです。各地域に密着して会社施策を着実に実行し、高い専門性を持つプロフェッショナルとしてお客様に御支持いただいた、こういうふうに評価をされていたわけですね。ところが、経済合理性の問題を中心に置くようになり、その制度を廃止しちゃうということですから、支持をしていただいたと評価しながら、これはもうやめちゃいますというわけです。
 東京海上日動は、10兆円を超える総資産を有し、1600億円を超える経常利益を上げる、まさに日本最大手の損害保険会社であります。そこが、経済合理性を理由に、コンプライアンスのかなめの一つである外務員を切ってしまうというわけです。東京海上日動というのは内勤や代理店勤務への転職を勧めていますけれども、これまでそれぞれの外務員が長期の関係で培ってきた顧客との信頼関係あるいは地域のネットワークを断ち切ってしまうということになるわけです。
 契約者への説明義務が問われているときに、このようなネットワークを持つ外務員をリストラするというのは、保険会社と顧客との重要な信頼関係を断ち切ってしまうんじゃないか、私はこれは非常に問題があるんじゃないかと思いますが、いかがですか。
○山本金融担当大臣 おっしゃるとおり、金融商品というものは、信用の高いレベルでの商品設計や、また販売が必要でございます。例えば専門性の高い募集人の例としましては、ファイナンシャルプランナー等、資格を有する者を活用した営業形態を必ずとるとしたような会社も現在見出されているわけでございますし、識者によりますと、アメリカの地方銀行では、むしろ今日では、人をふやさなければディテールができないというようなモデルになっているそうでございますし、また、他の識者によると、ロンドンにおける雇用の拡大はほとんど金融機関だというようなことも言われております。
 今後、そうしたような時代が早晩到来するだろうというように思いますので、今までは、いわゆる経営基盤が脆弱になったときの統合の余波がございますけれども、これが安定期を経て発展期になれば、雇用についてもかなり期待をすることができると私は思っております。
○佐々木(憲)委員 期待されるのはいいんですけれども、実際に、現実にこういう人減らしがどんどん進んで、外務員を全廃するとか契約者との関係が希薄になる、そういう事態というのが発生しているわけです。こういうことに対して、それは収益性が上がるからいいんだと単純に言えるのかどうか。今大臣おっしゃったように、むしろ逆であって、顧客の信頼を獲得し、そしてみずから専門性を高めていく。そのことによって営業のすそ野が広がり、収益も拡大していくわけである。
 何か、私は今の経営のあり方というのは、基本的な考え方がどうも違う方向に行っているのではないか。つまり、収益を短期的に上げようとして、結果的に長期的な収益を減らしているような感じがする。やはりそういう点を、これは私企業ですから、一々、手とり足とりそれに対して介入することはできないと思いますけれども、しかし、全体としての保険の行政を担当する大臣として、先ほど、ある方向をおっしゃいました、外国の例を挙げましたよね。やはり日本の保険会社のあり方として、信頼性の確保ということからいって、極端なこういう人減らしというものについて何らかのメッセージを発して、もっと親切な対応ができる体制を人も含めてつくるべきだ、こういうことを発するべきではないかと思いますが、いかがですか。
○山本金融担当大臣 生保、損保を通じまして、いわば情報の非対称を補完すべく、人材の育成や要員というものについて重要視していただけるような業界であってほしいというように考えております。
○佐々木(憲)委員 今私が取り上げた東京海上日動の外務員制度の廃止問題では、職員の中から、立場の維持の問題で労働争議が起こるような事態にもなっているんです。争点は、制度廃止後の外務員の地位の確認の問題と言われております。ことし3月26日に東京地方裁判所でこの争議の判決が行われて、外務員は職種限定契約であることを認められたということです。
 さらに、その判決文を見ますと、東京海上日動が07年7月1日に制度を廃止することによって、原告らがそれまで積み上げてきた顧客との契約関係あるいは人的なつながりを失い、事後に廃止の無効による地位確認等が認められても回復困難な事態を招来することも考えられる。つまり、外務員制度を廃止しちゃうということは、人的なつながりを失って、これは二度と復活できなくなってしまうんだ、こういうことを裁判所の判決文の中で書かれているわけです。それで地位の確認を認めているわけですね。裁判でも、顧客との人間関係というのは非常に大事だということを認めております。
 このような関係を非常に私は今後とも大事にしていくことが求められていると思いますが、もう一度、最後に大臣に確認をしたいんですけれども、日本の保険会社というものは、ただ商品を、物を売るということではなくて、契約を結んでいくその専門性を持った、そしてまた人と人のつながりを大事にしていく役割を担っていると思うんです。そういう意味で、人間を大事にするということは、契約者を大事にすることにもつながるわけですし、それが将来、会社の発展にもつながっていく、こういうことになると思いますので、その点について最後に大臣の基本的な見解をお聞きして、質問を終わりたいと思います。
○山本金融担当大臣 まず、個別の裁判事例、特に個別企業の人事面における紛争についてはコメントはできませんが、一般論で申し上げれば、委員御指摘のとおり、短期的な収益をねらうものでない、将来にわたってのゴーイングコンサーン、長期的な繁栄を得るための企業としては、やはり人の信用が大事だろうというように思っております。
 信用する者と書いてもうかると読むわけでございますから、その意味でも、人を大事にする企業体質で日本企業はあってほしいと願っております。
○佐々木(憲)委員 以上で終わります。ありがとうございました。

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