税制(庶民増税・徴税), 財政(予算・公共事業) (消費税, 大企業減税, 災害支援)
2011年11月22日 第179回 臨時国会 財務金融委員会≪総理出席≫ 【642】 - 質問
野田内閣は財界言いなりで「復興財源」づくり
2011年11月22日、佐々木憲昭議員は、財務金融委員会で復興増税などについて質問しました。議題となったのは、復興増税法案と修正案、国税法案とその修正案です。
はじめに、2人の参考人をお招きして意見聴取と質疑をおこないました。
続いて、野田佳彦総理大臣の出席のもとで法案質疑をおこない、討論ののち採決が行われました。
民主・自民・公明の三党合意に基づく修正案では、庶民に8.8兆円もの大増税を押し付ける一方、大企業には5%の法人税減税を実行し、3年間だけ復興財源として付加税を課すとしています。
佐々木議員は、「庶民には増税、大企業には25年間で20兆円の減税となる」と指摘し、「これでは、復興財源どころか、借金を増やすことになる」と批判しました。
その上で、日本経団連の2012年度税制改正要望で、法人税を増税する場合は「5%引き下げに伴うネット減税分を限度とする」と求めていることを示し、「経団連の言い分を丸呑みして、まったくその通り実行している」と批判しました。
安住淳財務大臣は「たまたま同じ考えを持っていた」と釈明しました。
また佐々木議員は、野田佳彦総理が財務大臣時代の昨年10月29日、経団連の米倉弘昌会長から住友会館で接待を受けていたことを指摘しました。
1年前に野田財務大臣が、財界トップから接待を受けていたのは重大だと述べ「これでは、生活第一ではなく、財界第一だ」と批判しました。
野田総理は、米倉氏と会ったことを認めたうえで、「経済団体の意見も聞く」などと弁明しました。
佐々木議員は、野田総理が来年3月までに消費税増税法案を提出し、国会を通したうえで、実施する前に国民に信を問うとしていることについて、「明白な公約違反だ」と批判しました。
野田総理は、このやり方は「マニフェストでは言及していない」と認めました。
佐々木議員は、「信を問わずに法案を通すことは許されない」と強調しました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
今回は、民主、自民、公明、三党の間で協議が行われて合意したということで、きょうの議論を聞いておりますと、法案の内容についてほとんど審議がないんですね。これは、議会としては、私は空洞化じゃないかと思うんです。したがって、私は法案の内容についてきちっと議論をしていきたいと思うんです。
まず、事実を確認したい。
三党で合意されたこの修正案では、個人、中小業者に対して、今後25年間に8・8兆円の増税を課すということにしているようであります。たばこ増税はやめたけれども、その分、所得税の増税に上乗せされるという形になるというのは、これは間違いありませんか。
○安住財務大臣 たばこ税は盛り込まない方針になっておりますので、所得税付加税分は2・1%、それから、個人住民税の均等割につきましては、10年で割って、これは年間千円ということになりますので、上乗せといえばそういうことになるということになります。
○佐々木(憲)委員 所得税の方は8・8兆円の増税ということでありますが、では、法人税はどうかということですけれども、実効税率の引き下げと課税ベースの拡大を実施した上で時限的に付加税を課すとしております。つまり、5%の恒久減税を実行して、わずか3年に限って付加税を課すということですね。
この3年間について見ますと、今と比べて増税になるのか、法人税の負担はふえるのか、お答えをいただきたいと思います。
○安住財務大臣 23年度の税制改正では、減収分として約0・8兆を見込んでおりました。一方、法案が成立をして1割の付加をかけると大体同額の税収が見込まれますので、ほぼ変わらない状態になるということになります。
○佐々木(憲)委員 そうしますと、法人税の方は、5%下げて、3年間はその5%の範囲内におさまってしまって、減税の範囲内でおさまってしまって増税にはならぬわけですね。つまり、負担増ではないわけです、今の水準と比べますと。
そうしますと、平年度ベースではこの法人税の減税というのは幾らになるのか。それから、25年となりますと幾らの減収になるのか、お答えいただきたい。
○安住財務大臣 平年度だと0・8ですから、25年に延ばした場合ということですか。(佐々木(憲)委員「はい」と呼ぶ)掛ける25倍なので、20兆ということになると思います。
○佐々木(憲)委員 そうしますと、個人それから中小業者、こういうところには今から8・8兆円の増税になる。ところが、法人税の方は、最初の3年間はプラス・マイナス・ゼロで、後は減税になる。つまり、減税が25年間続くと20兆の減税。これはどうも、負担を分かち合うというけれども、バランスを欠いているんじゃありませんか。個人には負担は重い、大企業には負担は軽減と。
付加税は減税の範囲内におさめるようにとか、3年間に限るようにとか、これは一体、だれが言い出したんですか。総理、だれだと思いますか。
○安住財務大臣 法人税の引き下げというのは、大震災の前から、自民党政権下からずっと議論になっていました。国際競争力を含めて、日本の企業のいわば体力をつけてもらうということも一つ観点だと思います。
ただ、先生、これは私の考えですが、大企業、中小企業を含めて、日本という国は、給与所得者が5千万人を超えるような国でございます。ですから、企業が収益を上げて活力を保つということは、勤労者の方々にとっても、その母体となる企業がいわば安定的に給与を支払えるだけの体力を持つということになりますから、国際競争力を持つということにもなるので、決して、いわゆる何か資本家が得をして庶民が損をするということではなくて、やはり一般のサラリーマンの方がお勤めになっている会社の法人税率ですから、そこのところは何か、所得税と比べてこれだけ減税じゃないかというふうな見方を私はしていないのでございます。
○佐々木(憲)委員 質問に答えていないんです。
今言ったことに反論すれば、大体、企業は、内部留保がどんどん膨れている、減税も受けている。しかし、この間、賃金は下がっているじゃないですか、給与総額。まず、事実に反するということを言っておきたいと思うんですね。
それから、質問したのは、震災の復興増税の話ですから、付加税は減税の範囲内でおさめろとか、3年間でいいじゃないかというのはだれが言ったんですか、大体。
○野田内閣総理大臣 だれが言ったというか、政府税調内の中での意見を踏まえてまとめたということであります。
○佐々木(憲)委員 政府税調の話の前に、例えば、日本経団連は、7月28日、経産省による12年度税制改正要望ヒアリングの中で、東日本大震災の復興財源確保に向けた法人税の臨時増税はできるだけ短期間にし、3年以内とするように、こう求めているわけです。それから、現行の企業の負担水準より増税にならない範囲で復興費用を捻出すべきだ、こういう要望をした。これが事実じゃありませんか。
○安住財務大臣 そういう要望があったことは事実でございますけれども、政府税調の会長として私が判断いたしまして、総理に決裁をいただいたということです。
○佐々木(憲)委員 だから、最初にこういうことを要望したのは財界なんですよ。日本経団連なんです。
大体、9月に出された平成24年度税制改正に関する提言を見ますと、復興財源として法人税についても負担増を行うのであれば、法人実効税率5%引き下げに伴うネット減税分を限度として付加税を時限的に課すか、施行を一定期間おくらせる方式をとるべき、いずれも3年以内、こういうふうに書いてある。日本経団連の税制改正要望の中に書いてあるんですよ。その結果、法人税はどんと減税20兆、庶民は8・8兆の増税、こういうことになったわけですね。
これは余りにも身勝手で、税調でもし検討をするとすれば、まあそう言わずに大企業の方も一定程度、応分の負担をしてくださいよというのが本来の税調のあり方じゃないんですか。これは、日本経団連の言い分をもううのみにして、丸のみして、全くそれと同じことを実行しているんじゃありませんか。どうですか。
○安住財務大臣 ちょっと経緯をお話ししますと、大震災があったころに、先生御存じのように、私は国対委員長でございましたが、私、そのときに、別に経団連からお願いされたわけでなくて、法人税の問題が、いわば法案がつるされた状態のままであったわけですね。その中で、私も個人的には、これから復興をやっていくときに、復興債をどういうふうに償還していくかというときに、この法人税に個人としても着目していました。
ですから、それをそのまま維持するというのはやはり企業の国際競争力を落としますから、ある一定期間は付加をお願いして、時限的な措置としてこれを復興の財源に充ててもらうということは私も個人で思っていましたので、別に経団連に言われてそれをやったんじゃなくて、たまたま経団連も同じ考えを持っていたというふうに理解していただいたらいいと思います。
○佐々木(憲)委員 それは、個人で思っているのはだれもわかりません、今になって言っているだけで。経団連は、明確に文書でこういう要望を出しているわけです。
総理は、財務大臣を最近までされていましたね。昨年の10月29日に、住友会館というところに行ったことはありますか。
○野田内閣総理大臣 昨年の10月29日ですか。ちょっと、日付と何かというのはちょっとわかりません。覚えていません。
○佐々木(憲)委員 住友会館というのは港区六本木にありまして、住友グループのいわば迎賓館みたいなところなんです。住友化学の会長は、日本経団連会長の米倉さん。ここに総理は出席をしておられます。記憶は戻りませんか。
○野田内閣総理大臣 日付とか場所とかは覚えていませんが、米倉さんとお会いしたことはもちろんあります。
○佐々木(憲)委員 この場所に、これは米倉さんの側から招待が来て、いわば接待を受けたわけですよ、事実上。ここには、民主党総括副幹事長であって現在総理補佐官の手塚さんとか、それから坂根正弘さん、これは経団連の副会長、丹呉さんという前財務省事務次官も参加している。
丹呉さんは、2009年7月、財務事務次官になりまして、2010年7月に財務事務次官を退任されているんです。退任して三カ月たったところで、総理と一緒にこの会合に出ている。これは、住友会館であります。何でこんなところに接待を受けに行ったんでしょうか、財務大臣にもかかわらず。私は、これは非常におかしいと思いますよ。
政府税調で法人税の引き下げの問題がまさに議論になっていた。消費税増税を含む税制改正が議論されていた。政府の税制、財政政策の責任閣僚ですよね、野田さんは。利害関係のある財界のトップリーダーから接待を受けているわけですから、これは非常に問題があると私は思っているんです。
野田さんが民主党の代表に選出された直後に、日本経団連の米倉さんは大歓迎したわけですね。税制、社会保障に通じた非常に安定した行動力のある政治リーダーである、菅直人首相とは首から上の質が違う、こう言って大変褒め上げたわけですよ。私は、米倉さんと野田さんは大変親密な関係にあるのかなと、これを見ると思ってしまうわけですね。
民主党は、生活第一ということで、この間、選挙をやり、政権を担うことになった。ところが、振り返ってみますと、今、この復興増税一つをとりましても、庶民の方には、生活の方には大変重く税金はかけるけれども、大きな会社、財界の側には日本経団連の要望に沿って減税を行う。25年間で20兆を減税する。これはどうも、今までの路線と違うんじゃありませんか。野田さん、どのようにお感じですか。
○野田内閣総理大臣 米倉さんとそういう形でお会いをしたことはあります。ありますけれども、それによって何かの政策変更をするということはありません。
私どもは国民政党です。国民政党でありますから、もちろん労働組合とのおつき合いもあります。でも、経済団体の意見も聞くということも、これはあってしかるべきであって、そのことは、例えば、私が総理に就任した後のあいさつに回ったと言いましたけれども、経団連の前には連合に行っています。ということは事実としてちゃんと押さえておいていただきたいというふうに思っていまして、あくまで国民の生活が第一であると。
経済団体を敵視することが国民の生活第一ということではないと私は思いますので、企業活動を通じて雇用につながるものもありますので、そういうことも含めて、先ほど来、内部留保のお話なんかをされていましたよね。むしろ逆に、雇用や投資に使ってくれというようなお話をした記憶はありますけれども、そういう意見交換はあってしかるべきだと私は思っています。
○佐々木(憲)委員 実際に実行していることと経団連の要望が完全に一致しているということを私は言っているわけですね。
そういう意味で、国民の暮らしに負担を負わせながら、大企業の減税に回してしまったら、財源なんというのは出てこないんじゃありませんか。私はこの点を問題にしているわけであります。
ちょうどこの時期は、去年の10月の末ですけれども、民主党は、企業献金の自粛と言っていたんですけれども、それを緩めるという方針を出している。経団連の米倉会長は、民主党が献金を受けるのであれば、ルールに沿って行うのはやぶさかではないというふうに言って、この方針を歓迎するという意向を表明しました。
確認したいんですけれども、この後、この1年間、民主党は企業献金を受けましたか。
○野田内閣総理大臣 この1年間、ちょっと全部私はチェックしていませんけれども、それは、政党として受けることはできますので、受けている可能性はあると思います。ちょっと金額とか件数とかはわかりません。
○佐々木(憲)委員 何も我々は、財界だから話をしてはならぬとか、そういう話をしているわけではなくて、すべての人の意見を聞くと言うなら、何で財界の意向だけ反映するのかということを聞いているわけです。
したがって、今お聞きをしても、結局、大企業は応分の負担を負う、そういう能力があるにもかかわらず、経団連の要望に応じて減税だけを行う、こういう形になっている。
大体、今まで、法人企業統計によっても、大企業の利益のほとんどが内部留保、配当、役員給与に分配されまして、労働者の賃上げには全く使われておりません。逆に、給与総額というのは引き下げられている。内部留保も、リーマン・ショック以後も積み上がっているわけです。
これは、大企業にも負担能力がやはりあると思うんですね。総理はそういうふうに思いませんか。
○野田内閣総理大臣 いや、だから、その意味からも、所得税で国民の皆様に、そして法人においても、3年間という形でありますが、御負担をお願いするということであります。
○佐々木(憲)委員 負担になっていないから言っているわけです。連帯して、全体で負担しましょうと言っていながら、一方には負担は負わせない、減税を行う、一方で負担を負わせる、そういうやり方をしているから、おかしいんじゃないか、このことを我々は言っているわけです。
次に、消費税の問題なんですが、政権を担当する4年間は消費税は上げない、仮に引き上げる場合は総選挙で国民の信を問うというふうに言っていました。総理は、法案提出の前ではなく、法案を通した後、消費税増税を実施する前、そこで民意を問うんだと言っているんですね。
民主党のマニフェストですとか総選挙のときの発言で、実施する前ということは言ったことはあるんでしょうか。そういう約束を国民にしたことはありますか。
○野田内閣総理大臣 民主党のマニフェストでは直接的に言及はしていないということです。その後の三党合意、社民党と国民新党との三党合意のときには、任期中には消費税を引き上げないという合意があるということであります。
それで、歴代総理のいろいろな御答弁とかありますけれども、菅総理のときに、佐々木委員との本会議のやりとりの中で、大きな税制改正を実施する前には国民の信を問う、このことは繰り返し申し上げているところであります、そういう姿勢が出ました。その後、1月の谷垣総裁と菅総理の消費税のやりとりについても、消費税引き上げについては、従来より、引き上げを実施する前には国民の審判を仰ぐと言ってきており、その方針に変更はありませんということで、私も前政権からの方針にのっとってお話をさせていただいているということであります。
○佐々木(憲)委員 結局、この前の総選挙のときには、法律を通した後、実施する前に解散なんて話はないんですよ。一度もそういうことは言ったことはない。ところが、その後で国税附則104条の問題が出てきて、修正するのが筋だ、こういうふうに藤井財務大臣はおっしゃっていた。ところが、修正するどころか、これは守るべきものであると態度を変えたわけです。守るべきものだ、来年3月までに法案を出さなければならない、こうなって、法案を出すということになると、増税の法案なんですから、当然、その法案を出す前に国民に聞かなきゃいけないはずなんです。それをやらないための方便として、いや、これは法律を通した後、実施する前だというふうに話をすりかえていったわけです。
だから、もう全然一貫していないんです。国民から見れば、何で消費税増税の法案を出すときに国民に聞かないんだ、国民に聞いて、いいかどうかを判断してもらったらいいじゃないかと。圧倒的多数の国民は多分そう思っていると思う。
したがって、私は、こういうやり方は非常にひきょうだと思います。国会に対して一度約束したことをひっくり返して、それをまた合理化する、非常に私はこのやり方には怒りを覚えているわけです。
したがって、消費税増税、絶対に我々は許すわけにはいかないし、法案を出すというのであれば、国民の信を問うというのが当たり前だ、このことを主張して、終わりたいと思います。