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税制(庶民増税・徴税), 財政(予算・公共事業) (消費税, 大企業減税, 災害支援)

2011年11月22日 第179回 臨時国会 財務金融委員会≪参考人質疑≫ 【641】 - 質問

復興増税法案と修正案、国税法案と修正案について 参考人質疑

 2011年11月22日、佐々木憲昭議員は、財務金融委員会で復興増税などについて質問しました。議題となったのは、復興増税法案と修正案、国税法案とその修正案です。

 はじめに、2人の参考人をお招きして意見聴取と質疑をおこないました。参考人は、中空麻奈さん(BNPパリバ証券株式会社投資調査本部長)と、三井逸友さん(横浜国立大学・大学院環境情報研究員教授)です。
 続いて、野田佳彦総理大臣の出席のもとで法案質疑をおこない、討論ののち採決が行われました。

議事録

○海江田委員長 これより会議を開きます。
 第177回国会、内閣提出、経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律案及び内閣提出、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法案並びに両案に対する寺田学君外三名提出の両修正案を議題といたします。
 本日は、両案及び両修正案審査のため参考人として、BNPパリバ証券株式会社投資調査本部長中空麻奈君、横浜国立大学・大学院環境情報研究院教授三井逸友君に御出席をいただいております。
 この際、両参考人に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席を賜りまして、ありがとうございます。両参考人におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、両参考人からそれぞれ十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。
 それでは、まず中空参考人にお願いをいたします。
○中空参考人(BNPパリバ証券株式会社投資調査本部長) こんな偉い方々を前にお時間をいただけるというのは大変光栄なことだと思います。きょうは、ありがとうございます。BNPパリバ証券でクレジットをやっております中空麻奈といいます。
 本来、こういういい場を与えられてしまったので、しかも税制の話だということなので、個人的にも、一国民としても、たくさん税金を払っているので、いろいろなことを申し上げたいところではございます。しかも、子供がいて、子ども手当についても本当は申し上げたいところです。しかも、クレジットアナリストをやっていますので、東京電力の原賠法に関する法案についても一言申し上げたいところではございますが、きょうは、先週ロンドンに行っておりまして、来週はギリシャ、イタリア、フランスなどに行く予定になっておりまして、そういうことから、欧州の財政赤字についてお話をし、マーケットの方で欧州の財政赤字というのはどういうふうにとらえられているのか、これは日本とは全く関係ないこととして考えていいのか、その辺を十分間で皆様の頭の中にたたき込めればいいなというふうに思っております。
 ということで、今、お配りしておりますプレゼンテーション資料が机の上にあるかと思います。ごらんいただきたいと思っておりますが、タイトルが「欧州財政事情からのインプリケーション」というものでございます。
 二ページ目をごらんいただけますか。CDSのスプレッドというものが書いてございます。CDSのスプレッドは多分皆様御存じだと思うので、ここでは割愛します。スプレッドが上に行けば行くほど信用力は落ちていますよということを示しています。ですから、この左の表を見ていただくと、GIIPSと書いてありますが、これはスプレッドがどんどん広がっていますねということがわかります。
 ここで、ふと、GIIPSというのは何だろうと思われた方がいらっしゃるかもしれないんですが、PIIGSというのはよく聞かれると思うんですね。PIIGSというと、ごろが悪いので、豚なので、これは順番を変えてGIPSIに変えたんですけれども、GIPSIもスペインではよくないので、また順番を変えてGIIPSになっています。
 ということで、今、GIIPSというのは、PIIGSなんですが、スプレッドがどんどんワイドニングし、信用力が落ちていることを示しているわけですね。
 我々BNPパリバとしましては、この先の姿を、ちょっと時間がないので割愛して結論だけ申し上げると、ギリシャは100%デフォルトするでしょうと思っています。それがいつかというと、来年、年が明けてからかなというふうに考えています。これがギリシャの行く末。
 ポルトガルに関しましては、ギリシャととてもパーツが似ていますので、ギリシャがデフォルトしていくと、それに準じてだんだん悪くなるでしょう、ただ、金融支援をもらっているので時間がありますよというふうな段階です。
 その次、アイルランドに関しましては、大分よくなってきたんですね。よくなった話をしたいんですけれども、時間がないので割愛します。
 その次、スペインとイタリア、こちらの方が本題なので。スペインとイタリアにつきましては、デフォルトはないと思っています、大きな国なので。しかしながら、スプレッドのワイド化、つまり、信用力が劣化することはまだあるでしょうと思っています。
 こういったGIIPSの状態に対しまして、右の半分を見ていただきますと、これはフランスとか日本とかのスプレッドもどんどん広がっていることがわかります。つまり、フランスとか日本とかの信用力も落ちていますよということを示しています。
 ページをめくっていただきまして、では、今のギリシャはどんなかということで、四ページ目をごらんいただけますか。右の下のところでございます。
 ギリシャは、すばらしい、大きないい国なんですが、右の下の表に棒グラフがございます、これを見てください。この12月のお金が何とか、この間のEUサミットで出ることが決まりました。この12月分はお金を払えるんですが、1、2月はいいとして、次の3月ですね。140億ユーロという非常に大きなお金を返さなきゃいけないんですが、これは実は用意がないんです。お金がありませんよという状態でございます。
 ギリシャはこういう状態の中にありまして、ECBからお金を借りているんですが、右の上、預金の減少が続いていますよということです。どんどんお金が出ていっちゃっているんですね。だから、国としての体をなさなくなってきているというのがギリシャの現状でございます。
 次のページ、五ページ目は、ちらっと見ておいてください。ほかの国もいっぱいお金を返さなきゃいけないんだなということがわかります。
 こういうような状態になってくるとき、これは日本は、こんなことはまだ話されていないんですが、国債残高がいっぱい出てくると、あしたお金が返せるかどうかわからないということをマーケットが読むようになりますと、こういう日ばかりの状態を読まれていくようになるわけですね。イタリアやスペインでさえ、そういう状態になっていますよということでございます。
 イタリアの現状ということで、次のページ、六ページ目をごらんいただけますか。イタリアというのは本当に悪いんでしょうかということでございます。
 イタリアというのは、右の下に書いてあります、成長率も確かに低いですし、ベルルスコーニ政権も弱かったですが、では、今日本はその辺はいいですかと言われたら、余り自信のないところですよね。しかも、右の下、債務残高は大きいけれども、プライマリーバランスは黒字。これは日本はどうでしょうといったら、全然黒字じゃないわけですよね。こんな中で、イタリアはどんどん売られているわけです。マーケットでは、イタリアはデフォルトするかもしれないという懸念が出るぐらい売られているわけでございます。
 イタリアにコンテージョンしてしまうと、次がフランスですね。BNPパリバはフランスの銀行なので、フランスは死活問題なんですが、七ページ目をごらんいただきますと、実はフランスも、イメージは悪くなっているんですが、実態はよくなっているんですね。累積債務の赤字だって、2011年は大分よくなって見えますよね。左半分の表を見ていただければわかるとおりでございます。こういったほかの国々はよくなってきているのに、だけれども、マーケットではえらく売られているわけですね。この事実がありますよと。
 こういったソブリンが悪くなっていきますと、その次なんですが、八ページ目、金融機関が悪くなっちゃうんですね。これも大問題でございます。ソブリンが悪くなると、銀行にお金が回らなくなってくる。金融システムで、これが非常に疲弊してくることが大きな問題です。
 では、これを欧州としてはどうやってフォローしようかというと、我々日本でも、70兆円のファンドを用意したことがありましたが、結局、大きなセーフティーネットを用意して、何とか助けようとしているんです。そのページが、ちょっと飛びますけれども、11ページ目に行きます。
 今、欧州では、EFSFという安定化枠組みがあるんですね。これに対しましてお金を積んで、何とかコンフィデンスを回復しようとして頑張っているんですけれども、なかなかそれが動いてきません。しかも、左半分で見ていただきますように、EU債とEFSF債は、これは何のことを言っているのかわからなければ後で御質問ください、スプレッドがとても広がっていて、この差があるということは、EFSFで資金調達できませんよということを示しています。ということは、セーフティーネットをつくりたいんだけれども、そこでファンディングできないですよという状態が来てしまっていますねということです。
 ここまでお話をさせていただいて、イタリア、フランスは決してファンダメンタルズは悪くなっていないのにマーケットで売られているということ、これを見ていただいたわけなんですが、では、イタリアのリスクは日本とは無関係と言っていいのかということが次の課題でございます。
 12ページ目をごらんください。
 イタリアというのは、一般政府のプライマリーバランスを見ていただいても、横の一般政府、債務残高を見ていただいても、やはり日本が一番悪い状態になっているということなんですね、残念ながら。しかも、その次のページ、13ページ目をごらんいただきますと、イタリアというのは今金利が高くなっているように見えますが、日本だって、財政プレミアムをこれ以上続けてしまいますと、金利は上がっていきますよという絵でございます。金利が上がって、しかも、我々は累積債務が非常に大きいので、そうなってくると、イタリアの二の舞になることは確実でしょうということなんですね。その形が14ページ目にあらわれています。
 イタリアのリスクというのは本当に日本から遮断されているのかといいますと、金利が低かったり、経常収支が黒字だったりしても、結局、スプレッドが広がっていっていますよということが申し上げたい点でございます。
 日本も、このままほっておいては、やはりイタリアの二の舞になりがち、イタリアのように日本がならないというような理由はどこにも見当たりませんよというのが今の現状なんですということでございます。経常収支の黒字があるからとか、あるいは、日本の国内で消化されているから大丈夫だという議論があるんですが、それは、実は大したことがなくて、金利は上がろうとも、経常収支黒字国でも、こうやってスプレッドが広がり、マーケットでは売られてしまうことがありますよということでございます。
 政治リスクが高かったり、それから累積債務が非常に大きかったりすると、これは財政赤字の悪化とともに、やはり評判は悪くなる、格付も下がっていくんではないでしょうかということでございます。
 時間になりましたので、以上でございます。ありがとうございます。(拍手)
○海江田委員長 ありがとうございました。
 次に、三井参考人にお願いをいたします。
○三井参考人(横浜国立大学・大学院環境情報研究院教授) 横浜国立大学の三井と申します。
 私は、中小企業の研究を30年以上やっておりまして、日本中小企業学会の前の会長であり、また昨年閣議決定されました中小企業憲章に関する研究会にも参加しておりました。また、海江田先生のもとで設置されました中小企業政策審議会の企業力強化部会というところにも加わっております。
 今回、この財務金融委員会にお呼びいただいたわけですが、私は税制や金融の専門ではないし、税金は、使い道には関心はありましても、いわば私自身は取られる側の立場でありまして、なかなか税制の新しいあり方等の議論には貢献できないかもしれません。どちらかといえば、中空先生に比べれば、出口の話ということになってしまいます。ただ、金融庁の金融審議会のリレバンワーキンググループにも加わっておりましたので、金融政策を含め、さまざまな政策における中小企業の立場の反映、中小企業の持てる力を生かした経済社会システムの重要性、こういう立場で考えてきているわけでございます。
 さきの、この中小企業憲章というものを昨年閣議決定された。これが示したのは、これは世界共通して、経済社会の多数派である、経済の背骨、あるいは国家の財産、社会の主役たる中小企業の普遍的な存在意義、その可能性を生かせる社会、そして中小企業の立場で考える諸立法、制度、政策というものが必要であると。先ほど中空先生からヨーロッパの大変さというお話がございましたが、EUというのは、この20年来、非常に発展を遂げてきた。その中で、90年代以降、中小企業政策を非常に重視、強化してきたという経過がございます。
 2000年につくられましたEUの小企業憲章、2008年のSBA小企業議定書、これらに、シンク・スモール・ファースト、リスニング・ツー・スモール・ビジネスという、小さい企業のことをまず考えよう、そして中小企業家の声に耳を傾けよう、こういう立場というものが示されてきた。
 私は、そういうものを、別にヨーロッパの猿まねをしろとか言っているわけでは全くございませんで、いわば世界の共通の流れ、その中に日本がある。そしてしかも、皮肉なことに、ヨーロッパのそうした流れというのは、かなりの程度、日本の経験を参考にした。80年代、90年代あたりまでの日本の経験。
 だから、何となく私は、こう言っては大変口幅ったいのでありますが、日本は、トップランナーで頑張っていると思ったら、いつの間にか一周おくれになっちゃったんじゃないのかと。それが事実かどうかわかりませんが、少なくともそういう危機感を持って中小企業の現状というものを考え、その将来を展望したいと思っておるわけでございます。
 さきの3・11の大震災、原発の危機、こういうことによる中小企業への影響はもちろん申すまでもありません。しかし、バブル崩壊以降、残念ながら中小企業の経営状況は決して好ましくない。やはりバブルのマイナスの遺産が20年たってもまだまだ続いているという感じはあるわけでございます。
 そういう中で、短期的には、最近の景気動向に関する各機関のいろいろな調査等によりますと、やはりことしは3・11で非常に大きな落ち込みがあったわけですが、幸いにして、ことし中期以降、かなり持ち直してきているという動きがあります。しかし、どの調査もやはり共通して言っていることは、円高を初めとする大変厳しい経営環境の中で、将来につきましては非常な不安があるということ、これは否定できない。だからこそ、今の時点において中小企業の現状をどう発展させるのかということは、やはり私は大事なことだと思います。
 そして、これは私がやはり繰り返し申さねばならないのは、かつて日本は中小企業の役割が大きく、それが明治以降の近代化、さらには戦後の復興と経済成長を支えてきたということはだれの目にも明らかだと思いますが、近年、明らかに、統計的にも、日本の中小企業は衰退の傾向にあります。皆様御存じかと思いますが、今、企業全体の数がどんどん減っております。これは経営環境の厳しさや高齢化等によって廃業していく企業がどんどんふえている一方で、新たに開業しようという方が非常に少なくなっている。これは、世界じゅうみんな同じ傾向ならしようがないよねということになるんですが、むしろ例外的なぐらい日本の現象なんですね。
 私、ことしの6月にスウェーデンのストックホルムで開かれました国際的な中小企業に関する会議に行ってまいりましたが、こういう場で、今、国際的にこうした企業の起業家精神の発展や新規開業についての調査を行っておりますGEMという、グローバル・アントレプレナーシップ・モニターという機関がありまして、そこが調査結果をその都度発表しておりますが、もう日本はほとんど、先進国、発展途上国を問わず、例外的な状況だというのは定評ができておりまして、さきのことしのストックホルムの会議では、日本は震災を受けて大変だねという同情の声のほかは、全く日本に対する言及すらない、まさにジャパン・パッシングという状況でありまして、私は大変寂しい思いをしてまいりました。
 こうしたことにはもちろん、いろいろな要因が働いておるわけでございますが、私は幾つか注目すべきことがあると思います。
 例えば、中小企業白書におきましても、これまで繰り返し出されてきたことは、かつて高度成長や80年代ごろまでは、自営業等を開業いたしますと、かなり高い所得が平均して期待できるという統計結果があった。しかし、それが近年逆転いたしまして、雇われている、雇用者でいる方が所得が平均して高い。これではやる気は起こらぬでしょうという状況があります。
 それは、もちろん個々の企業の経営責任はありますが、しかし、何よりも、中小企業をめぐるこの経営環境の厳しさ、これが大きな問題であるということがそこで指摘できるかと思います。
 この問題は、特に、単に経営環境だけではなくて、先ほど言った高齢化で、かつて高度成長等の時代に開業した方々がどんどん年をとりまして、世代交代期を迎えている。しかし、後を継ぐ人がいない。後を継ぐ人がいないというのは、今の時代、企業を起こすことがダサいという印象があるのかもしれませんが、それ以上に、先ほど言った経営環境の悪さ、こういう中では息子たちに継がせることも難しいよね、そういう印象が多々あるわけでございます。
 この意味から申しますと、私は、特に、事業承継に関する税制の対応ということ、これは大変望ましいことであると。
 近年、政府の方でも御努力いただきまして、新しい立法やさまざまな措置をいただいておるわけでございますが、しかし例えば、残念なことに、経営承継円滑化法、これについての中小企業白書における記述を見ましたら、実施件数が29件と、まだまだ大変寂しいわけでありまして、日本の中小企業500万近くの数に比べれば圧倒的に少ないという現状があります。この辺は、税制面でのもっと御配慮が必要だし、そして、これは日本だけの問題ではございません、先ほど言ったEU等も同じような状況で取り組んでいるところでございます。
 さて、何よりもかよりも、しかし、今回の大震災によりまして、地域に存在している中小企業、とりわけ小規模零細な層まで含めて、これらが、地域経済とのかかわりの深さ、逆に言えば、地域はまさにそれによって支えられている。しかし、それらがこうした震災や津波で大きなダメージをこうむりますと、もう地域の経済自体が立ち直れない、こうした深刻な状況があるわけでございます。
 これに対して、今、ちょうど昨日、国会で正式に決まったそうでありますが、政府の方でも、いわゆる二重ローン対策という形で、これまでの借金で入れていた建物、設備、機械等がみんな流されてしまってゼロからスタートせねばならない企業を何とか救わねばならぬ、これを救わないと地域の金融機関も不良債権の山に囲まれてしまう、これに対して、与野党の間でいろいろな動きがあったということを私も承っております。
 そして、これまでの政府の路線に加えまして、新たな立法が昨日正式に成立したということで、私は、これは大変喜ばしいことだと思っておりますが、何よりかよりも、震災からの復興ということに対して一番大事なことは、やはり思い切った資源の投入を迅速にやることです。
 被災地の企業の方々の声を伺いますと、やはり大変厳しい。しかし、もう何もないんだから、裸一貫からもう一度スタートするんだという意味で、私は、宮城県の方の料理店のあるじの方のお話を聞いた機会がありますが、もう津波ですべてを失った、借金しか残っていない。しかし、その方が、ある意味にこにこしながら、でも私は再建できるという確信があります、この二重ローンが何とか解決できて、新しい店を再建できればということをおっしゃっていた。これは非常に印象がありました。
 そして、この方はなぜそんなに自信を持って再建できるとおっしゃっているのかというのは、もちろんお金の問題は心配でありますが、それ以上に、実はさっきの事業承継が絡んでおりました。息子さんがもう後を継ぐ形で店に入っていた。息子がこれから頑張ってくれるということで安心していたら、この津波を受けてしまったということですが、逆に言えば、税制等において、こうした被災地の今頑張っている企業の後を押していただくということも大事なことかと思います。
 個別の税制についての問題等々は、いろいろ御質問等が後であろうかと思いますので、それはおいておきますが、やはり、今政府の方で、特にこの三次補正におきまして、中小企業庁関係で6950億円という新しい予算がつく、これは大変画期的であり、喜ばしいことであります。
 しかし、何よりもかよりも、先ほど言ったように、今の、この震災の被災地のみならず、全国の経済、その地力をもう一度よみがえらせるためには、思い切った踏み込みをしていただきたい。
 では、その財源はどうするんだと言われると、私も大変苦しいところでありますが、しかし、それをやらないで、今ひたすら、何とか現状を、あらしが過ぎるのを待っているわけにはいかない。日本の経済の、明治以来の、戦後のこの地力というものをもっと生かすような、そういう可能性に向けて積極的に有効にお金を使っていただきたいというのが私の考えでございます。
 以上でございます。(拍手)
○海江田委員長 ありがとうございました。
 以上で両参考人の意見の開陳は終わりました。
【佐々木議員質問部分】
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 きょうは、大変貴重な御意見をお聞かせいただきまして、ありがとうございます。
 まず、中空参考人にお聞きをしたいと思いますけれども、私もこの15ページの図を見まして、これは、国債の比較というよりも、むしろ右側の日本の国債保有者の特徴なんですが、中央銀行、銀行、ゆうちょ、保険と、金融機関が圧倒的多数でありまして、6割を超えているんでしょうか、このぐらいの比率になっておりまして、大変高いわけです。
 その理由ですけれども、景気が全体として低迷している中で、日銀が史上空前の量的緩和を行っている、しかし、銀行はなかなか投資先が見つからない、したがって、じゃぶじゃぶと日銀と銀行の中に資金がたまっている、この状況を国債を買うことによって解消している、これが実態ではないかと思いますが、どのようにお感じでしょうか。
○中空参考人(BNPパリバ証券株式会社投資調査本部長) ありがとうございます。
 おっしゃるとおりでございます。預金はたくさん来るんですね。日本国民というのは保守的ですから、何かに投資するというよりは、預金に置いておきましょうということがほとんどでございます。ですから、預金を入れますよね、そうすると、ほとんど金利はつかないんですが、余り金利が高くない日本国債に置いておいてもそれで十分ペイするということになりますので、日本の金融機関は比較的多く国債を持ってしまいがちでございます。投資先がないということもそうですし、国民の人たちが預金をしてしまうというのもそうだと思います。
 また、国民性なんでしょうか、リスクアペタイト、リスクをとっていくということが余りないですね。リスクがあるからリターンがあるんですけれども、それを割と忌み嫌うところがございまして、安定的な資産ということで日本国債を買う向きも非常に高いと思います。
 ということで、基本的には御意見と同調いたします。
 以上です。
○佐々木(憲)委員 三井参考人にお伺いしますけれども、今最大の課題は震災からの復旧復興でありまして、とりわけ被災地の特徴は、零細企業が非常に多い、農林水産業が圧倒的多数である、そういう状況の中で、高齢者も非常に多いわけですね。その復興に当たりまして、これらの被災者の方々あるいはなりわいをどのように再建していくか、これが非常に重要な点だと思うんです。
 私どもは、ともかく住民の要望を基本に置いて、余り上から枠をはめるんじゃなくて、そういう人たちの生活を支援するということを国の政策の基本に置くべきだと思っておりまして、特に個人の資産の問題についても、これは個人のものだからということで国は余りお金を出さないなどということではなくて、しっかりと支援をすべきだと考えておりますが、三井参考人はどのようにお考えでしょうか。
○三井参考人(横浜国立大学・大学院環境情報研究院教授) 御指摘のところはもっともでございまして、先ほど申し上げたように、日本の中小企業のマジョリティーは、従業員数人のいわゆる家族経営、生業的、なりわい的経営でございます。それが日本の経済活力なりと無関係なのかという考え方は私は正しくないと思っている。やはり、それがあってこそ日本の経済全体がここまで来たんだと。
 しかも、先ほど御紹介しましたEUの小企業憲章、さらには2008年のSBA、小企業議定書、この小企業議定書の第一は、企業家と家族経営にとってベストな環境をつくるということで、ヨーロッパにおいてもやはり家族経営というものの普遍的な価値を再認識しているところである。これは、世界共通して、やはりそうした企業というのはマジョリティーを占めているわけですね。
 特に、今先生御指摘のような被災地におきまして、この地域というのは、もちろん製造業や商業だけではなくて、農林漁業等を含めて、非常に多くのそうした家族経営、生業が地域をそのまま支えてきた。さきの日本の中小企業憲章におきましても、そうしたものの役割、これが地域の経済社会を成り立たせているということに大いに思いをいたすべきであるということを明らかにしております。この見地は今こそ非常に大事だと思っております。
 ですから、私としては、今の御指摘のように、そうした部分までも、もちろん、本当にあすも知れないという大変厳しい状況があるから、まず生活できる条件を整備するということがあることは事実ですが、先ほどの料理店主のエピソードにもありますように、そういう方々が、今のこの困難な状況を資金面、経営面において打開できれば再生できるよという確信を持って頑張ろうとしているということ、これを大事にしていくことは何より必要である。
 だから、そういう部分は、個人資産という難しい問題はあるとしても、それを言っていたら被災地の復興はできない。やはり相当思い切ったことをやらないと、まさに千年に一度の大災害であれば、千年に一度の踏み込みが必要であると私は痛感するところでございます。
 それとともに、もう一つは、そうした小規模な経営というのは、それぞれの生活と仕事をうまく組み合わせてやっているわけですが、こうした困難な状況になりますと、個々の努力だけでは当然なかなかいかない。だから、横のつながり、横の連帯、被災地の企業が生き残るに当たりまして、全国的な連帯の力がいかに大きかったかということが今回も明らかになりました。それを息長く、被災地域の中においても横の連帯を築いていく、そうした政策というものも大いに必要ではないか。
 もちろん、国がどこまでやるか、これは地方自治体の仕事の部分もあるでしょうが、今、日本の国の政策でも、中小企業基盤整備機構等が被災地復旧に非常にお金を使っていることは私もよく知っております。しかし、その力というのが一時のものに終わってしまってはいけないのでありまして、先ほどから出ている、財源問題が厳しいことはよくわかりますが、しかし、だからといって、今手をこまぬいたら後々の禍根はもっと大きなものになる。ぜひとも、ここには思い切って、先ほど言ったように、迅速に、大胆に資源投入をしていただきたいと痛感するところでございます。
○佐々木(憲)委員 ありがとうございます。
 三井参考人に、もう一点だけ最後にお聞きします。
 消費税の問題ですが、現状でも、経産省の調査を見ますと、消費税を転嫁できない中小企業が非常に多いわけであります。規模の大きなところは転嫁の比率はかなり高いんですけれども、小さい規模になればなるほど身銭を切って消費税を納める、こういうことをやっているわけですね。したがって、間接税なんだけれども、実際には中小零細企業にとっては直接税のような、そういう影響を持っているわけです。
 したがって、これを今から倍にする、10%まで段階的に引き上げる、こういう話でありますが、こうなりますと、実際に中小業者の営業にとっては非常に大きなマイナスになって、納税ができない、そういう業者が多発して倒産がふえるんじゃないか、こういう心配を持っているわけであります。
 もちろん、全体の消費に対する影響というのもありますけれども、中小企業にとって消費税の増税というものは一体どのような経営上の影響をもたらすのか、この点について参考人の御意見をお伺いしたいと思います。
○三井参考人 御指摘のように、特に消費税、その転嫁の問題というのは大変大きいものがあります。これまでの税率が引き上げられたときにも、やはりかなりそこで苦しんだという話をたくさん聞いております。これを大幅に引き上げると、それを果たして消費者にという形で転嫁できるのか、大いに問題になる危険は多大にある。
 私として申し上げたいのは、例えば、先ほど中空参考人がおっしゃったように、ヨーロッパははるかに税率が高いじゃないですか、それは事実でございます。私はそのヨーロッパで研究生活を送った経験もありますので。しかし、そのヨーロッパにおいて、高い税制も、部分的には、例えば生活必需品には安い税率やあるいは免除があるとか、いろいろな形がある。それから、消費税ではなくて付加価値税制であって、転嫁がしやすいということもあります。
 そして、何よりかより、そうしたお金を払った実感をみんなが実感できるだけのリターンがある、そうした社会保障等を含めてあるということは事実でございますから、どうしても私が心配なのは、日本は、税金を上げる話は先にあるけれども、その恩恵は全然出てこないじゃないか、それでは何にもならぬと思うわけでございまして、そこを変えていただきたい。
 特に、マクロ的なこと、財政のことを私が申し上げる立場ではございませんが、一言だけ申し上げるとすれば、一つは、やはりマクロ的に日本はお金が余っているわけですね。余ったお金が国債を買うことで回っているという先ほどの御指摘がある。この余ったお金を何とかうまく、世の中の景気をよくし、中小企業の経営を向上させ、国民の生活を豊かにする形で使えないのかと。これは世にも不思議な話であります。
 そのもとには、日本は、やはり経済力はある、いかに今停滞し、衰えてきて中国に追い抜かされつつあるといっても。逆に言えば、アジア全体の中で、今回の2008年の金融危機から日本が復興できた、復旧できた一つの大きな要因は、アジアの成長なんですね。今や日本の輸出の過半数はアジア向けでございます。そういう状況の中で、アジア全体の中で、こうした日本の持てるすぐれた競争力を生かす方法はないのかと思っているわけでございます。
 そして、最後に一つだけ、もう時間が来ておりますので。
 私は、憲章の件がありまして、中小企業家同友会という全国組織といろいろおつき合いがありますが、その同友会がことし7月に札幌で開いた総会に出した日本経済ビジョンというのを読んで感銘を受けました。
 それは何か。つまり、中小企業というのは、税金を何とか払わないで過ごそうとしているのではなくて、むしろ、法人税を払える、財政健全化に役立てるような企業にしたいと。つまり、それが中小企業の思いなんだねということは、これは心強いところがあるわけでございますから、その力を信じて、やはり、経済を活性化することで税収もふえていく、財政も健全化するという道をぜひ考えていただきたいと思うところでございます。
 以上でございます。
○佐々木(憲)委員 ありがとうございました。

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