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金融(銀行・保険・証券) (村上ファンド問題)

2006年06月16日 第164回 通常国会 財務金融委員会≪日銀報告質疑≫ 【360】 - 質問

福井日銀総裁 内規に違反 村上ファンド出資追及 日銀総裁に辞職求める

 2006年6月16日、財務金融委員会が開かれ、日本銀行から『通貨及び金融の調節に関する報告書』について報告を受け、佐々木憲昭議員が福井総裁の村上ファンド出資について質問しました。

 「日本銀行員の心得」には、「世間からいささかなりとも疑念を抱かれることが予想される場合には、そうした個人的利殖行為は慎まなければならない」と定められています。
 佐々木議員は、日銀総裁が、私的利益を目的とするファンドに出資し利得を得ていたことは、この規定に反すると追求しました。
 福井総裁は「利殖を意図していない」と弁解しましたが、佐々木議員は「意図しなくても利得が出ている」「村上ファンドがインサイダー取引で得た不当利得の一部を受け取ることにはかわりない」と批判しました。
 佐々木議員は、福井俊彦日銀総裁が、村上ファンドから収益をえていたことについて、「国民は預金利子もゼロに近いのに、その一方でぬれ手でアワのボロもうけを奨励し、その利益を自分の懐に還流させてきた」と批判しました。
 また、福井総裁が自ら明かした株保有について、報告義務は運用したときだけで、保有そのものには報告義務がないのは問題だとのべ、株など保有資産の年1回の公表の義務付けなどの検討を求めました。
 福井総裁は「委員のご指摘のとおり。改善すべきは改善する」とのべました。
 さらに、6月20日までに、村上ファンドの四半期ごとの運用報告書と決算書の提出を求めたのにたいし、福井氏は探して見つかれば提出することを約束。

 委員会後の理事会では、福井氏の村上ファンドに関する毎年の収益、納税、拠出金、残高などの資料を、20日までに提出させることを決め、閉会中に委員会を開く方向で協議を続けることで合意しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 私も、村上ファンドの問題に関連をして質問させていただきたいと思うんです。
 福井総裁は、村上氏の志を激励する意味で富士通総研の有志数人で資金を拠出したというふうに言われました。総裁、私が聞いているところでは、当初、富士通総研として出資をしようということで、最初稟議書を回された、しかし、シンクタンクとしては事業活動をするわけにはいかないということで、これが却下されまして、やむなく有志で出資をする、こういうことになったと聞いておりますが、これが真相ではありませんか。
○福井参考人(日本銀行総裁) 私は、富士通総研理事長、富士通総研はコンサルティングファームでありますが、その中のシンクタンク、リサーチの部分の研究活動をレベルアップする責任を負っておりまして、富士通総研の経営と申しますか、マネジメントそのものには責任を負っておりませんでした。したがいまして、今おっしゃいました事項については、私は全く承知していない事項でございます。
○佐々木(憲)委員 この村上ファンドへの出資の話というのは、自然に持ち上がったのではなくて、福井さんが有志に持ちかけた、こういう経過ではないんでしょうか。
○福井参考人(日本銀行総裁) そういう事実は全くございません。
 村上氏は、私が富士通総研に行きます前から富士通総研には出入りしていた人であります。一度国会でも経緯を御説明申し上げたかと思いますが、私の参ります3年前からこのシンクタンクが設けられ、初めてそのシンクタンクを設けるときに、私が参ります前の当時の富士通総研の幹部が、多くの方々から知見をかりて、シンクタンクを創設する仕事を始められた、そのときに村上氏からもいろいろアドバイスをいただいた、そういうことが始まっておりますので、流れからいきまして、私がそういう融資についてイニシアチブをとるという立場には全くございませんでした。
○佐々木(憲)委員 総裁就任時に私だけがあの時点で抜け出すということは適当でないというふうに答弁でおっしゃっていましたが、自分自身が相当思い入れを持ってこの1000万円を出資した、そういう経過があったから抜けることができなかったということだと思うんですが、いかがでしょうか。
○福井参考人(日本銀行総裁) 拠出について私がイニシアチブをとったわけではありません。
 ただ、村上氏のコーポレートガバナンス改革、これについての志については、私は高く評価しておりました。そして、2003年3月の時点でも、村上氏の志を疑うに足りるだけの材料は私の頭の中にはございませんでした。
○佐々木(憲)委員 それでは、経済同友会の幹部もされていたわけですが、同友会の中に、初日会というインナーサークルがあると聞きましたが、御存じですか。
○福井参考人(日本銀行総裁) 同友会のインナーサークルに、初日会とおっしゃいましたが、そういうサークルは私は承知しておりませんし、少なくとも、あったとしても私は入っておりません。
○佐々木(憲)委員 その会のメンバーの中にオリックスの宮内会長なども参加をしていたということを聞いておりまして、その中に福井総裁もいたというふうに聞いておるんですが。今そういうふうに否定されたわけですけれども、この宮内会長と福井総裁というのは、同友会の中では相当親しい関係にあったと聞いておりますが、どういう関係ですか。
○福井参考人(日本銀行総裁) 同友会の中に初日会というのはないというふうに申し上げましたけれども、恐らく委員のおっしゃったのは初亥会のことではないか、恐れながら。
 なぜ初の亥かというと、昭和10年のえとが昭和になって初めてのいのしし。その昭和10年生まれの民間の人たちの会があります。その会の中では、オリックスの宮内さん、私、ともに同じ昭和10年生まれですから、属しておりまして、そういうつながりでは大変親しい関係にございます。
○佐々木(憲)委員 この宮内会長は村上ファンドの生みの親と言われておりまして、村上氏が投資会社を立ち上げるときに、創業資金38億円のうち、オリックスが約30億円を拠出していると言われております。
 その会のメンバーの多くがこの村上ファンドの出資者になっているということですが、今おっしゃったその会のメンバーというのは村上ファンドに相当出資をしていると思うんですが、どのような状況なんでしょうか。
○福井参考人(日本銀行総裁) 初亥会というのは、もう本当に昭和10年生まれの財界人が中心ですけれども、これは仕事を離れての懇親の会でございます。したがいまして、そういう村上ファンドへの出資というふうな話が、少なくとも私が参加しております会合の中で出た覚えは一度もございません。そして、初亥会のメンバーがどういうふうに出資しているかという事実も、私は全く承知しておりません。
○佐々木(憲)委員 ここに村上ファンドの「募集要項」というのがありまして、これは投資者に対して説明をする文書であります、皆さんにはその一部をお配りしてありますけれども。
 この「募集要項」によりますと、「報告」というのがあります。これは資料の中には入っておりませんが、「四半期毎に運用報告書、年度毎に監査済決算報告書を送付」する、つまり、投資をした方にこの書類を送付するというふうに書かれております。これは2001年7月につくられた「御案内」という文書ですけれども、その中にあります。
 福井総裁は、四半期ごとに運用報告書あるいは年度ごとの監査済み決算報告書というのを送付されているはずですが、当然手元にありますよね。
○福井参考人(日本銀行総裁) 途中の期のレポートについては、私はよく見ておりません。決算報告書については、納税と関係がありますので、納税関連部分は毎年見ております。
○佐々木(憲)委員 この報告書も含めて、資料として提出していただけますか。
○福井参考人(日本銀行総裁) 私は、そこまで厳密にそういうものは保管していないというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 保管をしていなくても、これは投資をした方には必ず送付をされるということになっておりますので、その所在を検討していただいて、可能であれば火曜日の理事会までに提出をしていただきたいと思います。
○福井参考人(日本銀行総裁) 探してみますけれども、恐らく、そういう中間段階のレポートについて私はほとんど見ておりませんので、すべて散逸している、処分しているという可能性の方が強いと思います。
○佐々木(憲)委員 これは、各個人に対する運用報告書の資産残高、あるいはその期その期の利益、それから先ほど確定申告ということで資料の提出をお約束いただいたわけですけれども、それと同時に、この運用報告書がもしあれば、今何かなくなったみたいな話をしていますけれども、当然、探して、あった場合には提出していただくということで約束いただきたい。
○福井参考人(日本銀行総裁) 探してみたいと思います。しかし、私の記憶では、そういうものは残っていない可能性の方が強いと思います。
○佐々木(憲)委員 ともかく探していただくということですね。
 日銀法の32条には、職務に専念する義務、私企業からの隔離その他の服務に関する準則を定めるとされているわけです。準則によりますと、外部との接触に当たっては疑惑を招くような行為は厳に慎まなければならないとされています。また、「日本銀行員の心得」の中には、現担当職務と個人的利殖行為との間に直接的な関係がなくとも、過去の職歴や現在の職務上の立場等に照らし、世間からいささかなりとも疑念を抱かれることが予想される場合にはそうした個人的利殖行為は慎まなければならない、こういうふうに定められていますね。
 日銀の総裁が、私的利益を目的とする私募ファンドへの出資を継続し、毎年そこから利得を得ていたということになりますと、明らかにこの規程に違反すると思いますが、いかがでしょうか。
○福井参考人(日本銀行総裁) そもそも利殖を意図しておりませんし、一任勘定でございますので、私の指図で投資行為が左右されるものではございません。そういう意味では、切断されたものでございます。
○佐々木(憲)委員 それはおかしいですね。意図する、しないにかかわらず、利得を得ているわけですよ。それで、毎期ごとにその報告があるわけです。利得があるからこそ申告所得を明確にされているわけでしょう。税金を払っているわけですから、所得の。したがって、所得があるわけですから、これは明らかに利得なんですよ。その意識がないというのは、私は非常に重大だというふうに思います。
 いささかも国民に疑念を抱かせるようなことをしてはならない、個人的利殖行為は慎まなければならない、こうなっているわけですね。これに全く触れない、そういうふうに解釈すること自体、世間の常識からずれていると思いますよ。どのようにお感じですか。
○福井参考人(日本銀行総裁) 私は、一任勘定として、そのまま全くの操作なく持っていたということでありまして、所得申告は、これは結果として出てくる利益に対して正直に申告を申し上げている、そういう事実でございます。
○佐々木(憲)委員 そういう理屈は世間には通用いたしません。
 昨日の参議院予算委員会で、株式を保有しているとおっしゃった。それは社外重役をなさっていた幾つかの会社の株の保有であると。それ以外の金融資産というのはありませんか。
○福井参考人(日本銀行総裁) 委員はどういう概念で金融資産とおっしゃったかですが、普通、それ以外のものというのは大部分、現金、預貯金でございます。恐らく端数で何かあるかもしれませんが、大部分、現金と預貯金でございます。
○佐々木(憲)委員 元日銀審議委員の中原伸之氏は、僕らが日銀に入ったときは、つまり審議委員として入ったときは、保有株式などは信託銀行に預けろと言われた、そしてそうしたと。ところが、福井総裁はなぜ信託銀行にこれを預けなかったんでしょうか。
○福井参考人(日本銀行総裁) 内部の規律では、保有していた有価証券等をその後売買して運用するというふうなことが原則として難しい規制になっているわけです。したがいまして、信託で寄託するというのは確かに一つの方法ですが、あるいは保有したまま全然動かさない、それも一つの方法であります。
○佐々木(憲)委員 保有していて動かさない動かすということは、保有そのものがあるかどうかというか、まず報告をした上で、それで、それが動かして一体どういう利益になったか、こういうことになって初めて全容がわかるわけであります。日銀の服務ルールが、その点、私は非常に問題があると思う。
 保有そのものをしていても、または保有したまま株が上がっても、つまり何の規制もない。これは国際的にいっても全く甘い、抜け穴のようなルールでありまして、当然、今後、この服務規律を検討していく場合には、保有そのものについて報告義務を課す、あるいはその資産公開については閣僚並みに行う、それから株の保有資産については年一回の公表を義務づける、こういうことを検討すべきだと思いますが、総裁、いかがですか。
○福井参考人(日本銀行総裁) まず、株式等の保有の内部ルールにつきましては、公務員のルール等を参照しながら現行規制ができております。より明確にする必要があるかどうか、委員の御指摘のとおり恐らくあるんでしょう、そこはきちんと検討させていただきまして、改善の余地があれば改善をいたします。
 公開につきましては、先ほどからも幾たびかお答えしておりますけれども、職務の公正さの担保ということと、プライバシー、財産権の保護という法理の兼ね合いをよく考えながら検討させていただきます。
○佐々木(憲)委員 私は、しっかりとした、こういう規律を改善していくということが大事だということを指摘しておきたいと思います。
 それから、私の手元にある資料によりますと、村上ファンドの投資方針として、こういうことを書いているんですね。対象となる会社の株式を購入後、対象企業の経営者または大株主に積極的に働きかける。それで、投資回収として、株価が上昇したときはこれを市場で売却する、第三者から公開買い付けが行われた場合には最も高い価格を提示した者に対して売却すると。つまり、株の保有は売却益を得るためのものであるということを明確にここに書いているわけであります。
 それから、こうも書いているんですね。大株主上位10位になることを目標とする、10位以内に入ることを目標とする、しかし、10%以上の大株主にはならない、なぜならば、証券取引法上の主要株主は6カ月以内の利益実現が制限されるからだと。つまり、いつでも売り抜けるように法の網をくぐるということをここで書いてあるわけです。
 このような手法については、MアンドAをやると見せかけて会社にかなり強引な要求を出す、そして株が上がる、それを売却して売り抜ける、これをファンドの主要な目標にしている。つまり、企業のあり方を改善していくとか、そういう問題じゃないんです。自己の利益、株価の上昇、これのみを目的としたやり方をしている。
 しかも、こういう手法というのは、従来グリーンメーラーとか株価操作に近いとも言われていまして、この資料にありますように、そういう形でどんどんどんどん資産を、運用残高を膨らませていった。01年には139億円、これが06年には4444億円。莫大な、大きなファンドになっているわけであります。
 しかも、その稼いだお金が総裁の懐に入っている。しかも、それを可能にしたのは福井総裁が進めてきた超金融緩和政策。じゃぶじゃぶお金を市場に出して、こういうやり方を大いに促進するような政策をみずから行ってきたということになるわけです。
 総裁、そういう関係についての、自分がそこから利益を得ていたこと、それから金融緩和政策がこのような、株の利得だけ、これを目標にしたやり方を可能にしたという自覚はありますか。
○福井参考人(日本銀行総裁) 今お読みになった文書を私は読んだことはないんですけれども、恐らく、ファンドの運営の方針、つまり財務の面を書いたものだと思います。
 村上氏の当初の、そういうファンドを使ってのコーポレートガバナンスへの働きかけというのは、いわゆる物言う株主として、経営の近代化のために株主の立場から積極的に物を言っていく、こういうことであったと思います。両々相まってうまく運営されれば、当初の志のとおり物事が進む、市場からの評価も得られるということであったと思いますが、恐らく、お金がたくさん集まり過ぎますと、委員がおっしゃったとおり、財務の面のルールというものが知らぬうちに優先されるようになった可能性はある、私はよくわかりませんが。
 私が遠目に見ていて、私の心の中に彼の行動が当初の志のとおりであるのかどうか次第に疑念が募ったというのは、恐らく、背景としては、おっしゃるような財務の面の行動がだんだんより強く前面になるようになったということと裏腹の関係である可能性があるというふうに思います。
 金融政策は全く別の観点で、やはり日本経済全体として、デフレスパイラルのリスクに陥っては経済はもとに戻る可能性すらなくなる、この危機的な状態に対する対応ということでやってきたわけでありまして、全く別の問題だという認識でございます。
○佐々木(憲)委員 財務のルールというのは、2001年からずっとこのルールを使っているわけです、ここに私が資料を持っているのは2001年の段階のものですから。それをずっとやっているわけです。何も、なかったものがここで出てきたんじゃありませんので。したがって、そこで得た利得が総裁の懐に入っている。しかも、その一部が、村上ファンドのインサイダー取引で得た不当利得も入っているわけです。
 一方で、今国民は、額に汗して働いて、預金に対して利子が全くつかないという状況にある、増税が押し寄せている、あるいは営業も大変な状況にある。そういう中で、ぬれ手でアワのぼろもうけを奨励し、その利益を自分の懐に還流させてきた、そういう自覚がほとんどないというのは、私は問題だと思うんですね。
 日銀総裁がこれを受け取るということをやってきたことは、日本の中央銀行が世界の中での信用を失墜するということにもつながっているわけであります。私は、総裁就任時にこれをきっぱりと清算しなかった、そのことがこういう事態にまで発展しているというふうに思います。
 したがって、このことを、反省の言葉はほとんど聞かれない、持っていて当たり前、そういう状況で、インサイダー取引の利益が懐に還流しても、これは自覚がほとんど見られない。そういう意味で、私は総裁を辞任すべきだと思いますが、いかがですか。
○小野委員長 福井日本銀行総裁。
 なお、時間が大きく過ぎておりますので、簡単にお願いします。
○福井参考人(日本銀行総裁) 当初の時点と最終的に起こった結果との間の非常に大きな落差、そういう大きな落差が起こるということ自身は、私は全く予見できませんでした。予見できなかったということを含めて、もちろんそれは私の重要な反省事項だということは申し上げさせていただきます。
 なお、一貫して、私は利殖のためにやっているわけではない。最終的に利益が出た場合には、これは今までは利益は一度も現金として受け取っていないわけですので、決算の終了後、利益として固まったものが出れば、それは、繰り返し申し上げておりますが、私自身の利益のために使うものではない、どなたがごらんになっても納得のいく使途にすべて振り向けさせていただきます、こういうことでございます。
○佐々木(憲)委員 資料が出た段階で、またやらせていただきます。

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