2006年06月22日 第164回 通常国会 財務金融委員会≪閉会中審査≫ 【361】 - 質問
福井日銀総裁が村上ファンド出資問題で「契約先はオリックス」と認める
2006年6月22日、財務金融委員会の閉会中審査が行われ、佐々木憲昭議員は、6月16日に引き続き、日本銀行総裁の村上ファンド出資について質問しました。
佐々木議員は、福井総裁の投資先が、政府の規正改革・民間開放推進会議の宮内義彦議長が会長を務めるオリックスが集金マシンとなり、村上世彰容疑者が運用してもうけ、それに便乗してオリックスも利益をあげる仕掛けだったと追求。
福井総裁が1000万円を出資した「アクティビスト投資事業組合」は、契約先はオリックスだったと指摘。福井総裁は、これを認めました。
オリックスが集めたカネを、上部組織の「統合アクティビスト投資事業組合」に出資し、その資金を、さらに村上容疑者が関与する英国領ケイマン諸島にあるファンドに出資して、運用する仕掛けだったことが、内部資料で明らかになりました。
佐々木議員は「オリックスという親亀の上に、村上容疑者という小亀が乗っていたというのが実態だ」と迫りましたが、福井総裁は「村上氏が親亀だと理解していた」とのべました。
さらに、オリックスが「業務執行組合員」として、一連の出資・運用の仕組みのもとで特別な権限を握っていたことを、「契約書」をもとに指摘。
出資者の「一般組合員」には、追加出資等が認められないのに対し、オリックスはいつでも任意に追加投資、中途解約ができ、手数料として運用資金の2%が自動的に転がり込みます。
佐々木議員は、「オリックスが特別な権限を持ち、たいへんな利得をうる仕掛け」だと追及しました。これにたいして、福井氏は「承知していない」とのべました。
佐々木議員は、日銀が組合契約書を同委員会の理事会に提出したものの、公開を拒んでいることについて、「オリックスが儲かる仕組みをつくっていたことを知られるのが困るからではないか」と批判しました。
また、実態解明のために、オリックス宮内会長の参考人招致は不可欠だと求め、福井総裁には総裁辞任をあらためて求めました。
また、この日の理事懇談会で、日銀の福井俊彦総裁の就任以降の給与所得と金融資産の内訳を27日の理事懇談会に提出することが確認されました。
宮内義彦・オリックス会長の参考人招致については引き続き協議することになりました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
理事会に契約書が提出をされました。
福井総裁にお伺いしますけれども、この契約書はどこと契約したものなんでしょうか。
○福井参考人(日本銀行総裁) 私が直接契約をした部分は、恐らくオリックス株式会社かなというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 そのとおりでありまして、配付した資料を見ていただきたい。
契約は、一般的に村上ファンドと契約したのではなくて、2001年7月につくられた「アクティビスト投資事業組合のご案内」というリーフの一部、今配付されておりますが、ここでは「組合員・お客様」とある、ここが福井さんでございます。組合契約をオリックスと結ぶことになっているわけであります。
理事会に配付された契約書にも、2001年3月27日に署名されたオリックスの代表取締役宮内氏の名前もありまして、福井さんの契約書が添付されております。理事会に対してこの契約書を公開することを、日銀の側が、他の組合員の迷惑になるということで、なかなか提出されませんでした。また、理事会に出した後も、この理事会限りでそれ以上のところに一切出すな、こういう話でありますが、その理由として、他の組合員の迷惑になるというわけですけれども、他の組合員といっても、一般の組合員ではなくてオリックスという業務執行組合員に迷惑がかかる、こういうことだったんじゃないんですか。
○福井参考人(日本銀行総裁) オリックス、業務執行組合員として何かを守るべき利益を持っているであろうということはあると思いますが、恐らく、こういう重層的な構造の組合ないしはファンドでございますので、こういった小さなユニットは私だけでなくて別に幾つもユニットがある、そういうユニットの中に入っている一般的な投資家の方に類推的な作用が及ぶ、多分そういうリスクがあったのではないかというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 それはちょっと私は違うと思いますね。
この契約書は、確かにオリックスとアクティビスト投資事業組合の契約を結ぶわけでありますが、このアクティビスト投資事業組合というのはたくさんあるわけですね。実際に、第一回アクティビスト投資事業組合第36号組合契約書というのにサインをされているわけです。したがって、36号というわけですから、数が相当、こういう事業組合があると想定できます。
この契約書には、オリックスに特別の権限を与えております。その権限といいますのは、例えば、業務執行組合員、オリックスのことですが、「本組合員のために適切と考える方法で、管理するものとする。」財産の管理ですね。そして、「統合組合から分配された金銭については全て業務執行組合員の裁量により管理するものとする。」つまり、オリックスの裁量によって管理される。その上で、このように書いております。
「オリックス株式会社は、自己勘定で、リミテッドパートナーとしてパートナーシップに投資しており、本組合設立後も、任意に追加投資を行い、又は、当該投資の全部又は一部を処分ないし中途解約を行うことがあり得る。」償還をすることがあり得る。そして、「本組合契約の成立によって、オリックス株式会社のこれらの行為は何ら制約されないものとする。」つまり、オリックスは何でもできるわけです。自己勘定で、あっ、これはもうかりそうだというときに自分で独自に投資もできる、こういう仕掛けができているわけであります。
しかも、「出資金の払込みが遅滞したような場合には、出資金の未払込残高に対する年率14%の遅延損害金を組合員に対して要求することができる。」これも相当法外な利得を得る仕掛けができている。しかも、募集手数料は2%、これは出資金の2%ですから、膨大なお金が自動的に転がり込むことになっているわけであります。
その一方で、一般の組合員はどうかといいますと、「追加出資、および新規の組合員の加入は認められない」、追加投資はできないんだよ、一回投資しただけですよ、こういう仕掛けになっているわけであります。しかも、「設立日から一年間は、原則として、本組合を脱退し、あるいは一般組合員としての持分の一部を解約することはできないものとする、」こういう仕組みであります。
これは、我々は余りこんなこと、投資したことは一度もありませんのでわかりませんけれども、余りにもオリックスが独特の、特別の権限を持っている契約書でありまして、一般の組合員と全く違う、大変な利得を得る仕掛けがここでつくられているというふうに思います。
公開されることで困るのは、こういう仕掛けをつくったオリックスの側ではないかというふうに思いますが、福井総裁、そうじゃありませんか。
○福井参考人(日本銀行総裁) こういう仕組みを通じてオリックス株式会社という具体的な会社がどういうふうに収益を上げる構造になっているかというところまでは、私も、詳しく分析したり承知したりしておりません。
私が理解しておりますことは、今おっしゃいました、私が調印した一番最小単位の組合は、業務執行組合員がオリックス株式会社ですけれども、基本的な機能は、この小さな単位のさらに上部の統合組合にこの小さな単位の出資金を投資する、ここが根幹の部分だというふうに、シンプルに言えばその部分を中心に理解しておりました。
○佐々木(憲)委員 いや、私は、この資料の公開、契約書の公開を組合員の迷惑になるというふうにおっしゃったので、それは違うんじゃないかと。一般組合員は名前は公表していないわけです、これは公表しないのが前提ですから。ですから、この契約書を公表したからといって、個別組合員に直接不利益が及ぶことはありません。
一番肝心なのは、オリックスがこういう仕掛けでもうかる仕組みをつくっていたんだということが一般的に知られてしまうということが大変困ることだったのではないか。だからこそ、この契約書を出すな出すな、出したくない、理事会限りだというふうに言ったのではないか。
この村上ファンドの仕組みは、配付資料にありますように、一番下に今言ったアクティビスト投資事業組合があって、これが多数あるわけですね。そして、集金マシーンになっているわけです。オリックスが中心になって多数つくられておりまして、そして、その集めたお金をまとめて統合アクティビスト投資事業組合に出資をする。さらに、MACジャパン・アクティブ・シェアホルダー・ファンドに出資をする。そして、運用は一番上のこの部分が行う、ここに村上氏が関与しているという形になっているわけであります。
村上容疑者がすべて仕切っていたというふうにおっしゃいましたけれども、そうではない、いわばオリックスという親ガメの上に村上という子ガメが乗っていてというのが実態ではないのかというふうに思うんです。そういう状況、仕組みになっているんじゃありませんか。
○福井参考人(日本銀行総裁) 改めて不明をわびることになるかもしれませんが、私は、当初以来、発足以来、一貫して村上氏が今のお言葉をかりれば親ガメと、あとは組織運営上の組織、そういうふうに割り切って理解しておりましたけれども、親ガメ、子ガメが逆転しているかどうかは、私、よくそこのところはわかりません。
○佐々木(憲)委員 いや、私も何も逆転していると言っているわけではありませんので。
問題は、この宮内会長を中心とするオリックスがすべて集金マシーンになり、しかも村上氏がこのお金を全部運用してぼろもうけを上げていく、それに便乗して、独自にオリックス自身も利益を上げるという仕掛けができているということなんですよ。
したがって、私は、この村上ファンドの実態を解明するためには、どうしてもオリックスの宮内会長を参考人としてこの委員会にお呼びいただきたいと思いますが、委員長、いかがですか。
○小野委員長 この点は、先ほどもお答えをいたしましたが、理事会にて諮らせていただきます。
○佐々木(憲)委員 まともなMアンドAをやっているのではなくて、キャピタルゲイン、いわば利ざやを稼ぐようなことを目的にしてやっているということが、この契約書の中を見ても明らかであります。
私は、前回紹介をいたしました、「御参考資料」という、出資者に対して説明をするこの文書を見まして、ここにケーススタディーというのがありまして、どんなことを実際に今までやってもうけてきたかということを書いているわけであります。
例えば、昭栄という投資先ですね。買い付けのときの平均単価が772円。ところが、これに対して、昭栄に対して村上氏が提案をする。社長と面談の申し入れ、不要資産の売却等々の要望を出す。それに対して対応は、株主とは会わない、話をする必要もないという対応だった。そのやりとりの結果、売却が行われて、TOBに応募し全株を売却した。そして、リターンが29.53%、保有期間4カ月、物すごい利得を上げているわけであります。
さらに、東急電鉄。平均単価259円で買い付けをして、そして不要な資産、子会社、事業の整理統合等の提案を行い、その結果、株価が上昇し、平均470円で全株を売却し、リターンが82.63%、保有期間が約5カ月、こういう事例がたくさんあるわけです。
村上氏のこの契約書によりますと、特定のねらった会社をターゲットにして、そして集中的に巨大な規模の資金をそこに、株を購入する形で株式を買い占めていく。そういう形で、今度提案をし、その提案によって株価がどんどん上がっていく、上がったところでどんと売り抜けていく。これは明らかに、その会社をよくしようという行為ではございません。明確にこれはキャピタルゲインそのものを目的とした、まさにグリーンメーラーと言われるような投資行為だ。こういう、極端に言いますと株価操作に当たると言わざるを得ないようなやり方なんです。
こういうことをやっていたということは、2001年、新しくこのファンドが、今福井総裁がお入りになっているこのファンドが発足するときに、既に今の資料はすべて出ておりました。この資料を当然見ているはずでありますし、また、村上氏から説明を聞いているはずなんです。どうしてその時点で継続をするという決意をされたのか。私は、この継続それ自体が非常に大きな問題があったというふうに思いますが。
同時に、総裁になったのは2003年ですけれども、その時点でなぜそれをやめなかったのか。私は、これを知っている立場、知り得る立場というか、当然知っていなきゃならぬ話ですから、そのときになぜやめるという気にならなかったのか、理由を聞かせていただきたい。
○福井参考人(日本銀行総裁) 個々の投資活動について、深く私は立ち入った覚えはございませんし、深くそのことを習熟しながら次のことを考えたということも、大変恥ずかしいんですけれども、それはございません。
私の一般的な理解は、こういうコーポレートガバナンスの改善を求める投資というのは、提案が本当にいいかどうか、企業がそれを生かせるかどうか、そういう形で企業価値が上がってリターンが上がるということであれば、当初の目的のとおりだと。
しかし、そこのところを、何か時間軸を焦るとか、もうけの方に先に目が早く移って、リターンを上げることだけに行動が走るということであれば、おっしゃったとおり、グリーンメーラーの方に走りかねない。
そういったことは素人の私が判断できることでなくて、個々の投資行為を市場の中でどう評価されるか、市場の評価がよかった場合には自信を持って進めばいいし、悪いときにはみずからの行為を修正できるかどうか、そこが分かれ目で、その連続線上の中で彼の価値が決まっていく、そういうふうに認識しておりました。
○小野委員長 佐々木憲昭君。なお時間が過ぎておりますので、よろしくお願いします。
○佐々木(憲)委員 私はそれはおかしいと思いますね。当初の目的というのが、今言ったようなことを、実績はこうですよ、これからもこれをやりますよと言っているんですから。最初からこういう体質だったんですよ。
最後、一点だけお伺いします。
○小野委員長 はい、許可します。
○佐々木(憲)委員 2月に村上ファンド側からオリックスに対して提携解消の申し出がある、村上ファンド側から申し出があって、4月にその合意をして、オリックスはファンドから撤退する、こういう話につながっているわけです。
2月の時点で、福井総裁の側に村上ファンド側から、提携解消といいますか、解消の申し入れというものはありませんでしたか。
○福井参考人(日本銀行総裁) そういう接触は全くございませんでした。そういう事実は全く承知しておりませんでした。
○小野委員長 佐々木憲昭君、時間でございます。
○佐々木(憲)委員 以上で終わりますが、世論調査を見ましても圧倒的多数は、総裁を辞任されるのが望ましいという声なんです。ぜひ、その声にこたえていただきたいというのを最後に申し上げまして、終わります。
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