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税制(庶民増税・徴税), 財政(予算・公共事業), その他 (児童扶養手当・子ども手当)

2011年08月10日 第177回 通常国会 財務金融委員会 【629】 - 質問

民主・自民・公明の子ども手当廃止「国民への裏切りだ」と批判

 2011年8月10日、財務金融委員会が開かれ、2011年度予算の財源となる赤字国債発行のための特例公債法案について、菅直人総理が出席した質疑と討論・採決が行われました。
 佐々木憲昭議員は、民主、自民、公明の3党が合意した子ども手当の廃止は「国民への裏切り行為」と追及しました。

 佐々木議員は「3党だけで協議し結論を押し付けるやり方は国会の民主的運営をないがしろにするもの」と指摘しました。
 その上で、民主党幹部が「廃止ではない」「理念は変わっていない」などと述べていることは事実に反すると批判。自民党幹事長や公明党政調会長が「廃止」を明言しており、民主党の文書(2007年)でも児童手当の特徴として家計への支援をあげて所得制限を行い、年齢などによって支給額も異なることを明記していることも紹介。3党合意の内容をみれば、現行の子ども手当の廃止は明らかだと主張しました。
 また、支給額の減る世帯も少なくないと指摘。小宮山洋子厚生労働副大臣は「今の子ども手当は事実上廃止」と認めつつも、「基本的な考え方は変わっていない」と釈明しました。
 佐々木議員が「3党協議では保育所整備など子育て支援をどうするかという議論をした形跡がまったくない」とただしたのに対し、小宮山副大臣は答えられませんでした。
 菅直人総理は、子ども手当の廃止などと引き換えに特例公債法案を通そうとしていることについて「きわめて重要な意義がある」と正当化しました。
 佐々木議員は、「子育ての問題を政局の取引材料にしてもて遊ぶことは許されない。公約違反、国民への裏切り行為だ」と批判しました。

 質疑終局後、討論・採決が行われ、特例公債法案は、民主、自民、公明の賛成で可決されました。日本共産党は反対しました。
 11日には、本会議で特例公債法案、民主・自民・公明などの賛成多数で可決されました。日本共産党、みんなの党は反対しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 今回、民主、自民、公明三党の合意があったということで、急遽、特例公債法案の締めくくり総括質疑をやることになったわけであります。三党合意を見ますと、子ども手当を廃止し、児童手当に戻すこと、高校無償化などの見直しを行うこと、こういうことで一致したということでありますが、国民生活の基本にかかわるこういう問題を、三党だけのいわば密室協議ということで、結論を国会に押しつけるというやり方は、国会の運営上、全体をないがしろにするものだと言わざるを得ません。初めにこの点を厳しく指摘しておきたいと思います。
 そこで、菅総理にお聞きをしたいと思いますが、民主党が総選挙の目玉政策として掲げて、曲がりなりにも実施してきた子ども手当が廃止されるということになったわけです。このことについて、一部のマスコミは、民主党が白旗を掲げた、こういうふうに報道しております。民主党代表でもある総理、どのような感想をお持ちでしょうか。
○菅内閣総理大臣 私は、子ども手当のもともとの考え方、日本の社会保障は比較的高齢者に手厚く進んできたわけでありますが、子供も社会がしっかりと支え、育てる、そのための大きな施策として子ども手当を提案させていただいてきたと考えております。
 今、廃止という言葉を使われましたけれども、私は、子ども手当について、まず初年度について1万3千円の子ども手当法案を成立させていただき、2年目に関して、この一連の経緯の中で、10月までの、年度内の当面の問題と、来年度においては児童手当の改正という形でつないでいくということではありますけれども、私たちが申し上げた子ども手当そのものが全くゼロに戻って、以前の児童手当に戻るということではありませんで、私の理解では、子ども手当の内容は、当初申し上げたとおりには残念ながら実現できておりませんけれども、相当程度はその次の段階にも生かされてくる、このように理解をいたしております。
○佐々木(憲)委員 廃止という言葉について、そうではないというような意味をおっしゃいました。
 自民党の石原幹事長は、8月4日の記者会見でこう言っているんです。子ども手当を廃止して24年度から児童手当にするという案について三党間で合意ができたと。
 公明党の石井政調会長は、8月7日付の公明新聞で、「現行の「子ども手当」を2012年度から廃止し、自公政権時代の「児童手当」をベースにして拡充する方向になりました。」というふうに言っております。
 子ども手当を廃止するということははっきりしているんじゃありませんか、総理。
○小宮山厚生労働副大臣 今行っております子ども手当は事実上廃止ということかと思いますけれども、私どもの、子供を社会全体で支援する、子供の育ちを支援するという、その基本的な考え方は変わっておりません。
 今ある恒久制度が、児童手当の法律が恒久制度なので、それに乗せる形で、両方の意見をあわせて新しい手当をつくっていこう、そういうことだと考えております。
○佐々木(憲)委員 では、子ども手当と児童手当の本質的な違い、総理にお答えいただきたいんですが、これはどのようにお考えですか。
○菅内閣総理大臣 まず、本質的という前に、先ほども小宮山さんからもありましたけれども、具体的に言いますと、もともとの児童手当は、これはもうよく御承知だと思いますが、ある水準があるわけですけれども、給付水準でいえば、三歳未満においては、児童手当では1万円であったのが、今回の合意では1万5千円になっております。また、中学生については、児童手当は支給の対象になっておりませんでしたけれども、今回の合意でも1万円の支給が確保されることになっております。
 そういった意味で、私どもが提案をした子ども手当というものが、内容的には来年度からもきちっと、全部ではないにしても相当程度は生かされてくる、このように考えております。
 今、本質的なことについて言われましたけれども、いろいろな見方、考え方はありますが、私が理解をしておりますのは、先ほど申し上げたように、子供を育てていくということについても、これは、社会がその責任を両親と分かち合うという立場で、子供たちの健やかな育ちを社会的にも責任を持っていくということである、こう理解しております。
○佐々木(憲)委員 私は本質的な違いは何かというふうにお聞きをしたんですが、どうも明確な答えがないようで、お配りした資料を見ていただきたいんです。
 これは、民主党の前回の総選挙のときのマニフェストであります。「民主党は、すべての子どもたちに教育のチャンスをつくります。 社会全体で子育てする国にします。」こういうふうに書いてあります。
 二枚目を見ていただきますと、これは、民主党がつくった2007年12月26日付の「現行の児童手当と民主党の子ども手当の比較」、こういう表であります。
 これによりますと、児童手当は、家庭における生活の安定に寄与することとされ、所得制限があるわけですね。これに対して子ども手当は、社会全体で子供の育ちを支えるものであって、所得制限をなくし、すべての子供に支給する、こういうものであります。
 基本的な違いは、こういうところにあるんじゃありませんか。
○小宮山厚生労働副大臣 民主党のそもそもの考え方としては、先ほど申し上げたように、子供は社会全体で支援をする。両親が、家族が育てるのはもちろんですが、社会全体で支援をする。子供の育ちを支援するということを目的に書いておりました。
 自公政権で行われた児童手当は、家計というか、生活の安定をということがございました。
 それで、今回、その児童手当の法律に乗せて新しくつくるということなので、そこは、これからどういう形でやっていくかは、今度また、来年度、正式に恒久的な法律をつくるときの話し合いだと思っております。
 それから、所得制限につきましては、私どもはかけないという方針だったんですけれども、これにつきましても、自公政権のときは、所得制限をかけたところには何もありませんでしたが、今回の合意では、所得制限をかけた世帯に対しましても、税制上あるいは財政上の措置をとる。ですから、財政上の一定額を支給するか、あるいは税制上の税額控除などを行うということで、そういう意味では、すべての子供に手当を支給するという私どもの考え方は維持をされているというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 それは違うと思うんですね。
 この文書を見ていただければ明確なので、児童手当は、家庭における生活の安定を目的として、年齢や出生順位により金額が異なるものであると書いているじゃありませんか。しかし、子ども手当は、すべての子供を社会全体で支え、手当を支給するものである、出生順位にかかわらず、皆同額の手当額にいたします、こうなっているわけですね。
 今回合意された内容はどうかといいますと、まず、所得制限を入れた。これは「所得制限」と明確に書いているじゃありませんか。年齢や出生順位によって金額が異なっておりますね。
 明らかに子ども手当の理念を放棄し、自民・公明政権時代の児童手当に戻したということははっきりしているんじゃありませんか。総理、どうですか。
○小宮山厚生労働副大臣 確かに、マニフェストでお約束したとおりには今行われていないということは、震災復興の財源が要ることなども含めて、実行できないところについてはおわびを申し上げないといけないと思いますが、もとのままの制度に戻すということではなくて、先ほど申し上げたように、所得制限をかける世帯にも一定程度の手当てをするということも内容としては合意をしているところでございます。
 今回合意をしたのは、「児童手当法に所要の改正を行うことを基本とする。」、改正を行うわけですから、その中に私どもが申し上げた子ども手当の考え方も盛り込んだ形で、しっかりとこれから来年度に向けて各党でまたお話し合いが進むものと思っております。
○佐々木(憲)委員 それは全く違うと思うんです。
 自民党の石破政調会長は、8月4日の記者会見でこう言っているんですよ。理念は間違いなく変わった、法目的を読めば、児童手当の方は家庭、家計の安定に寄与するということがあって、家計、家庭ということが法目的の中に入っている、そうすれば、理念が変わったということ、どう民主党が言おうとも間違いのないことだ、それは断言をする、こう言っているんです。
 総理に聞きますけれども、この石破政調会長が言っていることは間違いである、こういうことなんでしょうか。
○小宮山厚生労働副大臣 各党いろいろな御意見がある中で真摯に御協議をいただいて、今回の合意ができたと思っております。ですから、これから、来年度の恒久法につきましては、三党でまたそれぞれのところで話し合いをして合意をしていくということでございますので、今、その子ども手当の理念がすべて変わったということではないということを申し上げたいと思います。
○佐々木(憲)委員 これは三党間でばらばらでありまして、民主党の理解と自民、公明の理解が全く違う。それで合意した、これは驚くべき事態であります。
 しかも、この合意というのは、国民にとってもマイナスなんですよ。何でかというと、我々は、保育園が足りない、待機児童がたくさんいる、そういう中で、保育所整備、こういうものを現物給付できちっとやるべきだ、それから、現物給付だけではなく現金給付も必要であろう、両方バランスをとって総合的に子育て支援に取り組む、こういうことが必要だという主張をしてきたわけですね。
 今回の協議、内容について聞きますけれども、野田大臣、子育て支援をどうするのかという基本的なそもそもの議論というのは、どのようにやられたんでしょうか。その内容を、もしあったら報告をしていただきたい。
○小宮山厚生労働副大臣 今回の協議の中で具体的にどのような議論があったかは承知をしておりませんけれども、政権としましては、おっしゃったように現金と現物の給付のバランスをとりながらやるということは最初から総合的に子供政策として掲げておりまして、今も、子ども・子育てビジョンにのっとって現物の部分の拡充に努めておりますし、基本的な考え方をしっかりとつくり上げました子ども・子育て新システム、この中でも、現物のところにしっかり力を入れていくということはやっております。
 そして、今回の合意の中でも、地方公共団体が自由に使える交付金というものも500億用意してございますので、現在は安心こども基金で補正を積んでやっておりますけれども、しっかりとした財源も確保した上で、当然、現物と現金のバランスということは、地方とも協議をしながら、しっかりと両方ともに充実するようにやっていきたいと考えております。
○佐々木(憲)委員 民主党政権はまともにこの問題に対応しておりません。いろいろなことを口で言っても、現実にはどんどん後退しているじゃありませんか。
 子供に対する支援を総合的にどうするかという議論はあったのかというのが私の質問なんですよ。
 三党の協議の中で何が行われていたんですか。保育所をつくるという話はありましたか。一回もありませんね。だから、そういうことについて、今、何の報告もできないじゃありませんか。ですから、私は非常にこれは問題だと。つまり、公債特例法案を何とか通したい、そういう余りに、いわば子ども手当を取引材料に使って、もてあそんだようなものですよ。これはもう本当にどうにもならない、こういうやり方は。
 三党合意で、現行の子ども手当の支給額1万3千円が1万円に減額される世帯が生まれるわけですが、こういう多くの子育て世帯に実質負担増を押しつけるということになるんじゃありませんか。これまでと比べて予算は幾ら節約されるということなんでしょうか。野田大臣にお聞きしたいと思います。
○小宮山厚生労働副大臣 今回の合意の中で、2・2から2・3兆円の財源ということで合意をしております。これまでの自公政権の行っておりました児童手当は1兆円でございました。もともと、1万3千円ですべての子供に同額やっていたときには2・7兆円でしたので、4千億から5千億の財源がここから出ると考えております。
 これは、震災復興にもお金が要るということなので、やむを得ずそのようにやっているということです。
○佐々木(憲)委員 結局、今の答弁でも明らかなように、支給額については、いろいろな、新しい、児童手当に似たような、そういう支給額に組みかえて、そして結果としては、予算全体を削減する、所得制限も入れる、子供の数に応じて金額も変える、出生順位によって変える。もうこれは完全に子ども手当を児童手当に変えるということなんです、実態は。しかも、受け取る方からいうと、今まで1万3千円もらっていたにもかかわらず1万円に減る、そういう世帯がかなり出てくるということになるわけです。
 そういうことは、民主党が掲げた子ども手当の理念を完全に放棄して、いわば自民党、公明党の軍門に下るようなものでありまして、そんなやり方が果たして、マニフェストを国民に契約として掲げた民主党のやり方なんでしょうか。私は、これは国民に対して裏切り行為にならざるを得ない、これは本当によく考えてもらいたい。
 私は、この公債特例法案がそういう取引の上で合意されて、強行というか、事実上強行されるわね、そういうことで、子供の問題をもてあそんで、結局、政治がそれを政局に利用し、そして三党だけで合意をして国会に押しつけて通す、そのやり方自体に問題があるし、内容的にも今言ったように大幅な後退を招き、国民に約束したことを、いわば公約違反、こういう形にならざるを得ない、この点は非常に重大な問題だというふうに思っております。
 しかも、これで公債特例法が通る、再生エネルギー法案が通る、そうすると条件がそろうから総理はもうやめるんだ。一体これで、国民に対して何が残るんでしょうか。菅総理、どのように思いますか。
○菅内閣総理大臣 まず、子ども手当と児童手当は、今御議論いただきましたけれども、子供の育ちを支援するという面では共通する面があるわけでありまして、そういう中で、三党でいろいろと協議をしてこうした形に、それぞれの妥協という部分も含めて、なったということであります。
 私は、この公債特例法を今回こうして採決していただけるわけでありますが、このことがさらにおくれますと、国民の生活、さらには日本経済にマイナスの影響を与えることになると心配をしておりましたので、そういった点で、いろいろな問題点はありますけれども、これが多くの野党の賛成もいただいて成立をするということは、今、日本が置かれた状況の中では極めて重要な大きな意味がある、このように考えております。
○佐々木(憲)委員 やり方も内容も我々としては納得できない、反対であるということを申し上げまして、質問を終わります。

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