2011年02月22日 第177回 通常国会 財務金融委員会≪大臣所信に対する質疑≫ 【589】 - 質問
住宅ローンの返済困難者の救済問題と、税務職員による強権的な徴税問題
2011年2月22日、佐々木憲昭議員は、財務金融委員会で、住宅ローンの返済困難者の救済問題と、税務職員による強権的な徴税問題を取り上げました。
中小企業向け金融円滑化法が、住宅ローンの返済困難者の救済にも対応していることを取り上げ、民間金融機関だけでなく、住宅金融支援機構も金利の引き下げに取り組むよう求めました。
「中小企業等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律」(金融円滑化法)は、2009年11月30日に成立しました。現在の厳しい経済情勢のもと、雇用・生活の安定をはかるため、中小業者または住宅ローンの借り手から申し出があった場合、金融機関が返済条件の変更に努めることを求めています。
佐々木議員は、住宅金融支援機構が、借り換えを求めた債務者にたいし、事故の後遺症による脳梗塞で働けないことや、妻の年金で生活していることや高齢者であることを理由に、1985年に借りた固定金利7.2%の住宅ローン(残高458万円、完済まであと10年)の借り換えを拒否した事例を取り上げ、「年齢で拒絶することは制度の趣旨に反しており、あってはならない。調査の上、是正せよ」と求めました。
答弁にたった市村浩一郎国土交通大臣政務官は「きめ細かに窓口が対応できるように機構に伝える。本人からも意見を聞きやっていく」と答弁しました。
自見庄三郎金融担当大臣は、「政府系金融機関にも法律の趣旨を徹底する」ことを約束しました。
次に、佐々木議員は、税務職員による強権的な徴税問題を取り上げ、納税者の権利を保障する立場で臨むように求めました。
佐々木議員は、滞納した税金に加え、加算税、延滞税の合計約553万円の一括返済を迫られ自殺した業者男性の事例(千葉県)や、立ち会った妻が持病の発作で苦しんでいるのを尻目に財産捜索を継続しようとした事例(愛知県)を紹介。「国税庁の『税務運営方針』が定めた『親切な対応』とはいえない」と批判しました。
佐々木議員が、「給与や売掛金の差し押さえについても『滞納者の生活の維持』を前提に考えるべきだ」とただしたのにたいし、野田佳彦財務大臣は「それぞれの立場を斟酌(しんしゃく)し、適切に対応するのが基本中の基本だ」と表明。「基本の中には滞納者の生活の維持や事業の継続にたいする影響も重要な観点だ。そういう対応をするように国税当局、税務署に必ず伝達する」と答えました。
佐々木議員は、税務大学校における税務職員への研修が、「『完納しなければ差し押さえが解除できない』ことをまず伝えるという教育になっているのではないか」と告発。「『税務運営方針』に真っ向から反する。調査し、見直せ」と求めました。
野田大臣は「ご指のような点があるならまことに遺憾だ。改めて『税務運営方針』が徹底されるように指示する」と答えました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
初めに自見大臣に、中小企業向け金融円滑化法に関連してお聞きをしたいと思います。
まず、この法律の目的、これを確認したいと思います。
○自見金融担当大臣 佐々木議員から中小企業金融円滑化法案の目的あるいは趣旨についての御質問だ、こう思っております。
中小企業金融円滑化法は、一昨年の秋の非常に厳しい経済金融情勢のもとに、我が国経済を支える中小企業者、今さっきも申し上げましたように、法人の中の99・7%が中小企業でございまして、中小企業で働いておる方は約2800万人だと思いますが、そういった方がまさに中小企業で働いておられるわけでございます。そういった中小企業者、それから住宅ローンの借り手の資金繰りを支援するための臨時の措置として制定された法律でございます。
成果いかに、こういうことも申し上げれば、同法施行後、金融機関の貸し付け条件の変更等の実績を見ると、中小企業向け貸し付け及び住宅ローンの双方で、審査中の案件を除き、9割超の水準となっているところでございまして、こういうことを御理解いただければと思っております。
○佐々木(憲)委員 そこで、きょうは住宅ローンの対応について、絞ってお聞きをしたいと思います。
80年代の後半のバブル期に住宅ローンを固定金利で借りた方々は、7%を超える非常に高い金利で支払いを続けている人が多いわけです。しかし、90年代以降になりますと、ゼロ金利政策などの金融緩和政策がとられたために、市場金利は1%前後に下がっております。そのために、金利の引き下げあるいは借りかえなどを行うと返済が楽になる、こういう状況であります。
自見大臣に確認しますけれども、金融円滑化法での貸し付け条件の変更、この中には、金利の引き下げですとか、あるいは借りかえ等の内容も含まれているというふうに理解してよろしいですね。
○東金融担当副大臣 若干技術的なことでありますので、私の方から簡単に説明させていただきます。
答えとしては、金利の引き下げもちゃんと含まれているということでございます。
以上です。
○佐々木(憲)委員 私のところにもこういうメールが来ております。
住宅ローンでお世話になっている信用金庫に問い合わせたところ、後日結果を知らせるという返事をもらい、その返事が返ってきました。審査の結果、金利を下げる方向で手続を進めていただけるとのことでした。仕事も減って収入減だし、そのくせお金ばかり出ていって生きにくい世の中ですが、中にはこんなにびっくりするような話もあるんだ、こういうふうに喜んでおられるわけでございます。こういう声はたくさん聞いております。
亀井静香前大臣は、私が質問したことに対して答えまして、「政府系金融機関の果たしている役割というのは、民間金融機関と同様、あるいは、場合によってはそれ以上の重要性があると思います。」このように答弁をして、政府系金融機関も基本的にその姿勢でやるべきだ、こういうふうに言われました。
自見大臣も同じ考えでしょうか。確認をしておきたいと思います。
○自見金融担当大臣 民間金融機関のみならず、政府系の金融機関、そこにもきちっと私の方から強くお願いをしているところでございます。
○佐々木(憲)委員 きょうは、この法律の対象金融機関でありますJAバンク、それから労金の所管官庁の政務官に来ていただいております。
そこで確認をしたいんですが、松木農水政務官にお聞きをしたいと思います。
JAバンクでは、ローンの債務者から金利の引き下げあるいは借りかえの要請を受けた場合、どのように対応しておられるか。例えば、一律に年齢で、これ以上の年齢の場合には対応しませんというふうに謝絶をするなどということはしていないと思いますけれども、確認をしておきたいと思います。
○松木農林水産大臣政務官 どうも御苦労さまでございます。
そういうことはやっておりません。しっかり対応しているつもりでございます。
○佐々木(憲)委員 小林厚生労働政務官にお聞きをします。
労金の場合はどのように対応しているか。年齢で基準をつくって一律に謝絶をするなどということはしていないと思いますけれども、確認をしておきたいと思います。
○小林厚生労働大臣政務官 この中小企業金融円滑化法は、借り手から申し込みがあった場合に、金融機関ができる限り貸し付け条件の変更等の適切な措置をとるように努める、こういうものでありますので、各金融機関においても、借入者の財産や収入の状況に勘案しつつ適切に対応する必要があると認識しておりまして、労働金庫においても、この法律の趣旨に沿って対応しておりますので、先生の御指摘のようなことは当たらない、このように考えています。
○佐々木(憲)委員 では、政府系金融機関の一つであります住宅金融支援機構についてお聞きをしたいと思います。
金利引き下げや借りかえにどう対応しているか。JAバンクと労金、それから住宅金融支援機構の場合、これは同じ対応をしていると私は思っておりますが、どうなっておりますでしょうか。
○市村国土交通大臣政務官 お答えを申し上げます。
住宅金融支援機構におきましても、年齢にかかわらず、返済期間の延長や金利引き下げを実施いたしております。
○佐々木(憲)委員 ところが、この住宅金融支援機構について、こういう訴えが私どもに来ております。
バブルのころ、昭和60年に、7・2%の固定金利で住宅ローンを860万円借りた。今までおくれることもなく毎月5万6千円の返済をしてきました。25年間の返済総額は既に1718万円。借りた金額の倍近く返済をしております。しかし、残高は、ことし1月末時点で458万円もある。完済まであと10年ある。2年前に夫は仕事でダンプカーを運転中に事故に遭い、脳梗塞となった。現在働けないので、今は、妻の年金で住宅ローンの返済と生活を支えております。医療費もかかって生活は大変苦しい。住宅金融支援機構に借りかえを申し入れましたけれども、断られたというんですよ。なぜ断られたのか。本人と妻が高齢である。年齢が高い。今、債務者である夫に収入がなく、妻の年金で暮らしている。これが断られた理由だというんですね。年齢で金利引き下げを謝絶しているという話なんですよ。
しかし、この円滑化法の趣旨は、住宅ローン借入者の生活の安定を図るということではなかったでしょうか。すぐこれは是正すべきだと思いますが、いかがですか。
○市村国土交通大臣政務官 佐々木委員におかれましては、本当にお一人お一人の事情に耳を傾けられて配慮されているお姿には、心から敬意を表します。
今の件につきましては、私も先ほど、国交省の担当者からお聞きしております。それで、決して制度がないということではないというふうに私は理解をしておりますが、もちろん、十分でないということであれば、これは、この国会審議を通じてもっと充実したものにしていくということが大切だと思いますが、今でもそれなりの制度はあるということでございます。
しかし、今回のケース、ひょっとしたら窓口の者が十分に制度を理解していなかった可能性もありますし、また、理解したとしても、窓口で心から耳を傾けなかった可能性もあると思いますし、感情を害されていることもあるかもしれません。
ただ、先ほど私ども検討させていただいて、幾つかの選択肢、考えられる選択肢、対応についての選択肢はあるというふうに私は理解をしておりまして、ここでつぶさにそれを議論する場じゃないと思いますが、また改めて、こうした国会でも質問をいただきましたので、またきめ細かに窓口が対応できるように、国交省の方から機構の方には申し上げてみたいと思います。
そしてまた、メニューを提示させていただいて、それで御納得いただけるのかどうなのか、それが御本人にとってまた違うということであれば、また御意見を賜りながらやっていくものではないかと思います。
○佐々木(憲)委員 年齢で差別をしない、区切らない、これを基本にしているということですから、例えば年金で生活をされている方は当然年齢が高いわけです。そういう人は最初からもう受け付けないとか、だめだよ、借りかえはできないんだよ、これは余りにも制度の趣旨に反しておりますから、具体的な調査を行って是正するということでよろしいですね。
○市村国土交通大臣政務官 先ほど、年齢にかかわらずと申し上げたときにも申し上げましたが、返済期間の延長や金利引き下げについては年齢にかかわらず実施をしていることがある。ただ、今、佐々木委員がおっしゃったように、借りかえとなった場合は、どうやら、例えばフラット35への借りかえについては、借りかえ申し込みのときの年齢が70歳未満であること、また完済時の年齢が80歳未満であること等が要件になっているようであります。
ただ、これも、例えばお子様等がいらっしゃいまして、そのお子様等が連帯保証人になっていただく、後の分の責任を引き受けていただくということがあれば、またそれは柔軟に対応しているようでもあります。ですので、そういう対応を含めて幾つか選択肢があるようでございます。
ですので、もし年齢によらないというようなことでやるべきだということであれば、また国会で御議論をいただいてそういう制度に持っていくということもあると思いますし、また私どもの方でもきちっと部内で議論もさせていただきたいと思います。
○佐々木(憲)委員 これは国会の議論じゃないんですよ。住宅金融支援機構の姿勢の問題なんですよ。
大体、今、70でどうこうとか言いましたね。それ自体がおかしいんです。つまり、その方は何十年かのローンを組んで、当然、高齢になるまで組んでおられるわけですよ。その途中で借りかえをしたいということに対応するのは当たり前じゃないんですか。
そういうことをちゃんとやるというのがこの法の趣旨にのっとった対応であって、私は、そういう筋できちっとやってもらわなきゃいかぬ。今、答弁の中で、具体的に話を聞いて柔軟に対応するというようなことを言われましたので、ぜひそれをやっていただきたい。
それから、自見大臣には、やはり政府系金融機関も今非常に対応が悪いと言われているんです。亀井前大臣は、職員を本当に徹底的に鍛え直すべきだ、こういって答弁されました。私はこういうことが非常に大事だと思いますけれども、自見大臣、どのようにお考えですか。
○自見金融担当大臣 今、私が申し上げましたように、この法律、政府系金融機関等にも周知徹底するように、これはそれぞれ主務大臣がおられるわけでございます。
私の手元に来ている資料によりますと、日本政策金融公庫、これは大体、実行率が99・6%、それから商工中金、これは中小企業金融円滑化法による貸し付け条件変更等の実績が98・8%、また、今先生が議題にされました住宅金融支援機構、これの場合は94・8%という報告が来ております。
今の例でございますが、住宅金融支援機構は国土交通省の所掌でございます。この法律の趣旨、これは御存じのように政府全体で決めた法律でございますから、しっかりそこら辺は、ケース・バイ・ケースの話もあるかと思いますけれども、趣旨を徹底していきたいというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 以上で金融円滑化法に関連する質疑は終わらせていただきますので、三人の政務官の方は退席していただいて結構でございます。
では次に、財務大臣にお聞きをします。徴税問題についてでありますが、まず滞納整理の基本方針を確認したいと思います。
税の徴収に当たっては、納税者の実情を十分踏まえた上で行うということになっております。税務職員にこのことを徹底していると思いますが、いかがでしょうか。
○野田財務大臣 委員御指摘のとおり、滞納整理に当たっては、滞納者個々の実情に即しつつ、法令に基づき適切に対応することが基本であると考えており、国税局、税務署に対して、そうした考え方に基づいて滞納整理を実施するよう、各種会議や通達で常に指示をさせていただいておりますし、その趣旨が徹底されるよう、これからも指導していきたいと考えております。
○佐々木(憲)委員 昨年、参議院の財政金融委員会で、我が党の大門実紀史議員が、松戸市の業者の方が自殺した事件を取り上げたことがあります。この方、仮にBさんといたしますと、松戸税務署に預金を差し押さえられたために、昨年10月4日、税務署に御夫婦で相談に行った。相談では結論が出ないということで、再度、10月12日に税務署に出向くことを約束して帰ったその夜に、夫のBさんが、57歳、遺書を残して自殺をされたわけでございます。
その遺書にはこういうことが書かれておりました。
身も心も限界になりました
皆さんに迷惑をかけてすいません
支払い税金額は
市県民税、所得税あわせると
600万円ちかくあります
県民共済死亡保険で
支払う事ができると思います
お葬式はしないでお墓に入れて下さい
お母さんを責めないでやって下さい
家族の皆さん孫たち姉ありがとう
会社の皆さんありがとう
こういう遺書を残して自殺をされたわけです。
10月4日の納税相談で松戸税務署は、滞納の本税、加算税、延滞税、合計552万8400円、これを一括返済せよ、年内に完納せよ、こういうことを求めております。これはだれが見ても不可能なんですよ。自殺する二カ月ほど前、松戸市の市民税課と相談をして、市民税の方は分割納付することで合意されておりました。ところが、松戸税務署の方は、これを知らないはずはないんです。それなのに、こういうことを強要したわけです、一括返済だと。
私は、この方に一括返済できるだけの財産や収入があるとなぜ判断したのか、その理由を聞きたいと思うんですよ。
○田中政府参考人(国税庁次長) お答えをいたします。
税務執行の個別の具体的な事案についてのコメントは差し控えさせていただきますけれども、一般論で申し上げますと、滞納整理に当たりましては、基本的には、一律に財産の差し押さえ等の強制処分を行うということではなくて、まず自主的に納付を慫慂させていただいて、納税者の方の個々の事情に基づいて、もちろん法令に基づいて適切に対応しなければいけないということで、その旨、国税局、税務署には常に指導しております。
その際に、滞納者の方から一括納付は困難だというお話がしばしばございまして、滞納者の方と御相談申し上げて分割納付の相談に応じなければいけないというふうに思っておりまして、そういう対応をやっております。
ただ、納税者の方、いろいろな方がいらっしゃいますけれども、過去、分割納付の御相談をさせていただいてお約束させていただいたのがなかなか守られないような場合もございまして、そういう方の場合に、分割納付の相談にずっと応じ続けるというわけにはなかなかいかない面もありまして、場合によって、滞納処分、いわゆる差し押さえを行うような場合も出てまいります。
いずれにしましても、個別具体的な事情に親切かつ丁寧に対応する必要があると思っておりまして、御指摘のような事例、本当に私どもとしても心が痛みますけれども、そういうような事例が起きないように、今後、現場を指導していきたいと思っております。
○佐々木(憲)委員 この方は、分割納税は、地方税はやっていただいたけれども、税務署、国税の方はやってくれないということなんです。これはおかしいんですよ。
Bさんは、一括して払えと言われても払えない、払えないなら死ねと言うのか、こう訴えたんです。これに対して税務署職員は、もしあなたが亡くなっても相続が起こり、妻子、親、姉妹に支払っていただくことになる、こう言っておどしたと。事実上、私はおどしだと思いますけれどもね。これは誤った情報なんですよ。
精神的に追い詰めたことは明らかでありまして、国税庁というのは、こんなことを税務署職員にやらせているのか。先ほど、親切に対応するというようなことがありましたけれども、この事例の場合は、やっていることが全然違う。
大門議員の質問に国税庁次長はこう答えていますね。納税者の生活の維持ですとか、あるいは事業の継続に与える影響を考慮して、納税者の個々の実情に即して法令等に基づき対処する必要がある。先ほども同じような答弁。
しかし、差し押さえで生活ができなくなった、自殺に追い込んでしまった。配慮したとは言えないですよ、これは。
給与の差し押さえ、あるいは売掛金の差し押さえ、これは大臣、納税者の生活の維持というものがやはり前提でなきゃならぬ。生活の維持が優先される、そういう立場で対応するというのが基本だと思いますけれども、大臣、どうですか。
○野田財務大臣 それぞれのお立場をよくしんしゃくし、そして適切に対応するというのは基本中の基本で、その基本の中には、今おっしゃったように、滞納者の生活の維持、事業の継続、それに対する影響というのも重要な観点だと認識をしておりますし、そういう対応を基本的にはするように、国税当局、税務署には必ず伝達をしてきているというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 もう一つの例を挙げますと、2月8日、今月の話ですが、愛知県津島税務署管内で、滞納税金の差し押さえのためということで、仮にCさんとしますと、このCさんのところに税務署員が突然訪問して、夫が外出していたために立ち会った妻が、持病の発作で心臓に手を当てて苦しみ始めた。その姿をしり目に、財産捜索を継続しようとした。夫のCさんは、そのとき不在でした。携帯電話で捜索の事実と妻の発作を知って、妻の病気が心配なので、2時間したら家に戻れるから、それまで待ってください、こういうふうに頼んだ。しかし、税務署員は、待てません、家族が立ち会えなければ役場の職員の立ち会いで捜索できるんだ、こういうふうに法律に書いてある、こう言って、あくまでも苦しんでいるその人を横目に強行しようとしたわけであります。
一般論ですけれども、こういう税務調査中に、立ち会っている本人、家族が発作で苦しんでいるような場合も、調査や捜索というのは継続するのが方針なんですか。
○野田財務大臣 滞納者の個々の実情に応じて法令に基づき適切に対応していくという中においては、滞納者やあるいは御親族が体調不良となった場合には、調査を強要するようなことは基本的にはしないというのが、この基本方針の中には入っているというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 税務運営方針というのは、立派なものが前にありまして、納税者に親切な態度で接するということが書き込まれております。現在でも税務大学校などで、税務職員の研修にこれを使っていると思いますが、それは事実ですね。
○田中政府参考人(国税庁次長) 私の方から、お許しをいただいて、答弁させていただきます。
国税庁におきましては、職員に対しまして、職務執行上必要となる研修を行っております。今お話のございました税務運営方針につきましては、新規の採用職員に対しまして、税務大学校で冊子を配りまして、これをもとに講義を行っております。
○佐々木(憲)委員 税務大学校ではどんな研修をしているのかという点ですが、例えば、納税者から差し押さえの解除を懇願されるという場合があると思うんですよ。これは困る、もうこれをやってもらったら、例えば売掛金を差し押さえたら生活ができない、あるいはもうこの店がつぶれてしまう、だから差し押さえを解除してくれと懇願された場合に、どう対応するように指導しているんでしょうか。
そういう訴えがあったときは、当然その納税者に詳しく事情を聞いて、詳しく状況を教えてください、そういうふうに耳を傾けるというのが当然だと思いますけれども、そういうふうにしているんでしょうか。
○田中政府参考人(国税庁次長) お答えいたします。
差し押さえの解除につきましては、国税徴収法にその規定がございます。その法律に定められた要件に該当する場合には、税務署長は差し押さえの解除をすることができるわけでございますけれども、税務大学校での研修におきましては、個々の納税者について、差し押さえの解除条件に該当している事実が認められるかどうか、これを調査、確認した上で適切に処理するよう研修生を指導しているところでございまして、その事実の確認に際しては、納税者の方の個々の事情を親切に伺うということが基本だろうと思っております。
○佐々木(憲)委員 今、答弁では、相手がそういうふうに言われた、そのときに、相手の話をよく聞いて実情を調査する、そういうふうに教えているという答弁でありました。
しかし、本当にそういうことをやっているんですか。
税務大学校の専攻税法研修というのを受けた職員が、全く正反対の証言をしております。研修後の感想文というのがありまして、これは財務省から、私、いただいたんです。
その内容を見ますと、
専攻税法講義の時間に教育官から、滞納者に差押えの解除を懇願された場合どのように答えるかという質問を受けたことがある。私はそのとき、「詳しく状況を教えてください」と答えると言った。話を聞けば換価の猶予の可能性や他の財産を差し押さえることができる可能性もあるかもしれないと思ったからである。しかし、差押えをしたのは完納しないからであって、原則完納しなければ解除はできない旨を、まずは伝えるべきだった
全然逆じゃないですか。
納付折衝が腰砕けにならないためには、自分がどのような立場にあって何を目指すのか常に意識しておかなければならない
つまり、詳しい状況を把握するより、まず最初に、払っていないんだから完納しなければ差し押さえは解除しないんだ、まずそういうことを言え、こういう教育をしているんじゃありませんか。私は、これは税務運営方針とも真っ向から反するものだと思います。
大臣、こういう教育はやってはならない。本当に、相手の話をまず聞く、そういうところから始めるのが本来の教育じゃないんですか。調査して、直すべきだと思います。
○野田財務大臣 これまでも基本方針をしっかり伝達してきたつもりでありますが、御指摘のような点があるならば、これはまことに遺憾であります。
平成23年度の税制改正では、納税者権利憲章、これも入れるということで、納税者の立場に立った税務行政をするという意味で、改めて、税務運営方針が徹底されるように指示をさせていただきたいと思います。
○佐々木(憲)委員 納税者権利憲章については別の議論がありますので、また機会を改めてやりたいと思います。
私は、強権的にともかく徴税をやればいい、ともかく滞納しているから、税収が上がらないからというようなことで、力任せにやるというのは間違っていると思いますよ。何でかといいますと、先ほど、強権的なやり方で、松戸の場合は家族が相続を放棄したんです。だから、結果的には滞納整理には全くつながらない。一円の税収も上がっていないんですよ。
だから、税収の面から見ても、やはり収入の状況をよく把握して、相手の生活の相談に乗って、分納などで払えるように、少しずつちゃんと払ってもらう、そういう計画をつくって、それで長期的に滞納整理につなげていくというのが本来の筋だと私は思います。
ですから、やはりこの点を基本的な姿勢として貫くように、最後に大臣に申し上げまして、質問を終わらせていただきます。