アドレス(URL)を変更していますのでブックマークされている方は変更してください。
<< ホームへ戻る

税制(庶民増税・徴税), 金融(銀行・保険・証券) (法人税, 大企業減税, 銀行の収益性, 銀行公的資金注入)

2010年10月26日 第176回 臨時国会 財務金融委員会≪大臣所信に対する質疑≫ 【580】 - 質問

「法人税減税より内部留保の還流を」財金委で質問

 2010年10月26日、財務金融委員会が開かれ、佐々木憲昭議員は大銀行の現状について、法人税減税しても国民に還流しないことについて質問しました。

 佐々木議員の質問で、大企業支援の政府の経済政策では、内需拡大につながらないという問題点が明らかになりました。
 佐々木議員は、国税庁の「会社標本調査」(2008年度分)にある260万社のうち、大企業と中小零細企業の赤字法人の割合を質問。
 国税庁の田中一穂次長は、資本金1000万円未満の中小企業では76%が赤字、資本金10億円以上の大企業では49%が赤字だと答弁しました。
 もともと赤字企業が払っていない法人税を減税しても、その恩恵の大部分は黒字の大企業に回るだけで中小零細企業には及びません。佐々木議員がこう指摘すると、野田佳彦財務大臣も「御指摘の通り」と認めました。
 中小企業は、企業数でいえば99.7%、従業員数では69%を占めます。その多数が赤字です。
 では、法人税減税の恩恵を受ける黒字の大企業は、利益をどのように使ってきたのか。
 1998年と2008年の対比について、国税庁の田中次長は、法人税の支払いが年に2.3兆円も減る一方で、株主配当が6.3兆円、社内留保が5.2兆円も増えていることを明らかにしました。
 佐々木議員は、「法人税の負担が減っても、労働者や下請けには回らず、株主配当と内部留保に回っただけだ」と強調しました。
 これに関しては、菅直人総理大臣が18日、政府の会合「国内投資促進円卓会議」で「法人税を下げてもそのお金がため込まれるのでは効果が薄い」と語り、学者からも「法人部門の貯蓄をさらに増やすだけで国内投資を促進しない」との指摘があります。
 佐々木議員は、これらの発言を示し、法人税減税によって内部留保が設備投資や雇用に回るのかとただしました。
 野田大臣は、「税率を引き下げても本当に効果があるのかは、議論の余地が相当ある」と認めました。
 佐々木議員は「問題は、内部留保をどう国民の側に還流させるかだ」と述べ、そのための手法として、(1)大企業には減税ではなく応分の負担を求め、そこで得た財源を社会保障に回すこと、(2)労働者の賃上げ、非正規化に歯止めをかける法整備で雇用を安定させること、(3)下請け単価の抜本的引き上げを行うことを提起し、内部留保を国民に還流させる政策への切り替えが必要だと強調しました。
 野田大臣も「企業の内部留保をうまく還元できる知恵というものも、ご指摘のように必要だ」と述べました。



 また、佐々木議員は金融担当大臣に対して、銀行の経営者のなかで1億円以上の報酬を受け取っている人は何人いるかと聞きました。
 その答えは15人。内訳は、主要銀行で13人、地方銀行2人となっています。主要銀行の名前は、三菱UFJフィナンシャルグループが3人、みずほフィナンシャルグループ6人、新生銀行4人ということも確認しました。
 振り返ると、日本の大手銀行は、金融危機のさい、公的資金つまり税金を38.8兆円も投入されました。
 そのうち11.2兆円は返済されず、国民負担が確定しました。残りは、まだ全額返済されていません。
 しかも、3大メガバンクは、この10年来、法人税を1円も払っていません。
 佐々木議員は、この状況で、一部の経営者が1億円を超える高額な報酬をガッポリと懐に入れているという状況は、まともではないと指摘しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。まず自見大臣に、銀行の現状についてお聞きをしたいと思います。
 日本の銀行は、金融危機の際に、公的資金、つまり税金を38・8兆円投入されました。そのうち11・2兆円は返済されず、国民負担が確定しております。残りはまだ全額返済されてはおりません。しかも、三大メガバンクはこの10年来、法人税は1円も払っていない。
 与謝野元金融担当大臣は、このような現状を見まして、銀行はまだ一人前ではない、こういうふうに述べたことがございますが、自見大臣はこの現状をどのようにお感じでしょうか。
○自見金融担当大臣 佐々木議員御指摘のとおり、銀行の中には、現時点においても早期健全化法等に基づく公的資本の増強を引き続き受けているものや、また、過去の損失により税務上の繰越欠損金が発生したために法人税を払っていないものがあることは御指摘のとおりでございます。
 一方、近年においては、各行の収益が一定の回復を見せており、そのような中で、公的資金の返済、欠損金の圧縮に向けた取り組みも進められているというふうに認識いたしておりまして、先般も、ある銀行が公的資金を返済に来たわけでございます。
 いずれにいたしましても、金融庁といたしましても、各行が適切なリスク管理を行いつつ、積極的なリスクテークと一層の金融仲介機能の発揮を通じて、収益を適切に確保し、さらなる公的資金の返済や欠損金の圧縮を進めることを期待させていただいております。
○佐々木(憲)委員 リーマン・ショック以降、金融機関のモラルが問われておりまして、アメリカでは、CEOなど経営陣の高額報酬が批判の的になったわけです。日本でも年間の報酬が1億円以上の経営者は公表される、こういうことになりました。
 そこで、お聞きしますけれども、主要銀行で1億円以上の報酬を受け取っている経営者は何人いらっしゃいますか。
○自見金融担当大臣 お答えをいたします。
 各銀行及び銀行グループが開示をしております平成22年度3月期の有価証券報告書によりますと、1億円以上の報酬を受けている者は15名であると承知しております。
○佐々木(憲)委員 そのうちの主要銀行は13人でありまして、内訳は、三菱UFJフィナンシャルグループが3人、みずほフィナンシャルグループが6人、新生銀行4人というふうに聞いていますが、間違いありませんか。
○自見金融担当大臣 間違いございません。
○佐々木(憲)委員 銀行は、税金を投入してもらって経営の困難から救ってもらったという面があります。その上に、不良債権処理で生じた損失、これを理由にして法人税はまともに払わない、その上で、今度は経営者の方は1億円を超える高額な報酬をがっぽり懐に入れる。私はこれはちょっと異常な事態ではないかなと思っております。銀行にはきちんと社会的責任を果たしてもらわなければならぬ。
 そこで、中小企業金融円滑化法についてお聞きしますけれども、中小企業向け金融を確保するために、前任者の亀井大臣、このときにつくられたものであります。その実績を自見大臣はどのように評価されておられるか。
 それから、来年3月で期限が切れるわけですけれども、先ほど延長を視野に検討するというふうにおっしゃいました。これは延長するということで理解してよろしいか。
 それから、中小企業向け金融、貸し出しがどんどん減ってきているわけです。これを何とか回復する、こういう方策をどのように考えておられるか、お聞きしたいと思います。
○自見金融担当大臣 佐々木議員から、中小企業円滑化法案の実績やいかに、こういう御質問でございます。
 私も、こういった厳しい経済の中でございますが、やはり、中小企業金融円滑化法案を国会の御同意をいただきまして成立させていただいて、私は効果があったというふうに思っております。
 それから、昨年は厳しい経済環境の中で、御存じのように、これは中小企業に対する金融の円滑化を図る臨時の措置でございまして、二回の年末、二回の年度末、二回ずつを含めるということで、先生今御指摘のように、来年3月には、これは時限法でございます。
 先般も私、名古屋と大阪、大阪は特に中小企業の多い町でございますが、そこで、中小企業四団体あるいは地域の金融機関の方にもお集まりいただきまして、いろいろ話を聞かせていただいたわけでございます。
 やはり金融機関の方も、一定の効果があるし、特に私の印象に残ったのは、協調融資というのがございます、小さい金融機関とメガバンクといいますか。その協調融資をする場合、以前、この法律ができない場合は、地元の中小の金融機関が中小企業に協調融資しよう、続けようと言っても余り相手にされなかった。それが、きちっと必ず相手にしてくれるようになったという声を聞きました。そういった意味でも、特に中小四団体からは、円高もあっていよいよ厳しいから、ぜひこれは延長してくれという強い声がございました。
 同時に、金融でございますから、やはり金融の節度というものも必要でございますから、金融機関のそういったことも含めながら、きちっと、今私が申しました、我が国の経済、中小企業の資金繰り、あるいは金融機関の金融円滑化に向けた取り組み、進捗状況を見ながら、今先生言われましたように、延長を視野に入れつつ検討していきたいというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 延長をぜひやっていただきたい。私も一定の効果があるというふうに理解しておりますので、そのことを要請しておきたいと思います。
 では次に、税制についてお聞きしますが、法人税の減税というのが議論になっておりますが、減税が雇用や設備投資に効果があるのかどうなのかという点であります。
 基礎的なことをまず確認したいんですが、国税庁の会社標本調査というのがあります。これによりますと、一番新しい統計は2008年度分で、法人数、会社の数が260万社ということになっております。そのうち赤字の会社はどの程度あるのか。
 資本金10億円以上の企業と1千万円未満の中小零細企業を分けて、それぞれお答えをいただきたいと思います。
○田中政府参考人(国税庁次長) 御指摘の国税庁が行っております平成20年分の会社標本調査におきまして、資本金1千万未満の内国普通法人につきましては、全体、約150万社ございますけれども、欠損法人数は114万社で、その割合は76%になっております。それから、資本金10億円以上の内国普通法人につきましては、全体約7千社のうち欠損法人は約3千社で、割合が49%になっております。
○佐々木(憲)委員 今、数字で確認しましたが、大企業、資本金10億円以上の大企業の場合は、赤字企業は約5割、半分が赤字だと。ところが、中小企業は8割近くが赤字であります。これはちょうどリーマン・ショックの影響も若干あると思いますけれども、そういう状況なので、減税といいましても、黒字の企業には減税でありますが、赤字のところはもともと税金を払っていないんですから、減税の対象にならない。
 したがって、今数字で明らかなように、法人税を減税するということは、大部分が黒字の大企業の側に回る、赤字の中小企業には回らない。これは当然のことだと思いますが、そうですね、大臣。
○野田財務大臣 佐々木委員の御指摘のとおりでございます。
○佐々木(憲)委員 政府税調が、10月6日、雇用促進税制等プロジェクトチームを立ち上げたそうですが、座長に五十嵐財務副大臣が当たっておられるそうですけれども、日本の中小企業は、企業の数でいいますと、99・7%が中小企業なんです。従業員は69%、約7割の労働者がそこで働いているわけであります。その多数が、今言ったように8割が赤字、こういう状況ですね。それをどうするかという問題なんですね。
 つまり、減税をしたら雇用がふえる。それがどういう理屈でそうなるのか。例えば赤字の中小企業には減税の恩恵は行きませんので、赤字の中小企業には雇用効果は発生しないというふうに思いますけれども、これはどういう考えで雇用をふやそう、ふえるというふうに見ているのか、説明いただきたいと思います。
○五十嵐財務副大臣 お答えをいたします。
 確かに赤字法人には減税の効果は及びません。ただ、黒字法人、中小企業の中にもおありになるわけですけれども、まさに今黒字を出している法人は伸びているということでございますので、さらに雇用をふやしていただく。
 また、中小だけではなく大法人にもふやしていただきたいわけですけれども、法人税全般でそれをやるということもあるでしょうけれども、それよりもむしろ、雇用創出の中に、正規雇用化あるいは育児支援、障害者雇用等の視点を加えまして、どういう税制措置をつくれば雇用拡大につながるのかということをただいま検討している最中でございます。
○佐々木(憲)委員 要するに、黒字の大きな会社が中心ですけれども、そういうところには支援が行くけれども、またそこで若干雇用の可能性も生まれる、可能性ですよ。しかし、中小企業が圧倒的な多数であって、労働者も圧倒的に多いわけですが、そこには及ばないわけだから、何らかの別な対応が必要なんですね。税制だけではこれは無理なんです。
 今おっしゃったように、大きな会社の雇用を、非正規雇用をどんどん切るとか景気の安全弁に使うような、そういう体制そのものを変えるということが一つ。それから、賃上げをしっかりやるためには底上げを最低賃金などで支えていくとか、そういういろいろな面が必要なわけであって、何か減税で雇用がふえる、これは単純な議論だというふうに私は思います。
 次に、黒字の大企業、この部分の利益というものがどのように処分をされてきたのか、この点をまず確認したいんですけれども、これは例えば、法人税として払う部分、それから配当で株主に払う部分、それから社内に残す社内留保、この三つを取り出していただきまして、この利益の処分の実績、これを確認したいと思います。
 2008年と、10年前の1998年の数字をそれぞれお答えいただきたいと思います、数字だけ。
○田中政府参考人(国税庁次長) お答えをいたします。
 先ほど御指摘のありました同じ会社標本調査でございますけれども、利益を計上している法人の益金の処分金額のうち、支払い配当に回りましたもの、それから法人税額に回りましたもの、社内留保に回りましたもの、それぞれお答えをしたいと思います。
 支払い配当につきましては、平成10年分、約10年前でございますが、金額で約4兆円、全体の割合で11・4%。平成20年度分、金額で約10兆円で、割合で23・7%となっております。
 法人税額におきましては、同様な調査におきまして、平成10年分について、約11兆円、割合が31・9%。平成20年度分、金額で約9兆円、割合が20・4%となっております。
 社内留保につきましては、平成10年分は約13兆円、割合で36・3%。平成20年度分、金額で約18兆円で、割合で41・1%となっております。
○佐々木(憲)委員 今、細かな数字を言っていただきましたけれども、全体としていいますと、野田大臣、この10年間で株主配当は6・3兆円ふえているんです。社内留保が年間5・2兆円ふえたわけですが、それよりも株主の配当の方がふえ方が多いわけですね。ところが、税金の支払いはどうかといいますと、法人税の支払いは2・3兆円マイナスなんです。法人税の負担は減ったけれども、その分、社内に内部留保でたまる部分がふえ、株主の配当がもっとふえた、こういうのが現状なんですね。
 この現状について、野田大臣はどういうふうに認識されていますか。
○野田財務大臣 ここ10年の推移は委員の御指摘のとおりでございます。
○佐々木(憲)委員 そこで、法人税を下げる、そうすると、一体それがどう使われるかというのが問われるわけですよ。
 過去、法人税は最高税率42・何%からずっと下がって30%、これは表面税率ですね。ところが、下げたけれども、景気の後退ももちろんあったかもしれない、しかし、株主の配当に回り、内部留保がふえるというところに使われていて、本当に労働者の賃金引き上げに使われたかというと、賃金はどんどんどんどん下がり続けております。それから下請単価も、この間どんどんたたかれて下がってきているということでありますので、私は、自動的に、減税をすれば雇用に回るとか、あるいは減税したら下請に行くとかということではないと思いますね。したがって、具体的に、ではどうするかということをもっと突っ込んで考えなければいけないわけであります。
 総理が、18日に開かれた国内投資促進円卓会議、ここで、法人税を下げてもそのお金がため込まれるのでは効果が薄いと語ったと報道されております。野田大臣も多分この会議に出席されていたんじゃないかと思いますが。
 法人税を減税したら投資に回るのかというと、そうはならないところに問題の深刻さがありまして、この前のこの財務金融委員会で私、白川総裁にお聞きしましたら、大企業の手元資金は今非常に潤沢だ、この資金を使う場所がないということを金融機関の経営者からも企業経営者からもしょっちゅう聞きますというお答えだったんです。9月8日のことです。
 この日銀総裁の考え方、問題のとらえ方というのか、野田大臣も同じような考え方に立っておられるかどうか確認をしたいと思います。
○野田財務大臣 企業の手元現預金、内部留保は相当あるという状況の中で、例えば法人実効税率を引き下げても本当に効果があるのかというのは、やはりこれは議論の余地が相当あると思っていまして、いろいろなアンケート調査でも、借金を返すとか内部留保に使うとかで、研究開発とか設備投資には直接行かないようなのもあります。
 そうはいいながらも、一応新成長戦略の中で法人の実効税率は検討することになっておりますので、今の国内の雇用や設備投資の増加につながるかどうかという観点からの検討もしたいと思いますし、一方で、やはり法人税が今のこの実効税率では国際競争力の観点からどうかという議論もあるので、それによって海外へまさに拠点を移すようなことはいけない、そのための効果があるのかどうかとか、あるいは法人実効税率を下げることによって海外から企業を呼び込む、立地を促進するということは可能なのかどうか、そういう観点から議論を進めていきたいというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 経済産業省出身で京大の助教をされている中野剛志さんが日経ヴェリタスというものの中でこういうふうに言っているわけです。今の日本経済は需要不足で、マネーが投資に向かわない貯蓄過剰、金余りだ。その過剰な貯蓄は専ら法人部門にある。法人部門に金はあっても投資先がない。需要のない中での法人税減税というのは、この法人部門の貯蓄をさらにふやすだけで国内投資を促進しない。むしろ減税分だけ政府支出がふえるわけですね。そうすると、政府の財源が減らざるを得ないから、経済全体の需要はむしろ縮小する。こういうふうに言っているわけです。
 つまり、法人税を減税するためには財源が必要ですから、支出がその分ふえるから、全体として政府の財源というのは狭まっていく。そのかわり大企業に渡しても、大企業は内部留保を膨らませるだけで実際には効果があらわれない。それは需要がないからだ。こう言っているわけです。
 この見解、どのように思いますか。
○野田財務大臣 そういう見解もあるだろうと思うんですが、法人実効税率の引き下げの観点というのは、国際競争力云々というところが一つあります。それは社会保障の事業主負担とあわせれば云々という議論もあります。
 さっきの、雇用につながるのか、設備投資につながるのかとか、あるいは生産拠点を移すようなところを歯どめがかかるのかとか、あるいは海外からもっと投資を呼び込むような、あるいは企業を立地させるようなことができるのかとか、いろいろな観点から議論したいと思いますが、単純に法人実効税率を下げるのではなくて、当然それを下げれば減収になります。さっきも議論がありました、1兆円なのか、1兆数千億なのか、2兆までいくのか。そこをよく見きわめながら、課税ベースを広げながら、財源確保をしていくというのが、今回、予算編成過程で、税制改正過程で行われるということでございます。
○佐々木(憲)委員 競争力の角度から、日本の税金を下げないと海外に出ていく、そういう議論が行われていますが、私はそれは違うと思っております。
 といいますのは、海外に企業が出ていく理由は、税金が高いからという理由はほとんどないんです。一番大きな理由は、海外の市場の中に設備をつくりたい、それから、その進出先の低賃金の労働力を利用して低コストで製品をつくりたい、これが最大の理由なんですね。税金の問題はずっとずっと下の方にあるわけです。
 したがって、幾ら法人税減税をやっても、海外進出はとまりません。ですから、私は、別な角度からその問題は考えないと、税金だけで議論をしていくと、違う方向に行ってしまうような気がするわけです。
 日本経団連は盛んにそれを下げろ下げろと、ずっと一貫して言っていますけれども、肝心の担当者の話を聞いてみると、いやいや、日本の税金は決して高くはないんだよと。いろいろな負担も含めて、実際にはそんなに高いわけではないんだと自覚していながら、どんどんどんどん同じことを言っているわけです。そういうことを真に受けないで、客観的な状況をよく考える必要があると私は思います。
 そこで、民主党の税制改正プロジェクトチームというのが開かれているようで、この出席者から、税率を下げても企業の内部留保がふえるだけで意味がないとか、いろいろな御意見があったようでございますが、問題は、この内部留保というものをどう国民の側に還流させるか。つまり、内需の側に還流させて最終需要をふやしていく、その方向で根本的にかじを切りかえる、これが必要だと私は思うんです。
 そのためには、幾つかの手法が私は必要だと思う。
 一つは、たまりにたまったこの内部留保を公的な部門、つまり、まず財政の方に吸い上げてくる。つまり、法人税減税ではなく、応分の負担を大企業に求める。
 その際には、累進課税が私は必要だと思います。中小企業に迷惑はかけず、たまっている部分について一定の負担を求めていくことによって国の財政を確保し、それを原資として、今度は、社会保障、医療、こういう分野に回していく。つまり、大きく言いますと、所得の再分配機能をしっかりと再構築するというのが一つです。
 それから二つ目は、賃金を引き上げるということ。
 その場合、最低賃金の引き上げはもちろんですけれども、大企業に対して求めなきゃならぬのは、非正規雇用をばんばん雇用してどんどん切っていくような、これが一番激しいんですよ、大企業の場合は。中小企業の方は割合安定しているんですけれども。こういう、安全弁として大量の首切りをやるような、そういうシステムに歯どめをかけて、安定した雇用に切りかえていく、そのためには法整備が必要なんです。
 そのために、やはり規制緩和をやり過ぎていますから、労働法制の規制を再構築するということ、これが大事です。そうしないと、企業は義務づけにならないので、やりたい放題、今はびこっていますから、その点を直していく、これが二点目です。
 それから三点目は、例えば下請に対してもしっかりとした単価の引き上げを求めていく。
 これはいろいろな具体的な方策を我々は考えていますけれども、そういうふうな方向に、つまり、大企業の内部留保をどのようにして社会に還元して国民に還元するか、そのことによって最終需要をどうふやすか、ここに政策の基本を切りかえないと、幾ら雇用雇用と叫んでも、現実にはなかなかそういうふうにならない。そこの根本切りかえが十分じゃない、あるいはそうはなっていないというふうに私は思うわけです。
 この点について、最後に野田大臣に御意見をお伺いしたいと思います。
○野田財務大臣 さっき、雇用促進税制のPTをつくったというお話をしました。それはまさに、ため込んだ内部留保を社会のために還元してもらう一つのきっかけになる可能性もあるだろうと思っていて、今雇用のお話をされましたけれども、非正規雇用から、そうじゃなくて正社員でちゃんと雇う正規雇用に変えていくとか、障害者を雇用していくとかというところにいわゆるインセンティブをつける、呼び水になるようにするということで、今おっしゃったように、いろいろな具体的なものを好循環にしていくきっかけにぜひしていきたいと思っておりますし、問題意識としては、財政政策だけで何か物を動かせる、もちろん一生懸命生きたお金の使い方をしたいと思いますが、企業のそういう内部留保をうまく還元できるような知恵というものも、御指摘のように、必要だというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 終わります。ありがとうございました。

Share (facebook)

このページの先頭にもどる