税制(庶民増税・徴税), 金融(銀行・保険・証券), 金権・腐敗政治 (法人税, 高齢者への年金課税強化, 銀行の収益性, 日本経団連の「政策買収」, 閣僚等の疑惑)
2006年11月10日 第165回 臨時国会 財務金融委員会 【366】 - 質問
金融機関が山本金融大臣パーティー券購入/銀行は税金も納めず国民にも還元せず/尾身大臣「現役より高齢者の税負担が重い」と認める
2006年11月10日、財務金融委員会において、佐々木憲昭議員は、山本有二金融担当大臣の金融機関からのパーティー券購入ついて、銀行のあり方について、高齢者の年金課税強化問題について質問しました。
佐々木議員は、10月27日の財務金融委員会で、山本大臣の政治資金パーティーのパーティー券の購入先に金融機関が含まれているかと質問。これにたいして、山本大臣は「調査して、またご報告したいと思います」と答えていました。
佐々木議員は、この日の質問でその報告をもとめました。
山本大臣は、銀行14枚、生命保険12枚、損害保険13枚、証券会社5枚で、合計44枚。その金額は88万円で、すでに返却していると答えました。
次に、佐々木議員は、10月27日の質疑に引き続いて、銀行のあり方について質問しました。
大手銀行6グループの2006年3月期決算の当期純利益は、3兆1215億円にのぼっていますが、法人税はゼロです。
過去7年間の損失の累計が相当あって、それを全部消化するまでは税金を払わなくてもよい仕組みになっています。
このままでいけば、3〜4年間法人税ゼロという事態になりかねません。
銀行は、税金を投入され公的資金を受け、今日では莫大な利益を上げるようになっています。
佐々木議員は、「銀行は国民の血税を投入されて、それで破綻を免れた」と指摘し、これまでいくらの公的資金が投入された質問。
金融庁は、47兆円の公的資金が投入され、既に国民負担として確定したのは10兆4326億円であることを明らかにしました。
しかし、銀行は法人税を納めないだけではありません。
庶民の預金金利もまともに上げていません。そのうえ、手数料だけはどんどんあげて庶民の負担を増やしています。
それだけでなく、銀行の政治資金も検討されています。
10月に、日本経団連から全国銀行協会にたいして政治献金の要請がされました。会長行である三菱東京UFJ銀行は、その旨を会員各行に通知しました。主な献金先は自民党です。
三菱UFJフィナンシャル・グループは、この要請を受けて、9年ぶりに政治献金を再開する検討に入ったと報道されました。
国民の血税を47兆円も投入してもらって破綻を免れ、空前の利益を上げているのに、税金も納めず、国民にも還元しない。ところが、自民党にだけは献金で還元するというのは、二重、三重におかしな話です。
佐々木議員は、「利益があれば預金者、利用者に還元するというのは当然だ」と主張しました。
次に、佐々木議員は、10月27日の質疑に引き続いて、高齢者の年金課税強化問題について尾身幸次財務大臣に質問しました。
佐々木議員は「高齢世帯の増税額は現役世帯の増税額の2倍になるのではないか」と質問。尾身財務大臣は「数字はその通りだ」と認めました。
尾身財務大臣は、これまで年収約380万円の高齢者世帯と現役世帯の税負担について、「給与世帯の方が、年金世帯よりもはるかに大きい負担になる」と述べ、高齢者への負担増を当然視してきました。しかし、これには誤魔化しがありました。
尾身大臣が示していた試算は、年金世帯の収入380万円の内訳を、夫が300万円、妻が79.2万円の年金収入を前提として計算していました。
ところが、現役世帯のばあいは、妻の収入がゼロで、年収がすべて夫の分で380万円の年収になっていたのです。
これは、資産の前提が同一ではありません。年収300万円と380万円を比較すれば、380万円の方が税金が重くなるのは当たり前です。適正な比較とは言えません。
尾身財務大臣は、佐々木議員の追及で、これまでの試算が異なる前提条件の下での試算であったことを認め、その上で、夫の年収300万円、妻の年収79.2万円とした両世帯の試算を示しました。
それによると、年金世帯では2007年度の税負担の合計が14万1000円(増税額13万7000円)となり、給与世帯は、2007年度の税負担の合計が13万8000円(増税額5万8700円)となり、「年金世帯の方が税負担が多く」(尾身財務相)なります。
また、佐々木議員は、公的年金控除の見直し、老年者控除の廃止、個人住民税、老年者非課税の廃止で何人の高齢者が負担増になるか、全体の税収は合わせていくらになるのか質問。
財務省は、税負担が生じる数は約500万人程度、年金受給者全体約2500万人の約5分の1程度になり、増収額は、国、地方を合わせて約4000億円を見込んでいると明らかにしました。
佐々木議員は、「4000億円という数字でどんなに悲鳴が上がっているか」「銀行は税金を払っていない、大企業も減税を受けている、こういう状況を変えて、高齢者を支えることが本当の政治ではないのか」と主張しました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
私は、10月27日の財務金融委員会で、山本大臣の政治資金パーティーのパーティー券の購入先に金融機関が含まれているかということをお聞きしました。これに対して大臣は、調査してまた御報告したいと思いますというふうにお答えになったわけですが、ここで、その調査の結果を報告していただけますか。
○山本金融担当大臣 調査を行いましたところ、購入先の中に、例年と同様、幾つかの金融機関も含まれておりました。
そこで、言うまでもないことでございますが、パーティー券の購入の有無等により金融庁の行政が左右されることはあり得ないという考え方のもとにございますけれども、大臣規範等との関連でも、それに照らしても現在のところ問題はないと思っておりますが、国民の信頼確保に万全を期する観点から、金融関係者につきましては全額返金することといたしまして、既に手続を済ませております。
以上です。
○佐々木(憲)委員 その金融機関というのは何社で、幾らですか。
○山本金融担当大臣 何社かはちょっとわかりませんが、銀行14枚、生保12枚、損保13枚、証券5枚で、合計44枚でございました。
○佐々木(憲)委員 金額は幾らになりますか。
○山本金融担当大臣 1枚2万円でありまして、合計しますと88万円でございます。
○佐々木(憲)委員 それを返却するということですが……(山本国務大臣「いやいや、返却しました」と呼ぶ)したわけですね。
従来と同様にというふうにおっしゃいましたが、パーティー券の内容について、金融機関が含まれていたという点については、従来の政治資金報告書には出てきませんが、これは従来どういう形になっていたんですか。
○山本金融担当大臣 多分、想像でありますが、20万円以下のものについては相手方を記載しない、そういうルールにのっとって記載していないんじゃないかというように思っています。
○佐々木(憲)委員 それでは、次に、銀行のあり方についてお聞きをしたいと思います。
さきの質問で、私は、大手銀行6グループのことし3月期の当期利益について確認をしましたが、3兆1215億円という膨大な利益が上がっているわけです。ところが、法人税はどうかということでお聞きしましたら、山本大臣は、納税額は発生していない、つまりゼロである、こういうことでありました。
これは常識的に考えまして、3兆円以上の利益を上げて法人税はゼロ、私はこれはどう考えても納得できないんです。過去七年間の損失の累計が相当あって、それを全部消化するまで税金を払わなくていい、こういう仕組みだというんですけれども。しかも、5年を7年に延長した。このままいきますと、来年も再来年も、これから3、4年は少なくとも法人税はゼロという状況が続くんですよ。私は、国民的に見てこれは納得できないと思うんですが、大臣、どのように受けとめておられますか。
○山本金融担当大臣 金融システム円滑化のために主要行に注入した公的資金につきましては、これまでのところ、資本増強額以上の額で、国に利益が生じる形で回収が行われております。
また、現状、主要行が法人税を支払っていないことは、先生御指摘のとおりでございます。これは、財務会計上の損失と税務会計上の損金に認識時点のずれがあることが原因でございまして、銀行だけでなく、すべての企業に共通した法人税制に基づくものでございます。
なお、主要行におきましては、過去、財務会計上赤字という状況の中で税金を納めていた時期もあったことは記憶にとどめておるところでございますが、いずれにいたしましても、主要行は既に不良債権問題を脱却して業績も回復しておりますことからして、今後速やかに、課税上の繰り延べ欠損金が解消されて、法人税が納付できるようになることを私も切に期待しておるところでございます。
○佐々木(憲)委員 不良債権処理などで欠損金が出たからという理由で、利益が出ても法人税は払わないというのは、私は理解できないんです。そういう仕組みをつくったこと自体が私は問題だったと思います。
今、銀行に対する公的資金投入の話がありました。銀行は国民の血税を投入されて、それで破綻を免れたわけです。では、確認しますが、これまでに公的資金は幾ら入ったんでしょうか。そのうち、返還されたのは幾らで、返ってこないものは幾らになりますか。数字をお答えください。
○佐藤政府参考人(金融庁監督局長) いわゆる資本注入額に限らず公的資金全体というお尋ねかと思いますが、預金保険機構におきまして、平成18年3月までに投入された公的資金ということでとらえてみますと、まず一つ目には、破綻処理の一環といたしまして、預金者保護のために、破綻金融機関の受け皿金融機関に対して金銭贈与というものを行いました。これが18兆6154億円でございます。また、この破綻処理の一環といたしましたものを中心として、破綻金融機関等から不良債権の買い取りということをやっておりますが、この買い取りとして9兆7627億円という規模になってございます。それから、先ほどもちょっと出ました金融機能の安定あるいは早期健全化を図るということで、存続している金融機関に対して資本注入という形で、これまでに12兆3869億円という資金が注入されております。それから、その他、いわゆる特別公的管理銀行に特有な処理等を中心に5兆9667億円、こういう資金援助がなされているということでございます。
それで、金銭贈与、資産買い取り、資本増強、それぞれ性格が異なっておりますので単純に合計するのはいかがかとは存じますが、あえて合計いたしますと、46兆7317億円という数字になります。
次に、これらの回収の状況でございますが、まず、先ほどの金銭贈与18兆円余りという部分についてでございますけれども、このうち、ペイオフコストを超える金銭贈与に用いられました交付国債の償還額10兆4326億円につきましては、現段階において国民負担として確定をいたしております。残りの8兆1828億円につきましては、この部分は、金融機関から徴収いたします預金保険料によって賄われるということでございますが、これまでに5兆7168億円が既に預金保険料として徴収されておりまして、残りの2兆4660億円の部分につきましては、今後徴収されるということであろうかと思います。
それから、先ほどの不良債権等の買い取りでございますけれども、18年3月末までに、実回収額で8兆5818億円が回収されておりまして、これに伴う利益として、約1.1兆円の利益が生じているということでございます。
それから、資本注入につきましては、これは、直近時点、11月2日現在でございますけれども、実回収額で9兆3246億円の回収が行われておりまして、このうち利益に当たる部分が約1.2兆円ということでございます。
その他につきましては、18年3月までに4兆8060億円を回収しておるということでございます。
残余の部分につきましては、保有している資産あるいは株式等について、今後の返済あるいは回収の見込みをお答えすることは困難であるということを御理解いただきたいと思いますけれども、いずれにいたしましても、預金保険機構及び整理回収機構におきまして、国民負担の極小化の観点から、引き続き最大限の回収に努めるということであろうかと思います。
○佐々木(憲)委員 数字をたくさん言われたんですが、簡単に言いますと、国民負担の確定している総計は幾らなんですか。
○佐藤政府参考人(金融庁監督局長) 現時点におきまして国民負担として確定している金額は、約10兆4000億ということでございます。先ほど申し上げました10兆4326億円、この部分につきましては、現時点で国民負担として確定をしているということでございます。
○佐々木(憲)委員 要するに、47兆円の資金が投入されたわけでありますが、既に返ってきている部分も一部ありますが、国民負担として確定したのは10兆4326億円。
これは莫大なお金ですよ。だからこそ、銀行は、そういう国民の税金を利用して、今では膨大な利益を上げることができた、そういう状況になった。しかし、法人税はゼロである、何年間もゼロになる。それだけではないんですね。庶民の預金金利もまともに上げておりません。手数料はどんどんどんどん上げる。こういうことで、庶民負担だけはふやしてきた。
ですから、前の金融担当大臣の与謝野氏は、銀行はまだ半人前だ、銀行はリスクをとって資金を供給するように努力すべきだ、こういう発言をされているわけです。山本大臣、どのようにお考えですか。
○山本金融担当大臣 赤字決算を出しているからといって、悪い会社とか半人前とかいうことではなかろうと思いますが、過去の経過からして、公的負担を得て安定化し、なお活発な業務活動を行っているという銀行に限って見れば、何となく釈然としないという御指摘は、まことにそのとおりであります。
そして、こういった銀行のビヘービアとしまして、一人前というのを理想的に考えれば、法人税も払い、利用者利便のために預金金利も上げ、サービスもなおよくして、そして企業の社会的責任も全うし、なお労働分配率も高くして従業員の厚生福利に貢献するというところにすべて置けば、なお不満が残ることはあるとは思いますが、こうした点を期待しながら、銀行のビヘービアを見ていきたいというように思っています。
○佐々木(憲)委員 なおその銀行は努力すべきだ、こういうことでありますが、私が重大だと思うのは、それだけじゃないんですよ。
この10月に、日本経団連から全国銀行協会に対して、政治献金の要請というのがなされたんですね。会長行である三菱東京UFJ銀行は、その旨を会員各行に通知した。こういうことは今まで銀行としてはやっていなかったんです。それを、こういうことをやった。献金先というと、大体、自民党が中心ですよね。献金をどうするかは個別銀行の判断だというんですけれども、三菱UFJフィナンシャルグループは、この要請を受けて九年ぶりに政治献金を再開する検討に入った、こう報道されている。
国民の税金を47兆円投入してもらって破綻を免れ、空前の利益を上げた。税金が納まっていない、国民にも還元しない、しかし自民党だけには還元する。こういうことでは二重三重におかしいんじゃありませんか。利益があれば預金者、利用者に返還する、還元するというのは当然だと思いますが、どうですか。山本大臣。
○山本金融担当大臣 ちょうど小泉内閣当時に池田元久先生の御質問があって、小泉総理が、公的資金投入行から献金は受けませんとはっきり申し上げております。さらに加えて、正当な献金というのは政党活動について欠かせないものであるから、それは法律にのっとって堂々と受けたいと思いますともおっしゃっておられます。
民主主義のコストでございますし、私が金融庁の立場からどうということではありませんが、各行のガバナビリティーに基づいた経営判断というようなことであろうかと思っておりますので、また、監督庁の権限の問題や、監督の姿と、また献金の姿とは、ちょっと次元を異にしておりますけれども、先生おっしゃる点、つまり国民の理解を得ながらという点については、配慮が必要だろうというように思っております。
○佐々木(憲)委員 以前は、東京三菱銀行は日本経団連から要請を受けたことがあるんです。そのとき東京三菱銀行は、公的資金は返還して、受けておりません。にもかかわらず、それを各銀行に伝えることをやらなかったんですよ。つまり、献金を拒否したんです。ところが、現在、検討する、しかも通知するということをやっているというのは非常に大きな変化なんです。
これは、今の銀行の現状からいうと、私はやるべきではないと思います。国民に還元せずに、何でそっちの方ばかり先にやるんだ、こういうことになるわけです。そういう点をよく踏まえて、銀行の言いなりにならないような行政をやっていただきたい。
次に、尾身大臣にお聞きをいたします。
先日の質疑で、私は、高齢者の増税、負担増の問題についてただしました。そのとき尾身大臣は、現役世代の給与所得者の方が高齢者年金世帯よりもはるかに大きい負担になっているとおっしゃいまして、高齢者に負担をさせるのは当然であるかのような答弁をされました。
そのときに大臣は、「所得が380万円の場合、年金世帯の場合は、5年前は4000円の税負担でございましたが、これが14万円になっております。他方、給与世帯の場合は、5年前13万円の負担であったものが24万円」「同じ所得でありながら、給与・現役世代は1.5倍の税負担をしている」こう答弁をされましたね。
尾身大臣が答弁をされた際の根拠になった数字は、私が今配付をしております資料の1枚目の、右から2列目の下から2段目。上の場合は年金所得者、14万1000円。下の場合は給与所得者、21万2100円。この数字を使われたと思うんですが、そのとおりですか。
○石井政府参考人(財務省主税局長) 数字をお答え申し上げます。
今おっしゃられた数字をもとに答弁されたものだと理解しております。
○佐々木(憲)委員 今確認したように、尾身大臣の使われたのは、今配付した1枚目の資料です。
それで、比較するとすれば可能な限り共通の前提を置かなければならないと私は思います。大臣、聞いているのかな。(尾身国務大臣「聞いていますよ」と呼ぶ)同じ前提、できるだけ共通の前提を置かなければならぬと思うんですね。しかし、この表は現役世代の税負担を重く見せる仕掛けになっているんですよ。
なぜかといいますと、上にある年収379万2000円の年金世帯の場合は、夫が300万円の年金収入、妻が79.2万円の収入を前提として計算しているんですね。下は現役世帯。妻の収入はゼロなんですよ。年収がすべて夫の分で、379万2000円。税がかかるのは夫の分ですね。ゼロから79万、これはかかりませんから。そうすると、夫の分の年収の300万円と380万を比較すれば、380万の方が多くなるのは当たり前なんです。これは適正な比較とは言えないんじゃないでしょうか。
比較するとすれば、妻の年収をパートなどで79万2000円稼いだとして、夫の収入が300万として計算して、高齢者世帯と前提を同じにして比較するというのが当たり前の方法だと思うんです。
それで比較すると、19年分の税額はどうなりますか、増税分はどうなりますか。
○尾身財務大臣 先日申し上げましたのは、おっしゃるとおり、給与世帯については夫が379万円で妻の収入がゼロという想定で申し上げました。
今の御指摘の、夫300万円、妻79.2万円という想定で申し上げますと、年金世帯の場合には税負担の合計が14万1000円になっております。給与世帯の場合には13万8000円になっておりまして、年金世帯の方が税負担としては多いという数字になっております。
ただし、これはどういうことかと申しますと、保険料等の負担が、年金世帯の場合には29万2000円であるのに対しまして給与世帯は53万2000円と、24万円給与世帯の方が余計に保険料等の負担をしているわけでございまして、これは可処分所得という点から見ますと、これが社会保険料控除として所得の課税所得から差っ引かれるということになります。
したがいまして、実質の課税所得、つまり実質の所得は、この比較におきましては年金世帯の方が給与所得より高くなっているということでございまして、したがって、課税所得がこの社会保険料控除があるために給与世帯の方が少なくなっているわけであります、課税対象所得が。したがって、その結果として、税額は給与世帯の方が13万8000円となっておりまして、年金世帯よりも税額としては低くなっているわけであります。
しかしながら、保険料負担と税の負担と両方合わせますと、年金世帯は43万3000円、給与世帯は67万円ということでございまして、同じ所得でありましても給与世帯の方がはるかに大きな負担になっているという事実があります。
○佐々木(憲)委員 保険料の問題を私は今問題にしているんじゃありません。税の話なんです。
しかも、尾身大臣がこの前答弁をしたのはこの数字なんです、私がさっき紹介した。つまり、税負担がいかにも給与所得者が重い、重い、1.5倍である、場合によっては10倍だとか、そういう話をされるものですから、私はそれでは、収入の前提を同じようにしなければおかしいじゃないかということで、計算を財務省にしていただいたのが2枚目にあるわけです。
それを見ますと、同じ位置のところを見ていただければわかりますが、世帯収入、年金世帯とそれから給与所得者世帯、そのうち夫300万円というふうに両方いたします。それを前提として税収の、税負担の計算をしますと、そこにありますように平成十九年分で、年金世帯の場合は14万1000円、これは変わりません。ところが、給与所得者の場合は13万8000円なんですね。したがいまして、これは増税の分としても、年金世帯は13万7000円の増税、現役世帯は5万8700円の増税、こういうことになるわけです。したがって、高齢者の負担は現役世帯よりも重くなっているわけです。高齢者の増税額も現役世帯の2倍になっているということなんです。このように計算いたしますと、全く違う結果になるわけですね。
それから、単身世帯の場合はどうか。次のページをあけていただきますと、単身世帯は、同じようにして、世帯収入300万の場合、年金世帯、平成19年分の課税は19万8200円、13万200円の増税です。これに対して、現役世帯では19万2500円の課税で、3万4500円の増税になる。つまり、現役世帯よりも年金世帯の方がはるかに負担が重いわけです。
世帯収入が320.8万円の場合、年金世帯は22万7100円の課税で、14万1300円の増税、現役世帯では21万1100円の課税で3万8000円の増税、これも高齢者の負担が現役世帯よりもはるかに重くなるわけですね。
税ということに限って試算をいたしますと、結果として、尾身大臣が前回答弁されたこととは全く逆の結果になる。この数字自体はそのとおりですね。
○尾身財務大臣 今おっしゃった数字は、そのとおりでございます。
ただ、どちらの負担が重いかということは、税と保険料等の負担を合計したものでございまして、単身世帯の場合におきましても、保険料の方は、年金世帯21万7000円に比べて、単身世帯の方は38万5000円と、ほぼ2倍近い保険料負担をしているわけでございます。その分を所得から社会保険料控除として差っ引いて、可処分所得といいますか課税所得で計算をすると、同じ所得であっても、社会保険料負担が高齢者の方が少なくて現役世帯の方が多いために、実際の課税所得、これは可処分所得と言ってもいいと思いますが、その課税所得が高齢者の方が高くなる。そして、給与世帯、現役世帯の方が低くなるということの結果として、税そのものの負担は給与世帯の方が幾らか安くなるわけであります。
しかしながら、社会保険料の支払いと税の支払いを合計いたしますと、単身の場合におきましても、年金世帯が41万5000円に対しまして、給与世帯は、世帯というのは単身でございますが、57万7000円と、現役世代の方が高齢化世代よりもはるかに高い負担をしている、そういう負担の差というのはあって、そういう意味で、高齢者についての配慮を十分している、そういう制度になっているということでございまして、これは政党のいかんを問わず、事実関係としてしっかりと御認識をいただきたいと思います。
○佐々木(憲)委員 私は税金の話をしているんですね。それをまた今度は保険料の話に広げて、しかもその保険料は、それは現役世帯は一定の保険料を払っていますよ、当然。高齢者になると、それは払わないでいいとか、あるいは軽減というのはあります。そういうことを含めて言うなら、それなら、ではそれに対して、特養ホームに入った場合の利用料はどうか。こうなっていくと、高齢者の場合の方が大変な負担になるわけですよ、この前も私はここで申し上げましたけれども。病院に入院した場合もそれに加算される。収入の3分の1あるいは半分近くが、そういう形で負担が飛んでいく、こういうことになっていくわけです。
したがって、今お認めになりましたように、税の関係でいうと、結局、尾身大臣が、高齢者の税負担は軽い、現役世帯が重いと言っていたことは、それは数字の上の計算の根拠の違いであって、私がこの前提で試算すれば、そのとおりだと。つまり、高齢者の負担は非常に重いということを税の面ではお認めになったわけであります。
この問題、私、考えると、もともとこういう形で比較をするということ、政府が、つまり尾身さんがこの前盛んに比較をされておっしゃいましたから、そういう意味が果たしてあるのか。つまり、現役世帯の給与所得の場合と高齢者世帯の年金収入というのは、やはりそれぞれ性格が違うわけであります。高齢者の場合は、稼得が減少する、それから体力が減退する。したがって、現役の場合と違うからこそ特別な支援というのが今までもやられてきたし、それが必要なわけですね。老年者控除などの軽減策が設けられてきたわけですね。それを現役世帯と一律に同じやり方で負担を負わせるというやり方が、無理が生じるということなんですよ。
今、もう本当に悲鳴が聞こえますよ、全国。そういう方々がふえているわけですね。ですから、今こういうやり方で、高齢者の増税を正当化しようとしていろいろな数字を出して説明されますけれども、比較の前提が違う数字を持ってきて矛盾が逆に大きくなってしまう、こういう結果に今なっているわけですから、私は、政府がやっていることは、これはだれが見ても高齢者の生活を直撃する増税だということは明らかなので、負担もふえる、それから利用料もふえる、そういう形で高齢者の生活が大変な打撃を受けているという実態こそ認識すべきだ、このことを指摘しておきたいと思います。
次に確認したいのは……
○伊藤委員長 質問時間が過ぎておりますので、おまとめをいただきたいと思います。
○佐々木(憲)委員 わかりました。
数字だけ確認しますが、全体の負担の数字です。
公的年金控除の見直し、老年者控除の廃止、個人住民税、老年者非課税の廃止、これで何人の高齢者が負担増になるか。それから全体の税収は、これは合わせて幾らなのか、この点を最後に聞きたいと思います。
○石井政府参考人(財務省主税局長) 年金課税の見直し等によりまして税負担がふえる、または税負担が生じる方の数でございますが、約500万人程度、これは年金受給者全体、約2500万人おられますが、それの約5分の1程度になります。
また、これらの見直し措置によりましての増収額でございますが、平年度で申しますと、国、地方を合わせまして約4000億円というふうに見込んでいたところでございます。
○佐々木(憲)委員 わかりました。
結局、4000億円という数字でどんなに悲鳴が上がっているかということなんですよ。一番最初に私、申し上げましたように、銀行は税金を払っていない、大企業も減税を受けている、こういう状況を変えて、そういう高齢者を支えることをやるのが本当の政治ではないのかということを最後に申し上げまして、質問を終わります。
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