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税制(庶民増税・徴税), 金融(銀行・保険・証券) (強権的徴税, 中小企業融資, 政府系金融機関)

2009年11月25日 第173回 臨時国会 財務金融委員会 【545】 - 質問

藤井財務大臣が納税者憲章の制定を明言/貸し渋るメガバンクと冷たい政府系金融機関に亀井金融担当大臣「モラルハザードだ」と答弁

 2009年11月25日、与党による19日の中小企業融資円滑化法案の強行採決に伴う混乱から正常化し、財務金融委員会が開かれ、補充質疑が行われました。
 佐々木憲昭議員は、納税者憲章と中小企業向け融資について、質問しました。

 佐々木議員は、納税者の権利を守る「納税者憲章」の制定を藤井裕久財務大臣に求めました。藤井大臣は、民主党政策で掲げていることもあり、4年間の政権中に実行すると表明しました。「納税者憲章」の制定を財務大臣が国会で明言したのは初めてです。
 佐々木議員は、日本共産党が1992年に提唱して以来、一貫して実現に努力してきたと述べたうえで、「生命保険を差し押さえて滞納分の納税に充てるなど、人道上も許されない強権的な徴税が行われている。納税者は対等な主権者として扱われ、権利を保障されなければならない」と強調しました。
 さらに、OECD(経済協力開発機構)加盟30カ国のうち23カ国が「納税者憲章」を制定し、世界的な流れになっていることにふれ、佐々木議員は「日本は遅れている。いつまでに実現するのか」と迫りました。
 藤井財務大臣は、「大変大事なこと。民主党の選挙公約であり、この間に実行させていただく」と答えました。



 次に、佐々木議員は、資金繰りに苦しむ中小企業に対して大手銀行が貸し渋りを行い、政府系金融機関も冷たい対応をしている問題で政府の姿勢をただしました。
 佐々木議員は、三菱東京UFJ、みずほ、三井住友の三大メガバンクの中小企業向け貸出額がこの1年で4兆円も減っていると指摘。「中小企業への資金供給は本来的役割だとみずほグループ社長自ら言いながら、実際は貸し渋り・貸しはがしが続いている」と告発しました。
 亀井静香金融・郵政改革担当大臣は、「指摘の通り、中小企業金融に対する責任は大きいのにメガバンクがこういう状況なのは残念。努力を促したい」と答弁。佐々木議員は、銀行に貸出額の目標と計画を明らかにさせるべきだと述べました。
 さらに、中小企業の駆け込み寺となるべき政策金融公庫が、「経営改善計画をつくり、受注先を新規開拓しても『貸せない』の一点張り」(広島県福山市の解体業者)、「新規融資を7つも理由をつけて断られた。一つ一つクリアーしていると説明しても聞いてもらえなかった」(広島県福山市の設計士)など、冷たい対応をしていることを具体的に示し、改善を強く求めました。
 亀井金融担当大臣は、「公庫の役割は民間以上に重要だ。経済産業大臣とも緊密に連絡、協議して改善させていく。こうしたモラルハザードが起きているのは悲しいことだ」と述べました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 まず、藤井財務大臣にお聞きをしたいと思います。
 税務行政について、前回私が質問をしたときに、大臣は、税務運営方針、これが税務行政の基本である、こういう明快な答弁をいただきました。民主党はマニフェスト、民主党政策集ですね、インデックス2009、この中で、そのことに関連をして納税者権利憲章の制定という政策を掲げておられますけれども、これの目的、ねらいという点について、まず説明をいただきたいと思います。
○藤井財務大臣 これは、民主党が野党であった時代にも長く勉強をしてまいりました。結局、納税者と課税当局が対等でなければならないのが、現実は、課税当局が上で納税者が下というような運営が行われていた。そして、それを直していく一つの重要な手段として、納税者には権利があるんだと。1例で申しますと、前置主義とか理由を付記しないとか、こういう問題は、これで対等と言えるのかというあたりから始まっておりまして、今二つだけ申し上げましたように、非常に重要な点が、この納税者権利の中の内容の重要な点だと思っております。
○佐々木(憲)委員 私ども日本共産党も、今から17年前、1992年2月ですけれども、納税者憲章の提案というものをやっておりまして、この実現のためにずっと今まで奮闘してまいりました。
 当時、税務署による人権無視の税務調査、強権的な徴税というものが大変大きな問題になりました、現在も続いておりますけれども。任意調査というわけですけれども名ばかりで、仕事の都合も聞かず、通知もしないで税務調査に訪れ、権力を振りかざして、たんすをあける、ハンドバッグをあける、こういうことをやったり、例えば、入院給付を受けている業者の命の糧である生命保険、これを差し押さえて解約する、その返戻金を滞納額に充当する。人道上からいうと許されないようなことが発生したわけです。業者も農家も、こういう一方的な、例えば推計課税で事実と異なる修正申告に泣く泣く判こを押させられるとか、少なくともこういう被害が続いてきたわけでありまして、中には自殺に追い込まれた人もいるわけです。
 我々は、今大臣がおっしゃったように、やはり納税者は基本的に対等の主権者として尊重されなければならない、その人たちの権利というものをしっかりと保障することによって初めて納税の義務が果たされるものだというふうに私は思っております。そういう意味で、今回の民主党の提案も、我々はまだ中身は十分聞いておりませんが、方向としては同じだろうと思うんですね。
 こういう納税者権利憲章の制定というのは国際的な流れになっていると思うんですが、OECD30カ国の中でこういう憲章が制定されているのは何カ国あるか、それから先進7カ国の中ではどうか、この点、確認をしたいと思います。
○藤井財務大臣 ちょっと正確じゃないんですが、OECD30カ国中20幾つだったと記憶いたしております。
○野田財務副大臣 お尋ねのOECD諸国における納税者権利憲章の制定状況ですけれども、2008年現在、加盟国30カ国中23カ国が作成、公表しています。
 それから、G7、先進7カ国では、2009年11月現在、アメリカ、イギリス、フランス、イタリア、カナダ、5カ国で制定をしております。
 以上です。
○佐々木(憲)委員 そういう意味でいいますと、これは日本はおくれていると言っていいと思うんですね。1970年代から80年代にかけて、こういう制定が欧米諸国で次々と行われました。例えば、アメリカの納税者の権利章典、フランスの税務調査に関する憲章、イギリスの納税者憲章、カナダの納税者権利宣言、こういうものがどんどんつくられてきたわけです。アジアでも、韓国などでもつくられております。
 私は、この納税者権利憲章というのは大変大事なものだと思いますので、ぜひこれは財務大臣として具体的な提案を行っていただきたい。政府としていつまでにこれを実現していくか、お考えをお聞かせいただきたい。
○藤井財務大臣 私は、評判の悪い税務署長というのを1960年代にやりまして、今のお話はよくわかります。随分変えてきたつもりなんです、そのころから。しかし、まだ残っているというのも事実でしょう。それから特に、公務員というか、権力行政を持っていることは間違いないんですが、最も権力行政を持っているのが国税職員なんですよね。だから、それゆえに非常に謙虚であれということは、私はずっと言ってまいりました。
 そういう意味からいって、今の佐々木委員の御指摘は大変大事なことであると思っておりますし、私どもが選挙を戦うに際してお約束したことであります。ただ、平成22年度の頭からどうかというようなことについては今お答えしかねますが、民主党の選挙公約であるという事実だけはまず申し上げておき、その間にこれを実行させていただきます。
○佐々木(憲)委員 では次に、亀井大臣にお聞きをしたいと思います。
 前回私は、この中小企業金融円滑化法に関連をして、農家や漁業をされている方はどうか、これは適用になると。それで、私のところにこういう訴えが来ているんです。
 高齢者、年金生活者ですね、さまざまな保険料を払って生活が大変だ。借りかえで安い利子になれば、どうにか払っていくことができます。銀行では、年金生活者は借りかえができません。年金者も住宅ローンの借りかえができるようにしていただきたい。
 こういう訴えがあるわけです。
 今度の法案は住宅ローンの条件変更についてでありますが、年齢による制限、これはあるのかどうか、高齢者、年金生活者も対象になるのか、これをお聞かせいただきたい。
○亀井金融担当大臣 ございません。
○佐々木(憲)委員 わかりました。
 では次に、3大メガバンクでありますが、この融資が、中小企業向け、しっかりやられているかというと、私は、そうではない、現状は違うんじゃないかと。そこで確認したいんですけれども、三菱UFJ、みずほ、三井住友の3大メガバンクのグループで中小企業向け貸し出しというのは、9月期中間決算で前の年に比べて一体どういう数字になっているのか、ふえているのか減っているのか、これを確認したいと思います。
○大塚内閣府副大臣 数字ですので私からお答えさせていただきます。
 まず、メガバンク3行合計ですと、ことしの9月末の中小企業向け融資は108・8兆円、1年前が112・8兆円ですから4兆円減少しております。個別行につきましては、各行の決算短信から見る限り、三菱東京UFJが1・2兆円減少、そして三井住友が0・9兆円の減少、みずほの場合は、みずほ銀行とみずほコーポレート銀行を足しますと1・3兆円の減少となっております。
○佐々木(憲)委員 これは、亀井大臣、大変大きな減少なんですよ。1年間で4兆円減っているんです。中小企業への資金供給というのは銀行の本来の役割であるとみずほグループの社長も言っていながら、こんなに減っているわけです。なぜこういう事態になっているのか。貸し渋り、貸しはがしというものがかなり横行しているのか、どのように認識されていますか。
○亀井金融担当大臣 もう委員御指摘のとおり、やはり中小企業に対する責任が大きいと思います。大企業の場合は証券市場等の直接資金調達の方法もあるわけですけれども、そういう面からいいますと、メガバンクが現在そういう状況にあることは非常に残念な状況でありますので、そういう意味での努力を促していきたいと思っています。
○佐々木(憲)委員 3大グループとも黒字経営なんですね。普通株の公募増資などによって資本増強も進めております。各行とも預金が貸し出しを上回る金余り状況にある。これは貸し出しの体力はあるわけです。それでいながら中小企業の融資というのは減少している。
 今回、中小企業金融円滑化法というのが成立したとして、具体的に中小企業の融資がふえる、こういう保証はありますか。
○亀井金融担当大臣 私は、今までよりも円滑化するであろう、このように思いますが、一つ大きな問題が今ございますのは、中小零細企業等において新しい事業展開、設備投資をしていこうという意欲が今減退をしておるという非常に残念な状況があると思います。私はその点が日本経済における大きな問題ではないかと。そういう意味で、この法案が成立いたしましても、そうした融資を受ける対象の方々が事業に対する意欲を持たなくなってきておるというこの現状をどう変えていくかということが、私は、当面政治の大きな課題ではないか、このように考えています。
○佐々木(憲)委員 金融というのは、各企業の営業を、あるいは経営の将来を支えていくものですから、金融だけで解決するわけじゃありませんので、確かに言われるように、各中小企業が経営が成り立つ、その成り立つ前提としては需要がしっかり伸びていく、特に家計を中心とする民需が伸びていくというのが基本だと思うんですね。そういう政策を国がやるかどうか。これはなかなか一朝一夕にはいかないかもしれないけれども、しかし大きな展望として、私は、そういう意味では国民生活優先の、あるいは福祉型の成長路線というものに切りかえていくということが、中小企業にとっては一番成長の近道ではないかというふうに思っております。そういう点では共通の認識があるというふうに思います。
 もう一つ、銀行に対しては、やはり中小企業向け融資の目標ですとか計画とか、そういうものをある程度持っていくようにしていかないと、銀行に丸投げではだめだと私は思います。その点は改善の余地があるというふうに私は思っております。
 それからもう一つは、政府系金融機関、特にこれまで国民生活金融公庫ですとか中小企業金融公庫等が役割を果たしてきたんですが、今政策金融公庫というふうに変わりましたけれども、本来、国民生活金融公庫などは、民間の銀行が相手にしない中小企業が駆け込む駆け込み寺と言われていたわけですね。その駆け込み寺が駆け込まれても拒否するようなことであっては、これはもう全然話になりませんから、そこを改善するのがもう一つの点だというふうに私は思っております。
 その点で、亀井大臣の地元、広島県の中小企業の方がこういう訴えをされているんです。
 これは政策金融公庫の対応がまずいという例なんですけれども、福山市で解体業をしているAさんですが、兄に保証人になってもらいセーフティーネット融資で500万円の運転資金を要請した。9月8日に経営改善計画書を持って面談したが、その場で公庫の課長に、この経営改善計画はAさんの希望であって、実現する可能性はない、半年か一年先、経営改善が実現すれば融資の道を考えないものではないと言われた。
 本来なら、経営改善計画の何が不十分で、どうすれば融資の対象になるか、亀井大臣が言っているコンサルティングのような、そういうことを援助していくというのが金融機関もやはり必要だと思うんです。
 Aさんは、従業員5人の生活がかかっているから助けてほしい、こういうふうに頼んだけれども、貸せないという一点張りで、その後、新しく開拓した受注先の注文書、これも添付して面接したけれども、公庫としては今後よくならないと判断した、これだけの回答で、融資してくれない。
 それからもう一つ、福山市ですけれども、40年間建築設計事務所を経営してきたBさんの例です。
 政策金融公庫に300万円の融資を申し込んで、7つの改善点、理由を言われて断られた。一つ一つそれを改善するということで説明をしたが、聞き入れてもらえなかった。10月8日に決算書、受注工事明細を提出して申し入れた。
 Bさんは、この大不況で資金繰りが困難になった、そのため、家族や従業員の協力のもと、役員報酬の減額、従業員を独立させ、銀行の借り入れ条件も変更するなど努力してきた。現在大手の建設会社や病院などの設計を受注しているけれども、政策金融公庫はこれを評価してくれない、こういうふうに訴えて、銀行は条件変更に応じているのに、政策金融公庫は新規融資を認めないと。この方は、この法案で銀行への義務規定が盛り込まれているが、公庫が協力しないという実態が現にあるんだ、こういう話ですね。
 それから、もう一点だけ。三点目は、愛知県津島市の例ですけれども、鉄工所を経営しているCさんです。
 売り上げ減少のため、融資を受けて、リース料を一括払い、既存融資の借りかえを行って、10年で返済したいと愛知県信用保証協会に申し出たが、税金の分納や条件変更中であることを理由に拒否された。事業計画について、保証協会は、その内容をよい方向に向いていると評価し、事業主の誠実性も認めているようだけれども、税金の分納、条件変更を理由に政策金融公庫は融資を断り続けている。
 こういう事例がたくさんあるんです、もう時間がありませんから言いませんけれども。こういうことは、やはり政策金融公庫の姿勢に問題があるんじゃないか。私は、公庫の総裁にもここへ来ていただいて、この点、改善の質問をしたことがあります。一般論としてはいいことを言うんですけれども、どうも現場がそうなっていないというのが私の実感でありまして、この点、大臣、どのように改善されるか、最後にお考えを聞きたいと思っております。
○亀井金融担当大臣 おっしゃるように、政府系金融機関の果たしている役割というのは、民間金融機関と同様、あるいは、場合によってはそれ以上の重要性があると思います。
 私どもとしては、経済産業省とも本当に緊密な連絡をとりながら、両方がうまく機能していくということについて協議をしておるわけであります。直嶋大臣も、大臣の非常に強いリーダーシップのもとで、そうした金融機関の現場の状況をきちっと改善していくようにというきつい指示もされておりまして、私が聞くところによると、今、大変な取り組みがなされておる最中だ、このように了解をしております。
 ただ、私は今のお話を聞きましてつくづく思いましたのは、そうした職員だけじゃなくて、もう日本人全体にモラルハザードが起きてしまっておるという悲しい悲しい現実があるというように私は本当に思います。そう嘆いてばかりおるわけにはまいりませんので、銀行もあるいは政府系金融機関も、職員を徹底的に、本当に徹底的に鍛え直すということをぜひやっていただきたい。
 私どもの分野については、金融庁ですが、検査監督の主体をそういうところに、コンサルタント的な機能を果たしておるかどうかということが今後の金融検査の、これが眼目だということでおりますので、頑張っていきたいと思っています。
○佐々木(憲)委員 ありがとうございました。終わります。

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