アドレス(URL)を変更していますのでブックマークされている方は変更してください。
<< ホームへ戻る

金融(銀行・保険・証券) (消費者金融・サラ金・ヤミ金)

2006年11月29日 第165回 臨時国会 財務金融委員会 【372】 - 質問

佐々木議員「過払い利息のことを知らない債権者に、国が率先して周知することが大切だ」

 2006年11月29日、財務金融委員会で、貸金業規制法案改正案の締めくくりの質疑が行われ、佐々木憲昭議員が質問しました。

 佐々木議員は、生活再建や自殺防止の観点からも、多重債務者問題に政府が真剣に取り組むようせまりました。
 貸金業規制法案改正案は、公布後、おおむね3年で出資法の上限金利(29.2%)を、利息制限法の上限金利(20%)にまで引き下げ、グレーゾーン金利を撤廃するという内容になっています。
 利用者が「任意に」グレーゾーン金利を支払った場合は「有効」とした「みなし弁済規定」も廃止します。
 佐々木議員は、質疑のなかで、利息制限法を超える金利での貸付は、「現行法でも無効であり、そういう金利での貸付をしてはならないという原則の確立が必要だ」と政府の姿勢をただしました。
 これにたいして、山本有二金融担当大臣は、みなし弁済規定の廃止以前にも「業者に対し、任意に支払われなければ有効な弁済とはならないことを説明する義務を課す方向で検討している」と答弁しました。

 また、多重債務による自殺者が相次いでいることについて、佐々木議員は、先に成立した「自殺対策基本法」が「国は自殺発生回避のための体制を整備する」と明記していることを指摘しました。
 そのうえで「過払いになっていることを知っていれば、母は自殺しなくてすんだ」という娘さんの手記などを紹介し、「過払い利息のことを知らない債権者に、国が率先して周知することが大切だ」と指摘しました。
 佐々木議員は、過払い金について「利用者本人が求めれば、サラ金業者は返還するのが当然だ」と指摘。山本大臣は「そういう態度に出れば、その業者の信用や評判は高まる」と答えました。

 最後にサラ金と銀行との関係について、22日の質疑において、山本大臣は、「銀行経営においては、収益性だけではなく、御指摘のとおり、銀行業務の適切性や健全性、社会的責任といった観点も大変重要」「消費者へ提供されるローンのあるべき姿について真摯に検討していただき、適切に対処していただきたい」と答弁しました。
 佐々木議員は、現実は、この答弁と違う、行き過ぎていると指摘。
 柳沢大臣の時期に、サラ金業界のあり方こそ金融業界の目指すべき方向であると大きく変わったことで、各金融機関はサラ金と提携を深めていきました。
 しかも、公的資金を入れて、公的資金注入行に対して、経営健全化計画を出させています。三井住友フィナンシャルグループの健全化計画の中には、サラ金との提携を大いに進めていきます、こうやってもうけますと書かれています。
 佐々木議員は、政府が計画を出させて、収益力を上げろとしりをたたいてきたとところに非常に大きな問題点があったのではないかと指摘。今までの政策の転換ということが現在求められている強調しました。

 質疑の後、採決が行われ、野党側提案の修正案は否決されましたが、政府提出の貸金業規制法案が全会派一致の賛成で可決されました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 いよいよ最終的な段階に来ていると思いますが、私で最後になるかどうかは、これから行われる理事会の協議の結果次第ということでございます。
 そこで、私は、これまでの審議を通じて明らかになってまいりました、サラ金、やみ金に苦しんで、自殺者も出す、あるいは自殺も考えるような人がふえている、こういう問題をどう解決していくかという点についてきょうは御質問したいと思います。
 ここで私が取り上げたいのは、過払いになっている、つまり、利息制限法を超える無効な金利を押しつけられて、それを知らずに、払わなければならないものだというふうに思い込んで、なかなか払えないということで自分を追い込み、自殺に至る、そういうケースが結構多いということであります。
 ここに一つの例を紹介したいんですけれども、これはある60代のお母さんを自殺で亡くした娘さんの手記であります。
 2年前のことでありますが、平成16年8月31日午前2時過ぎ、台風による停電の中、66歳の老女がみずからの命を絶ちました。自宅2階の押し入れの天袋の柱に腰ひもと日本手ぬぐいをかけて首をつったのでした。これが私の大切な母の最期でした。身長145センチの小柄な母がどんな気持ちでみずからの死に支度をしたのかと思うと、胸をえぐられる思いです。
 母の49日を前に遺品として受け取った品物の中に、アイフル初め4社の書類がありました。その中には、亡くなる1週間前に、3千円はかかるであろう交通費を出して、千円の支払いのために大阪に出向いていました。私は、自分自身の母を救えなかった、見殺しにしたのと同じです。
 母の借り入れは本当にあるのか、アイフルに取引履歴の開示を求めたところ、わずかばかりですが過払いになっていたのです。私の悲しみは怒りに変わりました。高い金利を支払い、その取り立ての電話におびえ、訪問者におびえ、みずからの命を絶った母の借金は既に払い終わっていたのです。
 こういう例であります。
 つまり、払わなくてもいいものまで払わされていた、それを知っていればみずから命を絶たなくて済んだ、こういう訴えであります。
 それから、最近もいろいろな事件が、強盗事件などあります。参考人質疑の中でも紹介されていましたが、最近、郵便局に強盗に入った事件というのがありましたね。これを弁護士の方が本人から聞き取りしたメモがありますが、こういうのがあるんですね。
 私は、サラ金から借金があり、まじめにおくれることなく長年返済し続けました。それも家族にばれないように、一人で悩み、苦しみ、返済が困難になり、このような事件を起こしてしまいました。私の借財は430万円で、月々の返済は15万円以上でした。おくれれば督促の手紙や電話が来て家族にばれるのではないかと、何をしても返済返済、頭から離れませんでした。自殺を考えたこともあります。高等裁判所になって、弁護士からサラ金の借金は過払いになっていたことを教えられました。しかもこんなにも多額の。私は愕然としました。当時このことを知っていたら、あんな犯罪などしなくともよかったのに。そして、今こんな場所にいなくてもよかったのに。私は悔しくて泣きました。
 これは、本人がしゃべったのを弁護士が記録したものであります。
 こういう事例をなぜ紹介したかといいますと、過払いというものがほとんど知られていないのではないか。つまり、利息制限法を超えたものは、先ほどの話によりますと支払い義務はない、超えた金利は無効である、そういうものを返還してもらうのは当然であるということなんですけれども、こういう過払い請求で債務が減額されるということを知らない方々、私の質問に山本大臣は、「弱者の立場に立って、しっかりしたことをやっていくような行政でありたい」、大変前向きな答弁をされたんです。
 多重債務者に、解決策といいますか過払いというものがあるんだよ、利息制限法を超えるものは無効であり支払い義務はないんだよということを周知徹底することは非常に大事だというふうに思いますが、これはどのような具体的な対策を考えておられるのか、お聞きをしたいと思います。
○山本金融担当大臣 まさしく、知らないことによって予想外の被害をこうむったり情けない思いをされるということに対しては、文明国家として許しがたいことでございます。
 その意味におきまして、基本的な社会常識の知識の中にこういう利息制限法あるいは出資法のそういう知識が入っていけば幸いであるわけでございますが、いまだ過渡的な時代というように考えますれば、今後、多重債務者対策本部におきまして充実していくであろうカウンセリングシステム、我々は、そういったもので230万の多重債務者の皆さんがひとしく知識を得ながら、みずからの生活自立というものを図っていくような健全な社会に向かっての歩みを始めていただきたいと思っております。
○佐々木(憲)委員 やはりこれは、周知徹底するということが非常に大事だというふうに思います。
 そこで、過払いに対する返還の請求問題でございます。
 先ほども出ておりましたが、引当金の問題ですね。利息返還損失引当金という点、私もこの前これを取り上げましたが、サラ金大手5社で1兆円を超えるという答弁が先ほどありました。
 この点は、日本公認会計士協会の10月13日付の通達文書でこういう指摘があるんです。グレーゾーン金利が解消したとしても、過去に債務者等が利息制限法の上限金利を超過して支払った利息部分の請求はその後も残り、今後とも債務者等からの請求が予想される、これは当然です。過去の過払いに対して、払い過ぎたから返してください、これは予想される。そこで、返還の請求が見込まれる場合において、当該返還額が引き当て計上されているか留意する必要がある、こういうふうに指摘をしているわけですね。
 つまり、ここで引当金を積むということは、利息制限法の上限金利を超えた無効な金利の支払いを業者側が受けているので、それに対して、返してくれという返還が予想される、それを想定して積み立てている、こういうものだと思うわけです。したがって、これはいわば過剰な取り立て分といいますか、そういう部分だということだと思うんです。引き当て部分というのは、そのために積むということなんですから。
 まず、この引き当ての性格ですね。これは、無効な支払いをした可能性のある部分を返還に備えて積み立てておく、こういう性格のものだというふうに私は思いますが、大臣、どうですか。
○山本金融担当大臣 大手消費者金融会社四社は、足元における過払い金返還請求の増大や日本公認会計士協会が公表いたしました監査上の新基準、これらを踏まえまして、18年9月期におきまして、合計で1兆846億円、連結ベースでの利息返還損失引当金を計上したものと承知しております。
 当該引当金は、期末の債権残高、直近1年の返還実績率、平均回収期間等を勘案して合理的に見積もられる利息返還費用を引き当てるものでございますが、個々の弁済でございまして、それぞれまた事情はあろうというように思っておりますが、会計上、そうした引当金が将来返済される見込みであるという点におきましては、委員御指摘のとおりでございます。
○佐々木(憲)委員 これは取り過ぎちゃったわけですからね、取り過ぎたものを会社の中に積み立てておくというのはいかがなものか。取り過ぎたら取り過ぎた相手に返すというのは当たり前なので、請求があって初めて検討するというようなものではないのではないか。請求がある前に、具体的にこういう問題について、積極的に返す姿勢を、もちろん手続はいろいろあるでしょうけれども、そういうものではないのかと思うんです。言われたら返す、言われなかったら返さないというような感じでは、これはまずいのではないか、はっきりしているわけですから。
 引当金の性格は、過払いに対する請求があった場合、それに対応するために積み立てる、そういう想定だとおっしゃいましたね。したがって、これを返す姿勢を業者側が積極的に示すべきだというのは当然だと思うんですが、いかがですか。
○山本金融担当大臣 個々の債権債務の問題でありますし、既に支払われた分についての過払い返還請求をした場合、どういった抗弁がなされるかにつきましては、個々のケースケースで考えなければならないということは言うまでもありません。
 ただ、それが予測される、また、過払いの蓋然性が極めて高いという人に対して何らかの措置がないのかなというような工夫は、それぞれまた業者間、あるいは借り手と貸し手の間のこれからの、ADR的な機関を使うなり、あるいは簡易裁判所の和解の席での話なりというような、何らかの措置を求めるというのは当然あり得ることだろうというように思っております。
○佐々木(憲)委員 その返還の仕方ですけれども、私のところにもメールが参りまして、特に弁護士を通じなくても、個人で返還の計算をしてこれを返してくださいという場合に、誠実に対応するんですかと先日の参考人の質疑のときに私は聞いたわけですね。そうしましたら、これは、アイフルの社長さんは誠実に対応いたします、こういう答弁をされました。私はこのことは大変大事なことだと思うんです。
 ですから、いろいろな手続というのは、もちろんそれは必要な場合もあるでしょうけれども、しかし、はっきりしていて、過去の履歴を開示して計算したら、あなたの場合はこのぐらい余分にもらいましたから、これはお返ししますよと。会社として誠実に対応するというのは、この前の答弁もありましたので、すべての業界は当然そういう姿勢で臨むべきだと私は思うんですけれども、大臣、どうでしょうか。
○山本金融担当大臣 個々の会社の経営判断によるところが多いと思いますが、過払いの皆さんのお気持ちからすれば、営業サービスの一環としてそういうものも十分考えられるところでありまして、ぜひ会社としてそうした態度に出ていただければ、かなり会社信用や会社評価が高まっていくだろうというようには思っております。
○佐々木(憲)委員 そこで、自殺の問題に先ほど触れましたが、政府は自殺対策基本法というのを制定した上で自殺総合対策会議というのを立ち上げているようでありますが、山本大臣はこの会議のメンバーですか。
○山本金融担当大臣 メンバーです。
○佐々木(憲)委員 この法律は今お配りした資料の一番最初のところについておりますが、2ページ目の第16条、「国及び地方公共団体は、自殺をする危険性が高い者を早期に発見し、相談その他の自殺の発生を回避するための適切な対処を行う体制の整備及び充実に必要な施策を講ずるものとする。」つまり、国の、自殺の早期発見、早期対応、その責任について明記しているわけであります。
 これは大変大事なことだと思っております。と申しますのは、その次のページをあけていただきましても、「自殺の原因・動機」、これも政府の総合対策会議の中で配られた資料だというふうにお聞きしましたが、やはり平成10年以後、経済生活問題を理由とする自殺が急増しております。
 次をあけていただきますと、我が国の自殺死亡率の件数は、人口10万に対して、世界で2番目の高さであります。こういうことを見ましても、自殺対策というものは大変重要であるというふうに私は感じるわけであります。
 そこで、例えば、被害者の方々が今どんな心情かというのは、最後から2番目の、これは御本人が手書きで書いてファクス等で被連協等に送られたものであります。
 左側の真ん中あたりを見ますと、斜めになっておりますが、ここでこんなことが書かれているわけですね。
 <ヤミ金からお金を借りたのですが、借りたいじょうにお金を払わされ、生活が出来ない状態になってしまい、取り立てのときもドアをつよくたたいてくるため、家に帰ることが出来ません。どうしてよいのかが分からず死にたいほど困って折ります。>
 こういう状況ですね。
 それから右の方を見ますと、
 <今、とても苦しんでおります。どうか、お力をかして下さい。このままでは、一家心中もかんがえております。>
 という訴え。
 それから、下の方を見ていただきたいんですが、これは子供の、13歳の子が書いたものです。
 <新聞を見て手紙を書きました。私の父はさら金に手を出し、払えなくなり、家にいると電話が聞ておどしがすごくて私をつれにくるって言うところもありました。家のげんかんのガラスもわられポストに金かえせなどの手紙がはいっていたりしてこわくて家をでました。父もどこにいるかわからなくて困まっています。兄も失業しててお金をかえすことができません。どうかたすけて下さい。連絡まってます 兄16才 私13才>
 子供がこういう手紙まで書いているわけですね。
 この後、一回は連絡がとれたそうなんです。ところが、その後連絡がとれなくなって、今どうなっているのかわからないという状況であります。
 これは、まさにこういう被害者が死のふちを歩いているような状況であります。そういうときに、この方々に命を絶つことのないようにということを国を挙げて支えていくことが求められていると思うんです。対策会議ができたのもそのためだろうと思いますけれども、これに対して大臣はどのようにお考えか。
 それから、先ほど申しましたが、過払いが返ってくるということがわかれば、それは安心できて、それでもう一回やり直してみようという気持ちにもなっていくわけで、まさに再チャレンジの前提づくりになるわけです。その点について大臣の見解をお聞きしたいと思います。
○山本金融担当大臣 自殺者は、一昨年3万2千人、そして去年が2万8千。3万を前後して、大変高水準にありますし、警察白書、犯罪白書でいけば、記憶に間違いがなければ、殺人罪によって死亡する人が1200から1300であるということを考えれば、いかにも多いわけでありまして、そしてさらに、少子高齢化であるにもかかわらず、若年者における自殺というものも、その数値は高いものでございます。
 そんな意味におきまして、この異常な数字は、単に個人の、一人一人の精神的なよりどころ等だけで解決される数字ではないと思います。やはりそこは社会の問題、国家の問題というように考える必要があろうと思いますので、私ども、自殺総合対策会議ができ上がっているわけでございます。
 そんな意味で、委員御指摘のように、16条に掲げられましたように、危険性が高い者を早期に発見し、相談その他の、自殺の発生を回避するための適切な対処を行う体制の整備及び充実、必要な施策というものは金融庁においても当然考えていく必要があろうというように思っております。
○佐々木(憲)委員 そこで、貸し出しのやり方の問題ですけれども、法律を変えてグレーゾーンをなくしちゃうということですけれども、これは3年後から実施ということではなくて、過払い請求が発生するようなことがもうあってはならないと私は思うんです。
 つまり、現行法でも利息制限法を超えたものは無効なんですから、そういう金利で貸すという行為についてはやってはならないという原則をやはりしっかり確立することが大事だと思うんですが、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
○山本金融担当大臣 御指摘のとおり、上限金利引き下げまでおおむね3年の準備期間があります。この間、新規の貸し付けにつきましてどのような利率で貸し付けを行うかは個社ごとの判断ではありますが、最近の最高裁の判決や今回の法改正の趣旨を踏まえれば、貸金業者が自主的に利息制限法の範囲の中で貸し付けを行う動きが出てくることも考えられるわけでございます。
 なお、今回の改正におきましては、改正法施行から貸金業規制法第43条を廃止するまでの間、利息制限法の上限金利を超える金利につきましては、任意に支払わなければ有効な弁済とならない旨の説明義務を貸金業者に課す方向で検討しております。
○佐々木(憲)委員 そこで、最後に銀行との関係であります。
 私もこの委員会の最初のころに、銀行のサラ金業界に対する貸し出し、サラ金業界の資金調達の三分の二が金融機関である、その責任は非常に大きいというふうに思いまして、大臣にお聞きをしました。そのとき大臣は、銀行経営においては、収益性だけではなくて、健全性、適切性、社会的責任、これが非常に大事だという答弁をされまして、今後、消費者へ提供されるローンのあるべき姿について銀行は真摯に検討すべきである、こういうふうに答弁されたわけです。しかし、現実は、この答弁と少し違うといいますか、行き過ぎていると私は思っております。
 以前、サラ金業界に対する融資というものは慎重でなければならない、抑制的でなければならぬ、特に公共的性格を重視して銀行は対応すべきだという通達まで出されたことがありました。それが大幅に変更になったわけですね。その変更になったのは、いつごろからそんなことになってしまったのか。この点を確認したいと思います。
○佐藤政府参考人(金融庁監督局長) 御指摘の通達でございますけれども、「金融機関のいわゆるサラリーマン金融向け融資について」というタイトルで、平成4年に通達等の簡素合理化の観点から廃止をされたわけでございます。その際、当該通達の趣旨は、別途、いわゆる基本事項通達ということで、「普通銀行の業務運営に関する基本事項等について」、こういうタイトルの通達に趣旨は引き継がれて、その中に「投機的不動産融資、過剰な財テク融資、不健全な先に対する融資、その他社会的批判を受けるおそれの強い融資等は厳に慎むものとする。」こういった文言が入ったわけでございます。
 その後、旧大蔵省が平成10年の6月に、明確なルールに基づく透明かつ公正な金融行政への転換を図るという目的で通達の全面的な見直しを行いまして、その際に基本事項通達も廃止をされまして、現在、その効力はないということでございます。
 この辺の金融監督の枠組みの変遷の中で、現在の基本は、金融機関自身の自己責任というものを重視し、それに対して、市場規律によってそれがチェックされる、そういった中で、行政はルールに基づいて透明性のある対応をしていく、こういう枠組みに変わったわけでございます。
 ただ、そこで、金融機関の自己責任の中身でございますけれども、その金融機関自身が自己責任に基づいて経営判断をする際に、先ほど御指摘いただきましたような、金融機関としての社会的使命であるとか、そういったことも視野に入れて総合的な経営判断を行っていただきたい、こういう期待を私どもとしては持っているということでございます。
○佐々木(憲)委員 金融機関の自己責任でサラ金との提携がこんなに深まってしまったというふうにおっしゃいましたが、実は私は、金融庁の責任、政府の責任は非常に大きいと思うんですよ。通達を出して、その通達が一応廃止になった、後は自己責任ですよと。
 しかも、その上に、これは2002年の7月ですけれども、「金融システムと行政の将来ビジョン」というのが出されて、その中でこういうことが書かれているんです。「消費者金融や商工ローンは、これまで金融業界において必ずしも主流の資金仲介チャネルとして位置付けられてこなかったが、リスクを的確に評価し管理する仕組みを独自に構築して収益を上げる点は、今後の金融業の目指すべき姿勢であり、積極的に評価する意識の転換が必要である。」これは、サラ金業界のあり方こそ金融業界の目指すべき方向である、これは柳澤大臣の時期なんですよ、こういうことに以前と大きく変わったんです。
 それ以後、各金融機関、提携を深めていった。私どもが見た三井住友銀行などもその一つであります。しかも、公的資金を入れて、公的資金注入行に対して、経営健全化計画を出す、その健全化計画の中に、サラ金との提携を大いに進めていきます、こうやってもうけますというのを出させている。しりをたたいて収益を上げなさいと言ってきたのは政府なんですよ。
 例えば、この健全化計画、17年9月の三井住友フィナンシャルグループの報告書を見ますと、「プロミスとの戦略提携事業の推進においては、当行の顧客基盤・ブランド・ネットワークとプロミスの与信・顧客管理ノウハウを融合したカスケード方式による新たなビジネスモデルにより、コンシューマーファイナンスビジネスを強化する等」、こういうふうに健全化、これは健全化かどうなのか。私は銀行のサラ金化計画だと思います。
 こういうことを、政府が計画を出させて、しりをたたいてきたというところに非常に大きな問題点があったのではないか。したがって、今までの政策の転換ということが現在求められているというふうに思います。
 最後に、山本大臣にこの点についての見解を伺いたいと思います。
○山本金融担当大臣 民間企業たる金融機関の融資、提携は個々の金融機関の経営判断に属する事項であることはもとよりでありますけれども、既に、三メガバンクのうちある行では、消費者金融業界との提携を行っておりません。
 一方、金融機関の経営におきましては、収益性だけではなく、金融機関としての業務の適切性や健全性、社会的責任といった観点も重要であることは当然でございます。
 特に消費者金融につきましては、多重債務者の発生や増加といった社会問題が起きている状況を踏まえまして、各金融機関におきましては、消費者へ提供されるローンのあるべき姿について真摯に検討し、適切に取り組んでいただきたいという姿勢でございます。
○佐々木(憲)委員 終わります。

Share (facebook)

このページの先頭にもどる