2001年10月26日 第153回 臨時国会 財務金融委員会 【141】 - 質問
都銀9行が5年間で12兆円もの株式売却益、佐々木議員の資料で明らかに
2001年10月26日、財務金融委員会で、銀行の株式保有に制限を設けるかわりに銀行が保有する株の買い取りを進める「銀行保有株式取得機構」を設立することを盛り込んだ「銀行保有株式買取法案」が、審議が行われました。
19日の本会議の代表質問に引き続き、佐々木憲昭議員は、これまでに大銀行が株の含み益によって12兆円もの利益を得てきたことことを示す資料を委員会に提出し、「大量の含み益を得てきた大銀行の損失リスクだけを国民が肩がわりしなければならない理由はどこにもない」と批判しました。
佐々木議員が明らかにしたのは、1997年以降、都市銀行9行が株の売却によって得た損益の推移です。これによって、株価低迷によって株売却損は多少増えているものの、株売却益は5年間で約12兆円にものぼることが明るみになりました。この資料で明らかになったように、大銀行は、これまで株でさんざん儲けをあげてきたのです。
佐々木議員が、「(十分な体力がある)大手銀行に国民の税金を使って支援してやる必要はない」と指摘したのに対し、柳沢伯夫金融担当相は、「銀行は自力で市中に(保有株式を)売る力は持っている」と述べざるをえませんでした。
柳澤大臣の答弁を受けて、佐々木議員は、「銀行が自力で売る力があるというなら、こんな法律はつくる必要はない」と指摘し、住専処理以降、銀行に税金を使う仕掛けばかりつくって国民負担を増やす政府の姿勢を厳しく批判しました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
提案された法案に即して質問をいたしますが、その前に、前提として、柳澤大臣の基本的な認識をお聞きしたいんです。
日本の大手銀行の体力についてなんですが、日本の大手銀行というのは、財政で支えられなければやっていけないようなひ弱な存在という認識なのか、それとも、一定の体力を持っているんだ、こういう認識なのか、その辺はどういうお考えでしょうか。
○柳澤金融担当大臣 大手銀行の中には、全く自己資本の中に公的な資金が入っていない銀行もあるわけでございますけれども、多くの銀行に公的資金が入っているというのも事実でございます。ただ、一般に、議論の中で想定されているようにそれが多大なシェアを持っているということは実はないわけでありまして、パーセンテージからいっても、ちょっと記憶なのであれですけれども、そんなに何%ポイントというようなものではないというふうに記憶していまして、私のそのときの感覚では、公的資本、公的資本と言われているんだけれども、自己資本の中に占めるシェアというのは、マージナルなところでは大事な役目を果たしているんでしょうけれども、そんなに大きなウエートを占めているのではないという感じを持ちました。
そういうことを、後でもし私の持っている記憶が誤りだったら訂正しますけれども、基本的に、今世の中の人に印象を与えているように、大きな公的な支えがなければもう立ち行かないんだというような状況にはないというふうに私は思っています。
○佐々木(憲)委員 先ほどの御答弁で、公的部分というのは比較的シェアが少ないので、基本的には大手銀行は体力があるという認識だというふうにお伺いをいたしました。
そこで、そういう銀行に対して、今回提案された仕掛けが用意をされているわけであります。それで、今度の法案の仕組みですけれども、銀行に対して、自己資本相当額を超える部分の株式の保有を制限する。その株の買い取り業務を、銀行保有株式取得機構というようなものを創設しまして株式を買い取り、市場の動向を見ながら売却を進める、こういう仕掛けになっているわけですね。
もちろん、金融というのは公共的性格を持っていますから、銀行経営の健全性というのが株価によって大きく左右されることになることを防ぐということは必要だと私は思うんです。そのために銀行が保有している株を制限する、これは必要なことだというふうに思います。しかし、そのために大事なことは、何よりも銀行の自己責任、あるいは一定の体力に基づいた自己負担、これがやはり必要だというふうに思うんです。ところが、この出された法案は、機構の買い取り資金の借り入れに政府保証をつける、機構の解散時に株が下がって損失が出れば税金で穴埋めする、こういう仕組みになっているわけであります。
そこでお聞きをしたいんですけれども、機構が最終的に解散するときに、株価の低落で、先ほど上がる話もありましたが私は低落の方をお聞きしているんですけれども、株が下がって損失が出た場合、銀行はどの程度これを負担する仕掛けになっていますか。
○原口政府参考人(金融庁総務企画局長) 本法案において、機構が解散する際の利益と損失の分配について規定しておりますが、万一機構に損失が生じた場合、まず銀行等が株式売却時に売却額の8%を拠出する売却時拠出金に補てんし、さらに不足する場合には当初拠出金に補てんするということでございますから、仮に2兆円全部使い切ったという場合は8%が1600億円となりますし、当初拠出金については100億を予定しておりますが、これはこれから10年間の運営等に要して使った残りの額ということになろうかと思います。
○佐々木(憲)委員 つまり、銀行の側は負担をする場合の上限というのが決まっているわけであります。それでも埋めることができなければ、国が財政的な穴埋めをする、要するに、簡単に言えば、税金の投入をする、こういう仕組みになっているわけですね。そういう理解でいいですね。
○原口政府参考人 御指摘のとおりでございます。
○佐々木(憲)委員 先ほども2兆円という話が出ましたけれども、現在想定されている株式の買い取り限度額は、一応2兆円ということであります。そこから割り出しますと、銀行の損失負担額というのは、2兆円の8%の売却時拠出金1600億円、それから当初拠出金の100億円の残余金、すなわち、全体として1600億円プラスアルファ、これが銀行負担の上限になる、そういう理解でよろしいですね。
○原口政府参考人 今の保証枠を使い切った場合という前提で、2兆円という前提を置けば、そういうことだと思います。おっしゃるとおりだと思います。
○佐々木(憲)委員 そうしますと、国民負担の上限というのはどうなるんでしょうか。財政負担に金額上の上限というのはあるんでしょうか。
○原口政府参考人 理論上で申しますと、政府保証を2兆円つけた場合、仮にその株が全部毀損されたというケースになろうかと思いますけれども、そのときに政府保証額限度いっぱいが使われる、細かいやりとりは別としまして、ということだろうと思いますが、少し、そこは計算上の話であって、なかなか想定しがたい状況かなというふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 現実にそういうことが起こることは想定しがたい面も確かにあると思います。しかし、問題は、銀行の負担はあるところまでで、それ以上はしませんよ。2兆円の場合は銀行負担は1600億プラスアルファ、ここまでしか負担はしませんよ。しかし、国民の方は、それを超えたら、2兆円のところまですべて負担の可能性というのが広がるわけです。
これは極めて重大な仕組みでありまして、例えば銀行と財政負担と同じ金額になる、これは水準としては株価がどのぐらいになったらそうなりますか。
○原口政府参考人 ちょっと突然のあれでございますが、御指摘は、1600億円強の損失が機構に発生するとき、こういうことでございましょうが、これは、ちょっといろいろな前提を置かないとなかなか試算も困難かなという気がしております。
○佐々木(憲)委員 例えば1兆8400億以下になりますと国民負担が発生するわけですね、つまり銀行負担が1600億強ですから。それで、さらにそれが下がって1兆6800億以下になりますと、国民負担の方が銀行負担よりも大きくなる。つまり、2割程度株価が下がれば、銀行よりも国民負担の方が大きくなる。2割、3割の株価低落というのは、これまでも幾らでもあったわけであります。そういうことを考えますと、これは余りにも銀行負担が限定されていて、国民負担に非常に大きく依存する、こういうことになるんじゃないかと思うんです。
銀行が抱えている過剰な株式、第一義的にはそれを保有した銀行に責任があるわけであります。ところが、株価の下落で生まれた損失、それは銀行は一定額しか負担しない。しかし、株保有にも株価下落にも関係のない国民には大変大きな、際限のないとはちょっと言いませんけれども、大きな負担を負わせるという仕組みになっているわけです。
そこで、柳澤大臣にお聞きしますけれども、銀行が抱えるこういう株のリスクをいわば国民が肩がわりする形に株価が低落した場合にはなるわけでありますが、なぜ国民がそういうものを負担しなければならないのでしょうか。その責任は国民に一体なぜあるとお考えなんでしょうか。
○柳澤金融担当大臣 これはもう、その法律の目的として我々がいつも申しておることですけれども、信用秩序というのは公共性を持つ、だから信用秩序が動揺したり毀損したりするということは極力避けなければいけない、こういう大命題からきているわけでございます。
○佐々木(憲)委員 今、私の質問にお答えになっていないわけであります。信用秩序論についてはまた後でちょっと議論したいと思いますが、株が落ちて、その損失部分を国民の側が負担しなければならない。なぜ国民にその責任があるんでしょうか。単純な質問なんですよ。素朴なんです。
○柳澤金融担当大臣 これは、要するに、株の現在の保有状況、これをそのままにしておくということは非常に日本の金融システムをリスクにさらし過ぎるという状況がある、したがって、これを是正しなければならない。これは、もう公益です。それを公益の観点から命じて、そして銀行にそういう行動を義務づけるわけでございますが、それが円滑に運ぶ、これは株式市場の動向を含めて円滑に進むということを確保するためにこういうシステムをつくったということでありますから、結局はそれは金融システムの安定、あるいは信用秩序と言ってもいいんですけれども、そういうところに資することになる制度である、こういうことだと申し上げたいと思います。
○佐々木(憲)委員 どうも質問にお答えになっていない、あるいは答えられないのかわかりませんけれども。私は、国民に責任がないのに国民がなぜ負担するのかと聞いたのに、それに対してはお答えにならない。公益性があるというお答えでした。しかし、公益性をしっかり維持することこそ銀行の責任じゃないんでしょうか。銀行が本来果たさなければならない役割というのは、一定の利益を上げることはもちろんですけれども、同時に、いわば経済全体の基礎をなすところの金融というシステム、これを安定させていく、それは銀行自身の責任なんですよ。銀行業界の自己責任でやるべきなんですよ。それを責任のない国民に負担をさせようというのが今回の仕掛けの最大の問題点だと私は思うわけですね。
大臣自身、ことしの3月、こういうことをおっしゃっていましたね。銀行保有株式買い取り機構の構想がいろいろ出たときに、柳澤大臣は、できるだけ公的なものが出ていくことは慎むべきだ、何かだあっと財政資金に寄りかかるようなことはやはり避けるべきだ。なかなかいいことをおっしゃったと思うんです。こういうふうに発言しておられたにもかかわらず、今回提案された内容は、だあっと財政資金が出る、そういう仕掛けになっているわけでありまして、どうも大臣が春におっしゃったことと違うことをこの法律ではやろうとしているんじゃありませんか。
○柳澤金融担当大臣 佐々木憲昭委員が御理解において私どもとちょっと食い違うかなと思うのは、やはり、保有制限というものを公共の立場からかけている、我々が義務づけるということの意味合いというか、そういうものを全くすっ飛ばした議論をされると今言ったようなお話になるんではないか、こういうように思います。
それから、私が早いころにできるだけ財政というものが出ない方式がいいということを言ったために、今日こういうように一般勘定と特別勘定を分けて、どちらかというと、特別勘定というのは全くのセーフティーネットとして、限界的あるいは補完的な制度として位置づけられたというところにその趣旨が生かされているというふうに考えているわけです。
○佐々木(憲)委員 保有制限をかけること自体は、私は方向としては正しいと思うんです。それを別にすっ飛ばして言っているわけじゃございません。銀行は、株価によって経営が左右されるというような状況はやはり好ましくないと思います。したがって、株の保有制限というのは必要だと思います。
問題は、それを一体国民の税負担を伴うような仕掛けをつくってやる必要があるのか、それとも、銀行自身が自己責任でそういう負担も含めてみずから計画的にその水準をクリアするようにやるべきなのか、この選択なんですよ。政府がやっている選択は、国民に負担を負わせる仕掛けをつくるという選択なんです。
しかし、私は、その選択というのは、多くの国民から見て、なぜそんなことを国民がしなきゃならぬのか、負担をしなきゃならぬのかという素朴な疑問から質問をさせていただいているわけです。私は、銀行が公共性を持ち、公益性を持ち、そして一定のリスクをとりつつ金融システムを安定させるために経営努力をする、これは当然のことだと思う。それをしっかりとそういう方向にやはり指導し監視するといいますか、これが政府が行うべき仕事ではないかと思うわけです。
そこで、株の保有制限ということで今新しく出ていますけれども、銀行はこれまで株を保有することによって、利益をかなり上げていたんじゃないか、大変大きなメリットを享受してきたんじゃないかと思うわけですね。
金融庁にお聞きしたいんですけれども、例えばこの5年間に大手16行、どの程度の益出しを行ってきたか、株式売却益の総額、これは幾らになっていますでしょうか。
○高木政府参考人(金融庁監督局長) お答え申し上げます。
保有株式の売却というお話でございましたけれども、我々ちょっと、把握している計数が保有株式等売却ということで、やや債券除きの数字となっておりますので、お許しいただきたいと思います。
平成8年度から12年度までの過去5年間に主要16行が株式等売却によって得た利益は約16兆でございます。それから、それによってこうむった損失は約2兆ということになっております。
○佐々木(憲)委員 今の数字でも明らかなように、大手16行がいわばこの5年間大変な益出しをやってきたわけです。約16兆円強、これは大変大きな金額であります。売却損というのはわずか2兆円程度ということですね。ですから、株を保有し、その株を益出しをして懐に入れてきたのが差し引きしても14兆円、これは丸々銀行に入ってきたわけであります。
配付した資料を見ていただきたいんですけれども、この配付資料の一ページ目でありますが、ここでは、大手都市銀行の九行だけをとりましても、右下にありますが、売却益は約12兆円、売却損は1兆3千億ということであります。
柳澤大臣にお聞きしたいんですけれども、保有株式の売却でこれほど大きな利益を上げている。この利益を見ても、これ以上支援する必要があるのかなと思うほどの利益であります。この事実は、今回の法案の提案に当たりまして考慮されたでしょうか。
○柳澤金融担当大臣 全く銀行に株式売却の行為というものを任せてしまう、ゆだねてしまうということであれば、それはまさに自己責任の世界というふうに私ども言うことができるわけでございます。しかしながら、私どもは、日本の金融システムという公益を実現するために義務づけをするわけですね。3年間に自己資本のティア1相当額以下にしなさいということを言うわけでございますので、その絡みで私どもは、いろいろないわば善後措置と申しますか、そういうものをやはりかぶせた方がそれが円滑に実現されるだろうということから今回のようなスキームを考えたということでございます。
今、これだけ、14兆ですか、ネット12兆ですか、そういうものが売却益としてあったんじゃないかということでございますけれども、これは佐々木委員御案内のように、このところずっと大手銀行は不良債権の処理というものに大きな資金を必要としておりまして、業務純益、さらには株の売却益というようなものを動員して不良債権の処理に当たってきたということでありまして、今佐々木委員が懐に入れたというお言葉を使われたんですが、そのお言葉から含意されているような状況には到底なかったということも御案内のとおりであります。
○佐々木(憲)委員 これだけ大変な利益を上げていたことは、これは厳然たる事実でありまして、不良債権処理に使ったと言いますが、その不良債権処理のやり方がいいのかどうかというのは根本的な議論があると思うんです。我々から言わせていただきますと、不良債権と言われるものの中には、圧倒的多数は、現在の長期不況の中で、一生懸命頑張っても中小企業の経営者は業況はなかなかうまく好転しないというのが現状なんですよ。まじめに働いてもそういう状況が広範にあるわけです。それを不良債権としてばさっと銀行取引を締め上げていいのかどうかというのが根本的に問われていると思うんです。それはそれとして、別な議論を我々持っておりますが、そこには今は入りませんけれども。
いずれにしましても、一方では、株価が上がってもうかったら、先ほどの議論では銀行の懐に入る。それ以上、一定の水準以上になればもちろん国庫に入りますけれども。しかし、上がったら銀行に入っていく。これまでも株の益出しで十数兆円の莫大な利益が上がっていた。ところが、株が下がったら、上がったときの利益、益出しの利益は銀行が懐に入れるけれども、株が下がってしまった場合は後は国民に負担をしてもらおうじゃないか、どうもこういう話は余りにも銀行にとって虫がよ過ぎる話だというふうに私は思うわけです。
そこで、もう少し突っ込んでお聞きしたいんです。この機構の株式買い取りの対象となる銀行、これはどのような銀行かという点をお聞きしたいんですけれども、具体的にお聞きしますと、大手銀行16行のうち自己資本相当額、ティア1を超えた株式を保有してる銀行、これは何行あるか。また、その金額が自己資本相当額の150%までの銀行は何行か。150から200%まで、さらに200%以上、こういうふうに分類するとそれぞれ何行か、この点について数字をお答えいただきたいと思います。
○原口政府参考人 大手行ベースにつきましては、これは有価証券報告書に記載されている貸借対照表上の株式の額に基づいて、本年3月末現在の株式保有額の自己資本に対する割合を計算したものでございますが、大手行ベースでは、100%から150%の銀行は7行、150から200までの銀行は6行、200を超えて保有している銀行は3行となっております。
○佐々木(憲)委員 ということは、大手銀行16行はすべて株を買い取る対象であるということですね。
○原口政府参考人 対象という言葉で申しますと、仮にそういう上限を超えていなくてもいろいろな別の要請で株を売る場合に、この会員であればこの機構を使うことができますので、そういう意味では限られているということではございませんが、16行ベースが保有制限の対象となる100%を超えているという御指摘はそのとおりでございます。
○佐々木(憲)委員 それでは、地方銀行と第二地銀についても同じように数字をお答えください。
○原口政府参考人 地銀につきましては、64行中100%から150%の銀行は7行、200%を超えて保有する銀行は1行でございます。また、第二地銀につきましては、52行のうち100%から150%保有している銀行が2行となっております。
○佐々木(憲)委員 今お答えになりましたように、地銀の場合は全体で八行でありますし、第二地銀は2行であります。しかも150%を超えている地銀、第二地銀は1行しかございません。わずか1行ですね。しかし、大手銀行は9行であります。圧倒的に大幅に超えているのは大手銀行である。これは皆さんにお配りした資料の二枚目、これは金融庁が作成した資料でありますが、そこにその実態がはっきり出ているわけであります。
以上で明らかになったように、自己資本比率を大きく超えて保有している銀行はいわば一握りの大銀行に集中しているということであります。この法案の株式保有制限の達成に向けて機構を活用して株式の売却を進めるというのは、これは大臣、大手銀行が中心というふうに言ってよろしいんじゃないでしょうか。
○柳澤金融担当大臣 日本の金融システムというのは、非常に大手銀行それから地銀というようなものが全体としてこのシステムを形づくっております。金融システムの動揺というときも、やはり大手銀行がしっかりしていかなきゃいけない、しっかりしていなきゃいけないということで、資本注入等におきましても、そういうようなことに着目して、最初はそこから着手していたということも事実でございます。
そういうことで、大手銀行がしっかりしていることが結局は金融システム全体として安定をしているということになるわけでして、直接の例えば資本注入、あるいは今度の株式の保有制限がそこに適用されるからといって、すべて該当の銀行だけだというふうに直接的な考え方をなさるというのはどうかなと思うわけであります。
○佐々木(憲)委員 かなり苦しい御答弁でありますが、実態からいえば、今お認めになったように大手銀行が中心なんですよ。そこがしっかりしてもらわなきゃならぬというふうに裏返しておっしゃいましたが、つまり、大手銀行の株を買い取る仕掛けになっている、これは実態からいったって、そういうことなんですよ。実際に地方銀行の話もされましたけれども、ことしの3月で地方銀行と第二地銀、株式保有額というのは平均して自己資本相当額の5割台におさまっているわけです。ところが、大手15行になりますと、株式保有額というのは自己資本相当額の1・6倍を超えているわけですから。だからそれが現実の姿であって、株式買い取り機構を用意してそして買い取るということになりますと、必然的に大手銀行がほとんど額でいってもその対象になる。
私は、結局、いろいろな理屈をおっしゃいますけれども、大手銀行の過剰な株を買い取る機構をつくり、その機構で保有した株が仮に大幅に下がったときに税金を投入する仕掛けをつくる、つまり、国民の税金でいわば大手銀行が持っている株のリスクを負担する、こういう形になっているところに非常に重大な問題があると思います。
そこで、先ほど信用秩序に影響を与えるからだ、こういうふうにおっしゃいました。しかし、大手銀行が中心になっておりますこの過剰な株の保有、これを解消していくことがそれほどシステム全体に、経営がおかしくなるほど重大な影響を与えるんだろうか、株の下落に直結するんだろうか、これは大変私は疑問に思うのです。
例えば、金融審議会で、乾総務企画局長は、4月の13日に、こう言っているのです。銀行の2、3兆円の部分を今回対象にするというふうにおっしゃいましたね。この2、3兆が売買高の1%にすぎない、そういう委員の発言がありまして、その発言に乾局長は同意して、次のように述べているわけです。「銀行の株の売却だけでは株価というのは決まらずに、あくまでも300兆全体の需給の中で株価というのは決まってきたということでございます」
それから、委員であります富士銀行常務取締役の前田氏はこう言っているんです。「3年前に約3兆円の政策保有株式を持っていましたが、」つまり持ち合い株ですね、「5年間で1兆円売却するということを計画致しまして、ここ3年ぐらいで約6千億、大体年間2千億の売り切りを実施してまいりました」「銀行が売るから株価が下がるとか、持合い解消だから株価が下がるという見方は大きな誤解だと思います」「問題をすり替えているだけでして、我々から見ますとほとんどこれは間違いだと思います」
つまり、銀行自身も、あるいは金融庁の局長自身も、銀行が持っている2、3兆の株を売るぐらいでは全体の株価にはそんなに影響はないんだ、その株価が决まるのは300兆円という全体の株取引の動向によって決まるのであって、何か、それが放出されたらシステムに影響がある、こんなことは間違いであります、そういう誤解は正さなきゃならぬというような趣旨の発言をされているわけです。
ですから、私は、政府がやるべきことというのは、こういう仕組みをつくるということじゃないと思うんですよ。銀行の自己責任に基づいて、銀行自身が過剰な株を持っているものについては、計画的に銀行自身が銀行業界全体として水準を達成していく、それを促していくというのが本来金融庁の役割じゃないか、政府の仕事じゃないかというふうに思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
○柳澤金融担当大臣 その限りでは同じなんです。株式の保有制限をして、そしてそれを市場で売るように促していくんです。その促していく一つの制度としてこういうものもセーフティーネットとしてしつらえておこう、こういうことでございます。
○佐々木(憲)委員 その促す制度としてこういうものをつくる必要はないというのが我々の見解であり、かつ、銀行もあるいは金融庁自身の専門家もそうおっしゃってきているわけでありまして、どうも、何かこういう仕組みをどうしてもつくらなきゃならぬという必然性は全く感じられません。
こういうものを一度つくりますと、どうしてもこれは自己運動を始めまして、まだ足りない、もっとやるべきだということで2兆円という制限を取っ払って。先ほど塩川大臣も何かそういう話もされていましたね、これは中途半端だと。これは本当に重大でありまして、一体2兆円でおさまるのかどうか。4兆円なり5兆円なり、そういうことになる危険性はあるんじゃありませんか。超えないという保証は一体どこにあるんですか。
○柳澤金融担当大臣 先ほど来の話で、銀行は、さっき先生もおっしゃられたように、自力で市中にかなり売る力を持っているじゃないか、私どもそのように思っています。ですから、これは、本当に期限どおりに保有制限に適合するというようなことを考えたときに、やはりその保有制限に適合するために売ろう、ここにも駆け込み寺みたいに売った方がいいね、市場で売るよりはこっちの方が8%出してもいいだろう、こういうような判断があるときどうぞお使いください、こういう話なのでございまして、今佐々木委員がおっしゃるように、何かリスクを移転するとかというようなお話もありましたけれども、時価なんですね。時価マイナス8%なんです。92%なんですね、時価の。
そういうことでございますから、これはよっぽど考えて使うということになるわけですから、塩川大臣は非常に私に助け船を出していただいたんだろうと思いますけれども、そういうふうにこの機構が、特別勘定の方が大いに使われるというふうには、むしろ限界的なものだというふうにとらえておいた方がよろしいのではないかと思います。
それはリスクのあるものですから、我々もそういうように保証をつけて、その最後の締めがどうなるかということをしておりますけれども、10年間持っていたらやはり中にはふぐあいになるものもあるだろうけれども、それを補って余りあるほどのものがそこに生まれてこなければ、日本の経済というのは本当に、10年も株価が下がりっ放しというか、やはりそういうようなことではいけないという方が、むしろ議論としてはあり得る議論なのではないか、こう思います。
○佐々木(憲)委員 どうもはっきりしないわけですね。つまり、自力で売る力があるというのであれば別にこんなものをつくる必要はないわけでありまして、時価だというけれども、時価で売るのならそれでいいじゃないですか。何も8%お金を出して、銀行側からすれば余計に負担をして売る必要はないわけだから。どうも、大臣が答弁されていることは矛盾だらけで、我々は納得できないわけです。
もう時間が参りましたので答弁は要りませんけれども、大体、私は、今まで政府がやってきたことを考えてみますと、住専のときにあれだけ税金を使って大問題になった、その後もいろいろな形で税金を使う仕掛けばかりつくってきて、70兆円の枠までつくって、もう既に27兆6千億円公的資金を使われた、返ってこないのは9兆円もある。こういう、国民負担がどんどんふえているにもかかわらずさらに新しい税金投入の枠をつくるということは、もうこれは銀行の自己責任でやらせるのが必要であって、これ以上こういうものをつくる必要は一切ないということを申し上げたいというふうに思います。
○柳澤金融担当大臣 返ってこないもの、9兆円というお話でございましたけれども、これは佐々木委員も百も承知でおっしゃっているんだろうと思うんですね。これは預金者に預金の還付として返っていったものですし、また金融債の保有者に金融債の償還として返っていったものだ、それがなかりせば預金者も金融債の保有者も全く困る状況になる、これが再生法の趣旨でございますので、確認でございますが申し上げておきます。
○佐々木(憲)委員 それを税金でやる必要はないと私は言っているんですよ。銀行の自己責任であるということを言っているんです。ここが根本的に違う点であります。
以上で終わります。
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