金融(銀行・保険・証券) (銀行公的資金注入, 不良債権処理, 中小企業融資, ペイオフ解禁)
2002年11月15日 第155回 臨時国会 財務金融委員会≪参考人質疑≫ 【184】 - 質問
「規模が大きくなれば地元密着の役割は失われる」地域金融機関4業態の代表に参考人質疑
2002年11月15日、財務金融委員会で、13日に引き続き、地域金融機関の合併を進めるための「地域金融機関組織再編特別措置法案」など2法案について質疑が行われました。午前には4大金融グループにたいする参考人質疑、午後には地域金融機関4業態の協会長に対する参考人質疑が開かれました。
佐々木憲昭議員は、塩川財務大臣が示している合併基準を念頭に、信金で預金量8000億円、地銀で1兆円という一律の基準で合併を進めるべきとの意見に対する各協会長の見解を求めました。
全国信用組合中央協会の田附良知会長は「量的なものでミニマムのラインをこしらえるということについては極めて問題がある」と答えました。
長野幸彦全国信用金庫協会会長は、「金融機関の適正規模というものは、その地域によって違ってくる。500億、1000億でもその地域によっては非常に大きな力、機能、役割を果たしている金融機関もある」と述べました。
第2地方銀行協会の森本弘道会長は、「地方銀行というのは大きくなればいいというだけではない。規模の大小で物差しを当てるということについてはあまり賛成できない」と述べ、全国地方銀行協会の平澤貞昭会長は、「規模が大きくなれば効率性が良くなるという面もあるが、それによって失われる部分も、特に中小企業金融とか、地元ときちっと密着してフェース・ツー・フェイスで相手の懐まで入って金融をやっていくという面等々で失われるものも大きい。そういう意味で、いくらの規模というのはやはり問題がある」と答えました。
各協会長の答弁を受けて、佐々木議員は、「大きくなればいいのではなく、やはり地域に密着した、地域の中小企業に役に立つ、支援できる親切な金融機関というのが一番いい。ぜひそういう方向を追及していただきたい」と述べました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
参考人の皆さん、大変御苦労さまです。
昨年来、金融検査マニュアルが適用されまして、一斉検査というのが行われまして、信金、信組を中心にかなり大変な破綻が続いたわけであります。不良債権の基準を厳しく検査でいたしまして、それに見合う引当金を積まなければならない。それができないところはこれは経営としてはだめな経営であるというようなことで、ついに50幾つも破綻をした。私は、こういうやり方自体、極めて画一的なやり方でありまして、これは大変政策的には正しくないということを主張し続けているわけでありますが、現実にはそういうことが行われたわけであります。
それが一巡しまして、今回提案されている法案は、地域金融機関を中心とした合併の促進ということでございます。
そこで、合併ということになりますといろいろな意見がありまして、大きくすれば収益力が上がって強くなるからこれで地域に貢献できる、こういう議論があります。しかし一方では、合併をすることによって、リストラが行われ、そして今まで顔が見えるようなしっかりとした、相手の状況を把握した融資が行われていたのに、なかなか、大きくなってしまいますと顔の見えない状態になってしまうんじゃないか、こういう意見もありまして、私なんぞは、どちらかといいますと、顔の見えない方向に行く、そういうおそれを感じているわけであります。
そこでお聞きしたいんですけれども、合併をすべきだという御意見の中で、例えばこういう基準を設けてはどうかという意見があるんです。預金量、これを、信金、信組の場合には8千億円が基準になる、地銀の場合には1兆円が基準になる、それ以下のところは合併をした方がよろしい、こういう意見があるんですけれども、私はかなり乱暴だと思っておるんですけれども、それぞれの御意見をお聞かせいただきたい。特に、小さな規模の組織を抱えておられる信用組合の中央協会の会長さんであります田附さんから、お一人ずつそれぞれ御意見を伺いたいと思います。
○田附参考人(社団法人全国信用組合中央協会会長) ただいまの8千億、1兆円というお話は、私も聞きましてびっくりいたしておりますけれども、特に8千億ということにつきましては、つい何年か前までは500億円とか1千億とかいう話がありまして、それ自体、500億とか1千億円ぐらいがミニマムではないかというふうな、これはあくまで地域ということを念頭に置いたものでございます。
私どもの業界は、御承知の、いろいろございますので、200、300という組合もたくさんございます。したがいまして、量的なものでミニマムのラインをこしらえるということについては極めて問題がある、このように考えております。
以上でございます。
○長野参考人(社団法人全国信用金庫協会会長) 今お話がございましたように、金融機関としての適正規模というものは、やはりその地域地域によって違ってくるだろうという気がいたしております。500億、1千億、その地域によっては非常に大きな力、機能、役割を果たしている、そういうような金融機関もございますし、そういうようなことで、必ずしも一概に言えないのじゃなかろうか。
ただ、一般論としては、スケールメリットというものも、あるかないかといえばないとは言えないよ、こういうようなこと等は言えるのじゃなかろうか、こういう気がいたしております。
以上です。
○森本参考人(社団法人第二地方銀行協会会長) 先生がおっしゃる8千億、1兆円の話は初めて聞きました。
手前ども、多分数字が間違っていないと思いますが、56行の会員、加盟行がございますが、1兆円以下の銀行が36行ございます。1兆円以下でも、非常に内容がよくて、地域のシェアも高くて、株主並びに顧客の信頼の非常に高い銀行もございます。
先ほどの、どなたか先生の御指摘にありましたときにお答えいたしましたように、地方銀行というのは大きくなればいいというだけではございません。それは必要条件の一つでございます。もちろん、小さい方がいいという反比例はいたしておりませんが、内容がどうか、コストが幾らか、働いている行員の質がどうかというところが問題でございまして、それがお客の安心、信頼を得て整々と営業できるわけでございます。
また手前みそになりますが、私どものように、広島県の中で重複店舗が104、50の中で40近くあるというようなところは、合併をいたしましても最寄りの店舗が喪失する、なくなるということはないわけで、コストが下がり、また自然の人員減も創造されます。そういったことで顧客の信頼がより得られ、競争力を高めて、もって地域社会に貢献をできるというふうに考えておりますので、規模の大小で物差しを当てるということについては、私は、私個人の意見ではありますが、余り賛成できません。
以上です。
○平澤参考人(社団法人全国地方銀行協会会長) 今もお話がございましたように、規模が大きくなれば効率性がよくなるという面もあるわけでございますが、しかし、それによっていろいろ失われる部分も、特に中小企業金融とか、地元ときちっと密着してフェース・ツー・フェースで相手の懐まで入って金融をやっていくという面等々で失われるものも大きいわけでございます。
したがって、どちらがいいかというと、私は、やはり一番お客様のプラスになる観点から、しかし効率性よくやっていくという場合にどういう規模がいいかということでございまして、神奈川県の場合も、私どもの銀行のほかに、第二地銀さんもおられますし信用金庫さんもおられます、そして、それぞれが大変御立派な仕事をしておられるわけでございます、規模は随分違いますけれども。
したがって、そういう意味で幾らの規模と言うのはやはり問題もあるのかなというふうに考えている次第です。
○佐々木(憲)委員 どうもありがとうございました。
大きくなればいいものではなくて、やはり地域に密着した、その地域の中小企業に役に立つといいますか、よく支援できる親切な金融機関というのが一番いいわけでありまして、ぜひそういう方向を追求していただきたいというふうに思います。
それから、先ほどからも議論がありますが、協同組織金融機関、とりわけ信金、信組の場合ですね、この検査というものが、今までは都道府県単位でありましたけれども、現在は金融庁に一本化されまして、上から全国的な視野で一斉に行われるということがよく行われるわけであります。
その場合、どうしても、これは私も検査マニュアルのときに、都市銀行と信用組合、信金に一律に当てはめるのはおかしいじゃないか、やはりそれぞれ性格が違う、したがって、違う物差しでやるべきだという主張をさせていただいたわけであります。やはりそういう点で、それぞれの地域に密着し、その地域の零細な中小零細企業に対して親切な融資を行うことが一番望ましいわけでありまして、そういう意味で、協同組織金融機関の役割というのは、今の深刻な経済状況のもとではますます大きくなるのではないか、なければならないというふうに思います。
田附会長にお聞きしますけれども、貸し出す先が効率が悪い、非効率である、だからだめなんだ、こういう発想でいきますと、小さな町工場は本当に大変なことになると思うんですね。そういう地域の中小零細企業の経営を安定させるという意味で、一律に輪切りにするのではなくて、将来の展望、経営者の経営能力、それから技術の力、こういうものをやはりよく判断をして貸し出していく、これが大変重要だと思うわけです。
そういう点で、合併をしてしまいますと、例えば五つ、四つが一つの組織になりますと、どれかの基準に合わせて、つまり五つのうちの一つの経営基準といいますか、貸出基準に合わせてやらざるを得ない。そうすると、今まで貸し出していた相手先が、基準が変わりますと今度は切り捨ての対象になるということをよく聞くわけであります。
ですから、そういう角度でいいますと、単に合併をすればいい金融機関になるというふうには単純に言えないと思いますね。
まず、その点で御意見を田附さんにお伺いしたい、それから長野さんにもお伺いをしたいと思います。いかがでしょうか。
○田附参考人 ただいまの先生の御質問でございますが、まず、合併して大きくなればいいものではないという前提でまいりますと、一律に貸出先に対して全部同じ基準を適用してやるということについては、極めて逡巡するものがございます。ということは、一つの金融機関がAという取引先に対して接する接し方と、Bとは、当然違うはずだ、顔が違えばということでございますので。
合併をいたしましても、両者の基本的な共通の理念があればこその合併でありますので、数の上で大きくなればいいというものではない。こういうことでございますので、ただいまおっしゃいましたように、いろいろ、企業の歴史、伝統とか、それからこれからの見込みあるいは可能性とか、そういうものを加味した上で十分な、適切な対応をする、こういうことでございますが、最終的にはやはりその経営者の将来に対するやる気の問題である、それにおこたえするのは金融機関として当然のことである、このように考えております。
○長野参考人 先生がおっしゃいますように、合併については、メリットもございますし、またデメリットもあるというふうに思っております。
先ほど来、合併そのものは経営者としての重要な選択肢であるということを申し上げているわけでありますが、我々は、合併に取り組む際は、例えば、その金融機関同士が歴史的な必然性があるか、あるいは地域のつながり、結びつきが果たしてあるのか。そのことはまさに、合併した場合、一つの金融機関になった場合の取引先の利便、あるいは不便にならないようにということを検討しているというようなことでありますので、悪い点というものも当然出てきていると思いますが、これは、そういうようなものは往々にして、悪い点があるから合併できないということになると、これまたできません。それから、いいからいいからと思っていい気になって合併したら、これまたえらいことになるだろうというふうに思いますので、そのメリットを生かしながらデメリットを改善していくということが必要だろうというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 長野参考人にもう一点お伺いしますが、ペイオフとの関連で、保護限度額ですね、これは1千万円ということでありますけれども、これはこれで十分であるのか。長野参考人の御発言を、これはほかのところで拝見をさせていただいたんですが、3千万円ということもおっしゃっているようでありますが、1千万円ではなくてもう少し引き上げるべきだというその理由ですね、これはどのようにお考えなんでしょうか。
○長野参考人 これは、ペイオフ問題について私ども業界が要望をしていたときのことであろうというふうに思っております。
そこで、例えば3千万と申し上げたのは、中小企業の資金の決済、それを考えた場合に、それは多くとっておけばそれにこしたことはないわけでありますが、ずっと状況を見てみますと、例えば3千万の枠というものが設定されていれば、通常の中小企業の資金決済の枠としてはまずまずいけるんじゃないか。できれば5千万ということぐらいは言いたかったわけでありますけれども、そういうようなことで3千万ということを申し上げたわけであります。
○佐々木(憲)委員 ありがとうございました。終わります。