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金融(銀行・保険・証券) (金融消費者保護)

2003年05月09日 第156回 通常国会 財務金融委員会 【201】 - 質問

バブルの銀行被害は政府が生み出した 融資行為規制をおこたる政府責任を追及

 2003年5月9日、財務金融委員会は、午前中に提案されている証券取引法改正案について、午後に一般質疑、証券取引法改正案の討論・採決が行われました。
 午後の質疑で、佐々木憲昭議員は、銀行の融資行為への規制をおこたり、銀行被害を生みだした政府の責任を追及しました。

 佐々木議員は、貸金業者の過剰融資や不当な取り立て行為は貸金業規制法で禁止されているのに、銀行には何ら法規制がないことを指摘。同じ融資行為であるにもかかわらず、銀行は野放しとなっていることを批判しました。
 そのうえで佐々木議員は、銀行の融資行為への規制がなかったことが、バブル期以来の銀行被害を生みだしたとして、政府の責任をただしました。1980年代後半から銀行の個人向け融資が急拡大したのにともない、消費生活センターに寄せられる融資に関する苦情・相談も10年間で13倍になっている実態を佐々木議員が示すと、竹中金融相も「業務分野の新しい広がりにあわせて、制度の整備・体制の確立が必要だ」と述べざるを得ませんでした。
 佐々木議員は、銀行融資に対する規制の必要性が1970年代後半から政府の金融制度調査会で指摘されていたことを明らかにし、「政府が銀行に対する規制を審議会の提言通りきちんとしていれば、バブル期の金融被害は防げた」と強調。法整備をただちにすすめるように求めました。
 竹中金融担当大臣は、「いまの制度で十分かどうか、厳しくチェックしていきたい」と述べつつ、「(現行法のもとで)事務ガイドラインや金融検査マニュアルの整備で対応していく」との考えを示しました。

 この日の佐々木議員の質問を、銀行被害者やその家族約30人が傍聴し、質問終了後に佐々木議員と懇談しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 午前中に、山田議員から銀行の貸し手責任の問題について質問がありました。私は、銀行の融資に対する規制問題、この点についてお聞きをしたいと思います。
 4月18日の財務金融委員会で、私は、貸金業の問題、武富士問題を取り上げました。まず、基本的なことを確認したいんです。
 貸金業者が貸し出す場合、貸金業規制法13条で過剰融資というのが規制されております。「貸金業者は、資金需要者である顧客又は保証人となろうとする者の資力又は信用、借入れの状況、返済計画等について調査し、その者の返済能力を超えると認められる貸付けの契約を締結してはならない。」これは法律でしっかりと書かれているわけであります。
 そこで、お聞きをしたいのですけれども、銀行の融資について、過剰融資規制、過剰融資について規制をしている法律上の規定はありますでしょうか。
○五味政府参考人(金融庁監督局長) 銀行の場合と貸金業でちょっと事情が違うかもしれませんが、過剰融資というのを、経済合理性から判断して、その必要とする融資額を著しく超えるような、そういった融資を例えば押しつけのような方法で貸すというような、こういう不適切な融資行動というふうに、私なりにちょっと、銀行の場合ですので、理解をさせていただきますと、こうした過剰融資というものについて、それを特掲して銀行業務を直接規制するというような規定は、銀行法あるいはその関連法令にはございません。
 ただ、ちょっとお時間をいただいてお話し申し上げますが、銀行法は、そもそも第一条の銀行法の目的のところで、銀行業務の公共性でありますとか、金融の円滑、あるいは銀行の業務の健全かつ適切な運営といったようなことを定めております。また、12条の2では、銀行は、業務に係る重要な事項の顧客への説明を確保するための措置を講じなければならないといった旨の規定もございますので、銀行法の前提としては、いわゆる過剰融資というものは不適切なものであるということがまず前提となっているという理解だというふうに思います。法律としてはそういった形になっております。
○佐々木(憲)委員 つまり、過剰融資そのものを直接規制する銀行法上の条文はない、しかし、精神的な意味で不適切な貸し出しという枠組みの範囲には入る、そういう話でありました。
 しかし、私は、これが大変おかしいと思うわけです。つまり、過剰融資を、貸金業者に対しては規制する、銀行法上は規制がない、極めておかしなことであります。例えば、金融庁の事務ガイドラインというのを見ましても、銀行向けのガイドラインのところには、不健全な先に対する融資、過剰な財テク融資、投機的不動産融資というようなことは規制しなければならない、こういうことになっております。しかし、返済能力のない個人に対して融資してはならない、こういう規定は明文化されていないわけであります。
 貸金業の場合には、大変具体的に書かれておりまして、例えば事務ガイドライン、貸金業に対するガイドラインでは、「過剰貸付けの防止」というのが3―2―1のところでありまして、先ほど私が紹介しました貸金業法第13条、これに対応する「過剰貸付けの判断基準」というのが書かれております。ここで、
 貸金業者が貸付けを行うに当たって、当該貸付けが資金需要者の返済能力を超えると認められるか否かは、当該資金需要者の収入、保有資産、家族構成、生活実態等及び金利など当該貸付けの条件により一概に判断することは困難であるが、窓口における簡易な審査のみによって、無担保、無保証で貸し付ける場合の目処は、当該資金需要者に対する一業者当たりの貸付けの金額について50万円、又は、当該資金需要者の年収額の10%に相当する金額
 前回、私これを紹介しましたけれども、比較的具体的に個人に対する融資の規制、上限が書かれているわけですね。
 しかも、こういうふうに規定されております。「顧客に対し、必要とする以上の金額の借入れを勧誘したり、借入意欲をそそるような勧誘をしてはならない」、こういうふうになっているわけであります。
 こういうふうに具体的に、貸金業者の場合には、過剰融資に対しての規制というのはかなり厳密にされているわけですが、銀行に対してこの規制というものが、どうもはっきりしたものがないわけであります。
 しかも、回収という点についていいますと、貸金業者には、貸金業規制法21条で、「人を威迫し又はその私生活若しくは業務の平穏を害するような言動により、その者を困惑させてはならない。」これは、回収行為に対する規制、明文化された法律でこのようにはっきりされているわけですね。
 また、事務ガイドラインではさらに具体的な規制が盛り込まれておりまして、暴力的な態度をとってはならぬとか、大声を上げたり乱暴な言葉を使ったりすることなどを規制しておりますし、あるいは、「債務者、保証人等の私生活又は業務の平穏を害する次のような言動を行ってはならない」として、「正当な理由なく、午後9時から午前8時まで、その他不適当な時間帯に、電話で連絡し若しくは電報を送達し又は訪問すること。」あるいは「反復継続して、電話で連絡し若しくは電報を送達し又は訪問すること。」「勤務先を訪問して、債務者、保証人等を困惑させたり、不利益を被らせたりすること。」こういうことが禁止されているわけですね。
 銀行が仮にこういう回収行為を行った場合に、これに対する規制の法律というのはあるんでしょうか。
○五味政府参考人 お尋ねは、不当、不適切な資金回収について法律上の規定があるかというお尋ねというふうに理解をいたしますと、この点も先ほどと同様でございまして、不当な資金回収というものを特掲してこれを法律で直接業務として規制していくといったような規定は、銀行法あるいは銀行法の関連法令にはございません。
 同じように、今お話ございましたけれども、そうしたものは、当然のことながら、銀行法にも定められております銀行法の目的、銀行の業務の公共性ですとか金融の円滑ですとか、こういった視点からすれば不適切なものでありまして、したがいまして、免許制で参入規制というのをあらかじめ銀行はとっておりまして、その上で、銀行の業務については経営の自主性というものを尊重する、こういう構成の法律でございますので、当局の監督といたしましては、あるいは検査といたしましては、事務ガイドラインの方に、こうした不当な回収行為が行われないような経営姿勢や内部管理体制ができているかどうかということをチェックするということで、事務ガイドラインあるいは検査マニュアル――検査マニュアルには、不適切な資金回収が行われていないかということを審査管理部門が営業部門に対してきちんと検証しているかといったような項目がある、こういうような構成で検査監督が行われているということでございます。
○佐々木(憲)委員 今の答弁でも明らかなように、銀行の回収行為に対する規制というのは、法律上はないわけであります。これは、私は非常に不思議だと思うんですね。銀行の場合も、具体的な実例を聞いてみますと、職場に何度も返済を求める電話をしてくる、こういうことが実際にあるわけです。つまり、そういうことは貸金業者はしてはならないということを規制しているんだけれども、銀行に対しては規制がない。一般的な、抽象的な話は今されましたけれども、具体的な行為規制がないわけであります。
 例えば、過剰融資を行う。例えば収入の何十倍の貸し付けを行う。返済能力は初めからないのははっきりしている。そういうことに対して、サラ金がやったらだめですよ、銀行がやったら、それは何も規制はありませんからどうぞおやりください、こういうことになっているこの法体系というのは一体何なのか。私は、非常に法体系上アンバランスであるというふうに思うんです。これは大変おかしな法体系だと思いますが、大臣、どのように思われますか。
○竹中金融担当大臣 貸金業と銀行業の法体系の整合性がこれで保たれているのかという御指摘であるわけでございます。
 この法体系、監督するための体系というのは、法律、それから、今局長からの答弁もありましたような事務ガイドライン、検査のマニュアル、やはり総合的にぜひ考えるべき問題ではないかと思います。
 とりわけ、法律をつくるに当たって、その法律をつくるに至ったプロセス、例えば貸金業規制法の立法の経緯を見ますと、これは、高金利、過剰貸し付け、過酷な取り立て等を原因とするいわゆるサラ金問題を背景に、昭和58年に、議員立法によりこの貸金業の規制等に関する法律が制定、施行された。まさに過剰な貸し付けや高金利を取り締まる目的でこの法律がスタートしているという一つの立法の経緯があろうかと思います。
 それに対して、銀行の場合は、銀行という一つのインフラを維持していくに当たって、まずやはり預金者の保護をしっかりとやろう、そのために、銀行の業務の公共性にかんがみて、最低資本金の制度とか、非常に厳格な参入規制を設けている。業務の運営については、参入の規制を厳しくする分、その分自主的な努力を尊重するような配慮で、トータルとしてのシステムがうまくいくように機能させている。
 その意味では、この一点の規制の法律上の整合性、コンシステンシーということではなく、今申し上げたような法律の趣旨、背景、それに加えて、それを補強するためのさまざまなガイドラインでありますとかその他の仕組みをやはりトータルで判断していく必要があるというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 今の答弁はちょっと納得できませんね。銀行は自主性を尊重する、したがって、内部の管理がしっかりしているかどうかということが問題だと。しかし、サラ金は、過剰貸し付けが問題になったことがあるので、そちらの規制の方が重要だからという話でありました。
 しかし、今や貸金業といっても上場企業があるわけですね。極めて巨大化しているわけであります。それから、銀行もさまざまな問題を起こしております。したがって、同じ過剰貸し付けという行為、全く同じ行為、これに対して、サラ金の場合にはこれを規制しなきゃならぬ。銀行が全く同じことをやっても、いや、そういう規制はないんだ、法律的には。これは幾ら何でもちょっとバランスを欠いていると思うんですね。全くこれは整合性あるというふうに私は思えないんですけれども、大臣、これは非常に食い違いが大き過ぎると思いませんか。やはり同じような状況でしっかりと銀行の場合も規制するというのが、これは当然の流れだと思いますけれども、いかがでしょうか。
○竹中金融担当大臣 先ほどの答弁とほぼ同旨になってしまうかもしれないんですが、基本的には、銀行に関しては、御指摘のように非常に厳しい参入障壁が求められている。恐らく、今、時代の大きな変化としては、我々としてもできるだけ新規の参入を呼び込もうとしているし、その参入障壁を低くしていく、そういった観点から、非常に非常に長期で考えるならば、銀行業と貸金業の間の今御指摘のような問題がやはり問題にされてくるべきなのだというふうに私も思います。
 しかし、ただし、これは恐らくかなり長期の話であって、私としては、今の参入障壁の中で、これは銀行法の最初の条文にも書いているわけですけれども、その分きちっと自主的な判断を尊重してやらせるんだ、そういった法体系を我々としてはしっかりと運用して、先ほどの事務ガイドラインでありますとか検査マニュアル、そういったことをしっかりと活用する中で、今問題のバランスをぜひ図っていきたいというふうに思っているところであります。
○佐々木(憲)委員 それが、実際に銀行が行っている行動を見ますと、そうはなっていないんですね。
 具体的な事例をいろいろと御紹介したいと思いますけれども、お配りした資料を見ていただきたいんですが、銀行の融資行為に対する規制がないためにいろいろな被害が起こっておりますが、80年代後半から90年代の前半にかけまして、銀行による個人向け融資というのは、そのグラフのように大変急増しております。7兆円から47兆円というふうに、これは本当に、7倍近い、大変な急増であります。
 その一方、2枚目をあけていただきますと、銀行に対する被害が急拡大でありまして、国民生活センターの統計では、銀行に対する相談が89年から10年間で3・6倍、そのうち、融資に関する相談というのは何と13倍になっております。4年間だけでも、銀行融資に関する相談、2倍になっております。
 大臣にお聞きしますけれども、個人向け融資がずっと拡大していく、それと銀行被害が急増していくというこの関係は、やはり密接な関係があると私は思うんですが、いかがでしょう。
○竹中金融担当大臣 今、図を見せていただいたばかりでありますが、私も直観的には、業務分野が新しい分野に広がって、そうした面での制度の整備といいますか、体制を確立していくことがやはり必要になっているということはあるのだと思っております。
 今まで、一般的なイメージとしては、特に大銀行は企業に対する貸し付けを重視してきた。バブルの崩壊とともに新たな貸付先を見つけるということで、個人にその対象を広げている。しかし今度は、企業に対するときと個人に対するときと、情報量の格差が随分と違いますから、そこでいろいろな苦情といいますか、トラブルもふえているのかな、この図からは、やはりそういうふうに読み取るのが素直であろうかと思います。
 我々としては、そういった御指摘も踏まえて、先ほどから申し上げていますように、ガイドラインをしっかりと運用して、検査のマニュアル等々もしっかりと運用して、こういったことが拡大していくのをぜひ防ぐように努力をしたいというふうに思います。
○佐々木(憲)委員 銀行は、80年代の後半から90年代にかけまして、個人をターゲットにしまして大変な貸出策をやってきたわけです。提案型融資、先ほども午前中に山田議員がこういうことを、博物館ですか、美術館ですか、そういうものをつくったらどうでしょうとかいって具体的な提案をして、それでどんどん貸し込んできた。
 私は、ここに「金融被害者の怒りの手記」というのを、3冊ありまして、これを持ってきたんですけれども、ここには90人の被害者の直接の生の声が載っておりまして、後で大臣にこれをお届けします。それから、椎名麻紗枝弁護士が書いた「100万人を破滅させた大銀行の犯罪」という本もありまして、具体的な事例を載せておりますので、ぜひこれもお読みいただきたいと思うわけです。
 この中にこういう事例があります。例えば
 平成2年、5月か6月頃、用事で第一勧銀千歳船橋支店に行きましたらカウンターに出ていた行員のN・Kが「良い保険がありますので入りませんか」と申されましたので私は「保険は他に入っているから必要ない」と言ってことわりました。
 数日後自宅に行員が来て、「先日申し上げた相続の保険に入って戴きたいので来ました」と言います。私は相続とは主人が死んだ時のこと、そんなこと現在考えたくないので入らないとはっきり断わったのに、その後数回来て、話しだけでも聞いて下さいと言って、三井生命五反田支社のO・Tを連れてきましたので、仕方なく上がってもらいました。
 「こんな良い保険ですから是非入って下さい。お勧めします。」と一流の銀行と生命保険の社員が口をそろえて執拗に勧めるので、根負けして契約することにしましたが、主人はいつも血圧が200位になっているので健康診断が通らないでだめになるだろうと思っていましたら、すんなり通りましたので驚きました。そして保険の金額を聞いてまたびっくり。それは本当に驚きの金額でした。
 保険料1億5300万円、保険金が契約者7千万、妻5千万、子供二人4億円
 ところが、行員があれほど固く保証すると言っていたのに、契約後ずっと運用はマイナスでしたので、平成7年4月契約を全部解約いたしました。その際損害金、解約返戻金の損金、支払利息、手数料その他で約7千万円位の損害金となり、現在銀行に一回も支払して居りませんので、その利息がまた加算され、解約後も借金は日々大きくなっていきます。
 こんな途方もない借金を作ってしまって、担保で家を取られるのでしょうか、これからどうして生きていけばよいのでしょうか、騙された私が悪いのでしょうか、頭がおかしくなりそうです。
 こういう手記です。
 こういう方々が、ここには本当にたくさんの被害者がいらっしゃるわけであります。午前中からきょう傍聴に来ている方も、そういう方がたくさんおられます。
 共通しておりますのは、被害者の方から融資を申し出たのではありません。銀行の側から、相続税対策ですよと、これをうたい文句にしまして、マンションを建てませんか、あるいは立体駐車場を建てませんか、変額保険に入りませんか、資金は銀行で全部融資しますから安心してください、こういうふうに言って融資のセールスに来ているわけです。まさに提案型の融資ですね。借金を抱えるのは嫌だと断っても、いや、絶対に損はさせませんと何度も家に来る。これは明らかに借金の押し売りであります。
 こういうことは、例えば貸金業法では、「顧客に対し、必要とする以上の金額の借入れを勧誘したり、借入意欲をそそるような勧誘をしてはならない」、ガイドラインで、貸金業の場合は規制されている。銀行の場合には、この規制は全然ないんですよ。だから、銀行は大手を振ってこういう提案融資をあのバブル時代にどんどんやった、バブルが崩壊してもやった。その結果、本当に100万人近い被害者が全国でふえているわけであります。
 私は、少なくとも、こういう勧誘の仕方を規制しないで放置してきたことが被害を拡大する要因の一つになったんではないかと思いますけれども、大臣はどのように認識されていますでしょうか。
○竹中金融担当大臣 私の郷里の、親の知人で、実は、銀行から過剰な融資を勧められて、トラブルに遭った知人がおります。その意味では、やはり今のお話を聞いても、本当に心痛むものがございます。委員のその3冊の本は、ぜひ私ももう一度読ませていただきます。
 今は、これはバブルの時代の保険商品の話の御紹介だったと思いますが、その後、金融商品販売法等々がつくられて、今日、当時に比べれば事態は改善しているというふうに思っております。当時の反省を受けてそういった法整備を今進めつつあるわけでございますけれども、午前中のお話にもありましたように、現実に困っていらっしゃる方は今もおられるわけで、その意識等々を背景にしながら、これは午前中も申し上げましたけれども、我々金融庁の範囲でできること、日本の法体系そのものの問題、さらには、もっと言えば、これはいわゆる投資家教育といいますか、消費者教育、消費者保護、そうしたもの全体の話にかかわる問題だと思っております。
 もう一度、先ほど言いましたように、金融商品販売法等々で、当時に比べて進歩している面はあるわけでありますけれども、それで十分かどうかということは、常に厳しく反省しながらチェックをしていきたいと思います。
○佐々木(憲)委員 この融資の金額というのは余りにも過剰なわけでありまして、変額保険被害者の会が行ったアンケート調査の結果が今お配りした資料の3枚目に載っておりますけれども、例えば、融資金額1億円、2億円という人が4割を占めております。2億円から5億円という人が3割、5億円以上という人もおります。
 こういう人たちが資産家だったのかというと、そうじゃないんですね。たまたま祖父母の代から都心に住んでいたというだけで、普通の生活をしていた方々であります。それが、バブルの地価が高騰する中でどうやって子供に家を引き継ごうか、そういうことを考えて、そこに、相続税対策だといってセールストークでいわばだまされて、銀行につけ込まれて、過剰な融資を受けてしまう。
 被害者の会のアンケートでは、借入金と年収を比較したアンケートがありまして、一番少ない人で年収の10倍、20倍ですよ。これが46%。30倍から40倍、50倍から60倍、年収の200倍以上という人もいる。これは、明らかに返済能力を度外視した過剰融資を銀行がやったと言わざるを得ません。大臣の知り合いの方もそういう方がいるというふうにお聞きしましたけれども、これは正常な貸し方ではないわけであります。
 しかも、高齢者がターゲットになっているんです。高齢者なんというのは収入がありませんからね。子供や孫に囲まれて余生を楽しもうかというときに、銀行にだまされて、子供に家を残すどころか、家を失うことになる。悲観して自殺に追い込まれた人も一人や二人ではありません。
 銀行融資に対する規制の必要というのは、70年代の後半から、政府の審議会でも繰り返し指摘されてまいりました。
 例えば、1979年6月に金融制度調査会がまとめた「普通銀行のあり方と銀行制度の改正について」という報告があります。そこにはこういうふうに書いているんですね。「法制面に関しては、各国の金融取引における消費者保護のための立法の状況にかんがみると我が国では整備が進んでいるといえない」。あるいは「金融取引における消費者保護規制について、今後、早急に具体的な検討が行われる必要がある」。具体的に指摘をしているわけです。
 同様の提言は、1987年7月14日の金融制度調査会専門委員会の報告でも行われております。各国の立法例を研究した上で、欧米に倣って「統一的に規制する法律をできる限り早期に制定すべきである。」こう明記しているわけです。
 それから、最近では、1997年6月13日の金融制度調査会の答申で、「我が国金融システムの改革について」、こういうふうに書いているんです。これは非常に大事なことが書かれておりまして、
 個人の利用者が銀行、貸金業者をはじめとする金融機関等を利用する場合、その専門的知識や損失負担能力に限界があるなど、実際には、金融機関等に対して全く対等の立場にあるとはいえず、当事者間の取引関係を全てその自治に委ね、最終的には司法手続を通じてトラブルの処理を図ることとすれば、個人の利用者にとって、現実的には、費用等の面で著しい不利益が生じる場合があると考えられる。
 こうしたことから、利用者が金融機関等を安心して利用できるようにするため、利用者保護のためのルールのあり方を検討する必要がある。
 こう述べているわけです。
 そして、「銀行等の消費者ローンに係る利用者の保護」ということで、
 個人利用者の保護という視点を重視する観点から、銀行等の消費者ローンについては、従来の通達を中心とした規制の形式で十分と考えられるかという問題があるほか、書面の交付など通達によっても規制が行われていないといった問題もあり、銀行等の消費者ローンに係る更なる行為規制について、今後所要の措置を講ずる必要がある。
 こう述べているんです。
 さらに、「今後の検討」として、
 以上の消費者信用保護の諸施策については、今後検討を進めて97年度中に結論を得、速やかに所要の措置を講ずることが望ましい。
 と述べているわけです。つまり、97年でこれは結論を出しなさい、こういうふうに言っているわけですね。
 私は、このことをなぜやってこなかったのかと。やはり今大事なのは、こういうことを、例えば、87年にそういう提言があったわけですから、そういう規制を直ちにやっていれば、今のようなバブルの金融被害は防げたわけであります。そういう意味で、私は、行政上非常に大きな責任があるというふうに思います。
 竹中大臣にお聞きしますけれども、消費者信用保護策、これについて、この答申どおり、直ちに検討を開始して、おくればせながら、これはすぐやる必要があると思いますが、いかがでしょうか。
○竹中金融担当大臣 消費者保護のための制度整備というのは大変重要であり、その意味では、金融庁としても、また内閣府としても、それなりの努力は、少しずつではあるが、進みつつあるというふうに思っております。
 今の御指摘等も踏まえて、平成13年から金融商品販売法が適用されている、これは先ほど申し上げたとおりでございます。さらには、その97年の御指摘も踏まえまして、銀行法の中に、必要な場合の説明責任の明記等々も行われた、そういうような形で、これまでの反省を踏まえて、消費者の保護のための行政を一歩一歩進めているというのが現状でございます。
 御指摘の、より包括的な制度の整備ということでございますが、比較的最近の、平成12年の金融審議会の報告でもそのことについての一部言及がございます。「いわゆる「日本版金融サービス法」の理念型は、すべての金融商品に横断的な取引ルール、業者ルール、市場ルールが整備されることである。今後も、これに向かっての着実な努力が必要とされる。」と。そのような長期的な努力を促しながら、一方で、金融当局に求められる今後の対応としては、「今後の新たな金融商品の登場や取引実態等を踏まえた迅速な対応を行うとともに、なお縦割りの法制が残っている業者ルール、市場ルールについて、横断化の努力を継続していくことである。」と。
 別の委員会でも御答弁申し上げましたけれども、将来的には、金融サービス法のような一括的なものに集約されていくというのが一つの理想であろうかと思いますが、今の制度は、既にある法律が現実問題として存在をしていて、その中でそれを横断化していくというような努力を積み重ねていくことが、我々にとっては現実的に重要な対応であろうかというふうに思っております。
 しかし、平成12年の金融審の答申にもありますので、長期的なものとしては、日本版金融サービス法、理念型としては、こうしたものに向けた努力は、長期的な課題としてはぜひ続けていきたいというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 これは、長期的というよりも、金融消費者保護というのは緊急の課題として答申の中で述べられていたわけでありまして、もうあれから6年たっているんですよ。だから、これは直ちにやるということを要望して、質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。

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