2003年05月16日 第156回 通常国会 財務金融委員会 【204】 - 質問
銀行の融資・回収行為に対する法規制を要求「強い問題意識を持って検討」と竹中金融大臣/公認会計士法改正案「監査法人の独立性確保を」
2003年5月16日の財務金融委員会で、佐々木憲昭議員は、銀行の融資行為にたいする規制問題、公認会計士法改正案について質問しました。
佐々木議員は、規制する法律がなく野放しになっている銀行の融資・回収行為について、政府が法規制の検討を開始するように求めました。竹中平蔵金融担当大臣は、「強い問題意識を持って検討する」と述べました。
5月9日の質問に引き続いて、佐々木議員は、バブル期の銀行の過剰融資による被害を踏まえ、被害を生みだした政府の責任を追及しました。佐々木議員は、バブル以前の1979年の金融制度調査会(蔵相の諮問機関)の答申が、金融取引における消費者保護規制を早急に具体化するよう提言していたことを紹介。「提言通りきちんとしていればバブル期の被害は防げた」として、銀行への法規制を放置してきた行政の責任をただしました。
これに対し竹中大臣は、「大変重要な答申だ。その後、現実問題として問題が起きてしまった。行政として、業界として、反省すべき点はある」と述べました。
そのうえで佐々木議員は、「銀行被害は過去の話ではない」として、いまだ被害が解決しておらず、回収を強化する銀行によって一方的な競売が行われていることを紹介。「現実に法律の不備で苦しんでいる人がいるのだからただちに行政が手を打つべきだ」と述べ、銀行の融資行為・回収行為に対する法規制の検討を開始するように求めました。
これを受けて竹中大臣は、「銀行融資をどのように扱うのか、問題意識を持ち続けなければならない課題だ。法体系全体をどう考えるか、強い問題意識を持って引き続き検討したい」と答えました。
次に、佐々木議員は、社会問題となった長銀、日債銀、山一證券、そごうの破綻について、監査法人の監査で決算が了承されながら、破綻後に粉飾が明らかとなったことを指摘し、「監査をした公認会計士や監査法人が懲戒処分を受けた例はあるのか」とただしました。
藤原金融庁総務企画局長は、この4社で処分例はないことを明らかにしました。
佐々木議員は、「これだけの問題で処分がないのはおかしい」として、監査法人への行政の天下りなど行政との癒着の問題に言及。問題のある銀行を大蔵省の指導で適正としたとの日本公認会計士協会元会長の発言を紹介し、「監査法人も、行政からの独立が求められる」と主張しました。
竹中金融担当大臣は、現在は金融庁からの天下りはないとして「(監査法人は)監督当局から独立した立場で監査する必要がある」と述べました。
また佐々木議員は、企業の財務内容を正確に開示するうえで公認会計士が監査先の企業から独立性を保つことが必要だとして、改正案が、同一の公認会計士が同一企業を担当できる期間を上限7年としている問題を取り上げました。
佐々木議員は、金融庁が当初、米国並みの5年を決めながら、反発した日本公認会計士協会が自民党議員に猛烈に働きかけた結果、協会の自主ルール並みの7年になった経緯を紹介。国際的にも日本の7年は長すぎると指摘しました。
竹中大臣は、「(将来)5年に見直すことも視野に入れている」と述べました。
議事録
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
前回の一般質疑で、私は、銀行の融資に対する行為規制について竹中大臣に質問をいたしました。どうも答弁が質問とちょっとかみ合っていなかったような感じが私はいたしまして、初めにこの点について再度お尋ねをしたいと思います。
前回の質問で、私は、同じ融資行為なのに、貸金業者であれば過剰融資とか取り立て行為が法律で規制されているけれども、銀行が行う融資には何の規制もない、これはおかしいのではないか、こういうふうにお尋ねをしたわけです。銀行に対しても同様な法規制が必要ではないかというふうにただしたわけでありますが、竹中大臣の御答弁は、金融サービス法を将来的に検討するというような最後の答弁でございました。私は、これは全く別の話だというふうに思っておりまして、問題は、銀行の行為規制の必要性、この点について触れておられなかったわけであります。
まず、議論の前提としまして金融庁に確認をしておきたいんですけれども、1979年6月に金融制度調査会がまとめた「普通銀行のあり方と銀行制度の改正について」、こういうものがございます。その中で、「法制面に関しては、各国の金融取引における消費者保護のための立法の状況にかんがみると我が国では整備が進んでいるといえない」、「金融取引における消費者保護規制について、今後、早急に具体的な検討が行われる必要がある」、こう指摘しているというふうに思いますが、まずここの点を確認しておきたいと思います。
○藤原政府参考人(金融庁総務企画局長) お答え申し上げます。
昭和54年6月のその金融制度調査会の答申、これは先ほど委員御指摘のありました、「普通銀行のあり方と銀行制度の改正について」という答申でございますが、この中におきまして、「法制面に関しては、各国の金融取引における消費者保護のための立法の状況にかんがみると我が国では整備が進んでいるといえない」という指摘と、それから「金融取引における消費者保護規制について、今後、早急に具体的な検討が行われる必要があると考える。」との記載がなされていることは事実でございます。
○佐々木(憲)委員 大事な点は、「消費者保護規制について、」「早急に具体的な検討が行われる必要がある。」こう指摘をしている点でありまして、同様の提言はその後も繰り返されているわけです。
私は、前回の質問で、バブル期の銀行融資をめぐる被害の実態を示しまして、大臣にも被害者の手記を後でお渡しさせていただきました。
政府の審議会が、バブル以前から繰り返し、銀行の融資行為に対する規制が必要だ、こういうふうに指摘をしていたわけですが、同時にまた早急な検討も求めていたわけですが、しかし、政府は事実上それを放置してきたのではないか。政府が銀行に対する規制をこの審議会の提言どおりきちっと行っていれば、バブル期の金融被害は防げたのではないかというふうに私は思います。銀行被害を生み出した原因として、銀行に対する法規制を放置してきた行政の責任、やはりこういう問題もあると思いますが、大臣は、行政に責任は全くないというふうにお考えなのか。この点、どのようにお考えでしょうか。
○竹中金融担当大臣 前回も議論の重要な対象になりましたが、1979年6月の金融制度調査会の答申、これは大変重要な答申であります。この中で、金融取引における消費者保護規制について、銀行融資はもちろん含まれるわけでありますけれども、銀行融資についてということではなくて、金融取引全体についてこれは制度を進化させろということが大変重要な点として書かれているわけでございます。
その後、現実問題として、日本のマーケットの中にもいろいろな問題が生じました。それに対して、政策的にも、これは前回も、こういうことをやらせていただいていると御答弁をさせていただきましたし、委員もよく御承知のとおり、いろいろな制度の進捗はあるというふうに思っております。
その中で、直接のお尋ねは政府の責任いかんということでありますが、これは現実問題としてこういう問題が起きてしまったわけで、政府として、業界として、それぞれ反省すべき点はたくさんあると思っております。そうした反省を踏まえて、前回も申し上げましたように、さまざまな制度整備を今させていただいているわけでございまして、それについては、もっと早くできないか、もっと危機感を持ってやらなきゃいけないと、さまざまな御指摘を受けていることは承知しておりますが、我々も、そういった危機感を持って今懸命にその制度整備をしているところでございます。
○佐々木(憲)委員 私は、金融消費者保護の法制度の検討というのはほとんどなされていないんではないかと思っておりまして、これは、おくれているというよりも、できていないというのが率直な感想なんです。
金融制度調査会が、バブルでいろいろな問題が発生して被害も広がった、それを受けまして、97年6月の答申で改めて法規制の必要性に言及しております。「銀行等の消費者ローンに係る利用者の保護」ということで、こういうふうに書いているんですね。「個人利用者の保護という視点を重視する観点から、銀行等の消費者ローンについては、従来の通達を中心とした規制の形式で十分と考えられるかという問題があるほか、書面の交付など通達によっても規制が行われていないといった問題もあり、銀行等の消費者ローンに係る更なる行為規制について、今後所要の措置を講ずる必要がある。」こういうふうに明記をしているわけです。
この答申は、金融ビッグバンに伴う利用者保護策としまして三つ挙げているんです。一つは金融サービス法、二つ目は裁判外紛争処理制度、そして三つ目が銀行への法規制を含む消費者信用保護策、この三つを挙げております。
大臣がおっしゃったのは、金融サービス法について、前回の私の質問に対してお答えになったわけですけれども、裁判外紛争処理制度ですとか銀行の法規制を含む消費者信用保護策、特に消費者信用保護、この面については、実態的にいいますと検討が進んでいない。この答申が出てから5年たつわけです。消費者信用保護策については、この答申ではこういうふうに言っているんですね。「97年度中に結論を得、速やかに所要の措置を講ずる」、こうまで言っているわけです。97年ですからもう大分前ですね。
こういう指摘があったという点について、まずこの事実関係を確認しておきたい。あったかないかだけ言ってください。
○藤原政府参考人(金融庁総務企画局長) お答え申し上げます。
1997年、平成9年の金融制度調査会の答申「我が国金融システムの改革について」の中におきまして、先ほど先生御指摘のように、「銀行等の消費者ローンに係る利用者の保護」を重視する観点から、「銀行等の消費者ローンについては、従来の通達を中心とした規制の形式で十分と考えられるかという問題があるほか、書面の交付など通達によっても規制が行われていないといった問題もあり、銀行等の消費者ローンに係る更なる行為規制について、今後所要の措置を講ずる必要がある。」また、「消費者信用保護の諸施策については、今後検討を進めて97年度中に結論を得、速やかに所要の措置を講ずることが望ましい。」とされているところでございます。
○佐々木(憲)委員 つまり、私が指摘したこの部分は明確にあったということであります。
大臣、つまり金融消費者保護制度について、97年中に結論を得て、速やかに所要の措置を講ずるというふうになっていたんですが、これが実行されていないんです。これは直ちに検討を開始すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○竹中金融担当大臣 佐々木委員から、1979年から始まってさまざまな答申がある中で、こういったことを金融庁は何もやっていないではないかという御指摘の中で、今、詳細な三点の御指摘がございましたが、何もやっていないということは少し違う。これはぜひ御理解を賜りたいと思うんです。
御指摘の一点は金融サービス法であったかと思いますが、これについては前回議論をさせていただきました。金融サービス法は、その後の、これは平成12年ですか、3年後の2000年の金融審の報告で出ているものでありますが、金融サービス法というのはやはり理念系ではあるんだけれども、現実に今の業の法律があるわけで、それとの整合性を、今既存の法律との調和を図りながら整備していくべしということが書かれております。
そういった理念と関連しますけれども、金融サービスに関しては、これは平成10年の銀行法の改正でありますけれども、銀行法の12条の二で重要事項の顧客への説明等の規定を設けている。さらには、平成13年4月に例の金融商品販売法を制定いたしました。これは非常に大きな前進であった。金融サービス法に関連する部分ではそういうことが言えたのではないかと思います。
さらに、裁判外の紛争処理については、この問題に関しては、不動産の紛争処理をどうするか、いろいろな紛争処理があるというふうに聞いておりますけれども、これは平成14年の3月に閣議決定された司法制度改革推進計画においても、裁判外の紛争解決手段については、関係機関等の連携強化、共通的な制度基盤の整備を進めることによってその拡充、活性化を図るとされておりまして、それに基づいて、これは決して金融庁のみならず、ちょっと申し上げましたけれども、不動産の処理、いろいろなものがありますので、法務省等々において今検討をされているというふうに認識をしております。
それと、消費者信用法につきましてでありますけれども、これは御承知のように、消費者契約法がその後できております。これは金融に限ったものではありませんが、横断的な消費者契約法の中でその精神が具体化しているというふうに認識をしております。
もちろん、これで十分かどうかというのは、これは不断に検証していかなければならないと我々も思っております。ただ、97年のその三つの指摘というのは、今申し上げたようなそれぞれの形で我々なりに着実に推進しつつあるという点、ぜひとも御認識を賜りたいと思います。
○佐々木(憲)委員 今、いろいろ進んでいるというようなお話がありましたが、私が一番問題にしたいのは、銀行の融資の問題、その行為規制というものが具体的に進んでいないということなんですよ。例えば金融商品販売法というのがありますが、これは銀行の融資は対象外であります。ほかの制度もいろいろ御紹介いただきましたけれども、実際に銀行の融資行為に対して規制を加えるという具体的な措置がいまだに出ていないわけであります。こういう点で、やはり早急に検討すべきだと私は思います。
その点で、バブル期の被害の話というのは過去の話じゃなくて現に続いておりまして、10年たっても解決していないわけであります。回収を強化したいということで、銀行は、ともかく話し合いもなしに一方的に競売にかける、貸し手の責任をめぐって裁判を争っているのにその最中に競売をかけてくる、こういうことは日常茶飯事でありまして、相続税対策だということで銀行を信じて借りた、子供に家を残そうと借金をしたら、逆に銀行に競売をかけられて、自宅を失う、ホームレスになる、こういう状況であります。つまり、現実に、法律の不備で苦しんでいる方が多数おられるわけであります。これは直ちに手を打つべき問題だと私は思います。
外国の例を挙げますと、銀行を対象にした消費者信用保護法というのはきちっとありまして、そういうものをやって、ビッグバン、自由化というものを進めているわけです。日本の場合は、消費者保護の方が全く置き去りになりまして、自由化だけが進むという非常にゆがんだ形になっていると思うんです。
ですから、銀行の融資行為あるいは回収行為に対する法的規制の検討、これは直ちに開始すべきだと思うんです。大臣のイニシアチブでぜひこの点はしっかりやるという決意をお聞かせいただきたいと思います。
○竹中金融担当大臣 金融商品の販売の中で銀行の融資というのをどのように扱っていけるのか、いくべきなのかというのは、引き続き我々も問題意識として持ち続けなければいけない重要な課題であろうかと思っております。
先般からリレーションシップバンキングの議論を少しさせていただきましたけれども、リレーションシップバンキングのアクションプログラムというのは大変我々も力を入れているわけでありますが、実は、特にこれは地域、地元に密着したいろいろな融資業務を担当する方々を対象にしますので、その場合の説明責任、それに必要なさまざまな研修等を含む措置というのを、その中に、我々も非常に強い問題意識を持って織り込んだつもりでございます。
現状ではそういった努力を重ねながら問題の解決の方向をぜひ図りたいというふうに思っておりますが、繰り返し申し上げますが、貸金業と銀行というのはやはり基本的に違うし、その法律が出てきた背景も違う、これはもう前回御説明させていただいたとおりでございます。今の銀行という枠組みの中でどのように今の問題を解決できるか。当面は、そのリレーションシップバンキングのアクションプログラムの中でしっかりと対応していきたいというのが私の気持ちでございますが、法体系全体をどのように考えるかというのは、これは強い問題意識を持って引き続きぜひ検討をしていきたいと思います。
○佐々木(憲)委員 貸金業と銀行も、成り立ちは違いますけれども、しかし借りる側からいいますと同じ融資行為なわけであります。一方は規制されて一方は規制されない、規制されないので被害がふえる、これが今の現状なので、業界の側の形態だけ考えるのではなくて、借りる側、消費者の側の立場から見て同じ行為ならば、同じ規制をしてもらいたい。私はこれは当たり前のことだと思うので、ぜひその点を、検討の際にしっかりと念頭に置いてやっていただければと思います。
次に、提案されております公認会計士法改正案についてお聞きをしたいと思います。
企業がその活動内容、経理状況を広くかつ正確に開示するというのは、企業に社会的責任を果たさせるという点でもこれは大事なことでありますし、一般の投資家が的確な投資判断をできるようにするためにもこれは重要だというふうに思います。
先ほどから議論されております第一条の件につきましては、この法案そのものの文章自体が日本語として非常にわかりにくい文章になっておりまして、しかも、企業の責任に属すること、会計士の責任に属すること、これが混在しておりまして非常に問題が多い、これは指摘されているとおりであります。
私は、ここに週刊ダイヤモンドの98年11月14日付のコピーを持っておりますが、公認会計士協会の当時の会長、現在は会長かな、今は違うんですね、中地宏さんがこういうふうに言っているんです。「会計士の仕事は、企業が会計基準などにしたがって正しく財務諸表を作成しているか否かを監査して意見を表明することである。企業が決められたとおりにやっていれば、その企業が倒産しようがしまいが会計士には関係のないことだ。企業が基準どおりに作成していないことが見抜けなかったのであれば、それは会計士の腕が悪い。そういう会計士はリハビリが必要だ。」こういうふうに言っておりまして、会計士の仕事の範囲、これは非常に限定的に述べられているわけですね。
このことがしっかりやられることによりまして、企業自身が公正な企業活動に寄与するといいますか、あるいは経済の発展に寄与する、こういうことにつながっていくわけでありまして、それが、この一条には、確かに先ほどからの議論を聞いていますと、大変複雑怪奇にその中身が混在しておりまして、なかなかわかりにくい文章になっているので、これは後でさらに松本議員が質問されますので、その点を私も注目していきたいと思っております。
そこで、アメリカでは、エンロンの事件を契機にしまして、一会計士の企業担当期間5年というふうにしているわけですね。しかし、今回出された法案では7年となっております。
最初、金融庁は5年という案をつくっていたのではありませんか。
○藤原政府参考人(金融庁総務企画局長) お答え申し上げます。
同一人による継続監査期間に関しましては、現在の公認会計士協会の自主規制では7年とされておるところでございますが、米国では、従前の自主規制による7年を企業会計改革法によりまして5年としているということも踏まえまして、昨年12月の金融審議会の公認会計士制度部会報告では5年または7年というふうな提言がされておるところでございます。(佐々木(憲)委員「いやいや、最初、5年という案じゃなかったんですか」と呼ぶ)私どもも、5年または7年ということで考えておりました。
○佐々木(憲)委員 2月21日の日経の夕刊によりますと、「法案作りでは、金融庁は当初、米国と同じように5年ごとの交代を法律で義務づけようとした。だが、会計士協会は従来通り7年にとどめるよう主張、金融庁との対立が続いていた。21日の自民党企業会計小委員会で調整した結果、5年に縮める案で決着した。」と報道されているわけです。
ところが、3月3日付の日経金融新聞によりますと、一たん決着した5年の案に日本公認会計士協会が反発して、こういうふうに報道されているんですね、「交代期間を現在の会計士協会の自主規制である7年にとどめるよう自民党議員に猛烈に働きかけた。」と報道されている。そして出てきたのが7年だということであります。
経過はこういう経過だったんじゃありませんか。
○藤原政府参考人(金融庁総務企画局長) お答え申し上げます。
先ほどもお答え申し上げましたように、既に金融審の審議の段階案におきまして、5年または7年という両論がございました。これは、監査人の独立性を強化する観点から5年とすることが望ましいわけでございますが、他方、監査人が経営者と対等な立場で議論ができるようになるためにはある程度の日数が必要、したがって7年程度の日数が必要という意見、両方がございました。
したがいまして、そういうことを踏まえながら、また議論をした上で、最終的には政令に委任することといたしまして、当初は7年間とすることといたしますが、7年後に5年間というふうに見直すことを視野に入れまして、「七会計期間の範囲内で政令で定める連続する会計期間」というふうに規定したところでございます。
○佐々木(憲)委員 最初は、金融庁は5年、あるいは自民党も5年といっていたのが、会計士協会の圧力で7年、自主ルールに合わせた、これがこの法案だというのが全体の経緯を見ますとわかります。(発言する者あり)本当は自民党に答えていただきたいんですが、今は答弁者じゃありませんので、静かにしていただきたいと思います。
今の、公認会計士協会の自主ルールは、同一の会社に7年関与した者は2年間その会社の監査をしてはならないという規定があって、この法案はその自主ルールを法律にしたというだけであります。しかし、自主ルールよりも法律にした方がいいといえば言えるわけですけれども。
例えば、国際的に見てこの期間というのはどうなのかといいますと、アメリカは5年であります。その後5年間は、その会社の監査はできません。イギリスでは期限は5年、フランス、ドイツでは6年となっております。
竹中大臣にお聞きしますが、この7年というのは、国際的に見ましてかなり長い方になるのでありますが、この期間の短縮について、今後全く検討の余地がないのかどうか、お聞きをしたいと思います。
○竹中金融担当大臣 いろいろなお考えがあるポイントだと思います。しかし、制度を有効に機能していくためには、やはりどこかのポイントを決めなければいけない。その決定は、大変社会的に大きな意味を持ってくるポイントであろうかと思います。
そうした観点からお尋ねをいただいているわけでございますが、5年がいいか7年がいいか、先ほどの局長の答弁にもありましたように、それぞれメリット、デメリット、考えなければいけない点があろうかと思います。
我々としては、政令で、当初は7年間とする、それで、7年たつわけでありますけれども、7年後に、その後は5年間に見直すことも視野に入れて、規定して、考えていくということを現時点では考えております。
○佐々木(憲)委員 5年も視野に入れてというお話でありました。
では次に、監査法人が懲戒処分を受けた事例というのは今までたくさんありまして、故意による虚偽証明を行ったとか、それで登録を抹消されたとか、過失による虚偽証明で業務停止、戒告を受けたとか、いろいろな事例があります。
この間大問題になりました、長銀の破綻の問題、あるいは日債銀、山一証券、そごう、これらの会社も、監査法人の監査を受けてオーケーが出ていたところであります。それなのに、粉飾決算というのがさまざまに問題になっております。例えば長銀は、粉飾決算で、東京地裁が元頭取らに有罪判決を言い渡しております。日債銀もあるいは山一証券もそごうも、株主が粉飾決算で訴訟を起こしております。
そこでお聞きしたいんですけれども、これらの、今私が挙げた事例、監査をした公認会計士あるいは監査法人が懲戒処分を受けた例はありますか。
○藤原政府参考人(金融庁総務企画局長) お答え申し上げます。
御案内のように、公認会計士法におきまして、監査法人や公認会計士が、故意に、会社が作成した虚偽のある財務書類を虚偽のないものと証明し、または、相当の注意を怠って、会社が作成した重大な虚偽のある財務書類を重大な虚偽のないものとして証明した場合には、監査法人や公認会計士に対しまして懲戒処分をすることができる旨規定されております。(佐々木(憲)委員「あるか、ないか」と呼ぶ)
今御指摘の長銀、日債銀等につきましては、監査を行った監査法人につきましては懲戒処分は行っておりません。
○佐々木(憲)委員 これだけ大問題で監査そのものが機能していなかった、粉飾決算があったということで裁判でも有罪判決が出ているという状況のもとで、なぜ懲戒処分が行われないのかと極めて不思議であります。
公認会計士協会の元会長の中地氏は、マスコミのインタビューでこういうことを言っているんですね。「長い間監査が機能してこなかったのは事実だ。それが端的に表れたのが銀行で、当時の大蔵省が検査で認めたものを、会計士がノーということはできなかった。財務局の指導で問題のある金融機関に適正意見を出していた例もなかったとはいえない。会計監査を機能させようという仕組みになっていなかった」。これは、日経の2001年9月13日付で、こういうインタビューに答えているんですね。これは極めて重大な発言だと私は思うんです。
大蔵省から天下りもいろいろ問題になっておりました。監査法人に対して天下りがあれば、これは当然独立性も問題になりますし、私は、行政からも独立しなきゃならぬというふうに思うんですが、これらの点について今後どういうふうに対応するおつもりか、竹中大臣、お伺いしたいと思います。
○竹中金融担当大臣 きょうの御議論いただいているテーマの中で一貫して出てくるのは、やはり、独立した監査人、公認会計士、それで公正不偏な立場から監査を行って社会的な責任を果たしていくということであろうかと思います。したがいまして、監査法人、公認会計士には、被監査会社はもちろんのことでありますけれども、監督当局からも独立した立場で監査を行うことが求められるというふうに思います。また、公認会計士、監査法人が、虚偽のある財務書類を虚偽がないものとして証明していた場合、これは公認会計士法に基づいて適切に対処しなければいけない。
天下りのお話でありますけれども、今のところ、金融庁出身者でそういった監査法人に就職している者はありませんけれども、これは国家公務員法の枠組みのもとで、引き続き厳正に対応してまいる所存でございます。
○佐々木(憲)委員 終わります。