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税制(庶民増税・徴税), 金融(銀行・保険・証券), 景気回復 (消費税, 法人税, 大企業減税, 銀行公的資金注入)

2008年11月05日 第170回 臨時国会 財務金融委員会≪締めくくり総括質疑≫ 【474】 - 質問

麻生総理に、企業・大銀行には大盤振る舞い、国民には負担増を批判

 2008年11月5日、4日に引き続いて財務金融委員会が行われ、麻生太郎総理大臣を迎えて金融強化2法案について質疑が行われました。
 佐々木憲昭議員は、大企業・大銀行には現在や資本注入などで大盤振る舞いする一方で、国民には消費税増税などの負担増を押しつける政府の姿勢を厳しく批判しました。
 3大メガバンク・グループの6銀行が、2001年度から07年度までの7年間、法人税を1円も払っておらず、3兆円にのぼる減税を受けていました。
 また、法人税率(表面税率)がピーク時の43%から30%に下がっていることを示して、「いたれりつくせりの支援だ」と指摘しました。
 その一方、麻生総理が10月30日の記者会見で、3年後の消費税引き上げを表明したことを取り上げ、麻生総理が消費税率10%を主張していたことを踏まえて、5%増税で13兆円、一人当たり10万円もの国民負担増になると批判しました。
 麻生総理は「日本の法人税率は外国に比べて高い。国際競争で生き抜くためには、引き下げが必要」「日本の消費税は欧米に比べて低率」などと開き直りました。
 これにたいして佐々木議員は、「ヨーロッパでは、食料品など生活必需品には消費税がかかっておらず、税率は高くても税収は日本とそれほど変わらない」「社会保障負担を含めれば日本の企業は欧米より負担が軽い」と、正面から反論しました。
 そのうえで「内需拡大をいうなら、輸出依存・投機依存の体質を変え、雇用の安定、社会保障の充実、国民負担の軽減の方向に切り替えるしかない」と強調しました。

 この日の財務金融委員会で、新金融機能強化法案について、わずか4日間の審議にもかかわらず、与党は採決を強行しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 提案された法案によりますと、金融機関への資本注入の資金でありますが、これは預金保険機構が政府保証によって調達し、最終的な損失が出た場合には国民が税金で負担する、こういう仕組みになっておりまして、私どもは、国民にツケを回すようなやり方には賛成できません。
 まず、総理の認識をお聞きしたいと思います。
 この資本注入をすれば中小企業に貸し出しがふえるかという点ですが、事実を見ますと、1996年3月から2008年、ことしの8月まで、12年5カ月間でありますが、公的資金による資本注入、12兆4千億円行われました。しかし、中小企業への貸し出しは、84兆円これは減少しているわけであります。この事実をどのように受けとめておられるか、そして、どこに原因があったというふうに思われるか、お答えいただきたいと思います。総理、総理の認識です。きょうは総理にお聞きしたいと思います。
○麻生内閣総理大臣 御指名をいただきましてありがとうございました。
 中小企業に対する貸し出しの話を佐々木先生は聞いておられましたけれども、減少している理由というのが一番の問題点だと思っておられるんですが、これは、いわゆる中小に限りませんけれども、企業の過剰債務体質というのが日本の場合は昔からあるところではありますけれども、そういったものを解消する努力をしないといかぬのではないかというのは、これはもうずっと昔から言われている話ですが、そういった意味で、資金需要が低迷しているということは、もう間違いない事実として、厳然たる事実としてあると思っております。
 こうしたことを背景に、年末というのが、いろいろ10―12で来ますので、そういった意味で、資金繰りに不安を感じるいわゆる中小とか小規模とか零細企業とかいうのが、これは多いことは事実です。
 中小企業に対するその円滑な金融というのは、大きな企業とまた別にちょっと考えないかぬところなんだと思いますが、こういった中で最も重要な役割の一つは、やはり小規模企業に対する金融支援というのは、これは主に資金繰りの話が大きなところだと思っておりますので、そういった意味では、今回いろいろな形で金融の仲介機能などなどは財政当局できちんと発揮を求められているところだと思っておりまして、先月末からでしたか、緊急保証のいわゆる制度の開始など、しっかりした資金繰りというものの支援を迅速にやっていきたいと思っております。
 加えて、この法案ができますと、民間金融機関の資本基盤というものがさらに強化をされるということになろうと思いますので、中小企業に対する金融の仲介機能というものの発揮というものをぜひというようなことを考えているのが率直なところであります。
○佐々木(憲)委員 私は、実績で、96年から今までの間に公的資金が12兆円以上入ったのに、中小企業向け貸出金は84兆も減った、これはどこに問題があるのかとお聞きしたんですけれども、どうも、余り鮮明な回答ではなかったように思います。
 中小企業の経営環境というのは極めてこの間悪くなりまして、倒産や廃業というのがかなりふえました。これは銀行の不良債権処理とも関連しております。資金需要がそういう形で減ってきているというのはもちろんあります。同時に、問題にしなきゃならぬのは、銀行の側が自己の利益だけを追求する形に変わってきたという問題がある。自分の利益だけを追求する、そういう姿勢に非常に問題があるのではないかと私は思っております。
 つまり、本来の金融機関というのは、相手側の経営が苦しいときに、将来性を見通して、そしてリスクをとりながら貸し出していく、お互いに共存共栄で利益をふやしていく、こういう関係が望ましいわけでありますが、この間の小泉構造改革以来、ともかく銀行は利益を上げなきゃならぬのだということだけが強調されたように思うんです。その結果、銀行の姿勢が従来とは随分変わってしまった。こういうところにやはり問題があるように私は思うんです。
 やはりそういう点で、銀行の貸し出す側の姿勢という問題について、これを正していく、こういうことも非常に大事じゃないかと思いますが、総理自身はどのようにお考えでしょうか。
○麻生内閣総理大臣 貸し出し姿勢、佐々木先生はちょっとなかなか難しい表現でして、これは御存じのように、いわゆる金融のビッグバン以来の話で、日本の場合は過少資本じゃないかとか、企業がいっぱい多い割にとか、いろいろずっと言われ続けてきたものと物すごく関係しているんだと思いますけれども、借り手企業の経営状況やその特性に応じたリスクテークをやらないかぬという基本的なところなんですが、円滑な資金供給をしていくというのはすごく大事で、日本の場合は、過少資本というのは、かなりな分、随分この何年間かで解消されつつありますけれども、いずれも総じて過少資本が多いと言われております。これは、大分世の中が変わってきたので少し変わってきているんですが。
 したがって、いろいろみんな工夫を凝らして各金融機関がやっておられるのはもう御存じのとおりなんですが、金融の仲介機能というものがうまく発揮されるようにならないと、何となく、いろいろ借りる手口がふえておりますので、その意味でかなり昔とは変わってきて、銀行だけとかいうんじゃなくなってきているのは事実なんでありますので、少なくとも、国の資本参加というものがきちんとできることによってある程度そこの内容が安定すると、自己資本比率とかいろいろな表現がありますけれども、そういったものが貸し出しやすくなるということで、金融機関の強化というのをある程度図ってやらないと、なかなかリスクテークをやりたがらない。聞こえがよく言えばこうしているわけですけれども、少なくとも、ある程度のリスクテークをするのが銀行の仕事ですから、そういったところは、きちんとそこらのバランスはとっていくというのが大変大事なところだという御指摘なんだと思いますが、全くそう思います。
○佐々木(憲)委員 このリスクテークをなかなか銀行の側がとらない体質に変わってしまったのが問題ですねというふうに私は思うんです。そこを変えなきゃだめだというふうに思います。
 次に、大手銀行の税負担の問題についてお聞きしたいんですが、先日、10月29日、私は3大メガバンク6銀行の法人税についてお聞きしました。そのとき金融庁監督局長は、「おおむね過去10年間程度は法人税を納税していないケースが多い」というふうにお答えになったんです。
 これは、若干ファジーなお答えだったのでもうちょっと確認したいんですが、3大メガバンク6銀行すべての銀行が法人税を全く払わなくなったのはいつからかというふうにお聞きしましたら、どのようにお答えになりますか。
○三國谷政府参考人(金融庁監督局長) お答えいたします。
 3メガグループ6銀行のいずれもが法人税を納税していない期間は、平成13年度以降と承知しております。
○佐々木(憲)委員 2001年から2007年の7年間は、法人税がこれはゼロなんですね。その前の3年間、これは法人税を払っている銀行が若干ありますけれども、7年間は、黒字は10兆円出ているのにもかかわらず、法人税は1円も払っていない。驚くべき実態であります。これは、過去の欠損金を繰り延べて黒字と相殺するという仕組みをつくったためにこんな事態になっているわけですが、私は、これは事実上、公的資金の投入のようなものじゃないかと思うわけです。これは、まともに法人税を払えば、10兆円以上の利益が上がっているんですから、3兆程度の法人税を払って当たり前でありますが、それが全く払われていない。
 その一方で国民の負担の方はどうかということで、総理にお聞きしますが、10月30日の記者会見で、3年後に消費税の引き上げをお願いしたい、このようにおっしゃいました。これ、税率を何%にするおつもりでしょうか。
○麻生内閣総理大臣 今の段階で税率を何%という案を考えて申し上げているわけではありません。今の状況というものを見ました場合においては、日本の景気というものは、少なくとも全治3年と申し上げたと思いますが、状況としてはかなり厳しいと思っております。世界的に悪くなっている中にあって、日本は相対的に、欧米に比べればの話ですけれども、いいと思っておりますが、これがいずれ実体経済に影響が出てくるであろうと思っておりまして、既に幾つかいろいろな現象は見られますし、日本のいわゆる二次産業と言われる自動車などなどにもその影響はもうかなり顕著に出始めつつあるという報告も上がっております。
 したがいまして、今の段階でちょっとどれぐらいとも申し上げられませんけれども、少なくとも、全治3年と申し上げましたので、かなり厳しいのでこんなもの3年以上かかるぞと言われたりいろいろされておりますけれども、私は、その段階で景気が立て直ってもいないときにまたやるというのはいかがなものかと思っておりますので、今の段階で何%というのを考えているわけではございません。
○佐々木(憲)委員 総理は、中央公論の3月号で「消費税を10%にして基礎年金を全額税負担にしよう」というタイトルの論文を書かれています。10月31日の記者会見でそれを聞かれまして、そのぐらいのものが要るのじゃないかな、このようにお答えになりました。これは事実ですね。
○麻生内閣総理大臣 このときに申し上げた、中央公論の3月号において御指摘のように提言を行ったことは間違いない。それは書いてあるとおりなんですが、公的年金というのが当時いろいろ話題になって、未払いの方が多いとかいろいろ話題が、今でもありますけれども、国民生活に直接かかわりますので、そういったものは払わない方がどんどんふえておる比率が、いろいろ数字がありますのでどれが正確かわかりませんけれども、いろいろ払わない人がいるとか未払いの人がいるとかいう話になっておりますので、そういったものでさまざまな選択の一つとして申し上げましたけれども、その後、読売方式とかスウェーデン方式とか、何か随分いろいろな方式というのが出されておりますので、そういった意味では、その問題を勘案して考えればよろしいので、これじゃなきゃだめだと申し上げているわけではないというのは、御理解いただけるところだと存じます。
○佐々木(憲)委員 10%というのがその総理の中央公論の論文で書かれていますが、今5%ですから、10%にすると5%上がるわけですね。これ、5%でどのくらいの額になると思いますか。
○麻生内閣総理大臣 あと5%上げたらどうかという、大体1%2兆5千億とか6千億とか言われておりますので、それでいきますと、その掛けた倍率ということになろうと存じますが。
○佐々木(憲)委員 13兆円程度と。総理自身もこの論文の中で、「具体的な消費税率を10%とすれば、5%の増税分で約13兆円の財源ができる。」こういうふうに書かれているわけです。
 これは、3年後か何年後かということ、そのときの判断というふうにおっしゃいましたが、10%にするということは、国民にとっては大変な負担増なんですよ。これを一家庭当たりにしますと、一人当たりにして約10万円ですから、四人家族で年間40万負担増になるわけです。実際上そういうふうになったら、年間40万も余分に払わなきゃならぬのですよ。
 これは私は、全体として見ると、今回の経済対策の中でこれが総理の口から出されまして、逆に非常にショックを受けた、そんな増税があるのかと。今、経済対策、生活重視とおっしゃっても、控えているものがそれであれば、なかなか消費する気にならないというふうに思うんです。この点、総理、どのようにお感じですか。
○麻生内閣総理大臣 税というものと社会保障、そういったようなものの水準というのは、これは、給付と負担のバランスというものが常に考えて議論されてしかるべきだと存じます。
 したがいまして、今、いろいろな意味で年金の話が出てきましたり、医療、介護、保険の話が多く出されております。社会保障国民会議におきましてもいろいろ試算が出されましたのはもう既にお手元に届いておると思いますので。そういったことを考えますと、今後、少子高齢化が今までどおり進んでいくという前提で考えていった場合、いろいろ変わりますので簡単には言えないんですけれども、この社会保障関係の給付というものは、これは大幅にならざるを得ない。傍ら、高齢者がふえる、勤労者が減っていくという数字になりますので。
 そういった意味で、年金の形も、全額税方式とか今のような形とか、実にいろいろな御意見が出されておりますので、私は、こういったものはきちんともっと多くの方々に議論をしていただいて、少なくとも、中負担とか中福祉とかいうものとある程度バランスさせないと、小負担のまま中福祉とかいうことはなかなかできない状況になってきているという認識を我々は持たねばならぬのではないか、基本的には私自身はそう思っております。
 それが、スウェーデンのようなやたらというのか、あれがいいのかと言われるとこれまた意見が分かれるところだと思いますので、これはいろいろ御意見を聞かせていただけるものだと思っております。
○佐々木(憲)委員 総理の発想は、私は、税制全体を見ると非常に偏っているんじゃないかと思うんですよ。
 というのは、先ほど言ったように、銀行に対してはいわば5年間で2兆円の減税ですよ。こういうことをやって、法人税は銀行はゼロである。しかも、これは銀行だけではありません。全産業の大手企業、そういうものを利用できる。しかも、法人税の税率はこの間下がってきた。43・3%だったのが今は30%。しかも、ほかにいろいろな政策減税が行われています。そういうものは、一方で過度な減税だと私は思いますよ。それでいながら、何か社会保障の財源は消費税しかない、消費税しかない。そういう発想自体を私はもっと変える必要があると思います。そうしないと財源というのは出てこない。
 もちろん、社会保障の財源はこれから必要だし、高齢化社会になれば当然お金がかかる。そのお金をどう生み出すかという点でいうと、今までのような国民負担だけにすべて負わせていくやり方ではなくて、もっともうかっている大企業、大銀行、こういうところからきちっと税金を受け取る、そういう姿勢がないと、とてもバランスのとれた政策とは思えない。総理、どのようにお考えでしょうか。
○麻生内閣総理大臣 これは佐々木先生、我々は自由主義経済をやっていますので、統制経済をやっているわけでは、先生と基本的な考え方が違いますから、その前提の上で話をさせていただかぬと話が込み入ってしまうので。
 自由主義経済の前提からいきますと、少なくとも、世界じゅうで国際競争をやっている中で我々は生き抜いております。したがって、世界じゅうで法人税がとかいう中にあって、日本は今でも法人税率は他の先進諸国の中にあっては高いというのはもう御存じのとおりだと思っております。
 傍ら、いわゆる付加価値税とか消費税とかいろいろな言い方がありますが、ヨーロッパの国々を見ますと、大体10%後半から20%前半ぐらいのところでみんな付加価値税とかいろいろな表現の税をやっていますが、間接税をやっておるという状況の中で、我々は国際競争の中で生き抜いていかねばならぬという状況にありますので、今申し上げたように、5%という状況でやるというのができるであろうかというと、今、残念ながらそういった状況は難しくなりつつあるというのが基本的な私の考え方の根本にあるということは、前からもう何回も議論させていただきましたので、御存じのとおりだと存じます。
○佐々木(憲)委員 私は何も統制経済をやれと言っているんじゃないんですよ。国民の負担を軽くしなさいという当たり前のことを言っているんですよ。大企業に対して余りにも過大な減税をやり過ぎたんじゃないですか、それをもう少し見直したらどうですかという普通のことを言っているんですよ。何が統制経済ですか。
 大体、ヨーロッパの税率は高いと言いますけれども、ヨーロッパの付加価値税というのは、税率が表面的に高いように見えますけれども、しかし、食料品とか、そういう生活関連の部分というのは税金は軽いわけです。ないわけですよ。だから、全体としていえば、税率は高いけれども、税収というのは日本と余り変わらない状況ですよ。だから、何か日本だけが低い低いと言うのはおかしいですね。
 それから、法人税についていいますと、これは、日本は社会保障の負担というのは大企業はほとんどやっていないんですから、これをヨーロッパ並みに負担すれば、全体としていいますと、日本の方が軽いんですよ。そういうことを考えないと、何か消費税しかないとか、10%がいいとか、そういう議論にだけ集中して国民負担のことばかり考えるようでは、これは逆統制経済ということになりますから、国民を統制するようなことを余りやらないでほしい。負担を軽くしてもらいたい。
 それで、内需を拡大しようとしたら、そちらの方を拡大しないと、本当に輸出依存それから投機依存という体質を変えることはできません。内需を拡大しようとしたら、雇用の安定、社会保障の充実、負担の軽減、こういう方向しかないということでありまして、私は、もう時間が参りましたので、以上の点を申し上げまして、終わらせていただきます。

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