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税制(庶民増税・徴税) (強権的徴税)

2008年04月16日 第169回 通常国会 財務金融委員会 【453】 - 質問

「“経済的理由”も納税猶予の適用」と国税庁次長が答弁

 2008年4月16日、財務金融委員会で一般質疑がおこなわれ、佐々木憲昭議員も税務署の徴税問題について質問しました。

 最近、原油や資材の高騰で、コストが上がっているのに製品価格に転嫁できないうえ、消費税を転嫁できていない業者も増えています。
 中小業者は、借金をしたり自分や家族の預貯金や生命保険を取り崩して、消費税などを納税しています。まさに身銭を切っているのです。
 しかし最近は、それもできずに滞納にいたるケースが増えています。
 国税庁の通達では、中小業者の「責めに帰することができないやむをえない事由」として、「市場の悪化」など経済環境の急激な悪化も「納税猶予」の要件にあげています。
 税務署は、生計の状況や事業の状況を聞くなどして、納税者の実情をよく把握したうえで、分割納税・納税猶予などの自主的な納付を促すべきです。この点については、肯定的な答弁がありました。
 国税庁の『税務運営方針』がある。「納税者に対して親切な態度で接し、不便をかけないように努めるとともに、納税者の苦情あるいは不満は積極的に解決するように努めなければならない。また、納税者の主張に十分耳を傾け、いやしくも一方的であるという批判を受けることがないよう、細心の注意を払わなければならない」と書いています。
 この基本方針通り、対応してもらわなければなりません。

 この質問は、「全国商工新聞」2008年5月5日号に紹介されました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。私は、中小企業の現状についてお聞きしたいと思います。
 原油を初め資材の高騰というのが相次いでおりまして、中小零細企業の経営を圧迫しております。コスト上昇分を価格に転嫁できないというのが実態です。
 中小企業庁に初めに確認しておきたいんですが、昨年11月に、原油価格上昇による中小企業への影響調査というのを実施したようですけれども、販売価格への転嫁の実態はどうか、それからその後の事態、これもわかったら教えていただきたいと思います。
○高原政府参考人(中小企業庁事業環境部長) お答えを申し上げます。
 委員御指摘のとおり、中小企業庁では、昨年の7月と11月に原油価格高騰の中小企業への影響調査というものを実施いたしております。
 このうち、御指摘ございました11月の影響調査によりますれば、原油価格の高騰に伴うコストの上昇分を製品あるいはサービスの価格に転嫁をできている程度というのは、20%を下回る中小企業の割合、これは全然できていない中小企業の方を含めてでございますけれども、約9割となっておりまして、中小企業は価格転嫁が困難な状況にある、そういう状況にあるというふうに認識をいたしております。
 昨年の11月以降も、中小企業庁では四半期ごとに行っております中小企業の景況調査、これは1万9000社ほどを対象としておりますけれども、ここにおきましても、原材料の仕入れ単価が上がっている一方で、売り上げ単価あるいは客単価は横ばいであるということでございまして、これらの数字から見ましても、引き続き中小企業の価格転嫁といったものが困難な状況にあるということが示されているというふうに認識をいたしております。
 以上でございます。
○佐々木(憲)委員 額賀大臣、これは非常に重大な、現在の中小企業の置かれている経営実態でございます。帝国データバンクの調査でも、価格転嫁率が5割以下という企業が8割であります。
 昨年来、中小企業の倒産件数も上昇しております。ことし3月の倒産件数は前月に比べても急増であります。中でも、中小零細企業の倒産が大幅に増加している。その原因として、今、中小企業庁の紹介がありましたように、コスト高を転嫁できない、こういう実態にあると思うんです。この点について、額賀大臣、今の中小企業の置かれている実態をどのように見ておられるか、お聞きしたいと思います。
○額賀財務大臣 よく格差の問題があると言われておりますが、私は大企業と中小零細企業との格差というのもあるんだと思います。それは、一つは今言ったように価格転嫁ができないということ、それからやはりコストダウンの要請があるということ、そういうことから中小企業というのはなかなか大変な状況にあるという認識はしております。それが日本経済にとって決して望ましいものではないというふうに思っております。
 したがって、昨年の12月に私どもは原油高騰に伴う対策を講じてきたし、3月には年度末金融の対策を講じた、そしてまた、つい先般は成長力強化のためのいろいろな政策を展開させていただいているということで、できる限りの対応策を講じていかなければならないというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 コスト上昇分を転嫁できていないというのがいまだに続いているわけでありますし、その上、転嫁できないという点でいいますと、消費税であります。
 消費税は、経産省の調査でも半分以上の中小企業が転嫁できていないという回答をされているわけです。ではどうするのかということですが、中小業者は、借金をする、あるいは自分や家族の預貯金、生命保険を取り崩して、それで消費税を納税する、こういういわば身銭を切るような状況になっているわけです。最近はそれもなかなかできないということで、滞納に至るケースがふえていると思いますが、この実態はどうなっているでしょうか。
○額賀財務大臣 消費税の滞納の新規発生額を各年度で見てまいりますと、ピーク時の1998年、平成10年度では約7000億円となっております。最近、2006年、平成18年度では約4000億円まで減少してきております。
 この間、国税当局では、期限内納付意識を高めるための広報の充実、納期限前の納付慫慂など各種期限内の収納対策を重点的に実施し、滞納の未然防止に努めてきたところでございますが、今後とも、滞納についてはいろいろと努力をして、未然防止、整理促進に努めてまいりたいというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 特にこの消費税の転嫁というのはなかなか難しい。つまり、消費税自身の納税が非常に困難になるという実態があるわけでありまして、全体の滞納の中で消費税の比率が高まっているということでございます。
 それで、事業者が諸般の事情で納税が困難になった場合、国税通則法、徴収法では、納税の猶予あるいは換価の猶予という措置があると思います。その立法の趣旨と適用要件、これを述べていただきたい。
○佐々木政府参考人(国税庁次長) 国税通則法の納税の猶予、それから国税徴収法の換価の猶予の規定でございますけれども、その立法趣旨は、国税はまず納期限内に自主的に納付されるべきでございますけれども、納税者の実情によってはこれが妥当でない場合があるということで、納税者の個別の実情に応じまして租税の徴収を緩和し、弾力的な扱いをするということを目的として、納税の猶予や換価の猶予の制度が設けられているものでございます。
 要件でございますが、納税の猶予の要件は、一つは、納税者がその財産につきまして、震災、風水害、落雷、火災その他の災害を受け、または盗難にかかったこと、納税者またはその者と生計を一にする親族が病気にかかり、または負傷したこと、納税者がその事業を廃止し、または休止したこと、納税者がその事業につき著しい損失を受けたこと、それから上記の事実に類する事実があったこと、これらのいずれかに該当する事実があった場合におきまして、その該当する事実に基づいて、納税者がその国税を一時に納付することができないと認めるときには、その納付することができないと認める金額を限度といたしまして、納税者の申請に基づいて納税の猶予を行うことができるとされております。
 換価の猶予でございますが、国税徴収法におきましては、要件としましては、その財産の換価を直ちにすることによりその事業の継続またはその生活の維持を困難にするおそれがあるとき、それからもう一つは、その財産の換価を猶予することが、直ちにその換価をすることに比して、滞納に係る国税及び最近において納付すべきこととなる国税の徴収上有利であるときのいずれかに該当すると認められる場合において、納税者が誠実な意思を有すると認められるときには、その納付すべき国税につきまして滞納処分による財産の換価を猶予することができるとされております。
○佐々木(憲)委員 それから、通達ですね、納税の猶予等の取扱要領、その猶予該当事実の中に、「納税者がその事業につき著しい損失を受けたこと。」とありますが、それはどのような場合か、示していただきたい。
○佐々木政府参考人(国税庁次長) 納税の猶予取扱要領におきましては、納税者がその事業につき著しい損失を受けたということにつきまして、例えば直前の1年間の利益金額の二分の一を超えて損失が生ずる場合など、著しい損失を受けた場合においてというふうにされております。その要件を満たす場合に、納税の猶予の要件に該当するものと扱っております。
○佐々木(憲)委員 その通達を見ますと、購入予定の資材の高騰、在庫商品の価額の下落などによる損失の発生、それから「下請企業である納税者が、親会社からの発注の減少等の影響を受けたこと、その他納税者が市場の悪化等その責めに帰すことができないやむを得ない事由により、従前に比べ事業の操業度の低下又は売上の減少等の影響を受けたこと。」というふうになっていると思いますが、そういうことですね。
○佐々木政府参考人(国税庁次長) 先生が今おっしゃいましたのは、類する事由ということの内容として規定されております。
○佐々木(憲)委員 ここで、納税者の責めに帰することができないやむを得ない事由の中にこういうことが書かれているわけで、つまり、資材が急騰した、それから市場が非常に悪くなった、不況が深刻化した、そういう経済環境の急激な悪化というのも納税猶予の要件に含まれる、こういう理解でよろしいですね。確認です。
○佐々木政府参考人(国税庁次長) 先ほどおっしゃいました規定、まさにそのとおりでございます。
○佐々木(憲)委員 私は2005年3月15日の財務金融委員会で質問をいたしましたが、その際、国税庁は、生計の状況や事業の状況を聞くなどして納税者の実情をよく把握した上で、分納、分割納税などの自主的な納付を慫慂いたしておりますというふうに答弁をされました。この立場は今も変わらないか。
 それから、ここに国税庁の税務運営方針のコピーがありますが、この中に、「納税者に対して親切な態度で接し、不便を掛けないように努めるとともに、納税者の苦情あるいは不満は積極的に解決するよう努めなければならない。また、納税者の主張に十分耳を傾け、いやしくも一方的であるという批判を受けることがないよう、細心の注意を払わなければならない。」と書いてあります。
 これらの答弁及び方針、今でも変わりないですね。
○佐々木政府参考人(国税庁次長) まず、2005年3月15日の答弁でございますけれども、個々の実情を十分把握した上で、まずは自主的な納付を慫慂しているということでございますが、これは引き続きそのように適切に対応してまいりたいと考えております。
 それから、税務運営方針でございますが、今お読みいただきました内容でございます。
 さらに、平成13年になりまして、国税庁の事務の実施基準及び準則というものの趣旨を職員に周知徹底させる目的で「国税庁の使命」という文書を作成しておりますが、その中でも、納税者に対して誠実に対応するということを職員の行動規範として示しておるところでございます。
 そういう意味におきまして、税務運営方針につきましては税務行政を遂行する上での原則論を示したものでございまして、引き続きこの運営方針の趣旨に即して税務行政を進めていくことといたしております。
○佐々木(憲)委員 そこで問題になるのは、実態が本当にそういう原理に沿って運用されているかということであります。
 ことしの1月24日に全国国税局長会議というのが行われて、国税庁長官の訓示が出されておりますが、その中では、滞納整理というふうに非常に強調しているわけですね。着実な圧縮、これを非常に強調しているわけであります。こういうことを余り強調し過ぎますと、親切な対応というのはどこか後景に退いて、まず徴収だというところが前面に出過ぎるのではないかという心配をするわけであります。
 私、具体的な事例で紹介しますが、例えば静岡で防水コーキングをやっているある自営業者の場合、不況の影響で大変経営が苦しい、その上、親を介護したり自分がC型肝炎を患う、こういうことで十分な働きができない、そこで滞納が発生したということです。その業者が、ことし2月と3月、売り掛け債権約70万円を税務署に差し押さえられた。経営難と家族の生活苦でもう手持ちの現金が3000円、資産もない、そういう状況で売り掛け債権を差し押さえたら、子供が小学校にも入学できない、こういう訴えがありました。
 それから、もう一例は宮崎の花屋さんでありますが、消費税の分納をやっていたんだけれども、昨年12月の納付ができずに年を越しました。そうすると、ことし2月の売掛金が差し押さえられて、この入金は、従業員の給与あるいは花市場への支払いに充てる、そういうものでありまして、入金ができなければ市場に参加できない、事業が破綻する、こういう瀬戸際に追い込まれる状況もありました。この方は、毎月ずっと分割納付の約束を守って行ってきたわけです。一度だけおくれた、それをもって話し合いもなく差し押さえが実行される。その際、税務署の統括官が、一たん差し押さえたものは解除しないんだ、おたくの信用をなくすのは簡単なんだ、こういう暴言を吐いた。
 こういう事例に共通するのは、税務署の対応が、納税者の実情を無視して強引に徴税をやっているというところにあるのではないか。国税庁としては、こんなことをどんどんやりなさいという奨励でもしているんですか。
○佐々木政府参考人(国税庁次長) 個別の件につきましてはコメントを差し控えさせていただきますが、国税庁といたしましては、一般論といたしまして、例えば滞納整理に当たりまして納税の猶予等の申し出がございましたら、法令に基づきまして、納税者の実情を伺いながら適切に対応しているものと考えております。
○佐々木(憲)委員 例えば納税の猶予の問題ですが、納税猶予の申請を出す、その場合税務署が、これは却下だと理由を言わないで却下するということがあるそうなんですが、これは少なくとも理由をちゃんと言って、こういう理由だからあなたのところは猶予は受けられませんよ、こう説明するのは当たり前だと思うんです。
 説明するということは当然だと思うんですが、いかがですか。
○佐々木政府参考人(国税庁次長) 納税猶予の申請を却下します場合には、適用条文などと照らし合わせまして、当たらない理由は申し上げていると存じます。
○佐々木(憲)委員 言っていない場合があるわけです。言っていない場合はこれは是正する、当然だと思いますが、いかがですか。
○佐々木政府参考人(国税庁次長) 納税猶予に該当しないというときには、猶予不許可通知書に納税猶予を認めない理由を記載して納税者に通知することといたしております。
○佐々木(憲)委員 ともかく、申請して、これはだめだよと言うだけで説明しないというのではだめなんですよ。そこはきちっとやっていただきたいし、親切に対応するというわけですから、そういう原則が非常に大事だと思うんです。
 最後に、額賀大臣にお伺いしますけれども、相手の状況をよく見て、やはり事業を継続させていくということが非常に大事だと思います。その事業がつぶれてしまったら将来の税収の確保ができなくなるわけですから、これは国税庁、財務省としても、中小企業に対して、成り立つようなそういう姿勢でこの徴税問題に対しても対応する、親切に対応するというのが基本原理だと言っているわけですから、そういう方向でやるという決意を最後にお聞かせいただきたいと思います。
○額賀財務大臣 先ほどは民主党の下条先生から、滞納があるからきちっと徴収しなさいということでありました。今、佐々木先生から、滞納についての合理的というか親切なやり方、これはなかなか難しいけれども、ただ、両方視野に入れて、納税者の皆さん方に理解を得られる形をとっていく必要があるというふうに思っております。
 でありますから、個別の事情をよくそんたくして、取るだけではなくて、その商売が生かせるのならば生かしていかなければならないし、そういうことをよく幅広く考えながらやっていくことは当然のことだというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 時間が参りましたので、終わります。

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