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税制(庶民増税・徴税), その他 (強権的徴税, 関税・EPA(経済連携協定)・TPP)

2005年03月15日 第162回 通常国会 財務金融委員会 【288】 - 質問

税務署の強権的徴収で自殺者 国税庁を批判 「輸入の際の水際チェックは極めて重要」佐々木議員指摘

 2005年3月15日財務金融委員会で、佐々木憲昭議員は、税務署の横暴な徴収について質問しました。
 佐々木議員は、静岡県熱海市で従業員の源泉所得税150万円を払えない鉄筋業者が、熱海税務署の横暴な徴税行為を苦に1月末に自殺に追い込まれた問題をとりあげました。
 自殺した業者は、熱海税務署にたいし返済方法について「分割で月々5万円ずつ支払う」と述べていましたが、税務署は「今後、消費税の滞納も考えられる」と聞き入れず、入金予定の売掛金を差し押さえました。
 取引先に、そのことが知られて取引停止になり、自ら命を絶ったのです。
 佐々木議員が「遺族に対し、どう対応するのか」と迫ると、徳井豊徴収部長は「相談の内容を十分聞いて誠実に対応したい」と答えました。
 また、「国税庁は分割納税をいっさい認めず、差押えするのか」と追及。
 徴税部長は、「納税者の実情を把握して分割納税などを求めていく」と答えました。
 今後、消費税の免税点が年間売り上げ3000万円から1000万円に引き下げられ、新たに約200万の業者が納税義務を負うもとで、国税庁は昨年9月の全国国税局徴税部長会議で「新たな消費税少額滞納事案の増加が懸念され、ひきつづきその圧縮に向けた取組が必要である」と、徴税強化を指示した資料を配付しています。
 佐々木議員は、そのことを指摘し「中小企業にたいして債権の差押えを乱発するようなことはやめるべきだ」と求めました。
 谷垣財務大臣は「新たに納税者になった方々の相談にきめ細かく対応していきたい。滞納者から分割納税などの申し出がある場合も、実情に即して対応をしていく」とのべました。

 この日の質問で、佐々木議員は、関税定率法案についても質問しました。

議事録

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 まず、関税定率法改正案についてお聞きをいたします。
 この中に、コンプライアンスのすぐれた者は、保税地域に入れる前に輸出申告を可能にするという改正が盛り込まれております。これは、保税地域の外の会社の中で検査し輸出が許可されるようになる、簡単に言うとそういうことですか。
○木村政府参考人(財務省関税局長) お答え申し上げます。
 一定の要件を満たす、コンプライアンスのすぐれた輸出者につきまして、今回新たな制度が適用になるわけでございますけれども、そういった方につきましては保税地域外での通関を可能にする、そういうことを考えております。
○佐々木(憲)委員 これは、いわば自社通関の流れを容認しまして、保税地域での管理、監督等の通関行政の弱体化を招くのではないかという危惧を抱かざるを得ません。
 そこで大臣にお聞きしますけれども、今回は輸出に関連をしてこういう改正案が盛り込まれているわけですが、輸入の場合は輸出と違うと思うのです。この自社通関の流れをどんどん輸入にまで広げるという考えがあるのかないのか、そこを聞かせていただきたい。
○谷垣財務大臣 コンプライアンスのすぐれた者に対して迅速かつ予見可能な通関を行うという基本的な考え方、これ自体は、輸出、輸入で差別があるわけではないのですが、しかし、実際の貨物の管理の現状、実情を見てみますと、輸出と輸入とでは相当大きく違いがあると思います。
 輸出者は、要するにみずからの責任で貨物を適切に管理することができ得るわけですけれども、輸入の場合には、貨物管理を外国の輸出者等に依存せざるを得ない面が大きいですから、輸出と同程度の管理が必ずしも期待し得ないということが考えられると思います。
 それで今回、こういう輸出入の特徴を踏まえまして、セキュリティー対策の強化、国際物流の高度化に対応した物流を促進していこうという観点から、輸出についてだけこういうことを考えたわけでございまして、輸入については現在、委員がおっしゃったようなことは考えておりません。
○佐々木(憲)委員 やはり輸入の際の水際チェックというのは極めて重要でありまして、輸出とは全く違うと思うのです。そういう認識を持たなければならないということを指摘しておきたいと思います。
 それで、提案されている関税定率法の改正案にはさまざまな内容が盛り込まれておりますが、この中に、WTO農業協定による例外なき関税化で米などが重大な打撃を受けている現状をそのまま延長するという内容が含まれておりまして、したがって、我々としては、これは反対であるという立場を表明しておきたいと思います。
 なお、民主党の修正案について申し上げますと、対日輸入の増減というのはさまざまな理由で生じるものでありまして、その都度法律を変えるとなりますと、実効税率38.5%での輸入枠が毎年拡大していくことを事実上容認するということになりますので、国内の生産者を保護するという関税緊急措置制度の本来の趣旨をおろそかにしかねないという点で、賛成できません。この点を明らかにしておきたいと思います。
 さて、次に、税の徴収問題について話題を変えたいと思います。
 去る1月15日、熱海市で、150万円の源泉所得税が払えず、54歳の鉄筋業の業者が自殺をいたしました。熱海税務署の徴税に問題があったのではないかと思いますが、いかがでしょう。
○徳井政府参考人(国税庁徴収部長) お答え申し上げます。
 個別にわたる事項につきましては具体的に答弁をすることは差し控えさせていただきますが、一般論を申し上げますと、滞納整理に当たりましては、まず納付慫慂を行って滞納者の納付の意思を確認し、さらに滞納者の事業内容、事業継続等の実情に即しつつ、適切に行っているところでございます。
○佐々木(憲)委員 この業者は、毎月5万円の分割納税をしたいということで税務署に要請をしていた。ところが、税務署の方は、今後消費税の滞納も考えられるということで、これを聞き入れず売掛金を差し押さえた。取引先にそのことが知られて取引停止になって、ついに自殺に追い込まれる、こういう状況だと聞いているわけであります。
 遺族に対して一体どのように対応するのか、この点を聞かせていただきたい。
○徳井政府参考人(国税庁徴収部長) お答え申し上げます。
 滞納者の遺族の方から今後相談等が寄せられた場合には、その内容等を十分お聞きするなど、誠実に対応してまいりたいというふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 国税庁は、中小業者が経営が苦しいので分割納税にしてほしいというふうに要請をした場合、分割納税を一切認めず差し押さえを実施する、そういうやり方を現場に指示しているんでしょうか。
○徳井政府参考人(国税庁徴収部長) お答え申し上げます。
 滞納整理に当たりましては、納付慫慂を行って滞納者の納付の意思を確認するとともに、滞納者個々の実情を十分把握して、その実情に即しつつ、適切な処理に努めているところでございます。
 具体的には、滞納発生時点において明らかに納税に対する誠意が認められないといった場合を除きまして、通常は、督促後、生計の状況や事業の状況を聞くなどいたしまして滞納者の実情をよく把握した上で、分割納付などの自主的な納付を慫慂しております。そして、自主的な納付が見込まれない場合や、分割納付の約束が履行されないような場合には、差し押さえが必要かどうかを判断した上で、法令に沿った適切な処理に努めているところであります。
 今後の滞納整理に当たりましても、引き続き、滞納者個々の実情を十分踏まえた適切な処理に努めてまいりたいと考えております。
○佐々木(憲)委員 納税に誠意のないというような言い方をしますけれども、現実に、経済全体としては、大手の方は景気が回復はしていますけれども、中小零細企業は非常に深刻な状況にあるわけです。したがって、本人は納税したいけれどもなかなかそういう状況が実態的には生まれてこない。そういうときに財産の差し押さえというようなことをいきなりやるというのは大変重大でありまして、今の答弁ですと、いきなりやるということはないというふうに言っていますけれども。
 例えば、これは昨年9月の「滞納整理事務の現状と今後の取組」という、全国国税局徴収部長会議というところで配付された資料ですけれども、これを見ますと、「財産の差押えに重点を置いた厳正な処分を実施していく必要があり、各局における積極的な取り組みによって、債権差押えや捜索等は、ここ数年、総じて増加傾向にあるが、引き続き、そのような滞納者に対しては適時的確に債権差押えや捜索等を実施していく。」こういう非常に強権的な書き方をしているわけであります。
 今後、例えば消費税の免税点の引き下げで約200万者が新たな納税義務を負わされるわけです。政府の統計でも、7割が赤字企業、消費税を転嫁できていない企業は半数。これはこの場でも私は確認しました。このような状況で、消費税の新たな納税というのはなかなか大変なんです。当然滞納もふえる。
 この国税庁の文書には、そのことを念頭に置いて、「消費税免税点の引下げに伴い新たな消費税少額滞納事案の増加が懸念され、引き続き、その圧縮に向けた取組が必要である。」ということで、この圧縮というのは要するに徹底的な徴収を図るということであります。
 こうなると、債権差し押さえを乱発して、結果として倒産や自殺に追い込むということになるんじゃないか。まさに苛斂誅求だ。そういうことをやらないということは約束できますか。
○徳井政府参考人(国税庁徴収部長) お答え申し上げます。
 先ほど申し上げましたように、通常の場合は、督促後、生計の状況や事業の状況を聞くなどして納税者の実情をよく把握した上で、分割納付などの自主的な納付を慫慂いたしております。そして、そういった自主的な納付が見込まれない場合、あるいは分割納付の約束が履行されないような場合には、差し押さえが必要かどうかを判断した上で、法令に沿った適切な処理に努めるということでございます。
○佐々木(憲)委員 同じことばかり言っているんですけれども。
 国税庁の昭和51年4月1日に出された税務運営方針というのがあります。それによると、「納税者と一体となって税務を運営していくには、税務官庁を納税者にとって近づきやすいところにしなければならない。そのためには、納税者に対して親切な態度で接し、不便を掛けないように努めるとともに、納税者の苦情あるいは不満は積極的に解決するよう努めなければならない。また、納税者の主張に十分耳を傾け、いやしくも一方的であるという批判を受けることがないよう、細心の注意を払わなければならない。」こう、いいことが書いてあるわけです。それから、「納税者と税務当局との関係の改善を図る広報としては、納税者にとって近づきやすく、また、納税者に信頼される税務署というイメージをつくることが特に必要である。」こういうことを現実にこの税務運営方針で書いているわけですが、これは過去のものとして、もう採用していないのか、それとも現在でもこの方針に変わりはないということが言えるのか、これはどちらですか。
○徳井政府参考人(国税庁徴収部長) お答え申し上げます。
 国税庁といたしましては、現場の職員に対しまして、会議、研修等の場を通じまして、滞納者個々の実情を十分把握して、その実情に即しつつ、法令の規定に基づいた適切な滞納整理を行うよう指導しているところでございまして、今後とも、引き続きその徹底を図ってまいりたいというふうに思っております。
○佐々木(憲)委員 まだ質問に答えていないんです。この税務運営方針は今も採用しているんですか、それともこれはもうやめたんですかと聞いているんです。
○徳井政府参考人(国税庁徴収部長) お答え申し上げます。
 税務運営方針は税務行政を遂行する上での原則論を示したものでありまして、今後とも、この運営方針の趣旨に即して税務行政を進めていく所存でございます。
○佐々木(憲)委員 最後に大臣にお聞きします。
 税金の集め方というのは大変重要だと思うんです。税収をふやそうとしても、納税者である中小企業がつぶれてしまっては意味がない。やはり、納税者の状態をきちんと把握して、親切に相談に乗る。そして、生活と営業が継続するようにしていきながら、その納税の形態については、例えば分割納税ですとかいろいろな形が考えられると思うんです。そうしてこそ税収も確保され、バランスのとれた行政というものができると私は思いますけれども、大臣はどのような認識でしょうか。
○谷垣財務大臣 さっき佐々木委員がおっしゃいましたように、消費税の免税点が引き下げになりますと、今までは納税義務がなかったけれども今度納税義務ができたというので、対応に迷われたり苦しまれたりする方というのは出てくると思うんですね。そういう新たに課税事業者になった方々に対してはやはり、委員がおっしゃったように、申告であるとかあるいは期限内納付といった御相談にはきめ細かく対応しないといけないんじゃないかと思います。
 仮に、こういう事業者について国税が滞納になったという場合があり得ると思いますが、これはやはり、滞納者個々の実情というものを十分につかんで、それでその実情に即しながら適切な処理を図っていくということじゃないかと思います。
 今もいろいろ委員との間でやりとりしていただいたわけですが、滞納者から分割納付等の申し出があるということもあり得ると思いますが、そういう場合も、十分相談の上、滞納者の実情に即した対応をとる、これは従来国税庁の方針だったと思いますが、今後ともそういう形で適切な処理を国税庁は図っていくというふうに承知しております。
○佐々木(憲)委員 終わります。

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