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金融(銀行・保険・証券), その他 (金融消費者保護, 偽造・盗難キャッシュカード問題, 金融のバリアフリー)

2005年04月13日 第162回 通常国会 財務金融委員会≪参考人質疑≫ 【295】 - 質問

「カード・印鑑・預金通帳の偽造・盗難による被害者の救済を」全銀協会長に要求/偽造カード対策「ユニバーサルデザインを念頭に」全銀協会長答弁

 2005年4月13日財務金融委員会で、全国銀行協会の西川善文会長(三井住友銀行頭取)を参考人として招致し、偽造キャッシュカードの被害者救済について質疑が行われました。佐々木憲昭議員は、偽造キャッシュカードの被害者救済、障害者への対応について質問しました。

 偽造キャッシュカードの被害救済について、銀行業界が「法律ではなく約款の改正で対応させてほしい」と述べています。
 この日の質疑でも、西川会長は、「銀行の新しいカード規定は、方向性を示すもので強制できるものではない」と述べました。
 佐々木議員は、それでは、すべての銀行に同じルールを適用できないことになり、法整備が必要だと主張。
 また、佐々木議員は、「これまでの被害者をすべて救済すべきではないか」と質問。これに対して、西川会長は「原則全額を金融機関が補償するという取り扱いにさせていただく」と答えました。
 さらに、佐々木議員が、「偽造カードだけではなく、印鑑の偽造、預金通帳も含めた盗難・紛失など、被害者の対象範囲を広げていくという点を検討し、補償すべきではないか」と質問。
 西川会長は、「金融機関サイドで盗難保険を付保することで、被害に逢った預金者の救済をすることも被害補償の選択肢の一つ」と答えました。



 続いて、佐々木議員は、障害者への対応について質問。
 ATM(現金自動預払機)の利用は生活の上で欠かすことはできません。しかし、タッチパネルが利用できないなど、現在でもヘルパーなどの助けを借りて利用せざるを得ない状況です。今後、偽造カード対策でシステムが進んでいくことで、障害者や高齢者が、なおさら使いづらくなるのではないかという不安が広がっています。
 金融庁が、今年2月22日に示した「偽造キャッシュカード問題への対応について」には、「取り組みにあたっては、高齢者や身体障害者を含む顧客の多様なニーズに配慮することが必要である」と書かれています。
 佐々木議員は、全銀協として、新しい機器やシステムを導入する際は、障害者だけでなく、高齢者にとっても使いやすいもの、ユニバーサルデザインにするということを常に念頭において検討すべきだと主張。
 西川全銀協会長は「どなたでも簡単に御利用いただけるように、ユニバーサルデザインということを念頭に置いて対応策の検討を進めてまいりたい」と答えました。
 障害者が使えないのではないかと不安が広がっている生体認証について、西川会長は、「生体認証を導入しいる銀行では、複数の生体情報をICチップ内に記録が可能としており、障害者の代理人による使用も可能としているケースもある」と答弁しました。
 さらに、佐々木議員は、ATMがどこの店舗にあるのかわからないという障害者の訴えがあるので、「ホームページで公表すべきだ」と求めました。
 これに対して、西川会長は、全銀協の『モア・バンク』というサイトで「視聴覚障害者向けサービスお問合わせ先」が掲載されていることを紹介しました。
 このサイトは、佐々木議員が障害者対応を繰り返し要請してきた結果、実現したものです。

議事録

【参考人の意見開陳部分と佐々木憲昭議員の質問部分】
○金田委員長 本日は、参考人として全国銀行協会会長西川善文君に御出席をいただいております。
 この際、参考人に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、西川参考人に10分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。
 それでは、西川参考人、よろしくお願いいたします。
○西川善文参考人(全国銀行協会会長) ただいま御紹介をいただきました全国銀行協会の西川でございます。
 本日は、私どもの意見を申し述べる機会をちょうだいいたしましたことに対しまして、まずもってお礼を申し上げたいと存じます。
 それでは、偽造キャッシュカード問題に関しまして、全国銀行協会としての取り組み及び現時点での考え方を申し述べさせていただきます。
 私どもといたしましては、偽造キャッシュカードによる預金引き出しは、お客様の預金の安全性を脅かし、銀行業のかなめであるお客様からの信頼を根幹から崩しかねない重大な問題と認識をいたしておりまして、特に昨年来、さまざまな取り組みを進めてきたところでございます。
 まず、昨年3月には、警察庁や法律の専門家をお招きして会員行向けにセミナーを開催いたしまして、本問題への理解を深めますとともに、お客様に対しましては、キャッシュカードの暗証番号管理に関する注意喚起を行いました。具体的には、推測されやすい番号、例えば、生年月日、電話番号、住所地番、車のナンバーといった番号を暗証番号として使うことは避けていただきたいといった内容のチラシを500万枚、ステッカーを13万枚作成いたしまして、会員行に配付をいたしました。全銀協ホームページにおきましても同様の注意喚起を継続的に行ってきております。
 昨年四月には、偽造キャッシュカード問題を専門に取り扱う検討部会を全銀協内に設置いたしました。この部会では、まず、警察の捜査への積極的な協力を業界全体として行うため、被害届提出のルールを明確化いたしました。これは、昨年の通常国会の当委員会質疑におきまして、偽造キャッシュカードによる払い出しを行ったATMの管理銀行、これは出金銀行でございますが、管理銀行が窃盗罪の被害者となるとの見解が法務省より示されたことを受けまして対応したものでございます。
 その後も、キャッシュカード取引の技術的な課題、銀行の民事的責任、また会員行における偽造キャッシュカード対策の取り組み状況につきまして情報交換等を行いまして、その概要を取りまとめて、昨年11月に全会員銀行あてに通知をいたしました。
 さらに、ことしに入りまして、大規模な偽造カード犯人グループが逮捕されまして、具体的な犯行手口が明らかになったということを踏まえまして、業界としての対策を加速させる必要があるとの認識から、1月25日に、偽造キャッシュカード対策に関して、会員各行が積極的に検討し、一層取り組み強化を図るよう申し合わせを行いました。
 その内容は、大きく分けまして、第一に、偽造キャッシュカードが使われないための対策、第二に、偽造キャッシュカードがつくられないための対策、第三に、被害が拡大しないための対策、第四に、万が一お客様が被害に遭われた場合の対応という構成になっておりまして、おのおのにつきまして具体的な対応例を挙げて、あらゆる対策を積極的に検討するよう呼びかけたものでございます。この申し合わせを受けまして、各銀行においてはさまざまな取り組みが行われております。
 また、本年2月には、金融庁の偽造キャッシュカードに関するスタディグループが立ち上げられまして、約款や立法のあり方なども含めて精力的な検討が進められておりまして、偽造キャッシュカードに関する被害補償の問題につきましては、3月31日に中間取りまとめが公表されたところでございます。
 御承知のこととは存じますが、現行のカード規定は、ATMの操作に当たりまして、電磁的記録によってカードを当行が交付したものとして処理し、入力された暗証と届け出の暗証との一致を確認すれば銀行は免責されるとなっております。ただし、偽造キャッシュカードの場合は、銀行がカード及び暗証の管理について預金者の責めに帰すべき事由がなかったことを確認できた場合は、銀行が補償するという規定になっております。
 この規定にのっとっても偽造キャッシュカード被害に対する補償は可能でございまして、各行においてこの規定を前提に積極的な補償への対応がなされておるところでございますが、預金者の責めに帰すべき事由がないことの確認には、預金者の御協力も得まして、ある程度の時間もかかりますため、実際に補償が行われるまでには若干時間を要しているというのが実情でございます。
 また、補償の公平性や透明性を確保するという観点から、どのような場合が預金者の責めに帰すべき事由となるのかを明示することを検討する必要もあると考えております。
 これら諸般の状況を踏まえまして、今般、全銀協といたしまして、カード規定試案の改定を含め、見直しを行うことといたしました。見直しに当たりましては、主として三点でございますが、第一に、偽造キャッシュカード被害につきましては、預金者に責任がない限り原則金融機関が補償することとし、第二に、預金者に責任があるという事例につきましては、あらかじめ例示することによってルールの透明性、公平性を確保すること、そして第三に、預金者の責任があるということの立証責任は金融機関が負うこと、この三点をポイントといたしまして、さらに、銀行自身が被害拡大防止策を積極的に実施するインセンティブをどのように含ませていくのか、そして一方、預金者のモラルハザードをいかにして回避していくのかという観点も重要と考えております。
 3月31日に公表されました金融庁スタディグループの中間取りまとめにおいて記されました、望ましい損失補償のあり方についてという点も参考にさせていただきながら、現在、カード規定試案の改定作業を進めているところでございます。
 偽造キャッシュカード問題につきましては、被害の補償のみならず、ICキャッシュカードの発行やATM画面ののぞき見防止対策など、その他の被害防止策を含め、幅広い観点から実効ある施策を早急に打っていくことが重要な課題と考えております。引き続き、業界といたしましてしっかりと対応してまいる所存でございます。
 以上をもちまして、私どもの意見陳述とさせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
○金田委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。(中略)



○金田委員長 次に、佐々木憲昭君。
○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 偽造キャッシュカードの被害救済について、先ほど、新しいカード規定というものを検討しているというお話がありました。ただ、その中で、その規定というものは方向性を示すものであって、独禁法上強制はできないんだという答弁がありました。そういうことであるならば、約款に任せるということになると、同じルールをすべての銀行に適用できるということにはならないと私は思いますが、その点はいかがでしょうか。
○西川善文参考人(全国銀行協会会長) お答えをいたします。
 強制することができないということを確かに申しましたが、それは、厳密に解釈すれば、そのとおりでございます。
 ただ、全銀協が作成いたしております約款のひな形というものは、全銀協傘下の銀行、現在180行でございますが、もちろん、これにはすべて周知することになります。各行においては、事実上、従来どおり全銀協のひな形を採用していくということになるものと理解をいたしております。他業態につきましても、先ほどもお答えいたしましたが、現在もカード規定試案は全銀協のものと同様のものを採用されておりまして、今回も全銀協が改定すれば、やはり同様の改定をされるものと理解をいたしております。
 どうしても対応されない、そのとおりやられないといったようなケースがもし生ずれば、これはスタディグループの中間取りまとめにおきましても、実効性の担保のための行政上の対応が必要というふうに記載されておりますが、行政側での対応ということもあろうかと思っております。
 以上でございます。
○佐々木(憲)委員 結局、厳密に言えば、一律の原理原則に基づく被害者救済の対応というものができないということなのであって、そういう御答弁がありました。
 行政的措置といいますけれども、そんな簡単にそんなものができるわけではありませんから、法律を決めて、はっきりとそれにすべてが従うということが一番すっきりとした対応であって、それに抵抗されるという姿勢が非常によく出ているわけですが、それでは、銀行自身が裁量に任せてほしい、勝手にやらせてほしいということにしかならないのであって、やはり今すべての質問者が提案をされているように、法的な措置というものが必要だという点を指摘しておきたいと思います。
 それからもう一点は、被害者の救済ですけれども、既に被害者はたくさん出ております。新しい規定がそういう方々に適用されるのか、これから発生する人に適用するのか。私は、既に被害者はたくさん発生しているわけですから、そういう方々にまずは適用するというのが当然だと思いますが、その姿勢をお聞きしたいと思います。
○西川善文参考人(全国銀行協会会長) 今般、規定の改定を行いますと、当然のことながら、これまでに既に被害に遭われた預金者の方々についても同じルールを適用して、そして、預金者に故意であるとか重過失であるとかこういうものがない場合につきましては、原則全額を金融機関が補償するという取り扱いにさせていただくということでございまして、平仄を合わせていくということでございます。
○佐々木(憲)委員 先ほど来議論がありますように、偽造カードだけではなくて印鑑の偽造もありますし、さらに、預金通帳も含めた盗難とか紛失、これら原因はいろいろあれ、銀行が本人以外の人に支払うということがやはり一番の問題だろうと思います。そこのところが十分本人確認ができていないところに、こういうさまざまな問題が発生している。
 したがって、私は、こういう被害が生まれた一つの原因として、銀行側の過失ということもあるのだという点をやはり自覚していく必要があると思います。そういう点で今後、欧米では偽造カード以外のものも含めて対応されているわけでありますが、やはりそういう被害者の対象範囲を広げていくという点を検討されることがきちっとあるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○西川善文参考人(全国銀行協会会長) お答えをいたします。
 被害を受けられた預金者に対する補償の問題というものも極めて重要な問題でございますが、それ以前にも、いかにしてセキュリティーレベルを上げて被害を防止していくかということも大変重要な課題でございまして、盗難カード対策にも、例えば生体認証でありますとか、あるいは預金取引の実際のモニタリングといったことも効果の大きいものであるというふうに思います。
 それから、盗難キャッシュカードによる被害につきましては、これは先ほども申しましたが窃盗被害の一類型ということでありまして、さまざまなケースが想定されるわけでございますので、補償のあり方というものはおのずから偽造キャッシュカードとは異なるのではないかというふうに考えております。
 そこで、偽造キャッシュカードのように、これは原則すべて金融機関が負担するんだという考え方ではなくて、金融機関サイドで盗難保険を付保するということによりまして、被害に遭われた預金者の救済をさせていただくということも被害補償の選択肢の一つと考えられるのではないかというふうに思っております。
 これらを含めまして、偽造キャッシュカード問題のみならず、盗難キャッシュカードの問題につきましても、今後、全銀協内で急いで検討をしてまいりたいというふうに考えております。
○佐々木(憲)委員 今、生体認証というお話もありましたが、金融庁が2月22日に「偽造キャッシュカード問題への対応について」という文書を出しました。この中に、高齢者、身体障害者を含む顧客の多様なニーズに配慮するというふうになっておりまして、これはやはり全銀協としても、新しい機器やシステムを導入する場合に、やはり障害者あるいは高齢者にとって使いやすいものにする、ユニバーサルデザインというふうに言われておりますけれども、常にそういう点を念頭に置いて検討するということが必要だと思いますので、その点どうかという点。
 それから、障害者は、例えばどこに障害者対応のATMがあるかというのがわからないわけです。ですから、各銀行のホームページにどこどこにありますよというのをお知らせするようなことは、これは簡単にできるわけでありまして、この点の改善などについてお答えをお聞かせいただきまして、終わります。
○西川善文参考人(全国銀行協会会長) お答えをいたします。
 障害をお持ちの方への対応をきちんと行うということも大変重要なことだと認識をいたしております。
 今後、セキュリティーの強化のためにICカード、生体認証の導入などを進めていくことになりますが、例えば、生体認証を導入しております銀行では、複数の生体情報をICチップ内に記録することを可能というふうにしておりまして、障害をお持ちの方の代理人による使用も可能としているケースもございます。このように、障害をお持ちの方を含めまして、幅広く預金者のニーズにおこたえできるように対応をしてまいりたいというふうに考えております。
 それから、どこへ行けばよいのかということでございますが、全銀協におきましては、ホームページ上に「視覚障害者向けサービスお問い合わせ先」として、届け出のありました銀行の照会窓口と電話番号を掲載いたしております。照会を受けました銀行では、御連絡をいただいたお客様に対しまして、そのお客様の状況に応じたATM等が設置されております最寄り店を紹介いたしております。
 こういったサービスによりまして、どなたでも簡単に御利用いただけるように、先生のおっしゃるユニバーサルデザインということを念頭に置きまして対応策の検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
 以上でございます。
○佐々木(憲)委員 以上で終わります。ありがとうございました。

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