憲昭からの発信
憲昭からの発信 − 論文・対談
政府の経済・景気対策を問う
『経済』2009年6月号
佐々木憲昭さん(日本共産党 衆議院議員)に聞く
<編集部>お忙しいところ、インタビューに応じていただいてありがとうございます。毎週メールで配信されている「憲昭eたより」を読ませていただいております。きょうは、政府の経済対策・景気対策をめぐる国会での論戦を中心にうかがいたいと思っています。よろしくお願いいたします。
政府の「追加経済対策」批判
――麻生首相は、09年予算が成立したとたんに、「追加経済対策」(経済危機対策)を発表し補正予算を組むと言いました。昨年秋からの一次補正、二次補正につづく09年予算で、景気対策の「三段ロケット」などと言ってきたのですが、「三段ロケット」の着地も確認しないうちに、追加の対策だと言いだしたわけですが、後半国会の焦点について教えてください。
解散含みの後半国会での焦点
佐々木 3月に本予算が通ったばかりなのに、4月に補正予算を組むこと自体、前代未聞です。本予算が、欠陥予算であることを自ら認めたようなものですが、後半国会では、政府の「経済危機対策」と「補正予算」の審議が一つの焦点になります。15兆4000億円という大型補正予算なのですが、“はじめに総額ありき”という考え方で出されている。これが一番の問題です。
それから、西松建設の偽装献金問題についての徹底追及です。私どもは、献金をした西松建設側の関係者と二つの政治団体の責任者の参考人招致を予算委員会でやるべきだと主張しています。各党にも申し入れをしていますが、すねに傷をもつ自民党も民主党も大変消極的です。しかし、政治とカネに関わる問題は、議会政治の根本に関わる問題でもありますから、国会として真相解明が出来るよう力を庄ぎたいと思います。
もう一つ、危険な動きとして、自衛隊の海外展開が強まっていることです。ご存知のように「海賊対策」という名目で、海上自衛隊をソマリア沖に派遣しました。しかも、派遣前にはできないと言っていた外国船舶の護衛活動にまで踏み出しました。それを既成事実化してあとで法律をつくり、たとえば抵抗・逃亡する海賊への危害射撃にまで武器使用を広げるというやり方です。自衛隊が戦後初めて、海外で人を殺傷する事態を引き起こしかねません。
また政府は、日米「グアム協定」を締結して、日本国外の米軍基地の建設・整備にまで国民の税金を使うとか、北朝鮮のロケット発射を口実にしたミサイル防衛強化などをすすめています。そのうえ、ミサイル発射前に相手基地を攻撃しろとか、核武装しろとか、大変物騒な議論が自民党の一部で高まっています。このような安保外交問題もふくめて、国政の重大なテーマが後半国会での論争点になっています。
――麻生首相は、解散をちらつかせながら、「追加経済対策」を具体化する補正予算案を通そうとしています。4月27日に国会に上程して、連休明けから国会の焦点になる、政府の「追加経済対策」について、教えてください。
追加経済対策の問題点(1)ムダと浪費
●逆立ちした決め方――はじめに総額ありき
佐々木 国民の要望とかけ離れた「総額さきにありき」という決め方に、根本問題があります。アメリカ政府とも歩調を合わせた危機対策として、「GDPの2%程度の財政支出」という結論が先にあり、それに麻生首相が悪乗りしてGDPの3%で15兆円という決め方をしたのです。
しかし、経済危機対策というならば、「外需頼み・内需ないがしろ」という危機の原因を解明し、国民の生活の実態からみて何か必要か、緊急の雇用対策や中小下請け企業にたいする支援をどうするか、介護や福祉の改善をどうするか、緊急を要する福祉の公共事業はどうするか、等々、政策と費用の積み上げをして、必要な予算を確保していくというのが本来のやり方です。今回の決め方は、完全に逆立ちしているというべきです。
「追加経済対策」の概要
4月10日、政府が発表した「経済危機対策」によると、総額は15・4兆円。内訳は、「緊急対策」4・9兆円、「成長戦略」6・2兆円、「安心と活力実現」4・3兆円。
緊急対策では、雇用調整助成金の拡充など雇用対策に1・9兆円。残り3兆円は大企業・中堅企業向け危機対応融資枠や中小企業向け緊急保証枠の拡充に当てる。
成長戦略では、「低炭素革命」として、太陽光発電や電気自動車の普及などに1・6兆円を計上。整備新幹線の完成前倒しや羽田空港の滑走路整備などのインフラ整備に2・6兆円。
安心と活力実現では、就学前3年間の幼児を対象にした子ども手当てをふくむ安全安心確保に1・7兆円など。
●一時的、時限的、場当たり的な施策
そのため、緊急対策として出されている中身は、1回かぎりのものがほとんどです。政府は、対策の特徴として「三つのT」――ターゲット(重点化)、タイムリー(時宜をえたもの)、テンポラリー(時限的なもの)という説明をしています。こんな言い方にも1回かぎりで場当たり的な対策という特徴が出ています。
たとえば、「女性特有のがん対策」があげられています。今年の対象となる人は1年だけ受けられます。しかし、来年はありません。1年限りの対策で、はたして意味があるのかということになるでしょう。
それから「不況下の子育て世代支援」という、就学前の子ども(3歳〜5歳)がいる家庭へ、3・6万円を、1回限り配るという対策があります。これは公明党の要求で入れたといわれています。“子ども版「給付金」”とも言われていますが、なぜ3歳から5歳なのか、なぜ1年限りなのか、政策目的も根拠もまったくいいかげんです。政府の文書には、「臨時異例の措置である子育て応援特別手当」と書いていますが、こんなバラマキ的な税金の使い方よりもっとやることがあるだろうと、腹がたってきます。たとえば、母子家庭の児童扶養手当の縮減はそのままです。生活保護の母子加算や老齢加算のカットもそのままです。社会保障の制度的な改悪の是正にはまったく手をつけていません。これを直すことが先決ではないでしょうか。
●大企業へは大盤振る舞い
第三は、その一方で大企業にたいする大盤振る舞いが目にあまります。たとえば、大型公共事業を大規模に前倒しする内容になっていることです。経済危機対策を目実に、国民の批判の強かったムダと浪費の大型公共事業――高規格道路や新幹線、港湾等――を一気に復活させようとしています。
また、大企業中心の研究開発費減税は、法人税の3割の減税を4割に拡大し、繰越期間を最大3年に延長するという、至れりつくせりです。
「グリーン家電」や「環境対応車」への補助金は、自動車産業や電機産業界への大盤振る舞いという声も上がっています。
そのうえ、この15兆円の枠組みとは別に、株式市場への対応として、借入に係わる政府保証枠として50兆円を用意する措置まで含まれています。
なお、「産業活力再生特別措置法」の改定を4月中にも成立させて、従業員5000人以上の大企業にも資金注入ができる仕組みをつくろうとしていますが、そのために2兆円の融資枠を追加経済対策で用意します。まさに、いたれりつくせりの大盤振る舞いといえます。
●政権浮揚・選挙対策へのバラマキ
選挙対策としての性格が、いっそう浮き彫りになっているのは、「住宅取得のための時限的な贈与税の軽減」に1000億円をつけていることです。
今回の減税で言われている「610万円」までの枠は、数億円の相続財産をもっている大資産家が贈与をしたときに該当するもので、庶民には程遠いものです。自民党の支持基盤である土地持ちの資産家向けサービスであり、売れ残って困っているマンション業者や宅建業者への手当てというのが狙いでしょう。
さらに、資本金1億円以上の中小企業の交際費で、損金参入できる限度額を360万円から540万円まで引き上げるというのも、地方の飲食業界の要望を受けたものだそうです。こうみてくると、自らの支持基盤に税金をじゃぶしゃぶとつぎこんでいると言われても仕方がないでしょう。
●戦略も展望もない追加経済対策
個々には雇用対策などで国民生活に役立つものも入っているのですが、政府の経済対策を全体としてみますと、ムダと浪費を広げて借金を増やし、解散・総選挙を目前にしたバラマキ型になっているといえます。めいっぱい、15兆円に膨らませるだけ膨らませて、あとは野となれ山となれと、まさに戦略も展望もないその場かぎりの補正予算といえます。
追加経済対策の問題点(2)財政赤字の拡大
●新規国情発行が40兆円を超える
佐々木 したがって、経済対策の財源をどうするかが大問題になります。政府は15・4兆円の追加財源を主として赤字国情に求め、財政赤字はますます膨張します。
補正予算で10兆円をこえる新規国債を発行すると、本予算とあわせて、09年度に発行する新規国債は43〜44兆円となって、税収を上回るといわれています。赤字国情の累計額は580兆円にも達し、国民1人当たり460万円の借金となります。こうした財政赤字の無責任な拡大を許してよいはずがありません。
●総選挙で、消費税増税派を通すな
さらに重大なのは、赤字を膨らませるだけ膨らませて、2年後の消費税大増税に持ち込もうとしていることです。政府は、09年予算の裏づけとなる国税の改正法案の「付則」で、消費税増税法案を2011年度までに成立させる方針を明記し、早ければ来年の通常国会にも法案を提出すると答弁しています。
誰がそれを決めるのでしょうか。実施時期や税率は別途決めることになっているのですが、今度の総選挙で選ばれる議員がこの消費税増税法案を国会で決めることになるでしょう。
次の選挙で、消費税増税を進める議員か、それとも反対する議員かが重要な選択基準になります。日本共産党は、国民のみなさんと力をあわせて消費税増税を阻止するために、選挙でも大いに訴えて頑張りたいと思います。
経済・景気対策の根本的転換を求める
――政府の「追加経済対策」には戦略もなければ希望もないといわれたのですが、国民にとって希望のもてる経済再生戦略についての基本的な考え方をうかがえますか。
過度な外需依存から内需主導型経済への転換を
佐々木 これまでの大企業中心の経済政策と「構造改革」路線のもとで、「ルールなき資本主義」といわれる状況がつくられ、労働者の賃金が抑えられ、社会保障制度も削減されてきました。そのため、国内消費が振るわず中小零細企業も経営が苦しい。農林漁業者も生産コストも稼げない事情がつづいています。
その一方で、巨大化した大企業が海外に進出し、産業の空洞化がすすみ、ますます内需が低迷してきました。内需が弱いために、自動車や電機などの大企業を中心に、ますます製品販売先をアメリカなど海外に求めました。こうして日本の大企業は、この問、六期連続で最高益を更新する空前の大もうけをあげてきました。
ところが頼みのアメリカ経済が、住宅バブル・金融バブルがはじけて危機に陥り、その影響をもろにうけて、日本経済は急激に悪化しました。08年の第4四半期のGDPが12・1%(年率)のマイナスと急落し、外需頼み経済の弱さが露呈したのです。
経済危機対策を考えるばあいは、その原因に踏み込んだ対策が必要です。ところが、政府の打ち出す政策には、過度な輸出依存への反省、内需の弱さへの真剣な分析と対策が見られません。
「100年に一度の危機」を口実に、大企業、大銀行、大資産家向けの対策はいっそう厚くするけれども、行き詰まった日本経済をどのような方向で再生するのか、理念も展望も示すことができません。
私どもは、国民のくらしを優先させることが経済対策の基本であり、そのことによって内需を拡大し、内需主導型経済への道につなげるべきだと考えています。そのためには、まず雇用の安定、社会保障の充実、国民負担の軽減が急務です。
経済危機から雇用と生活と営業を守り、
家計を温め、消費を拡大する
●雇用を守ることは命と生活を守ること
佐々木 当面する対策として大事なことは、未曽有の経済危機の被害にあって、大変な事態になっている分野に、まず手を差し仲べて支援を強めることだと思います。まずは、派遣切りや雇い止めなど大企業による首切りを止めさせ、雇用を守ることです。
政府も一応、雇用対策はいいますが、大企業の人減らしをストップさせる手だてを具体的に打っていません。しかも、雇用促進住宅を廃止する閣議決定に固執しています。雇用促進住宅については、私も国会で取り上げ、住民の運動もあって3年間は追い出すことはしないことになりました。よくぞ国会で取り上げてくれたと、一部の与党議員からも感謝されたのですが、根本問題は放置されたままです。また、都道府県のハローワークを管轄する労働局を廃止してブロックごとに再編しようとしています。国民の願いとは逆方向に動いているといわざるをえません。
大企業の派遣切りに対する指導もきわめて不十分です。たとえば愛知労働局の動きを見ましても、3年を超えて働いている非正規の労働者が、その是正を求め、正規雇用にしてほしいと申請をしても、誠実に対応しない、対応しても時間がかかりすぎるという問題があります。
私どもは、「直ちに企業を指導すべきだ」と主張していますが、いろんな理屈をつけて動かないものですから、厚生労働省と交渉をやりました。派遣労働が最大3年を超えて続いたら違法状態であること、違法状態を是正するのは厚労省の責任ではないかと詰め寄りました。これにたいして、厚労省は「違法状態を直すため、企業を指導したい。それでも動かなければ企業名を公開する方法がある」と答えざるをえなくなりました。大企業にたいして、現行法のもとでも不当なことはやらせないよう指導し、是正させていくことは政府の責任です。
さらに大事なことは、労働者派遣事業法そのものを抜本的に改正する方向に踏み出す必要があります。この点では、民主党も抜本改正の方向を打ち出せない状況にありますが、派遣法の改正で、派遣労働を一時的・臨時的な雇用に限定すべきです。多くの労働団体が一致して求めている派遣労働を原則自由化した99年の法改正以前の状態に戻すことを、日本共産党も強く主張して頑張っているところです。
●社会保障制度の拡充で生活を支える
つぎに、それでも失業して生活に困り、住まいに困っている人に対して、雇用保険の適用や生活保護による救済を行うことです。その点でいえば、この間の各地でとりくんだ「派遣村」の運動で、住居が定まっていない人も生活保護の受給資格があることを認めさせて受給の道をひらいたり、雇用保険法の改正で適用枠を拡大させるなどの成果を得たことは、重要な成果だったと思っています。
国民の切実な要求からいうと、たとえば、母子家庭の児童扶養手当を復活すること、生活保護の母子加算や老齢加算削減の制度改悪は元にもどすこと、障害者自立支援法による応益負担を応能負担に戻すこと、後期高齢者医療制度の廃止を実現することなどが必要です。
その大もとにある、社会保障費自然増分を毎年2200億円削減する方針を撤廃すべきです。これだけ矛盾が激化してもまだ固執するところに政府の冷たい姿勢が現れています。診療報酬の抑制で、公的な病院もあちこちで経営危機に陥っているし、介護保険制度も「保険料あって介護なし」の深刻な事態になっています。これを転換すること、抜本的な戦略転換が求められています。
●消費税の減税で家計を応援
あわせて言えば、社会保障の抑制路線を改めて、社会保険料等の引き下げを行うことです。これによって、家計を温めることにもつながります。また、消費税の減税が必要です。食料品や生活必需品を非課税にすれば、消費拡大に有効です。イギリス政府は、昨年秋、危機対策として消費税を2・5%引き下げましたが、消費の減退を食い止める効果があったとの調査結果がでています。
●大企業の横暴を止めさせ、中小企業への支援を強める
また、経済の急速な悪化や、大企業の生産調整等の影響をもろに受けて、仕事がなくなったり、資金繰りに困っている中小企業の経営を助けることです。信用保証協会を通じた融資枠を拡大するなどの対策を政府も行ってはきましたが、大企業への大盤振る舞いにくらべると、本当に困っている中小企業者を支援する姿勢はきわめて不十分です。
先日も、浜松市で下請業者の請を聞きました。――去年の11月、12月まではまだ仕事があった。11月は残業もした。ところがことしの2月、3月になると、水門がぴたっと閉まるように、仕事がゼロになったと話していました。「がけから落ちるような」というたとえもありますが、一瞬のうちに仕事がゼロになるというようなことはあまり経験がありません。今の経済の落ち込み方のひどさを示しています。トヨタなどの大手自動車会社や、パナソニックや三菱電機などの大手企業が、生産調整をドラスチックに行ったために、末端の仕事がゼロになるような事態になっているわけです。労働者だけでなく、下請け業者へのしわ寄せがきわめて深刻になっています。
とくに、親企業による仕事切りや単価切りなど、下請け企業への横暴勝手な振る舞いに対して、指導し是正をすべき立場にある政府・行政の側は、その意思もなければ体制もないというまったくお粗末な状況です。
中小企業や農林水産業など、
内需主導型経済の基盤を強める
佐々木 当面の経済対策を進めながら、大局的には、輸出依存型から内需主導型経済に徐々に転換していく新しい経済戦略が必要です。
内需主導という場合、その担い手となるのは根本的には労働者・勤労者です。その暮らしが安定してこそ最終消費市場の拡大につながり、それに支えられて中小企業・業者や農林漁業者が発展するのです。中小企業は、全事業所の9割・従業員の7割以上をしめています。農林漁業者は国民の食料・環境を支えています。中小企業と農林漁業が元気になれば、地域経済も活性化し、内需に支えられた日本経済に転換することができます。
内需型の産業政策という点でいえば、自然エネルギーの開発など、温暖化ガスの排出量をEUなみに減らしていく立場から、「日本版のグリーン・ニューディール」も検討していく必要があるでしょう。また、学校や公共施設の耐震化、バリアフリーの街づくりなど、立ち遅れている生活基盤整備の公共事業などを進めていけば、中小の建設業者の景気対策・雇用対策としても有効です。
こうした視点で、政策の基本方向を示すことによって国民の総意を引き出せば、新たな希望も展望も出てくると思います。
財源の問題――政府や政党の本質が浮き彫りに
●国民の立場から歳出・歳入を抜本的に見直す
佐々木 そうすると、さいごは、財源の問題が議論になるわけですが、ここは、各政党の本質が浮き彫りになるところです。われわれは歳入・歳出両面で具体的な提案をしています。
歳入の面では、税制の民主的改革を行い、これまでの大企業中心の過大な減税措置を直すことです。たとえば、法人税率ですが、20年前は40%だったものが今は30%までに下がっています。消費税を導入してからのこの20年間で、消費税を213兆円徴収する一方、法人三税は182兆円もの減税・減収となったわけです。これを見直すだけでも相当の税収になるはずです。
09年予算関連で、海外子会社から日本国内の親会社への配当を非課税とする国際課税の改定が行われましたが、企業の海外移転を加速させるものです。上場株式の譲渡所得や配当への軽減措置を延長するに至っては、一部の資産家に莫大な恩恵をあたえ、格差を拡大させます。さらに法案の「付則」では、法人税のいっそうの引き下げを検討することを明記しています。こうした種々の、大企業・大資産家優遇の税制を改めることで、必要な税収は確保できます。
歳出の面では、グアムの米軍基地の建設や運営に日本の税金を使う計画はただちに止める。米軍への思いやり予算はすぐに止める。不要不急の大規模な開発や道路・港湾等の公共事業は、抑制、延期、中止するなど、無駄遣いをなくす具体的な提案をしています。
そうして、社会保障の充実、雇用対策、中小企業、農業、こういう分野の底上げを徹底して行えば、日本経済の内需の基本的なところがしっかりと支えられることになりますから、経済の佐賀の改善にもつながる。そして国民本位の日本経済の再建が軌道に来ると、考えています。
日本経済の民主的な再生めざして
――さて、解散・総選挙は目前です。大恐慌以来という経済危機に直面して、世界と日本経済の進路が問われる大事な選挙だと思います。日本共産党の前進・躍進を期待したいのですが、国会議員として、また経済の研究者として、佐々木さんの思いなどをさいごに聞かせていただけますか。
●世界金融危機は他人事ではない
佐々木 アメリカの金融バブルが崩壊し、資本主義の行き着くひどさが誰の目にも明らかになったと思います。これは、アメリカだけの責任か。そうではありません。金利の低い円を借り、金利の高いドルで運用するという円キャリートレードが大規模に行われ、その資金がアメリカの金融バブルを発生させる一つの要因になりました。日米間の金利差を利用するかたちで大量の投機資金がアメリカに流れ込んだのですから、日本はアメリカとともに金融バブルの共犯関係にあったと言えます。
また、アメリカの企業や投資ファンドなどが日本の株式市場の過半を押さえる事態も発生しました。日本経団連の幹部を構成している主要企業の3分の1は、すでに外国資本が株式保有の5割を超えている状況です。
こうした金融面での支配や投機的な動きから、各国の経済主権と国民生活をどのようにして守るかが新たな課題として浮上しています。そのためG20では、巨大複合金融機関やヘッジファンドなどに対する監督、規制強化が大きなテーマになっています。しかし日本政府が独白の提案をしたという形跡は見当たりません。それどころか、依然として「貯蓄から投資へ」という流れや金融の規制緩和に固執しているのが実態です。
●日本の財界・大企業の変貌
それから、日本経済の構造がどう変化したかということに目を向ける必要があります。私達が『変貌する財界』(新日本出版社、2007年)で分析したことですが、巨大化した日本の財界・大企業が、アジア諸国への大規模な進出を強めています。その鍛大の目的は、日本の労働者の賃金の6分の1、10分の1という低賃金労働者を利用し、アジアにおける生産ネットワークを構築することにあります。その結果、日本の労働者の賃金も、下請単価も、アジア並みに切り下げる圧力が強まってきたのです。
同時に、日本国内の親会社とアジアに進出した子会社のあいだでおこなわれる企業内取引に関税がかからないようにするEPA(経済連携協定)が次々と結ばれるようになりました。そのなかで、アジアからの輸入農産物の関税を引き下げる政策がとられてきたわけです。その結果、日本の農業が打撃を受けるという構造に変わってきました。
このような日本の財界・大企業の大きな変化をよくみて、その変化にどう対応するのか、どう規制するのか。アジアの労働者との連帯をどのようにつくり上げていくか。そういう角度から問題を提起していくことが必要だと思っています。経済の面でも、財界・大企業とアメリカの支配にどう立ち向かうかという立場なしに、日本国民のくらしの向上も経済の発展も望めません。そこに、「ルールある経済社会」をめざす、日本共産党の綱領路線の真価があるのです。
●「構造改革」の痛み――日本共産党の議席を増やしたい
佐々木 03年、前々回の衆議院選で、日本共産党の議席が9議席に後退してから、生活と営業が苦しくなったという声が聞かれます。「構造改革」のしわ寄せが、命と暮らしを直撃しているというのが実感です。
今のこういう事態を本当に打開できるのは日本共産党しかないと改めて感じます。国民の皆さんの期待に応えるためには、なんとしても勝利して議席を増やしたいと思っています。
――がんばって下さい。どうもありがとうございました。